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強欲の悪魔対ユウとネクスト

 ちょっと遊んでユウとネクストの準備時間を稼ぐ。

 強欲の悪魔は中途半端に攻撃する俺達に対して苛立ちを覚えたのか、激しく攻撃するがどれもこれも大したことがない。

 カラスの羽をばらまく広範攻撃は大したことないし、つつく攻撃は軽い。

 後は踏みつけてくるくらいか。


 それにしても本当に悪魔かこいつ?

 悪魔なら悪魔らしく魔法くらい使えよ。何でさっきから全然使わねぇんだよ。

 まさか悪魔の癖に魔法が使えないとかないよな?

 でも身体能力を強化するような類も使っているように見えないんだよな……


「準備できたよ!」

「マスター、もう戦えます」

「そんじゃ行って来い!」


 バトンタッチするように俺達は引き、ユウとネクストが前に出た。

 2人ともきちんとオーラを纏った攻撃しているのでダメージはある。

 しかしすぐに『強欲』によってユウの剣、ネクストの短剣と弓が奪われる。

 強欲の悪魔はそれだけで勝ち誇った表情をしているが、もちろんその程度でユウとネクストが終わるわけがない。


 すぐに身体にくっ付いているそれぞれの武器に向かって高速で動く。

 俺が教えた基礎魔法、付与魔法を使ったみたいだ。

 今回はスピードのステータスを上げる付与魔法だけらしく、消費魔力は少ない。

 それで一気に加速して強欲の悪魔から武器を奪い返す。

 所詮体にくっ付いているだけだから奪い返すのは簡単だ。


 強欲の悪魔はまたスキルで奪い返せばいいと思っているようだが、前にも言ったようにそれは出来ない。

 一度奪った物は24時間は自分の物なので奪えない。

 そんな事も知らねぇのか、この悪魔。


 なので悪魔は奪えない事に戸惑い、その隙にユウとネクストが攻撃を仕掛ける。

 ユウの剣で斬り、ネクストは矢を放つ。

 と言ってもまだまだユウ達のレベルではあまり深い攻撃にはならない。

 その理由はカラスの羽によって阻まれているからだ。

 こればっかりはレベル差によるものだろう。

 羽によって体を守られている事で致命傷と言えるだけのダメージは与えられていない。


 まぁレベル差なんて多少の小細工でどうとでもなる。

 強欲の悪魔は本当に知能の方は大したことないようだ。


 実際最低ランクの基礎付与魔法で十分対応できているのが証拠だ。

 攻撃量を上げる付与魔法をネクストが使用し、二人の攻撃力が上がる。

 ユウの剣が十分届くようになった。

 流石に一刀両断とはならないが、血の代わりに魔力の漏れのような物が見える。

 強欲の悪魔……もうカラスでいいか。カラスは斬られたことに驚いていた。


「それなりに善戦できていますね」

「それなりって言ってやるなよ。むしろあのレベルなら十分戦えてる」

「まぁナナシと違って普通の人間と、まだ未成熟なホムンクルス。もう少し甘めに見るくらいがいいかもね~」


 レナの言葉に俺がツッコミ、ジラントが冷静に言う。

 うんうん。せめてジラントくらいの感じで見てほしい。

 まだまだあいつらは子供だ。

 温かく見守ってあげるべきだろう。


 ユウは現在レベル68だからカラスとのレベル差はざっと30くらいか。

 でもネクストはまだレベル58しかないからもっと差が空いてるんだよな。

 それなのにネクストのダメージも通っているって事はやっぱりスキルがないから。

 まぁ高レベルでスキルが全然ない奴と戦った事なんてないから、どれくらいダメージが入るのか計算し辛いんだよな。

 この感じだとやはりスキルの数と経験がものを言うな。


 カラスはその辺全く足りてない。

 レベル至上主義者もプレイヤーの中にいたけど、だからってスキルを排除してたわけじゃないしな……

 あくまでもスキルを多く取得するよりもレベルを優先するべきだ、という主張集団だったわけだし。


 カラスは黒い羽根を矢の代わりに放ったものをネクストが短剣で風の魔法を使用して吹き飛ばす。

 そこにユウがカラスの懐に入り、カラスに大きな傷をつけた。


 カラスは痛いと感じたのか大きな悲鳴を上げてユウを睨み付ける。

 そこでカラスは意外な攻撃をした。


「キャ!」


 カラスは武器だけではなくユウの服を『強欲』で奪ったようだ。

 恥ずかしがって胸と股間を隠すユウに対してカラスはくちばしで攻撃しようとしたが、結界で守ったためダメージはない。

