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帰り道と精霊の復習



「ロンルカスト、さっき話に出てきた、“南の講義”って何のことですか?」



 離れまでの家路の途中、気になっていたことをロンルカストに聞く。レオ様には、とりあえずイエスマンとして返事をしたが、南の講義って何のこっちゃ。



「はい、南の講義とは、魔力の学び舎のことです。同じ年にエーダフィオンの廻りを外れたものが集い、精霊との相性や家系に合わせた座学や実技を習得致します」


「あのぉ、よくその”エーダフィオンの廻り”っていう言葉を聞くのですが、いつも意味が分からなくて」


「そうですね、良い機会ですので、復習致しましょう」


「ふっ復習…… 」


「はい、ミアーレア様は、最初に生まれた2柱と、その後に生まれた5柱の精霊の名を覚えていらっしゃいますか?」


「うっ、ええーっと、陽のイリスフォーシア、月のセリノーフォスが最初で、あとは…… 火のフォーティアーノ、土のエーダフィオン、あーうぅー……そうだ! 水のオケアノードル、風のアエラスティウスと、陰のスコダーティオ?」


「はい、知識が身についていらっしゃるようで安心致しました。それでは、エーダフィオンがどんな力を持つかお聞かせください」


「んー、エーダフィオンは土の精霊なので持っているのは、確か守りと……」


「守り、と?」


「あぅー、守りと…… んーっと、あっ! 命を生み出す力?」


「正解でございます。エーダフィオンは、命を生み出す力を持ち、同時に全ての命の摂理を司っています」


「ふぅ。……うん? 命の、摂理ですか?」


「はい。彼女は自身の枝を離れ、廻りから外れたものに生を与えます。またその生涯を終えたものたちには蔓を伸ばし、迎え入れることで再び廻りに戻すのです」



 なるほどと、心のメモに書き書きする。エーダフィオンは、輪廻転生の概念みたいなものっと。ふむふむ、理解した。

 そして南の講義は、同じ年に廻りを外れたものが勉強しに行くところだから、同い年の子が集まる魔力の学校みたいなものなんだね。


 学校、学校かぁ……ちょっとドキドキする。友達100人、できるかなぁ。あっ、そうだ。ついでにさっきのルディーとレオ様の喧嘩の内容も聞いてみよう。



「エーダフィオンの廻りとは、そういう意味だったのですか。あの、他にも分からない言い回しがあって、例えばさっきのーー」


「ミアーレア様。先ほどのお話に戻りますが、ミアーレア様は、春の講義に向けて優先して身につけておかねばならないことが沢山ございます」


「でも、ロンルカスト! 私いつも会話の意味が良く分からなくてーー」


「精霊を使った言い回しについては、必要な基本的知識が身につきました後に、おいおい、お勉強していきましょう」



 にっこり笑顔のロンルカストに、正論で諭されて何も言えなくなる。むぅー! 大人の会話は、子供にはまだ早いと言われているみたいだ。



「私、どの精霊と相性が良いのかなんて分からないのですが、南の講義では、何を習得すれば良いのですか?」



 ツンと鼻先をあげて拗ねる私に、苦笑しながらロンルカストが答える。



「ご安心ください。春に先立ち、精霊との相性を確認する儀式がございます。そこで使いやすい魔法の見定めが可能です」


「その儀式で分かった自分と相性の良い講義を取ればいいのですね」


「はい。南の講義では、7人の講師がそれぞれ7柱の精霊の講義を受け持ちます。相性が判明致しましたらどの講義をとるか決めましょう」


「分かりました。あと、私には関係ないとは思いますが、最初に言っていた家系に合わせて講義を取るとは、どういうことですか?」


「そうですね、精霊との相性は遺伝的に親から子へと受け継がれることが多いです。そのため例えば古くより騎士の家柄ですと、騎士団へ入るため、火や風の講義を取るものが多く、側近ですと月や土の講義を受けたいと思うものが多いかと存じます」


「うーん、そういうことですか」



 属性が分からないことには始まらないけれど、私は何の講義を取ればいいんだろう。

 家は無いようなものだから、家柄は気にしなくてもいいんだろうし。なんか、進路に悩む高校生みたいだ。

 そういえば、私って、何で薬剤師を目指したんだっけ? 最近、前世の記憶がどんどん薄くなってる気がする。ちょっと怖い。


 んー! 思い出せ、思い出せ…… そうだっ! 確か小さい頃、とっても優しい薬剤師さんに会ったんだ! そうそう、それで、その人みたいになりたくて、薬学部を目指して、うん。だんだん、思い出してきた。

 でも、家庭の負担にはなりたく無かったから、奨学金で授業料が免除される特待生を取ろうと頑張って、あー、あの時は死ぬほど勉強したなぁ。まさか、働き出して、三年と経たずにその資格を生かせなくなるとは。うぅっ、助成金を出してくれた団体に申し訳なさすぎる……



「ミア、せっかくあいつの部屋を出たのに、勝手に自滅して落ち込まないでよ。僕まで、引っ張られるんだから」



 自責の念に押し潰されながら下を向く。不満顔でこちらを見上げながら歩くルディーと目があった。



「 ……ルディーは、私が何を考えてたか分かるの?」


「一度繋がった名残なのか知らないけど、僕らにはまだ回路が残ってるみたいだね。まぁ、そんなの無くても、今のウジウジしたミア顔を見れば、誰だってわかると思うけど」


「ウジウジって……ひどい。 んー、でも、私はルディーの考えてることなんて分からないよ?」

 

「僕は土持ちだからね。駄々流しにしているミアとは違って、自分の感情を守るくらい簡単簡単ー」


「むぅー! そういうルディーだって、ピラフィティーリには、簡単に私との穴を空けられてたじゃない。あの時ご自慢の守りは、どこに行っちゃってたの?」


「あいつは、ほとんど天災みたいなものだよ! あー、思い出しただけでも、むかつくっ!」



 ルディーは、前足で地面をゲシゲシと蹴る。鼻にシワを寄せながら、足先に付いた土をピピッと払った。

 私はというと、少しご機嫌だ。ふふっ、珍しくルディーを言いまかすことが出来た。


 ピラフィティーリさーん、聞こえていますか。ルディー、すごく怒ってます。もう、ちょっかいはかけない方がいいと思いますよー。ついでに私も、もう迷子になるのは怖いので、悪戯はご勘弁いただけると嬉しいです。


 親切な私は自分が水をむけたことを差し置いて、悪戯好きの彼に向かって、心の中で呼びかけた。



「だから、ミアがそういうことするから、あいつが面白がって、ちょっかいをかけて来るんだよ!」


「えっ!? そ、そっか、ごめんなさい…… 」



 何を考えているか筒抜けなルディーに、良かれと思ってやったピラフィティーリの心に呼びかける事を逆効果だと怒られる。

 ご機嫌だった私の心は、余計なことをしてしまったばかりに、一瞬にしてしょぼんと萎んだのだった。



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