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かろうじて致命傷。

0725修正

ところで。

 別に実体験から学んだ話、というわけではないのだが。

 喧嘩において、実際に強いのと同じぐらい「強そうに見える」というのが大事だということをご存知だろうか。

 いかに突っ張った悪ガキだとしても、実際に殴り合うような喧嘩に発展することは意外と少ない。どちらかというと「痛い目にあわせんぞ」という脅しでもってお互いに牽制しあいながら要求を通そうとすることの方が多いのだ。実力行使はわりと最終手段だ。まあ、それまでに軽く小突いたりする程度のことはあるが、それにしたって、その一発で相手を従えようとしての行為というよりも、これから先に待つであろう暴力を相手に想像させるための演出、といった意味合いの方が強かったりする。つまり何が言いたいかというと、喧嘩においては先に相手を威圧したもん勝ち、といった部分が大きいということだ。だからこそ「どこどこ高校で一番強い誰それ」だとか、「その誰それに勝った誰それ」なんていう噂が語り継がれているのだろう。

 

 もう一度言っておこう。

 実体験から学んだ話、というわけではない。

 別に俺が喧嘩に明け暮れるやさぐれた青春を過ごしたわけではないったらない。念のため。ただちょっとばかり、巻き込まれたことが二、三度ぐらいあったかなーというぐらいだ。

 

 まあ何が言いたいかというと。

 王城に乗り込んだ俺たちは、その装いからセントラリアの貴族たちに先制攻撃をキメることに無事成功した、ということである。

 

 俺とイサトさんがレティシアを伴って広間に足を踏み入れたとたん、会場から漏れたのはほう、と息を呑む感嘆の声だった。

 もともとモンスターに襲われた飛空艇を救った実力の持ち主であることや、マルクト・ギルロイの引き起こしたトラブルの尻拭いを財力面でも引き受けたことは知られている。それに対してセントラリアの貴族は俺たちを不慣れな場(アウェイ)である舞踏会に呼び出すことで有利な立場を作り出そうとした。


 が。

 そんな彼らの目論見を、イサトさんはいともあっさりとぶち壊してしまった。


 それこそ喧嘩における「相手を威圧したもん勝ち」の理屈だ。

 銀の髪に金の瞳、なめらかな褐色の肌を繊細な白のドレスに包んだイサトさんは、その場にいる誰よりもわかりやすく綺麗だった。美しいものには力がある、という言葉通り、イサトさんはその美でもってその場の空気を呑んでしまったのだ。俺にはとても真似できない。大剣ぶんまわして庭の噴水あたりを一刀両断したならば似たような空気を作ることはできるかもしれないが、あまりにも似て非なるアレすぎる。


 ゆっくりとわざとらしく泰然とした様子で周囲の様子を窺う。

 会場となっているのは、天井が高く作られた吹き抜けのホールだった。

 緩やかな弧を描く階段がホールの正面から二階へと伸びていて、その階段脇には管弦楽団が控えている。セオリー通りに事が進むのならば、おそらくあの階段の上から王様が現れるのだろう。

 まだ音楽は始まっておらず、すでにホールに集まっていた貴族たちはシャンパングラスを片手に壁際で思い思いの相手と会話を楽しんでいたようだ。俺たちも一度壁側に下がるべきだろうか。

 そんな思惑を確認すべく、レティシアに視線を向けかけたところで――…まるで見計らっていたかのようなタイミングで管弦楽の最初の一音が滑り出した。澄んだ旋律がホールの中で反響しながら広がっていく。ちらちら、と貴族たちが楽団の方へと視線をやり、どうしようか迷うようにお互いのパートナーと視線を交わしあっている。


「…………」

「…………」


 ちら、とイサトさんを見やる。

 イサトさんは、微かに口元に不敵な笑みを浮かべたようだった。

 どうやら、考えていることは同じらしい。


「レティシア、ちょっと行ってくる」

「はい……!」


 俺は一言レティシアに声をかけると、イサトさんの腰を抱くようにしてホールの中ほどまでエスコートした。これまた先制がうまく決まったのか、俺たちの後を追うようにしてホールに出てくるカップルはいない。良かった。ダンス自体は練習のおかげである程度こなせるようになっているのだが、自分たち以外に踊るカップルがいる場合での練習はほとんど出来ていないのだ。踊りながら進行方向にいる別のカップルを避けたり、万が一ぶつかったりぶつかられたりした際のリカバリーなどにはいまいち不安が残る。そんなわけなので、まさに攻撃は最大の防御との先人の言葉を実践する形での先制だ。

 

 シャンデリアのきらきらとした光の下で見るイサトさんは、先ほどまでとはまた少し違ったように見えた。すっきりとした綺麗なデコルテ、鎖骨の上に乗るように上品なパールのネックレスが輝いている。イサトさんの肌が褐色だからなのか、澄んだ石よりも艶やかなパール系の石が良く似合っている。

