表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/166

ジラントの最強コンボ

 ここが巨大なベッドの上であることが判明してからもう1度探してみる。

 巨大な枕周辺を念入りに調べてみると、奇妙な物をベレトが発見した。


「…………なんか変な物見つけた」

「お、何見つけた?」

「おっきなテディベア?みたいなのがいる」

「その子!その子が怠惰のお世話係してる子!!」


 嬢ちゃんが興奮した感じで言うのでどうやら当たりらしい。


「近くに赤ん坊みたいなのはいるか?」

「う~ん。見当たらない。どうする?攻撃してみる?」

「いや、もう少し様子を見てみよう。もしかしたら怠惰の悪魔を見つける事が出来るかもしれない」


 俺はそう予想しながらベレトに言った。

 あれが世話役なのなら必ず怠惰の悪魔の元に向かうはずだ。

 それなら怠惰の悪魔の元まで案内してもらう方が賢いだろう。


「分かった。それじゃ見張っておくね」

「ちなみに距離は?」

「ざっと10キロ先あたりだね」

「それじゃ転移は出来ないか」


 流石に遠すぎる。

 とりあえずその場で待機し、ジラントに頼んで怠惰の悪魔を発見するまで休む。

 それにしても巨大なベッドの上にいただなんて、本当にこのダンジョンはよく分からない。


「嬢ちゃん。やっぱりもう少しコンセプトどうにかした方がいいぞ」

「でも……よく分からない」

「それは人間の事を知らないからだ。色々教えて奴からもう少し改良しろよ」

「うん。でも怠惰の改良ってどうすればいいの?」

「今回はその辺は無視。まず徹底的に色欲の階層を改善する。前に言ったこと覚えてるか」

「えっと……確か食料となる存在を放っておいた方がいい、だったっけ?」


 嬢ちゃんは思い出しながら言った。

 俺は満足して頷いてからさらに説明を続ける。


「そうだ。全く食料がないダンジョンより食料のあるダンジョンの方が人気が高い。そして今回はその先、報酬の話だ」

「報酬?」

「まぁ正確に言うとこのダンジョンに入る理由作りだな。ダンジョンに入るメリットと言っていい。そして色欲らしい報酬となると、やっぱり精力剤とか媚薬系だな」

「精力剤と媚薬?それ本当にダンジョンに来てくれる理由になるの?」

「確実に理由になるぞ。というか必ず一定の需要はある」


 精力剤は男性女性関係なく必要とする奴は必ずいるし、媚薬に関しても一定の需要はある。

 えげつない事に使ったり、ちょっと夜に盛り上がるために使ったり、既成事実作るためだったりと色々だ。

 だから必ず需要は生まれる確実なビジネスだ。


「結局ほとんどの生き物は下ネタ大好きなんだよ。理性である程度制御してるだけで、ちょっと化けの皮をはがせば下ネタばっかりだ」

「へ~。でもそれなら確かに私のヤギたちみたいな感じで出来ると思うけど、他の階層は?」

「ぶっちゃけ要らないんじゃない?もしくはお前達が担当している範囲を広くするとか」

「広く?」

「今みたいに1つの階層だけ担当するんじゃなくて、1人でいくつかの階層をまとめて管理するのもいいんじゃないかって言ってるんだよ。そうすれば無駄に広い空間を作る必要もない」

