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教皇との会話 前

 多分偶然ではないだろうが教皇の部屋に行く。

 教皇の部屋はこの大聖堂の最上階であり、部屋よりも屋上庭園の方が圧倒的に広い。

 部屋は本当に寝るための部屋でしかないようで、テーブルもイスもなく、簡素なベッドが1つあるだけ。

 屋上庭園にはそれなりによさそうな白いテーブルとイスがあったが、この屋上庭園は鉄格子で覆われていた。

 まるで鳥かごのようだと俺は思う。


「どうぞこちらに。あなたとは少し話してみたいと考えていました」


 どうやら教皇は俺と2人っきりで話がしたいらしい。

 シスター服を着た聖女は席に座ることなく、紅茶を準備しているところからあくまでも従者として徹するつもりのようだ。

 俺がいる事で手が細かく震えていたが、どうにか従者としての仕事をこなしている。

 お互いに席に座って紅茶が出るのを待ちながら教皇は俺に話しかける。


「この庭園はいかがですか?」

「とても綺麗な庭園だと思います。様々な花が咲き誇っているのはやはり見ていて気分がいい」

「それはありがとうございます。この庭園はできるだけ私の手で育てているんです」


 教皇は心の底から嬉しそうに言う。

 一体こいつは何がしたいのかさっぱり分からない。

 教皇の方から話してくれるから適当に相槌あいづちでもしながら話させるか。


「それは凄いですね」

「ええ頑張りました。特に年中花を咲かせるために様々な季節の花を取り寄せ、毎年咲くように調整するのは大変でした。特に冬に咲く花と夏に咲く花の管理が大変で、繊細な花達もいるのですよ」

「へ~。どの花です?」

「あそこの、小さな赤い花です。あのあたりの花は特に細かい調整が必要で、肥料の調整なども大変でした」

「頑張ったのですね」

「はい!」


 その表情は褒められて嬉しいという感情がよく出ている。

 小柄という事もあり少女が褒められて喜んでいるようにしか見えない。

 これがポラリスのトップ?

 本当な別の奴が教皇なんじゃないか?


「大罪人ナナシ。私からあなたに質問させていただいてもよろしいですか?」

「ええどうぞ」


 聖女から紅茶をもらい、一口飲んでから聞く。


「大罪人であるあなたは何故コウネリウスを殺さず生かして返してくれたのですか?」

「……」

「昔の文献を読んで知りました。あなたは自身の邪魔となるものであれば女子供、老人であろうとも容赦なく殺してきたと聞いております。そして気まぐれに貴族の女性を犯したり、各国の宝を奪っていった。そんなあなたが何故コウネリウスを生かすのです?」

「その理由はご自身でお考え下さい」

「なりほど。やはりコウネリウスは利用されているのですね。魔法での異常は見られませんでしたから、おそらくスキルによる力でしょう。魔法は得意ではない、もしくはバレやすいと思って利用していないのどちらかでしょう」


 …………やはり見た目通りと言う訳ではないか。

 でもその方が俺もやりやすいし、分かりやすい。


「生かした理由としては……やはりこちら側の情報を手に入れるためでしょうね。彼女に付けていた隷属の首輪が機能していませんでした。いえ、効果は発揮されているものの、私に繋がっていないというべきでしょうか」

「お察しがよいようですね。ええ彼女は隷属されていると判明したのでそちらを利用させていただいてます」

「だと思いました。最近彼女がどこで何をしているのか他の方法で調べないと分からないので困っています。隷属権をお譲りいただけませんか?」

「その場合ですと他の方との隷属権と交換させていただきたいのですが。もしくは他の物を隷属させる、などの形でもよいのですが」

「それは難しいですね。彼女と同等の者を用意するのも難しいですし、それ以上となった場合とても提供することは出来ません。この話はなかったことにしましょう」

「ええ。それがよいかと」


 また紅茶を飲んで一服していると教皇は俺に聞く。


「所で大罪人ナナシは――」

「ナナシか大罪人のどっちかでいいですよ。一々つなげて言うのも面倒ですよね」

「ではナナシ様とお呼びしましょう。その代わりそちらも普段通りにお話しください。その方があなたの事がよく分かります」

「そりゃどうも。敵のナンバー2に敬語ってのは違和感があったんだ」


 俺は軽く言ったが教皇は俺の言葉に違和感を感じたようだ。


「ナンバー2ですか?」

「ああ。まぁ表向きはあんたがラスボスの位置にいるべきなんだろうけど、俺が狙っているのは裏ボス。つまりお前達が崇める神様を狙ってるんだ。お前は正直生き残っても問題ない」