 

 右手はイサトさんの腰に添えたまま、左手を持ち上げるとイサトさんが慣れたように手を重ねてくる。そう。慣れている。いつも通りだ。練習のときと、何ら変わらない。落ち着け、俺。すう、と深呼吸を一度して、口を開いた。


「いち」

「にい」


 流れる音楽の拍を数える。


「さん」


 3、をカウントする俺の声に合わせて、イサトさんの上身がすぅとしなやかに反る。そして。


「「いち」」


 次の「1」のカウントで、俺とイサトさんは大きく一歩を踏み出して流れる旋律に乗った。ホール内を反響するメロディは、こうして聞くとまるで頭上から光とともに降り注いでいるかのようだ。踊り始めるまで頭の中にあった足型のことだとか、今現在俺たちをガン見しているであろう貴族連中のことだとかが頭の中から抜けていく。ただ、音楽に合わせて体が勝手に動く。くるり、ひらりとターンを決めるたびに、イサトさんのドレスの裾が華麗にたなびく。それがとんでもなく綺麗で、もっと見ていたくて、それだけで頭の中が満たされる踊っている自分と、それを見ている自分とがまるで別々に存在しているかのような感覚に襲われる。

 

 やがて――…くるりひらりとステップを踏んでいるうちにいつの間にか音楽は終わっていた。あっと言う間の五分間だった。まだ終わった、という実感がわかず、なかなか動く気になれない。


「…………」

「…………」


 ホールの中央、寄り添ったままゆっくりと視線を重ねる。

 余韻を吐き出すように、は、と小さく吐きだした息までが、重なりあった。


「秋良青年」

「ん?」

(しめ)よう」

「へ?」


 (しめ)、とは。

 俺が聞き返すより先に、イサトさんは繋いでいた左手を軸にくるりと優雅なターンで俺の横に並んだ。そして、反対側の手でドレスの裾を軽く持ち上げ、すっと膝を曲げての辞儀。

 絶対それ練習してただろ、と言いたくなるほど見事な貴婦人の礼だった。

 一方の俺はといえばイサトさんのお辞儀に合わせて軽く目を伏せる目礼がやっとである。呼応するように鳴り響きだした拍手の音の中、俺たちはゆっくりとレティシアの待つ壁側へと下がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからも休憩を挟みつつ、何曲か踊った。

 二曲目からは俺たち以外の貴族たちも交じってきたので、最初の一曲ほど本気は出さず、軽く流す程度だ。ゆらゆらと揺れるようにステップを踏み、音楽に合わせて穏やかに流れる。


「結構見られているわりに、声、かけられないな」

「様子見、って感じなのかもな」


 こそり、と踊りながらイサトさんと言葉を交わす。

 好奇心混じりの視線を肌で感じはするものの、今のところ俺たちに直接声をかけてくるような挑戦者はいない。

 まあ、これもレティシア曰く「本当の意味でまだ舞踏会は始まっていない」からなのかもしれない。何せ、主催者がまだ姿を現していない。

 

 と、そこで。

 

 穏やかに流れていたワルツの曲が、キリの良いところでふっと止んだ。

 その代わり、勇壮なラッパが鳴り響く。

 その音にはっとしたように周囲の貴族たちが階段を正面に次々と膝をついて頭を下げて行く。世界観が全く違うというのに、思わず水戸のご老公が印籠をかざすシーンを思い出してしまった。

 いよいよ、王様のお出ましらしい。

 

 確か名前は、シェイマス・なんとか・かんとか・セントラリア。

 舞踏会に臨む上で事前にレティシアから懇々と説明を受けてはいたのだが、間に挟まるこまこまとしたミドルネームが記憶から抜け落ちている。基本的にフルネームで呼ぶような機会はないと言われているので、問題ない……とは思う。

 

 俺とイサトさんはちらっと視線を合わせて、周囲の貴族たち同様に膝をついて顔を伏せた。

 頭上からかつん、かつん、と緩やかな足音が階段を下って降りてくるのが聞こえる。踊り場まで到達したところでその足音が止まり、穏やかな声が響いた。


「良い、皆の者楽に」


 その声に、周囲の貴族たちが立ち上がる。

 一拍遅れて、俺とイサトさんもそれに倣って身体を起こす。

 この時気を付けなければいけないのは、立ち上がることは許されてもやはり高貴な身分の相手に直接視線を向けてはいけないということだ。正面から視線を交わすのは、相手の身分によっては失礼にあたる行為らしい。

