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「出世したら結婚しよう」と言っていた婚約者を10年間支えた魔女だけど、「出世したから別れてくれ」と婚約破棄された。私、来年30歳なんですけど!!  作者: 江本マシメサ
第三章 魔女と聖女の諍い

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石鹸作り

 命からがら逃げてきた。やっとのことで先代薬草魔女の家まで戻ってくると、安堵のため息が零れる。


「まさか子育て中のポイズン・スパイダーに遭遇するなんて、ついていないわ」


 メルヴ・メイプルを抱きしめ、気付かなくってごめんなさいと謝罪する。


『無理モナイノ。巣糸、透明ダッタノ』

「そうだったのね」


 なんと、メルヴ・メイプルはポイズン・スパイダーが放った毒糸を回収していたようだ。


『コウシテ毒ヲ、取リ除クト、透明ナノ』


 メルヴ・メイプルは井戸の水で毒を洗い流し、その辺に自生しているアカヘビ草を擦りつける。すると毒を除去した状態になった。

 ポイズン・スパイダーの糸は無色透明で、太陽光を受けてキラキラ輝いている。


『コレ、何カニ、使エルノ?』

「ええ。魔法薬の素材として利用できるわ」


 ポイズン・スパイダーの毒糸は毒を上手く処理できたら、上級レベルの痛み止めを作ることができるのだ。

 メルヴ・メイプルはポイズン・スパイダーの毒が効かないようで、すべて持ってきてくれたわけである。


『毒抜キ、メルヴ・メイプル、ヤッテアゲルノ』


 危ないから、とまっすぐな瞳で言われる。

 やり方を覚えたかったのだが、使命感に燃えるような眼差しを向けてきたので、今回はお願いすることにした。


 毒糸の処理が終わったら、井戸水で顔と手を洗って昼食の時間とする。

 湖のほとりで食べる予定だったが、想定外のポイズン・スパイダーの襲撃によって外で食べる気が失せてしまったのである。

 先代薬草魔女の家に戻り、食卓でいただくことにした。

 メルヴ・メイプルには果物を搾ったフレッシュジュースを作ってあげた。

 おいしそうに飲む傍ら、私は家から持ってきていたハムチーズサンドをいただく。

 飲み物は保温機能がある魔法瓶に薬草茶を作ってきた。蓋を開くとほかほかと湯気が上がる。

 魔法瓶の口にハムチーズサンドを置くと、湯気でパンが温まってしっとり感が増すのだ。


「熱でチーズも溶けて、おいし~~」 


 やっぱり食事は家でするに限るな、と思ってしまった。


 食事が終わったら掃除を行う。

 家の中にも妖精がいて家の中をきれいに保ってくれるのだが、訪問するたびに私も窓を拭いたり、床を磨いたりしてから帰るのだ。

 やりたいことをすべて終えたあと、ここにいるであろう精霊と妖精に「師匠をお願いね」と声をかけ、魔法の姿見を通して聖都に戻る。

 帰宅後は薬草石鹸作りだ。

 今日、採ってきた曹達石は魔導粉砕機に投入し、粉末状にしておく。

 これを手でしようと思ったら大変なので、イエさんが薬草石鹸を聖務省に納品してくれる約束を取り付けたときに思い切って買ったのである。

 ちなみに借金を背負った状態で購入したのだが、現在は返済済みだ。


 薬草石鹸のメインたる材料は、オリヴィエ草という薬草になる実を搾った油脂である。

 オリヴィエ草から採れる油脂には肌の湿気モイスチャーを整え、角質を取り除いてくれる効果がある。また小皺にも作用し、肌に張りを与えて肌質を改善する作用もある。

 またオリヴィエ草から採れる油脂は酸化しにくく、熱にも強い。長期間の保存を可能とするので、石鹸作りにうってつけの材料と言えるのだ。


 薬草石鹸作りに関しても、メルヴ・メイプルが助手を務めてくれるという。


「よし、やりますか!」

『頑張ルノ!』


 まずは目元を守る眼鏡を着用し、口元には布を当てて後頭部でしっかり結んでおく。手袋を嵌めるのも忘れずに。曹達石の扱いには危険が伴うので、しっかりガードできる装いで挑まなければならない。


 最初に浄化魔法をかけた水をガラスのボウルに用意し、量を計った粉末曹達石を少しずつ入れていく。

 メルヴ・メイプルはガラス棒を使い、きりりとした表情で混ぜてくれる。

 そうしていくうちに、粉末曹達石を入れた水はどんどん温度が上昇していく。

 これを逆の順番、粉末曹達石の中に水を入れたら一気に温度が上がって大変なことになるので注意が必要である。

 続いてオリヴィエ草の油脂を湯煎で温める。

 粉末曹達水と温度を同じにし、二つを少しずつ混ぜ合わせるのだ。

 泡立て器でくるくる混ぜていると、だんだんもったりしてくる。ここでオリヴィエ草の葉から作った精油を加えて攪拌かくはんしたあと、長方形の型に流し込むのだ。

 通常であればここで乾燥させたのちに数ヶ月間熟成させるのだが、これは魔女が作る石鹸である。

 乾燥と熟成も魔法で行うのだ。


「――乾ききれ、完全乾燥フル・ドライ!」


 乾燥したあとは熟成だ。


「――深まれ、熟成エージング!」


 完成した薬草石鹸は深い緑色で、ほんのり草原にいるときの匂いがする。

 流行りの石鹸のように華やかな香りはしないのだが、洗浄力は絶対の自信があった。


「うん、上手くできたわ」


 あとは薬草石鹸をカットし、油紙ワックスペーパーに包んだら商品として売り出せる。


 薬草石鹸を手にしていると、聖女スイとのやりとりを思い出してしまった。

 彼女の作る石鹸を聖務省に納品したいと言っていたのだが……。

 その件に関してはイエさんに報告しているし、もしかしたら今後、何か進展があれば何か言いにくるだろう。

 ひとまず今日の仕事はこれで終わり。なんだか疲れてしまったので、温かいお風呂に入り、おいしい食事を食べて、早めに眠ることに決めた。  

 

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