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別行動

 それぞれ部屋を勝手に決めると俺はサマエルを読んで確認したかった事を聞く。


「サマエル。お前って『傲慢』を持っているんだよな」

「はい。あまり使っていませんが確かに『傲慢』のスキルを持っています」

「俺が死んでいる間に現れた新しい教皇は今いる教皇だけらしいじゃねぇか。どうやって手に入れたんだ?」


 俺が確認したかった事とは『傲慢』の取得情報だ。

 俺はてっきり教皇をぶっ殺すことだとばっかり思っていたが、そうでなかったとすればどんな取得条件だったのか気になる。

 なのでその答え合わせとしてサマエルに確認しておきたかった。

 その質問に対しサマエルは納得したように言う。


「なるほど。それなら確かに少し訂正がありますね」

「どんな訂正だ」

「『傲慢』のスキルを手に入れる条件は教皇を殺すではなく、スキル『神託』を持った者の殺害がスキルの取得条件だったようです」

「『神託』?」

「簡単に説明すると、神の言葉を聞く事が出来るスキルのようです。本来は自身と波長の合う神の言葉を聞く事が出来るできるスキルと言う物のようですが、最近は光の神によって人間達に干渉しているので、どうしても光の神の言葉が聞ける者ばかりになってしまうようです」

「そんな事情があったのか」

「はい。それからですがポラリスの先代の教皇が死ぬ前に必ず次の教皇を光の神から聞き、そのものを次の教皇に育ててきたのでご主人様の誤解も仕方ないと思います」

「なるほどね……『神託』も所詮スキルか。色々納得」

「その『神託』も100年に1人有しているほどのレア度なので光の神が『神託』所有者を独占していた、という事にもなります」

「了解。つまりサマエルはその神託持ちを殺して『傲慢』を手に入れたわけだ」

「そうなります」


 色々知りたい事は分かった。

 それにそのスキルの効果内容が本当なら非戦闘型にもほどがある。

 例え神様からのアドバイスが聞けたとしても必ずその通りに行動するとは限らないし、神の想定通りに動くとは限らない。

 だから教皇として君臨するまでは誰にも知られなかったのだろう。

 そして俺も『神託』を持っているからではなく、教皇だからと勘違いしたわけだ。


「ありがとなサマエル。おかげで色々納得した」

「ありがとうございます。ですから……その……」

「あ~分かってる。今夜抱くから身体綺麗にしておけよ」

「!はい!!」


 サマエルの奴は本当に変わらないな。

 でもそろそろ本格的にポラリスを潰す準備をしないといけない。

 まずはポラリスに行ってサキュバスたちを女帝たちに憑依させるか。

 そこで定期的に情報を共有できるし、隷属化限定ではなく様々な方向から情報を手にする事が出来る。

 まぁ少し危険を伴うが、このくらいならいくらでも逃げられる。

 ついでにあの危険物取り締まっている図書館の地下から色々と奪っていくか。


「ただいま~」


 予定をある程度決めるとユウ達が帰ってきた。

 生理用品を買いに行っていたユウ達に俺が同行する理由もなく、サマエルと話していた。

 出迎えるとユウは袋を掲げながら言う。


「手に入れてきた!タンポンとナプキン!!」

「掲げるようなもんでもないと思うぞ。あと普通は嫌がるもんだと思うんだけどな」

「何が?」

「生理用品掲げるの」

「そうなの?」


 ユウがレナに向かって聞くとため息をつきながら言う。


「淑女としてはしたないわ」

「はしたないって……自然な事なんでしょ?」

「そうでも男性の前で堂々というものではないの」

「でもこの国の人達は普通に話してたけど……」

「それはこの国限定なの。他の国じゃあまり大声で言わない事。いいわね」

「……は~い」


 ユウは納得がいかなそうだったが仕方なくうなずいた。

 この国が特殊なのは知っているが、性に関する固定概念が薄いのはそんなに悪い事ばかりではない。

 この国じゃ女性が月経で体調不良を起こした時、近くにいる男性がそう言ったとき用の薬を買って持ってきてくれたりする。

 仮に元の世界、日本で行おうものならセクハラだなんだと言われる可能性が高い。


 そう言えば前に女性がぶっ倒れた時に男性は何もしなかったって言うニュースがあったような……

 男性側の意見として女性に触れたらセクハラやら性的暴行だと思われるのが嫌だから何もしなかったと言っていたらしく、その女性は結局見捨てられて死んだとか。