 不躾にならないよう顔は伏せたまま、ちらりと様子を窺う。

 ちょうど俺たちの正面、階段の踊り場に一目見て王様だろう、とわかる豪奢な身なりの男性が立っているのが見えた。金茶の髪に、形よく整えられた同じ色の髭。一段高いところから俺たちを見渡す双眸は鮮やかなブルーだ。年の頃は、40代後半といったところだろうか。アニメ映画で見る王子様がそのまま年を取ったような風貌だ。

 

 少し、肩透かしを食らったような気がした。

 

 一国の王というだけあって、俺はもっと只者ではない感じの人物が出てくるのではないかと思っていたのだ。確かに気品はある。だが、それだけだ。勝手ながら、こう王様というだけあってきっと何かただ人とは違うオーラを背負った人物が現れるのだろうと身構えてしまっていたのだが、どうやら期待しすぎてしまっていたらしい。

 

 シェイマス陛下は、ゆっくりと俺たちの前までやってくるとそこで足を止めた。


「そなたらが、先日セントラリアを救ってくれたという冒険者らか」

「はい」


 失礼のないよう、顔は伏せたまま返事を返す。

 いかに身分の枠組みの外側にいがちな俺らとはいえ、さすがに王様相手に失礼を働くのはまずい。この辺りの作法は、事前にレティシアに習っておいたので致命的な失敗をやらかす心配はたぶんない……はず。きっと今頃レティシアもヤキモキしながら後ろの方から俺たちを見守ってくれていることだろう。


「セントラリアの民に代わり、そなたらに礼を言おう」

「いえ、身に余るお言葉です。我々はやるべきことを果たしたまで」

「この度も、獣人と人の間の不和を解決すべく尽力してくれたとか。先の飛空艇のことといい、何か褒美を与えなければなるまい」

「…………」


 俺はそこで、ようやく顔をあげた。

 一段高いところから俺たちを見下ろすシェイマス陛下の表情は穏やかだ。

 薄く笑みを浮かべたその顔から、思惑を読み取るのは難しい。こういう腹芸が上手そうなところは、ちょっと王族らしいと思う。


「では陛下、一つだけ私の願いを聞いてはいただけないでしょうか」

「申せ」

「陛下もご存知の通り、今回の一件では獣人たちが苦境に追い込まれております。どうか、彼らにこれまで以上の心配りをお願いできませんでしょうか」

「……わかった、約束しよう」


 俺の言葉に、陛下が重々しく頷く。

 この当たりのやりとりは、先にイサトさんやレティシアと相談済みだ。

 特に陛下に申し出てまで欲しいものはないし、だからといって「お前がくれるもんで欲しいもんなんてねーし」とはっきり言ってしまってもカドが立つ。それで話し合った結果がこれである。


「だが、私が臣下の民に気を配るのは当然のこと。何か他に望むものはないのか」

「いえ、陛下のお心配りだけで十分です」


 ここまでは打ち合わせ通りだ。

 俺はそのまま視線を伏せたまま陛下の視線がそれるのを待っていたわけなのだが……ふっと、陛下はそんな俺の様子に少しだけ面白がるような笑みを浮かべたようだった。


 ん?


「そなたたちはしばらくセントラリアに滞在しているのだろう?

では、その間に褒美を考えると良い」

「ええとそれ、は」


 逆を言うと、褒美を貰うまでセントラリアから離れられない、ということになるのではないだろうか。

 俺が慌てて言葉を続けるよりも先に、シェイマス陛下は話はそこまでというようにばさりとマントをなびかせた。

 その音に、再び貴族たちの視線が陛下へと集まる。

 それが合図だったように、音もなく控えていた給仕たちが陛下や俺たちの元へと淡い金色の液体が満ちたグラスを運んできた。見れば、俺たちの後ろに控えていた貴族たちは皆すでにさりげなくグラスを手にしている。

 陛下はすっと手にしたグラスを掲げて口を開いた。


「新たなる客人を迎え、皆今宵は存分にセントラリアの華やかな夜を楽しむが良い!」

 

 そして――…宴が本格的な始まりを迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予想外だ。

 これはちょっと予想外だ。

 舞踏会において、イサトさんが貴族の男どもに囲まれる事態というのは予想していたわけなのだが、まさか俺までその対象になるとは思わなかった。

 と、言っても俺まで貴族の男に囲まれているわけではない。


「どうか私と一曲おつきあいいただけませんか?」

「うちの娘と一曲どうです?」

「あら、私の方が先に声をかけましたのよ?」

「ダンスよりも飲み物でもいかがです? あちらに美味しいシャンパンがありますの。エスコートしてくださいます?」


 俺の周囲に包囲網を完成させているのは、手首に花飾りのついてない女性陣である。それが口々に誘いの言葉を口にしているのだから、もうわけがわからない。皆競うようにきらきらしているせいで、だんだん目が痛くなってくる始末だ。本当なんだこれ。人間、人生で三度モテ期が訪れるというが、俺は一生における三回分を今ここで使い果たしているような気がする。