 俺がそう言うと教皇は少し驚いた後すぐに笑い出した。

 声に出さずに含み笑いを続け、ようやく落ち着いたのか小さく息を吐いてから言う。


「そうですか。あくまでもナナシ様の目的は我々が崇める神であり、私達は前座と言う訳ですか」

「ああ。でももちろんお前達は神の味方をしているから邪魔をするなら殺す。適当にな」


 殺すという言葉に強く反応したのは聖女。

 その時の恐怖からか細かく身体が震えだす。

 だが同時に股から女の匂いが強く感じられた。


「なんだ聖女。意外と図太いじゃん。俺に抱かれたときの記憶でも思い出したか」

「そ、そんなわけがないだろ!これは武者震いだ!!」

「そう言うなよ。俺の子供を妊娠してるくせに」


 俺がそう言うと聖女の顔は真っ青になった。

 今感じた股から流れる液体からの匂いと、ゆっくりとしたシスター服でうまく隠されてはいるが、『森羅万象』でほんの少し腹が出ているのが分かる。


 俺が聖女を犯したあの日、聖女に行ったのはただの性処理ではなく、本当に『色欲』を使えば妊娠100%を叩き出す事が出来るのかどうかの実験も同時に行っていた。

 ベレトが言っていた『色欲』の効果で性欲が強調されるのはすぐに分かったが、その後についてもかなり気になっていた。

 一応獣人の国で結果的に判明はしていたが、人間でも同じことが起こす事が出来るのか確かめた結果と言う奴だ。


 もしかしたら300年前に俺が犯した貴族の女の子達も全員孕んで俺の子を産んでいたらと思うと興奮する。

 そしてもしかしたら俺の血を引いた誰かが俺の事を殺しに来るかもしれない。

 と言っても人間からすれば300年も前なのだからじいちゃんのって言葉がいくつ付くか分からないくらい前のように感じる。


 だから確かに俺が孕ませたという事実を確認したかった。


 おそらく女としては最も屈辱的な行為だろう。

 戦場でただ生かされたのではなく、仲間を殺した相手の子を孕んだというのはきっと精神がおかしくなるほどの屈辱のはずだ。

 俺は男だからそう言った屈辱は理解できないが、自身の繁殖相手にふさわしくない者の子を産むのは大きなストレスになるのは確実だ。


 それでも堕胎しないのは女としての意地か、それとも子に罪はないという理性的な考えか。

 どちらにせよおろすかどうかは孕んだ者の選択肢に任せるとしか言いようがない。

 俺個人としては産んで育ててほしい所だが。


「順調に育ってるみたいじゃないか。ちゃんと俺の妻として迎え入れてやろうか?」

「誰が貴様を夫と思うか!!あの日の事はいまだに悪夢としてうなされる!!」

「それでも腹ん中の子、育ててくれているみたいで何よりだ」


 俺がそう言うと聖女は悔しそうに歯を食いしばりながら俺を睨み付けた。

 どうやら堕胎したいという気持ちはあるようだが、なぜしないのか分からない。

 そう思っていると教皇が口をはさむ。


「私達は堕胎する事は教義に反しますので出来ません。特に彼女は聖女として選ばれたのですからその拘束もより強いのです」

「ああ、宗教上の理由って奴か。それならこれ渡しておくよ。妊婦が飲むと堕胎する薬だ。風邪の初期症状みたいな副作用が出るが命に問題は出ない」

「っ!貴様は自分の子だと分かっていながら殺せというのか!?」

「そりゃ俺の子だって分かってるよ。でも生むのは女の自由だ。気に入らない男との子供だから堕胎するってのはあくまでも選択肢の1つ、俺は産んで赤ん坊の顔を見てみたいと思っているがお前がどうしても生みたくないって言うのであればそれを選択しても俺は文句を言えない。なんせ犯した張本人だからな」

「……では私が生んだ後はどうする」

「俺が引き取って育てる。生むのであれば、だけどな」


 正直ゲームという意識のままだったらこんなことは言わなかっただろう。

 だが今は現実であるし、俺の子供が生まれた後に死ぬというのは目覚めが悪い。

 だから俺が育てる。

 いずれではあるがレナ達にも俺の子を産んでもらう予定ではあるし、結婚して共に生きる事は幸福だと思う。

 だからあいつらがどう思うかは置いておいて、俺の子だから俺が育てる。

 ただそれだけの単純な理由だ。


「ナナシ様は意外と子育てに興味があるのですね。そして責任も取るつもりだと」

「責任とは違うと思うがな。俺は聖女の事を孕ませたことを謝るつもりはないし、結婚する気もない。ただ子供だけ欲しいだけだ」

「本当にナナシ様は不思議ですね」


 教皇はそう言った。

 何を不思議と言っているのか分からないが、本当にこのお茶会そのものも不明だ。

 何らかの時間稼ぎのようでもないし、まさか本当に俺が武器を破壊したり盗んだりするのを止めるため、だったりするんだろうか。

 聖女の方は絶句しているし、だがそれでも薬を手にすることだけはしない。

 そして腹を抱きしめながら言う。


「絶対に貴様の言葉には耳を貸さない。この子は産むし私が育てる!貴様には渡さない!!」

「そうか。それは残念」


 そう言いながら茶を飲むと今度は教皇の方から聞いてきた。


「私からも質問良いでしょうか」

「俺に答えられるものなら」

「では質問を。悪い事ってそんなに楽しい事ですか?」

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