 ネクストはユウに攻撃が集中しているのを隙と見たのか、短剣でカラスの足を斬ろうとするがレベル差のせいでうっすらと傷付いた程度のダメージしかない。


 カラスは服を奪う事で動きが悪くなると覚えたのかネクストの服も全て奪った。

 だがネクストにはあまり羞恥心がないからか、くちばし攻撃を新体操選手のようにバク転で避けながら距離を取った。


「あれはさすがにフォローしますか?」

「別によくね?どうせ俺達しかいないし」

「でも女の子として屈辱的よね~。好きでもない相手に服を奪われるだなんて」


 サマエルの言葉に俺は無慈悲にフォローしないと言い、ベレトは同情的な感想を言う。

 普通はここで隙を作った時点で負け確定だが、俺が鍛えたあいつらがこれで終わりにはならない。

 奪われたと言っても武器は手元に残っているし、すでにネクストは行動に移している。

 短剣で風の中位魔法、『サイクロン』を使用。

 本来であれば渦巻く風が相手をミキサーの中に入れたように切り刻む魔法だが、カラスの顔に当たってもあまりダメージにはならない。

 だがそれはあくまでも視界をふさぐための物であり、その隙にユウが全速力で自分とネクストの服を奪い返した。

 そしてネクストと自分を守るために結界を再び張り、服を着直す。

 その時にユウは俺の視線に気が付いて顔を真っ赤にしながらさらに慌てる。


 カラスはユウ達が着替えている隙に俺達、観戦側を襲おうとしているようだがそう簡単にはいかない。

 着なおした2人はすぐにカラスに攻撃した。

 物理攻撃では届かないので魔法で攻撃した。


 ユウが使ったのは『ホーリーカノン』。

 光系魔法で上位に位置する魔法であり、数少ない高火力攻撃魔法だ。

 光属性だけではなく聖属性もある魔法であり、アンデット系だったらまともに食らえば確実に倒す事が出来る。

 見た目に関してはでっかい金色のレーザーみたいな感じでまっすぐ飛んでいく。

 それを食らったカラスは初めて転倒した。

 ダメージもそれなりに大きいと思うが……あれは魔力消費激しいからそう連発は出来ないだろ…………マジか。

 ユウはこれをチャンスと捉えたのか『ホーリーカノン』を連発で使い始めた。


「……なるほど。確かにこれはナナシ様とは真逆でありながらやっている事はあまり変わりませんね」

「しかもレベルが上がる毎に効果が上がるから、さらに効果が強くなってる。ありゃレベル99になればかなり化けるぞ」


 俺と方法は違う。効果も違う。

 でもやっている事はほとんど変わらない。

 レベルが上がったことで『節制』の効果がさらに強くなり、本来であれば燃費の悪いはずの魔法を連続で使用する事が出来る。

 身体能力もかなり向上しているようで、最初に戦った時と比べたらかなり強くなっている。

 そしてユウはまだ発展途上。

 これからの事を考えると楽しみで仕方がない。


 流石のカラスも連続で放たれる『ホーリーカノン』のせいで動けない。

 空に飛ぼうとしても攻撃を食らう事で思うように翼を動かす事が出来ないからだ。

 永遠に魔法を打ち付ける中、ネクストがさらに付与魔法でユウの魔法の威力を上げる事でさらにカラスはダメージを受ける。

 その姿は重力に押しつぶされているような感じ。

 高火力の光魔法の雨により押しつぶされていくカラスは、頭を何とか動かしてユウに攻撃しようとするがそれよりも早くユウが動いた。

 とどめの一撃で剣でカラスの首を2つ同時に斬り落とした。


 流石のカラスもこれで終わり、紫色の霧になって消える。


「ふぅ……やっと終わったよ~」

「終わりましたマスター」


 2人とも疲れが強く出ているがどこか充実した表情にも見える。

 そんな2人に俺は笑いながら出迎える。


「お疲れ2人とも。やっぱり強くなってたな」

「え、もしかして負ける可能性もあったって事?」

「一応可能性として考えていたが、低いと思ってた。ユウも随分強くなったし、ネクストもいいサポートだった。2人ともレベル上がったか?」

「えっと……あ!レベルが73まで上がってる!!」

「マスター、私はレベル64まで上がりました」

「順調に育ってるな。その調子で俺を殺せるくらい強くなってくれ」


 俺は冗談を言いながら足元に現れたマンホールを確認した。

 そして2人の疲労具合を確認してから言う。


「今日はここまでだな。2人とも疲れてるから次の階層に行く途中で休憩を取ってから行こう」


 そう言ってから俺達はマンホールのふたを開けた。

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