 そういう問題はこの国ではなさそうなんだよね~。


 なんせマジでこの国は男女平等だから。

 男が女を求めるように女が男を求める事は普通だし、そして性別に関係なく誰かを助けようとする。


 さっきのぶっ倒れたって話を詳しくすると、女性が倒れた際にAEDが近くにあったけど男性はそれを使わなかったことで女性が死んだっという話になってしまったかららしい。

 AEDを使っていれば救急車が来るまで生きていた可能性が高かったのが余計に話題性を高めてしまった。

 AEDを使用する際にはどうしても地肌にシールみたいなのを張らないといけないらしい。

 もし仮にその途中で女性が元気を取り戻し、その状態だけを見られたら気絶しているときに服を脱がされたと思われるのが怖かったそうだ。

 そのため裁判所もこの主張に対して吟味しているとか。


 で、この愛の国の場合マジで男女平等がほぼ成立しているので医療行為時にセクハラだー、性的暴力を受けそうになったーみたいなことはない。

 逆に病気のふりをして介抱してくれた相手をベッドに誘い込み、介抱してくれたお礼っという事で抱いたり抱かれようとする連中の方が多い。


 まぁこの世界でも愛の国限定だけどな。

 それに男の方が優れてる、女の方が優れてるって喧嘩はどこにでもあるしな。


「とりあえずお前ら、このあとちょっと説明するから会議室集合な」


 そう言って俺は先に会議室に向かう。

 他のみんなは買ってきた物を部屋に持って行ったあと、俺はみんなに言う。


「1週間後、俺は1人でポラリスの首都に向かう。俺が帰ってくるまでここで待っていてほしい」

「ダメに決まってるでしょ!!何言ってるの!?」


 すぐに反応したのはユウだった。

 もちろん不満に感じているのは全員であり、特に強く怒っているのがユウだ。


「今までみんなと一緒に居たのに何でそんな事言うの!」

「ポラリスの動向を知るためだ。一応女帝とその部下を隷属させて情報を得るつもりだが、それだけじゃ足りない。だからベレトの部下であるサキュバス達に協力してもらう事にした。女帝と部下達に『憑依』してもらって情報を探ってもらう。特に女帝は地位の高い所にいて、教皇の護衛として隣にいる事が多いのならこれ以上の情報を得る場面はない。だからここで仕掛ける」

「サキュバスさん達に頼むだけなら――」

「サキュバス達だけじゃ無理。どうしても運び役が必要だ。そしてユウ、お前は狙われている。そのお前を狙っている本拠地にお前を近づけさせるわけにはいかない」

「でも――」

「でもじゃない。隠密行動をとるなら人数はできるだけ少ない方がいい」

「あたしが暴れて気を引こうか」

「ジラント。今回は無し。無駄に騒動を起こせば細かいチェックが入る。その時に女帝にサキュバスが『憑依』しているだなんてバレたら意味がなくなる。だから今回はそう言うの無し」

「しかし護衛もなしで行くのはマスターが危険すぎませんか?」

「俺の逃げ足の速さを舐めるなよ。元々『傲慢』で転移も可能なんだ。逃げるだけならいくつも手段がある。そう言う意味でも俺が行くのが1番いいんだよ」


 俺がそう言うと何とも言えない空気が流れる。

 おそらく納得は出来ないが理にかなっているとは思っているんだろう。

 それにこれはちょっとした実験だ。


 光の神は確実にユウを狙ってくる。

 ユウを確実に奪う絶好の機会と言えば俺がユウから離れる時だ。

 そしてサマエルを使うつもりだとすれば周囲に誰もおらず、ユウとサマエルだけの状況のはず。

 その状況をわざと作り出し、光の神がどのような行動をとるのか試してみたいと思う。


 もちろんただユウを奪われるつもりはない。

 レナとベレトにサマエルの事を気を付けておくよう言っておくし、決してユウとサマエルの2人だけにしないつもりだ。

 まぁそれでもまかれて2人っきりになってしまったとしてもユウは俺と隷属関係にある。

 ぶっちゃけどこで何をしているのか分かる。

 だから愛の国から不審な形で出ていけばすぐに分かるし、助けに行ける。

 問題は例の儀式とやらがどんなもんなのか分からない事だが……それも探ってこよう。


「だから俺は1人でポラリスに向かう。これは決定事項だからみんなで仲良くお留守番して待っててくれ」


 俺はそうわざと明るく言ったが誰もうんとは言わなかった。

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