「レティシア、レティシア」


 華やかな囲いを何とか突破して、すみっこで苦笑しているレティシアへと声をかけた。


「アキラ様」

「なんだこれ、どういうことなんだ」

「どういうことも何も……、アキラ様もイサト様も、現在セントラリアでは時の人ですから」

「俺も、なのか」


 思わずそんな風に呟くと、何故かレティシアに心底呆れたといった顔で見られてしまった。

 

 いや、イサトさんが持て囃されるのはわかっていたのだ。綺麗だし、美人だし、それでいて人柄もよく、冒険者としての腕も良い上にこの世界では珍しいダークエルフだ。そんなイサトさんに近づきたがる男は多いだろう。


 だがその一方で俺は、確かに冒険者としての強さは飛び抜けているかもしれないが、それだけである。こういった世界では重要視されそうな家柄や血筋が良いわけでもなく、むしろこの世界においてはどこの馬の骨とも知れない不審者ぎりぎりだ。それでいて金だけは持っている、という状態なので、得体が知れないことこの上ない。俺が親だったらそんな胡散臭い男を娘に近づけたくないと思うし、俺が女であっても警戒する。

 だというのに、そんな俺の常識はどうやらこの世界の貴族たちには通用しないようだった。

 レティシアは小さく周囲に聞こえない程度に声を落として口を開いた。


「アキラ様はご自分を過小評価しすぎです。アキラ様はセントラリアを二度に渡って救った英雄なんですから」

「って言っても、バックボーンが何もない男とか得体が知れなさすぎないか?」

「そうですか?」


 レティシアは俺の言葉がピンと来ていないのか、ゆるく首を傾げている。


「でも……偉業を達成することで王族の目にとまり、取り立てられる方もいますから」


 そんなことを言いつつ、レティシアはちらりと視線を階段近くで歓談している人垣の方へと視線を向けた。俺も、釣られたようにそちらへと目を向ける。人垣の中心にいるのは、他とは少し変わった身なりの壮年の男性だった。俺や、その他の貴族のようなタキシードではなく、詰襟にも似た黒衣の上から鮮やかなショールを首にかけている。


「あそこにいらっしゃるのは、司祭長様です。教会と王族の承認があれば爵位の授与もありえますし――…たぶんそう考えているのは私だけじゃないと思いますよ」

「まじか」

「はい」


 どうやら、俺が思っていたよりもこの世界は「成り上がり」という言葉に現実感が伴う実力主義で成り立っている模様。そう考えると、貴族の女性たちが俺を放っておかないのも理屈としては理解はできる……ような気がする。いわゆる青田買いみたいなものだろう。自分がその対象になっているという実感はわかないが。


「私……アキラ様がイサト様の心配ばかりしていたので、ご自分は上手に立ち回るつもりなのかと思っていました」

「いや、この事態は想定外だった」


 隣でレティシアが小さく笑う。

 そういえばイサトさんは、と見やればイサトさんもしっかり貴族の男性陣に囲まれているようだった。が、思ったより酷いことにはなっていない。貴族たちはお互いに牽制するように一定の距離を保って、和かに談笑しているように見える。

 ある意味女性陣の方が遠慮がないような気がするのは、俺が男でイサトさんが女性だからだろうか。

 と、そんな風会話を交わしていた俺たちの元へとすっと影が差した。

 

「先ほどから世話役の方とばかりお話しているようですけれど、何かお困りなのかしら?」


 うわ。

 豪奢な金髪を結いあげた美女が、妖艶な笑みを浮かべて俺を見ている。

 他の女性陣が遠巻きに見つめるだけでとどまっていた中、こうして自ら距離を詰めて声をかけてくるなんて、かなりアグレッシブだ。

 身に纏うドレスも深々とした胸の谷間を強調するかのようなデザインが、これまたアグレッシブ極まりない。

 つい、助けを求めるような視線をレティシアに向ける。


「すみません、アキラ様はこういった場に不慣れでして……」

「では、私がご案内いたしますわ」

「え」


 レティシアが俺を庇うように言葉を挟んでくれたものの、金髪美女のにこやかな言葉でもって蹴散らされた。彼女はすッと扇を開いて口元を隠して笑みながら、レティシアへと一瞥を流して口を開く。


「貴女はご遠慮してくださる?」

「……では失礼いたします」


 レティシアは申しわけなさそうな顔をしながら壁際へと下がっていった。

 少し離れたところから、気遣わしげに俺の様子をうかがっている。

 助けを求めたい気持ちはやまやまだが、こうなったら俺一人でなんとかするしかないだろう。よし。頑張れ俺。

 

「それで……何かお困りなことでも?」

 

