十三話「キツネダンスでLetsDance!!」
幼女を見たキモオタ、田中のボルテージ上昇。
(幼女来たああああああああああああああああああああああ‼)
「うふふふふっふ…うふふふふふふふふふふ!」
何かに取り憑かれたように笑う幼女の不気味さに、戦慄する一同。
「あかんで…あの子、笑うことでHPごりごりに盛ってくるタイプや!」
発光しながらスライムが飛び跳ね、幼女の異能を説明する。
「でも、笑ってる間はノーガード!!!倒すなら笑ってる間や!!!!」
スライムが言うと陽キャ代表ミカエルは、「ファイアーーーーーー!!!」と手から炎を出現させ火炎放射を放つ。
「うふふふふふふふふふふふふ!」
笑いながらダメージを食らう幼女。だが、笑うたびにHPが増え続けている。削っても削ってもキリがない。
「生卵爆弾!」
リリアが生卵を幼女にぶつける。
幼女は、「うふふ…うふふふふふふ…」と笑いながらダメージを回復する。
(めんどくさ…心底めんどくさい異能だ‼)
田中は心の中で叫ぶ。
なんかこのダンジョン、HPを無限回復してくる敵が多い気がするのは気のせいだろうか。まあ気のせいだろう。田中は考えることを辞めた。
「ふふふふふふふふふふ!」
ダメージを食らっていない時にも幼女は笑い、HPを回復する。
「これじゃ勝てないよ!」
キリの無さに叫ぶミカエル。
「うふふふふふふ…うふふふふふふ!!」
手も足も出ない三人と一匹を見て笑い続ける幼女。
田中は幼女が自分から回復しないことに気づくと、幼女の後ろに周り、片手で幼女の口を塞ぐ。
「なにをしてんの!?相手は子供だよ!!」
田中の行動に焦るリリア。幼女はバタバタと暴れる。
「敵であることに変わりはない!!!」
非情な手に出たチー牛。そうだ、いくら幼女とは言え敵に情けはいらないのである。
「可哀想だけど、いましかない!!で、でも至近距離に田中がいたら攻撃出来ない!!!」
ミカエルは攻撃を躊躇う。
田中は、「多少の火傷なら治る!!!」とミカエルに叫んだ。
ミカエルは、「う、うん…」と田中の言葉に後押しされる。
「やりますねぇ!」飛び跳ねるスライム。
「うぐー!うぐー!」
田中の手で口を塞がれた幼女は苦しそうに喚く。
ミカエルは、「ファイヤーーーーーー!」と足から炎の玉を出現させるミカエル。
ミカエルは「いっけええええええええ!!!」と叫び、ボールを相手のゴールにシュウウウウ!超エキサイティング!ドラ〇もんバト○ドームも出たああ!
多少の火傷なら構わないと言ったがあまりの容赦無い攻撃に「うわあああああああああああああああああああ‼」と幼女もろとも吹っ飛ぶ。
「草ァ‼巻き添え食らっとるやんけコレ…wwww田中、かっこつけすぎるのもあかんで…」
ヤ○チャ顔負けの瀕死っぷりに笑いが止まらない最低なスライム。だがチー牛の悲惨な現状を前には笑うのも無理はない。
「大丈夫…?」
地面に埋もれる田中に手を差し伸べるミカエル。この男には田中が大丈夫に見えているのだろうか。だとしたら異常である。
だが田中は生きていた‼ 奇跡的にも生きていた!おお、田中よ!!我らが田中よ!いまこそ高らかに歌う時!田中!田中!
「嗚呼…生きてる…大丈夫…」
田中、こう見えてタフである。
なんか田中毎回生きてね?なんで?なんで生きてんの?なんで生きてんの?なんで生きてんの?なんで?
