表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「出世したら結婚しよう」と言っていた婚約者を10年間支えた魔女だけど、「出世したから別れてくれ」と婚約破棄された。私、来年30歳なんですけど!!  作者: 江本マシメサ
第四章 聖教会のいざこざ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/54

衝撃の新情報

 ふと、テーブルの上に数社分の新聞紙が広げられていることに気付く。

 よくよく見たら、すべてライマーが拘束されたことについて書かれた記事だった。


 もしやシスターや聖務官らにライマーが犯罪行為を犯した証拠である新聞を突きつけられ、この男のことは諦めろとか言われたのか。

 さすがの聖女スイも、犯罪とは知らなかったとはいえ、聖騎士の座を剥奪されたライマーになんて愛想を尽かしたに違いない。

 新聞は見なかった振りをしよう、と顔を上げると、聖女スイとばちんと目が合う。


「ライマー様の記事、読まれました?」

「いいえ」

「あまり驚いていないようですけれど、拘束されたのはご存じでしたの?」

「まあ、そう、ね。知っていたわ」


 というか、逃走を封じるために足かけをして転ばせたし、駆けつけた応援の騎士にライマーの身分をすらすらと報告した。

 協力者として謝礼金と賞状を渡したいという打診があったものの、丁重にお断りしたのである。

 もしも受け取っていたら、〝薬草魔女大手柄! 犯罪者逮捕に貢献!〟などという記事が出ていたに違いない。


 聖女スイは俯き、ぶるぶると震えていた。

 可哀想に。ライマーとの仲を引き裂かれただけでなく、相手が犯罪者だったなんて。

 カーバンクルは彼女を十五歳の少女だと話していたか。

 年若い娘にはショッキングな話だったのだろう。


「あの、気にしないほうが――」


 声をかけた瞬間、聖女スイはパッと顔を上げる。

 その瞳はキラキラというより、ギラギラと輝いていた。


「ライマー様、不憫で気の毒だと思いません!?」

「え……?」


 嬉しそうというより、興奮しているような表情で問いかけられる。

 わけがわからず返答に困ってしまった。


「やっぱりライマー様は不幸な目にあってこそ、輝いていると思うんです! 魔女様もそう思いませんか?」


 同意を求められても、共感なんて欠片もできないのだが。

 いったいどうしたというのか。先ほどから、だいぶ様子がおかしい。


「これまでのライマー様もとってもかっこよかったのですが、何かが足りないと思っていましたの。それが今回の事件のおかげで、明らかになりましたわ」


 聖女スイは新聞に描かれた出版社の画師が書いた、ライマー逮捕の瞬間をイメージした絵を見つつうっとりと恍惚こうこつの表情を浮かべた。


「ライマー様の魅力を引き立てるものは、〝不憫ふびん〟と〝不幸〟、それから〝不運〟ですわ!!」


 なんともねじれた愛情表現を大発表してくれた。本当に、返す言葉が見つからない。

 自分なりに聖女スイの言葉を咀嚼そしゃくし、ほんの少しだけ理解を示してみる。


「えーつまり、あなたはライマーに対して愛想を尽かしたわけではないのね?」

「どうして愛想を尽かすというのですか? 彼のことは変わらずに愛しておりますわ」


 聖女スイは輝くような笑みを浮かべながら言ってくれる。思わず「うわ、眩しい」と口にしてしまった。


 なんというか、ライマーの人生における運は尽きたな、と思っていたのだが、天は彼を見捨てていなかったらしい。

 聖女スイの愛さえあれば、きっと何もいらないだろう。

 たとえ結ばれることはなくても、二度と面会など叶わなくても、誰かに愛されているというのは励みになるに違いない。

 呆れて物も言えなくなっていたが、カーバンクルから『おい、そろそろ本題へ移れ』と促された。

 そうだった。彼女の惚気話を聞きにきたわけではなかったと思い出す。


「私はあなたに聞きたいことがあってやってきたの」

「まあ、そうだったのですわね。気付かずにペラペラ喋ってしまいまして」


 背筋をピンと伸ばし、私は聖女スイに問いかける。


「あなた、〝聖女スイ〟ではないそうね?」


 その問いかけに、彼女はかわいらしく小首を傾げた。


「カーバンクルから話を聞いたの。本物の聖女様の魂を引き寄せようと思ったら、あなたの魂を体に導いてしまった、と。あなたは本当は〝チキュウ〟という異世界で暮らしていた、十五歳の女の子なのよね?」

「なーんだ、バレていたんだ!」


 おしとやかな様子でいた聖女スイだったが、姿勢を崩し、「あーあ」と投げやりな様子で言う。


「せっかく異世界転生を楽しんでいたのに、ラスボスにバレてしまうなんて」

「ラス……ボス?」

「そう! あなたはこのゲームで大量殺戮を行う凶悪な〝暗黒魔女〟なの!」 


 聞きたかった情報がポロリと飛び出てくる。

 しかしながら、聞き捨てならない新情報もあった。


「私が暗黒魔女ですって!? 嘘よ、そんなの!」

「嘘じゃないよ。だって私、〝セント・ジュエル〟で何度もあなたと戦ったんだから!」


 頭が真っ白になる。いったいどういうことなのか。欠片も理解できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