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戦争開始

「ち、防がれたか」


 ポラリスの首都からそれなりに離れた位置からジラントのブレスをぶっ放してもらったが、ユウの結界によって防がれてしまった。

 俺達はユウを取り戻すため、すでに行動を開始していた。

 もちろん戦いに来たのは俺、レナ、ジラント、ズメイ、サマエル、ネクスト、ベレトの7人。

 白猫は家に置いてきた。

 どうせこっちに来ても何もしないだろうし。

 その代わりアドバイザーとしてお隣さんが協力してくれる。


『全く。人間の身体を奪うとは思わなかった。あれ完全にこっち側の行動よね』


 悪の女神がそんなことをスマホ越しに言った。


「ただ人質にするのではなく利用するなんてな。それでも自称正義の神?」

『あれは正義って言えば何しても許されると勘違いしてるイタイ神よ。もう目も当てられないわ』


 いや本当にイタイよな。

 中二病でもここまではしないだろ……


「で、どうやったら神を追い出せる」

『いくつか方法はあるけど……確実なのは自分で追い出す事。つまり勇者自身が呪縛から脱出する事ね。と言ってもそう簡単にはいかないだろうから、私が引きずり出す』

「念のため聞くが、後遺症とか残らないだろうな」

『多少は残るわよ。なんせ無理矢理だから良くて体の一部が動かしにくくなるくらい、悪ければ生きた屍ね』

「俺がやる。どうせぶっ飛ばせば勝手に出ていくだろ」


 これで神を相手にする準備は済ませてきた。

 と言っても本当に最終手段のつもりなので積極的に使うつもりはないが。


 なんて思っているとポラリスの首都の上空に映像のような物が映し出された。

 SFアニメで見るような空中にテレビのような物がある感じで、そこにはユウの身体を奪った神が映し出される。


『全人類よ、約束の時は来た』


 声まで届くとは思わなかった。

 それにしても普段のユウの声と違い、おっさん臭い雰囲気がする。

 一体何を言い出すのか興味があるので今は黙って聞く。


『私は神、お前達がそう呼ぶものだ。この度勇者の身体を借りる事で地上に来る事が出来た。これにより全人類を、いやこの地上を、楽園にするためにお前達の前に現れた。これも全てお前達の信仰によって実を結んだこと、私は非常に嬉しく思う。よってこれより地上を楽園に変える。皆に望むのは私に祈りを捧げる事。少々時間はかかるが今日中に終了する。これによりお前達は飢える事もなく、病に侵されることもなく、命を失い事もなく、悲しむ事もない。永遠に幸福の中で生き続ける事が出来る。さぁ、私に祈りを捧げなさい。それだけでこの地上は楽園に変わるのだ』


 なんて光の神は言っている。

 その言葉を聞いた俺は素直に感想を言う。


「しょ~もな」


 俺の言葉にレナ達は呆れたようにため息をついた。


「ナナシ様。確かにナナシ様にとってはしょうもない事かもしれませんが、力のない人間にとっては非常に魅力的な話なのです。それはナナシ様も理解できているのでは?」

「でもでも、ナナシちゃんが神様の言う事を素直に聞くとは全然思えないわ」

「聞くわけねぇだろ。あんなクソ神。俺のユウを奪った奴は殺す」

「それは私達も同じ。家の可愛い妹分奪った奴を生かすつもりはない」

「同意いたします。ユウ様は素直でいい子です。あの神にはもったいないかと」

「命令を確認。家族であるユウの奪還であることを繰り返します。そしてまた一緒に居たいと思います」

「……私はアレに創られた。その事がここまで恥だと思った事はないよ。今日私はアレと決別する」


 それぞれ覚悟を決めていると、なぜか結界が解かれた。

 その瞬間ジラントがブレスを光の神に向かって発射。

 再び結界が張られて首都を守ったかと思うとまたクソ演説が続く。


『しかしその楽園を作るのを邪魔する者達がいる。それが彼らだ』


 そう言って映像には俺達の写真が映し出された。

 全員証明写真のような面白みのない写真だ。


『彼らは私達の楽園を阻止しようとする。どうか彼らを倒さなければ楽園は手に入らない。よってポラリス全ての人類に告げる。この者達を殺せ。そうしなければ楽園は手に入らない。一切の慈悲を向けるな。彼らは巨悪だ』