と、いうわけでダンジョン2-2をクリアした田中一同はダンジョン2-3へ進む。
(なんか生きてるな…)
田中は自分のタフさに感心すると同時に、少々不自然さも感じる。
田中を回復させようと手からマカロンを出すリリア。
「ほら、田中、食べて!」
田中はリリアから受け取ったマカロンを食べた。
次は一体どんな敵が来るのだろうか。身構える三人と一匹。
「これ絶対ロクな展開ちゃうやつやろ…嫌な予感しかしん…」
スライムはブルブルと横に震える。
スライムが震えるとなんだか卑猥に感じるのは田中だけだろうか。
「嫌な予感?」
リリアが言うと、その予感は的中したのか、空中から一体の黒服が現れた。
高校生ぐらいの黒服だ。またしても女子である。
「ここまで来る勇者って少ないのよ~!ほら、みんな~私と踊りましょ~!」
「あかん…こいつ射程距離入った途端強制的にワイら躍らせてくるタイプの敵や!そしたら攻撃全部スカるでマジで!それに、踊ってる間はHPがゴリゴリに減ってまう!はよ射程距離外を探せ!探すんや!」
スライムが「あかんあかん!ほんまあかーん!」とパニック状態になる。
「ミュージック、スタート‼」
キツネダンスの音楽がステージに流れる。
とっくの昔に射程距離内にいた田中、ミカエル、リリアたちはキツネダンスに夢中になってしまう。
美少女、イケメンのダンスはいいとして、チー牛のダンスは見るに堪えないホンモノ感がある。
「さあ~この空間では私の想い通り‼ 踊って、踊って、踊りまくるのよ~!」
ワイヤーで空中を浮遊する黒服。どこか快感を覚えたような表情を浮かべている。
一方で、踊りながら段々と苦しい表情になっていくミカエル、リリア、田中。
「何しとんねん‼ ガチで逝くぞコレ!」
スライムが三人に必死に話しかけるが、三人は体力を削られながらも、踊る以外のことを許されない。
「かわいらしいキツネが三匹~!」
黒服が空中を浮遊しながら嬉しそうに言う。
射程距離に近づけないスライムは、
「頼むから正気に戻ってクレメンス!今は踊っとる場合ちゃうんやって!」
と飛び跳ねながら三人に訴える。
「うぐ…」
踊りながらゴリゴリに体力を削られる田中、リリア、ミカエルの三人。
攻撃したくても射程距離に入ってしまうと動くことすらできない。
(自分の意思がまったく通じない…)
踊りたくないのに強制的に踊らされてしまう。それに体力を削られると来た。能力なしのチー牛に勝てるはずはない。異能持ちのリリア、ミカエルでさえ手が出せないのだから。
キツネダンスを永遠に踊らされる三人。
スライムは、射程距離範囲外だが、ぴょんぴょんリズムに合わせ飛び跳ねてしまう。
「こんなんなんとかせなアカンやろ…参ったで…ワイ一匹じゃなんもできんわコレ」
ヒントを探すために発光するスライム。
「無駄よ、この子たちはみーんな踊って最後には死んじゃうんだから~」
黒服はスライムを煽る。
「アホ抜かせや!勝手にオチ決めんなボケ!ワイらそんな雑な終わり方するタマちゃうで!」
スライムは言葉で抵抗するが、リリアが崩れるように倒れてしまう。
「リリアはーん!」
絶叫するスライム。
リリアを支えようとする田中だが、身体が思うように動かない。
永遠と流行りの過ぎたキツネダンスを踊らされる。
どうしてこの異世界はブームがワンテンポ遅いんだろうか。
隣をチラっと見ると、ミカエルがいまにも倒れそうな表情をしていた。
スライムは「ミカエルううううううううううううう」と絶叫する。
「踏ん張るんや!踏ん張れミカエル!」
ロクに喋れもしない状態のミカエルはスライムの言葉に耳を傾け踏ん張るが、その場に倒れてしまう。
最後に残されたのはなんのために生まれてなにをして生きるのかわからないまま終わりそうなチー牛・田中。
(死ぬ…!)
田中は心臓を突き刺すような痛みに震えるが、踊りを止めることを許されない。
「レッツダーンス!」
興奮する黒服。
田中は足を動かそうとするが、足を動かすことさえ許されず倒れてしまう。
「田中あああああああああああああああああ」
叫ぶスライム。
「つまんないの」
黒服は地上に降りると、倒れた田中たちを見下ろしてどこかに去っていった。
「あかんで…あかんで!!!」
倒れた三人に「ええ加減目覚まさんかい!」と語りかけるスライム。
三人が倒れていると、
「おじさんのきんのたま~おじさんのきんのたま~」
と歌いながらおじさんが巡回してくる。
「おっちゃん!」
スライムはおじさんの足を止める。
「ほーれおじさんのきんのたま。おじさんのきんのたま。」
おじさんは三人の身体の上にきんのたまを乗せる。
みるみる回復する三人。
おじさんは「はははは!負けたらアイテムは拾えない!だから私を頼ればいい!」とゴリラのように豪快に笑う。
「おじさーん…本当に頼りになる…」
と目を潤ませるミカエル。
田中も「ありがとうございます…!」と礼儀は忘れない。
リリアも「おじさんありがとー!」とおじさんに礼を言う。
見た目はどこか汚いが、やはりいいおじさんである。
「私は君たちが倒れる度に現れる?またいつか会おう!勇者共!さらばじゃー!」
薄汚いおじさんは颯爽と舞い戻っていく。
今日はもうダンジョンに挑戦することが出来ないようだ。
ミカエルは立ち上がる。
「一回ダンジョンの外に出よう…」
田中、リリアも後に続いた。