 ぴしゃりと扇を畳んで、彼女が艶やかな笑みを俺へと向ける。そんな笑みからもいかにも貴族令嬢といった傲慢さがその滲んでいるようだ。ただ、その一方で悪い印象はないのは、彼女に俺に対する悪意がないからだろう。彼女の在り方はきっと貴族の女性の振る舞いとして正しく、それを傲慢であるかのように感じてしまうのは俺の価値観の問題だ。

 ……そうわかっていても、コワいものはコワいのだが。


「いや、どうもこういう場には慣れてなくて」

「そうでしょうね。私がいろいろと教えて差し上げます」


 ぞわぞわぞわ。

 教えて差し上げます、との言葉と同時に絡みつくように腕をとられて、背筋に謎の悪寒が走った。こんなことを言うと非常に失礼だが、頭から喰われそうというか、蛇に睨まれた蛙というか。ものすごく居たたまれない。叶うことならどうにかして逃げたい。

 俺がそんなことを考えている間にも、彼女は俺の腕を引いてホールの中央に向かって歩き出した。どうやら踊る気であるらしい。それはそれで構わないのだが、教えてくれる云々はどうなった。

 と、そこで。

 とん、と軽い衝撃が肩に。


「あ……」


 か細い声が耳を打つ。

 そちらに視線をやると、ぶつかった衝撃で零してしまったのか、淡い桃色のドレスに真っ赤なワインで染みを作って立ち尽くす女性がいた。

 しまった。


「ご、ごめん、大丈夫か? って、大丈夫じゃないよな」

「…………」


 茫然と視線を落とす彼女の姿に、周囲にいた貴族たちの間にもざわめきが広がっていく。周囲を見渡すものの、彼女のために前に出てくるような人間はいないようだった。素早く彼女の手首を確認。パートナーの存在を示す花飾りはついていない。

 

「誰か、呼んだ方が良い相手は?」

「…………」


 彼女は、俯いたまま静かに首を横に振る。

 世話役のような付き添いもいないのだろうか。

 腕を引いていた令嬢には悪いが、彼女をこのまま放っておくわけにもいかない。


「悪い、エスコートは他の人に頼んでくれるか?」

「……仕方のない方」


 もっとゴネられるかと思った、なんて言ったら怒られそうだが、俺の手を引いていた令嬢はそう言うと意外なほどあっさりと俺を解放してくれた。そんな彼女へと頭を下げて、俺は赤く染まったドレスに茫然と立ち尽くす女性の手を引いてホールを後にする。どこか人目につかないところに連れて行ってから、誰かクリーンの生活魔法を使える人間を探そう。イサトさんがスタッフさえ持っていたのなら頼むところなのだが、さすがに王城での舞踏会に武器を持ち込むことはできなかったのだ。

 誰か声をかけられる相手を探してきょろきょろしていると、逆にそちらの方から声をかけられた。


「どうかなさいましたか?」

「ああ、すまない。俺が彼女のドレスを汚してしまったんだ。どこか、人目につかない部屋はないかな」

「ああ、それではこちらに」


 声をかけてくれた給仕の青年に案内を頼む。

 彼が案内してくれたのは、舞踏会の会場から離れた塔にある部屋だった。客室の一つなのか、綺麗に整えられた部屋はまるでホテルの一室のようだ。

 

「すみません、本日お客様に解放している部屋がこちらしかなくて」

「いや、助かった」


 俺がそんなやり取りを給仕の青年と交わしている間にも、彼女は顔を蒼褪めた顔色で瞳を伏せたままだ。罪悪感に胸がキリキリと痛む。


「では、クリーンの心得のある人間を探して参ります」

「助かる」


 すぐに人が来るから、と彼女に声をかけようと振り向きかけたところで――…ぱさり、と音がした。


「?」


 何の音だ。

 音は、彼女の方からした。

 音の正体を確認するためにも振り返って。


「……!?」


 目玉が飛び出るかと思った。

 な、ななな、なんで脱いでんのこの人……!!?

 蒼白といっても過言ではない顔色で立ち尽くす彼女の足元に、薄桃色のドレスが蟠っている。背後の窓から差し込む月明かりに冴え冴えと照らされる華奢な白い体躯の陰影が妙に艶めかしくて、ごくりと喉が鳴った。


「ちょ、え……!?」


 慌てて手でも目を覆いつつ俺は体の向きごと変えて彼女から目をそらす。

 なんだこれ。

 今日何度目になるのかもわからない「なんだこれ」で頭の中がいっぱいになる。

 これはいったいどういう状況なのか。


「え、ええと着替えるなら俺は外に……!!」


 そんなことを裏返った声で言いつつドアノブに手をかけて、俺はドアノブがぴくりとも動かないことに気付いた。状況は全く掴めないものの、ものすごくマズい状況に追い込まれていることだけはわかる。