「本当に好き勝手言ってくれるな。人から大切な物奪っといてよく言えるもんだ」

『世界中の人類が絶対あなたにだけは言われたくないと思ったわよ』


 悪の女神がそういうが俺はまったく気にしない。

 誰が何と言おうとも、俺が手に入れた物を奪われるのは気に入らない。

 だからあいつは殺す。


「俺が元々そういう奴だってのは自覚してるからまだマシ。あいつは自覚してないからもっとヤバい。それより旦那との打ち合わせはちゃんとできてんだろうな」

『必死に原稿を覚えさせたわよ。でもどうする?このままだとポラリスの住人全てあなた達が殺しそうじゃない』

「別に問題ないだろ。あくまでも殺すのは都市部にいるちょっとした聖騎士団だけだろうし、数は大体……5万いればいい方か?都市部は少数精鋭って聞いてるが、それくらい入るらしいし」

『それ信用できる情報なの?』

「ネクストが先に潜入して情報を聞いてきてくれた。例の聖女の部下達から聞き出せたからベレトが裏を取ってる。でも問題はカードって呼ばれてる連中の部隊だな。2人は判明しているが、『戦車』の方は表舞台に出てるから詳しい人数も判明しているが、『塔』の奴に関しては詳細な数は不明だ」

『『隠者』の方は?』

「現在の『隠者』は俺が隷属させてるからそいつの部隊は動かせない。数に関しては『隠者』が1番多いんじゃないかと予想しているから、それだけでも数万くらいは抑えられてるはずだ」

『なかなかの悪役っぷりじゃない』

「当然だろ。正義の味方が後手後手になるのは事件が起きてから判明するからだ。悪役は攻めるために事前に暗躍してるんだから、そりゃ思う通りに動けるだろうよ」


 今回はユウを救い出すために全力で行く。

 本音を言えば聖女に命令してユウをポラリスから抜け出したかったが、3人の天使が見張りをしている事で無理に動かすわけにはいかなかった。

 無理に動かしてこちらの状況を知られるわけにはいかない。


 ちなみにだが現在の聖女はかなり腹が大きくなっており、戦いには不参加だ。

 仕事として教皇の世話をしたり、事務作業を進めていたくらい。


 それに今回はクソ神がやらかした。

 確実に計画を実行するというのであれば、俺達を殺すことなくあの結界の中で作業を進めればいいのに俺達と殺し合う事を選んだからだ。

 ユウの結界、『正義』は絶対防御。

 あの中なら絶対に安全なのだから安全なところで楽園とやらを運営していればいい。

 それなのにわざわざ俺達の事を殺すために結界を解除するというのだから、こちらにとって都合がいい。


『結界の解除と同時に出てきたわね』

「ありゃ一般兵だな。聖騎士団のなり損ねってところか。ジラント」

『次は思いっきりやるわね』


 そう言いながらジラントはドラゴンの姿になり、口に眩しいくらいの熱量を集め始める。


「レナ、ベレト、ズメイ。ジラントの護衛は任せた」

「「「了解」」」


 雑魚に関してはジラントの攻撃で一掃するつもりだが、それを阻止しようとするものは必ず現れる。

 こちらの予想通り3体の天使がジラントの攻撃を止めようと飛んできた。

 レナ達の相手はあいつらだ。


「サマエルは俺を連れて大聖堂の頂上まで頼む。ネクストは隙をついて敵主力の指揮官や連絡係をぶっ殺して戦場を混乱させろ。カードと呼ばれる連中がいたらそいつらも殺せ。危険と判断したら無理に攻撃しなくていい」

「確実にあの場までお運びしましょう」

「了解」


 サマエルとネクストも頷いた後、飛んでくる天使達の後ろに何か小さな反応があった。

 数は大体……10万?

 どこからそんな数の空を飛ぶ部隊を用意したのかとよく見てみると、それは天使の軍勢だった。

 こちらに高速で向かってきている3体の天使よりも弱そうだが、無駄に多い。


「サマエル。あの天使達はお前の後輩か?」

「おそらくですが。どれも下位の天使です。属性は光。間違いないかと」

「ならサマエルは空中にいる雑魚天使の殲滅を中心に戦ってくれ。ジラントは予定通り地上の敵を狙ってくれ」

『分かったわ』


 天使の軍勢は少し意外だったが、まぁそれでレベルはおそらく70前後だろう。

 天使を殺した事はないので経験値が一体どれくらいになるのか楽しみだ。


「それじゃ、始めますか」


 そんな気のない俺の声を聞いたジラントが、地上に向かってブレスはなったのが戦いの合図となった。

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