「いきなりそんなことできるのかな?私達素人だよ」

「それこそ人口悪魔を使って管理していけばいいだろ。あいつらにも成長の余地があるのならダンジョンを管理できるくらい育てればいい」

「え、でもあの子達ってダンジョンの敵役じゃ……」

「知るかそんな事。どんな目的で作られた道具も結局持って使う奴次第なんだよ」


 殺す目的で作られていない道具で殺す事が出来る。

 逆に殺すつもりで作った道具も殺さないように使えば殺せない。

 所詮道具は使う側の自由だ。

 と言ってもあの悪魔達がどこまで成長できるのかは教える側の腕次第だけど。


「使う奴次第って……本当にそれでいいの?」

「当たり前だろ。どんな道具だって使う奴によって姿は大きく変わる。だからこのダンジョン、俺にくれ」

「え、ええ!!くれって、このダンジョンを!?」

「俺にこのダンジョンの運営権が欲しい。ダンジョンを持っていれば色々楽だから」

「楽ってなんに使うつもりなの?」

「家、研究所、実験場、武器製作工場などなど、やりたいように魔改造する」

「ダンジョンの乗っ取りが目的だったの!?」

「だってこのダンジョンを立て直すのに俺の意見を受け入れるんなら、結局俺が作り直すのとそう変わりないだろ。それに人里から離れてるから個人的に立地もいいし」

「本当に家みたいな感覚で言わなくても……」


 嬢ちゃんは呆れているがプレイヤーから見れば、ダンジョンの運営権というのは喉から手が出るほどに欲しいアイテムだったりする。

 まずダンジョンの運営権を持っている事でダンジョンを好きに作り変える事が出来る。


 と言ってもダンジョンを運営するにはDPダンジョンポイントと言われるものが存在し、このDPを使用してダンジョンの中を好きにいじる事が出来るのだが、DPを稼ぐ方法がダンジョンに来るプレイヤーやNPCにダメージを与える事だ。

 ダンジョン内でダメージを与えたと判定されるのはトラップに引っ掛かった時、状態異常を受けた時、ダンジョン内に配置しているモンスターにダメージを与えられた時などだ。

 最もポイントが入るのはプレイヤー、またはNPCを倒した時だが絶対に倒すようなダンジョンではDPをうまく稼げず大きな粗大ごみになってしまう。


 と言ってもダンジョン内を改造する方法はDPを消費するだけではなく、自分で穴を掘ったり魔法で加工したりすればDPを節約することは出来る。

 でもDPを使った方が作りは丁寧だし、故障した時もDPを消費すればすぐに直す事が出来るというメリットはある。

 それにただの家として使うだけならDPを消費したところで大した痛手にはならない。

 DPが0になったとしても、それまでに手に入れた物は消えたりしない。

 だから単なる家として使うだけなら結構条件は良いのだ。


 と言っても俺の場合は様々な施設を造る予定なので、それなりにDPは使用する事になるだろう。

 工場とはホムンクルス工場のような『色欲』の効果を最大限発揮できるものを作りたいと思っているし、武器工場で使う素材を購入するのもDPを消費する。

 つまりこのダンジョンに人が来るというのは俺にとっても必須事項なのだ。


「俺もそろそろ家が欲しいと思ってたし、どうせなら広くていろんな趣味に没頭できる家がいい。そうなるとダンジョンみたいなところが結構希望に合うんだよ」

「うう。ダンジョンの運営を手伝ってほしかっただけなのに……ダンジョンそのものが奪われそうになってる……」

「何のメリットもないのに面倒事に首突っ込むわけないだろ。それにダンジョンの運営権を取得する方法は、ダンジョンを最初に攻略した者ってルールがあるから、最下層まで攻略したら結局俺の物にできるんだけどな」

「もっと必死に守るべきだった!!」


 嬢ちゃんは嘆き悲しんでいるが俺にとってはかなり楽しみな事だ。


「あ、クマが何か抱きかかえた」

「お、何か変化あったか」


 ジラントが何か見た様なので聞いてみる。


「クマが……赤ちゃんみたいなの抱きかかえてあやしてる」

「特定完了だな。ジラント、そこに向かってブレスできるだけ多くぶち込め」

「は~い」


 ジラントはドラゴンの姿になった後、悪魔に向かってブレスを放った。

 これがジラント最強のコンボ、『天神の目』と『射抜女神アルテミス』の同時使用。

『天神の目』でターゲットをロックオン。そして結界や防御系魔法を無視して射抜く事が出来る『射抜女神』で超長距離、絶対当たるドラゴンのブレスという悪夢のような必殺コンボ。

 流石の俺も超長距離からドラゴンのブレスが飛んでくる状況になったら『暴食』ですべての攻撃を食らうしか防ぐ方法がない。

 決闘の時、正面から勝負を挑んできたのはドラゴンとしての誇りもあっただろうが、俺を生かしてとらえたいという気持ちもあったからこそ、このコンボは使用しなかったのだろう。

 おそらくユウの『正義』なら守ることは出来るだろうが……特殊なスキルに頼ってる時点で普通は死ぬよな。


「全弾的中。悪魔の影は無し。多分勝ったでしょ」


 普通なら死亡フラグだ、相手に逆転を与える隙を作るところだろうが、ジラントがそんなことになるような中途半端な事はしない。

 暴食の悪魔を倒した時のように下からマンホールが現れたことで、確かに勝ったことが判明した。


「サンキュー、ジラント。そんじゃ次行ってみよう」


 相手が怠惰ならこちらも楽な方法で勝たせてもらおう。

 それが効率的に動くって事だろ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