 ドアを壊す勢いでドアノブを揺するものの、不自然なまでにドアノブは動かない。ならば蹴り破るか、と思ったところで、ドアの外から面白がるような声が聞こえた。


「彼女はさ、ネパード侯爵家のご令嬢だよ。どうしても君と仲良く(・・・)なりたいって言うから力を貸してあげることにしたんだ」

「お前……ッ」


 ドアの向こうから聞こえる声に、聞き覚えがあった。

 変質者だ。

 イサトさんに子供を産んでくれないか、などと血迷ったことをのたまった男だ。まさかこんな形で接触してくるとは思わなかった。と、いうか。


「もしかしてさっきの給仕は……」

「うん。いやー気づかれなくて良かったよ」


 頭を抱えたくなった。

 いくら早く彼女を人目につかない場所へと焦っていたからといって、自分に声をかけてきた給仕があの男であることに気付かないとは思えない。と、いうことはまたも俺はこの男の幻術に引っかかったということになる。魔力関係のステータスを育ててこなかった報いをこんな形で受けるとは。くっそ。

 

「お前、何企んでやがる……!」

「怖い声出さないでよ。ただのキューピットだよ」

「嘘つけ!」

「いや本当だって。あ、大声を出しても無駄だよ。ここはホールからは離れてるし……それに何より、この部屋のことは皆知ってる(・・・・・)から。いやあ、君をここに縛ろうと皆なりふり構わないみたいだね」


 感心したような、嘲るような調子で男はペラペラと語る。


「それじゃあ、楽しんでー」

「おいコラ、ちょっと待て……!!」


 そんな言葉を残して、扉の外から人の気配が遠くなる。

 駄目元で肩から扉に体当たりをしてみたものの、びくともしなかった。これは物理的に閉じ込められているというよりも、何か魔法によって部屋ごと封じられていると見た方が良いだろう。マズった。本当にマズった。

 唯一安心できることがあるとしたら、イサトさんは大勢の人に囲まれたホールにいて、イサトさんに対してはあの男の幻術も通じない可能性が高い、ということぐらいだ。いくらあの男でも、王城の中、衆人環視の元イサトさんを襲うようなことはしないだろう。さすがにそうなれば城付きの騎士団が黙ってはいない。

 その一方で、当然不安はある。

 あの男は何のために今日この日、この場に現れたのか。

 俺への嫌がらせのためだけとは思えない。


「なあ、あいつは何者だ?」


 そう問いただそうと思わず振り返り、彼女の裸体が目に入って慌てて俺は再び彼女へと背を向けた。そうだ。こっちはこっちで大変なことになっているんだった。


「ええと、その。とりあえず服を着てくれないか」


 このままじゃ話も出来やしない。

 扉を向いたままそういう俺の背に向かって、静かに彼女が距離を詰めてくる。

 どうやら俺の言葉は届いていないらしい。

 密室で下着姿の女性に迫られる、なんて他人事なら美味しいシチュエーションですね、とニヤニヤできるかもしれないが、実際自分がされてみるととでもじゃないがそんな余裕はない。据え膳喰わぬは男の恥、なんて言葉が通用するのも据え膳の内容次第だということを思い知る。どんなご馳走であろうと、見ず知らずの相手からいきなり手づかみで差し出されては食べる気になるわけがない。むしろ超怖い。


「……私では、ご不満ですか」


 ぽつり、と小さく声が聞こえた。

 感情の抜け落ちたような、か細い声だ。

 同時に、背中に寄り添う柔らかな感触が伝わってくる。


 うわー。

 うわー。

 うわー。

 

 ご不満ではないが、大混乱だ。


「いや、そういうのじゃなくて……!!」


 俺は慌てて飛び退くように彼女から距離をとった。

 相手がモンスターか何かであれば、たとえ素手であっても嬉々として挑みにかかれるのだがさすがに下着姿の女性だとどうしたらいいのか。

 情けないと笑われてもいい。

 助けてイサトさん!!!!

 叫んで声が届くなら、叫んでる。

 そんな俺に向かって、彼女が淡々と口を開いた。

 

「私を哀れに思うなら、情けをかけてはくれませんか」


 静かに、か細い声音が告げる。

 何の感情も読めない声だ。

 からからに乾いた、砂のような声。


「…………」


 その声に、なかなかないシチュエーションに昂ぶりがちなテンションに水を差されたような気がした。どうもこれは、そんな甘酸っぱいイベントではないらしい。

 俺は一度視線を伏せたまま深呼吸すると、ゆっくりと顔を上げて正面から彼女を見据えた。俺をまっすぐに見つめる蒼の瞳に光はなく、ただただに無機質だ。それに気づくと、急に冷静になったような気がした。

 なだらかに隆起した胸、くびれたウェスト、柔らかく張った腰、そのどれもが女性性の象徴めいているのに不思議とそれが熱に繋がらない。

 彼女自身が俺を見ていないから、だろう。

 綺麗だとは思う。

 けれど、それだけだ。

 触れたいというような慾を煽られない。

 ただ綺麗な人形を見せられているような気持ちになる。


「…………」


 小さく、息を吐く。

 それから俺はそっとジャケットを脱ぐと、なるべく彼女を正視してしまわないようにしつつ、彼女の肩を包むように羽織らせた。触れてしまわないように気を付けたつもりではあったのだけれども、それでも微かに指先が肩を掠める。そのときだけ、彼女はひくりと人間らしく小さく震えた。

 俺の体格に合わせて作られたジャケットは、彼女が着ると膝のあたりまでをすっぽりとカバーする。これで少し話しやすくなった。興奮を煽られないとはいえ、さすがに下着姿の女性相手に会話を成立させるのは気まずい。前をしっかりとかきあわせてやれば、なんとか話をできる程度にはその肌を隠すことに成功した。彼女は視線を伏せたまま、俺の顔を見ようともしない。


「……なんていうか、さ」

「…………」

「誘惑したいならもっと開き直るべきだし、したくないことはしない方が良いと思うぞ」


 思わずそんなことを口にしてしまっていた。

 正直に言うのなら、少し気に障ったのだ。

 たとえば先ほど舞踏会の会場で俺に声をかけてきた令嬢が良い見本だ。

 彼女は自分の意思で俺に声をかけてきた。

 彼女自身がどういう思惑であれ、俺を籠絡してやろうと意気込んで声をかけてきたように見えた。

 けれど、今目の前にいる彼女は違う。

 蒼褪めた顔に、硝子玉のように虚ろな双眸。

 まるで、生贄に捧げられた乙女だ。

 嫌々俺に体を差し出そうとしているのがあんまりにもわかりやすすぎる。

 俺は生娘を求めて暴れる怪物か何かか。


「そっちの事情は全然わかんないから、好き勝手なこと言うけど。そんな嫌々迫られても嬉しくない」


 女さえ当てがっておけば言うことを聞くだろ、なんて扱いは非常に俺を馬鹿にしているとしか思えないし、そんな嫌々体を差し出してくる女性に手を出したいとも思えない。いや、半ば自棄のよう、そっちがその気なら本当に酷い扱いをしてやろうか、なんて嗜虐心が牙を剥きそうになったりもするのだが。その辺を自重するだけの自制心はちゃんと持ち合わせている。俺にだってプライドというものはあるのだ。


「だったら、どうしろと言うのですか」


 彼女の声が、少しだけひび割れて震えていた。

 俺の声に交じる冷めた色に気付いたからだろう。

 き、と顔をあげて俺を見据える瞳に、怒りにも似た色が浮かんでいる。

 それに対して、俺はあっさりと肩を竦めた。


「さあ」

「……!」


 俺の無責任な言葉に、彼女が息を飲む。

 でも、そういうものだろう。

 どうするかを決めるのは彼女自身だ。

 俺の決めることではない。


「俺は、こっちの世界……っていうか、アレだ、貴族のしがらみだとか全然知らないから好き勝手なこと言うけど」


 きっと、彼女にもいろいろと事情があるのだろうとは思う。

 いろいろと止むに止まれぬ事情に絡めとられて、こんな状況に追い込まれているのだろうとは思う。

 けれど、俺をホールから誘い出したのは彼女だし、ドレスを脱いだのも、俺を誘惑することを選んだのも彼女だ。

 それでいて被害者のような顔で俺を見るのは如何なものなのか。


「決めたのは、あんただろ」

「好きで決めたわけではありません!」


 彼女の声は、半ば悲鳴のように響く。

 なんだか俺が苛めているような気がしてきた。

 ぽり、と頭をかく。


「……私にも、選択肢はあったというのですか」


 彼女が、憎々しげに俺を見る。

 刺々しい表情を向けられているとはいえ、こっちの方が先ほどまでよりよっぽど人間らしい顔をしている。

 

「私は……っ、貴族の父が下働きの母に手をつけて生まれた子です……! いつか役に立つかもしれないと、ここまで生かされてきました。そして、今こそ家のために役立てと言われてこんな生き恥を晒しているのです……! そんな私にも、選択肢があったとでもいうのですか!」

「あったんじゃないか」


 俺はあっさりと頷いた。

 彼女の蒼の瞳が、ぽかんと丸くなる。

 なるべく、柔らかな口調を心がけて俺は口を開いた。


「あのさ」

「…………」


 彼女は俺から顔をそむけたまま、こちらを見ようとはしない。

 それでも、俺の言葉を聞こうとしているのがわかったのでそのまま言葉を続ける。


「俺の好きな人なら、自分の選んだ道には胸を張ると思う」


 さらっと、そんな言葉が口から出た。

 イサトさんならきっと、苦渋の決断をしたとしても、自ら選んだ道なのだからとぐっと前を見据えて突き進むはずだ。あの人は、そういう人だ。


「その人なら、家を捨てて自由に生きるか、家のために生きるかでまず考えて、そこで家を捨てない選択をしたならたぶん今頃俺を全力で押し倒してると思う」


 間違いなく最終手段は物理だ。

 あの思い切りの良さは尊敬できる。

 だからこそ、よく考えてから決めような!!!?と横から見ていてツッコミたくなることは多々あるのだけれども。


「…………」


 俺の言葉に、彼女は静かに瞳を伏せた。

 ぽたり、とその蒼の瞳から雫が落ちる。


 ひい。

 

 好き勝手なことを言うぞ、と先に宣言した上でいろいろ言ったわけだが、やはり女性に泣かれると罪悪感がすごい。こう。「先生! 遠野くんが○○ちゃん泣かしました!!」の呪詛が未だ生きているというか。あの泣いたもん勝ちの理屈はどうにかならんものなのか。どれだけこちらの主張が正しいものであろうと、相手が泣き出したあたりで一気にこっちがアウェイになるあの感じ、本当きつい。


「……あなたの好きな女性は、とても強い方なのですね」

「へ」


 好きな、女性?

 改めて彼女にそう言われて。

 あれ。

 俺。

 さっきなんて口走った?




『俺の好きな人なら』




「ま、待った……!!!!! 今のなし!!!! なしで!!!!!!!」

「え……?」


 彼女があっけにとられたように首を傾げる。

 いや、本当俺、何言ってんだ。

 顔面に熱が上る。

 

「うあ、ああああああ……」


 ゾンビのような呻き声をあげながら、俺は思わず蹲ってしまった。

 頭を抱える。

 あまり深くは考えないようにしようだとか。

 今の距離感を壊したくないだとか。

 そんなこと考えていたのはどこのどいつだ。俺だ。

 なかなかに死にたくなる自爆だった。

 唯一の救いとしては、この場にイサトさんがいなかったことぐらいだ。良かった。そう考えたらセーフだ。よし。セーフセーフ。かろうじて致命傷で済んだ。

 

「あ、あの……?」

「いや、おかまいなく」


 俺はハハ、と乾いた笑いをあげながら立ち上がった。

 今はこんなことをしている場合ではない。

 あの変質者だ。

 イサトさんを狙うあの変質者が、この城の中にいる。


「悪い、あんたの話を聞いてやりたい気もするんだけど、こっちもこっちで厄介なことになってる。質問してもいいか?」

「は、はい」


 よし。

 

「なあ、あの男は何者だ?」

「私にも、よくわからないのです。兄上が連れてきた幻術師だと聞いていましたが……」

「兄上?」


 ふと思い出した。

 そういえば、ギルロイ商会の尻拭いをするために集まった教会に、貴族院代表としてネパード侯爵子息とやらが参加していたはずだ。アレがおそらくは彼女の兄なのだろう。自分の妹を、道具のように使うなど兄の風上にも置けない男である。


 と、そこで厭な予感がした。

 

 そこまで手段を選ばず俺の身柄を手に入れようとした男が、俺だけで満足するということがあるだろうか。


「っ、もしかしてあんたの兄貴、イサトさんは自分で手に入れるつもりじゃないだろうな……!」

「ごめんなさい、私、兄上が何を考えているのか知らなくて……でも、兄上ならあり得ると思います」


 俺には妹をあてがい、イサトさんは自分で手中に収める。

 ネパード侯爵子息がそう考えたとしてもおかしくはない。

 普通に考えれば、イサトさんがそんな貴族の男に簡単にどうこうされるなんてことはないと思うが……あの変質者はこうも言っていた。

 

『あ、大声を出しても無駄だよ。ここはホールからは離れてるし……それに何より、この部屋のことは皆知ってる(・・・・・)から。いやあ、君をここに縛ろうと皆なりふり構わないみたいだね』


 先ほど広間で、シェイマス陛下も言っていたじゃないか。

 セントラリアにいる間に褒美を考えろ、と。

 その時に俺は、逆に言うと褒美を貰うまではセントラリアから出られないのでは、なんていう風に考えたはずだ。

 もし、王族を含めたこの城にいる連中が全員グルで、俺たちをこのままセントラリアに引き留めようとしているのなら。

 衆人環視のホールだから間違いは起こらないだろう、なんて甘いことは言っていられない。それに、ネパード侯爵子息にはあの変質者がついている。

 あの変質者自体もイサトさん狙いだと考えると、手を組んだ理由がいまいちわからなくなるが、今はそれを悠長に考えている場合ではない。

 あの変態が何を企んでいようと、イサトさんに無用なちょっかいを出してくるというのならば迎撃するまでだ。

 

 今度こそ――…、ぶちのめす。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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