十話「俺、佐藤裕也(`ェ´)ピャー」
「けて…助けて…」
ボロボロになったスライムは三人に助けを求める。このパターンどこかで見たことある。田中は嫌な予感しかしなかったが、救出を躊躇う頃には、ミカエルとリリアが「大丈夫!?」とスライムに駆け寄っていた。っていうか、そのスライム喋るんかい。
「ワイはこのダンジョンに連れ込まれたスライム…黒ずくめの男の怪しげな取引現場を目撃して目が覚めたら……」
(瀕死の割にはめちゃくちゃ喋るじゃん…)
田中はスライムの余裕さに絶句する。こんなに喋れるなら大丈夫だろ。強く生きろ。スライム。
「体がボロボロになっていたンゴ…痛いンゴ…辛いンゴ…どうにかしてくれやおまいら…」
なんだか嫌なネット民みたいな喋り方をするスライム。田中は同族嫌悪を感じてこの饒舌なスライムを踏みたくなったが世界が変わっても平和主義者なので辞めておくことにした。
「ンゴ??」ミカエルは首を傾げる。
(異世界人には聞きなれない語尾だろうがこちら側の人間としてはめちゃくちゃ聞き覚えある語尾なんだよ。まじやめろって)
田中にしか伝わらない嫌悪感。リリアは「料理作るから食べて!!!!」とスライムに言った。スライムは、美少女からの料理提供に、「!!」と身体を動かす。「僕も食べたい」と横入りするミカエル。
この薄暗い廊下で食事をするのか。正気じゃない。「じゃあみんなでお昼ご飯だ~!!」と満面の笑みを浮かべるリリア。可愛い。魔法少女の名に恥じないビジュアルである。これぐらいの女の子が一番可愛い。神様ありがとう。と田中は神に感謝した。
だが目の前にはなんJ民スライムがいる。右から。なんJ民スライム、距離感バグ陽キャ、得体の知れない魔法少女。魔法少女がこの中では一番マシだ。ろくなやつがいない。田中含めて。
存在価値がバラン以下のチー牛はちょこん。と丸く座る。体育祭でも友達と並んでお弁当…なんて経験は皆無だったのでなんだか新鮮だ。まあ、田中がこのパーティーを友達と認識しているはずは無いが。
「クッキングー!!!!」
リリアが叫ぶと、寿司が出てきた。寿司をスライムに食べさせる。(寿司なんだ…)田中はリリアの意外なチョイスにツッコミを入れる。スライムは、「女、うまいで!!!うまいで!!!」と特殊な光に包まれみるみる回復していく。
田中とミカエルの分の寿司も出現させるリリア。パクパクと美味しく頂く二人。リリアも自分の分の寿司を出現させゆっくりと食べる。
「美味しいね!!!」ミカエルが満面の笑みで言うと、リリアも、「当たり前!!!」と嬉しそうな表情を浮かべた。
(うむ。美少女の作る飯は美味い……)
田中もモグモグと美少女の異能メシを堪能する。なんか異世界で料理作るアニメあったよな。なんだっけか。と田中は考えるがそういう余計な事を考える時間では無い。
「元気になったで!!!サンガツな!まぁ感謝してる風のポーズ取っとるだけやけどなwほな今日も勇者のマスコット(笑)として働かされたるわ。どうせワイがいないと勇者サイドさん仕事にならんのやろ?しゃーない、底辺スライム様が粘ってやるわ。」
パタパタと跳ねるスライム。なんだろう。めちゃくちゃウザイ。同族嫌悪がレベルMAXになる田中。まるで生前の自分を見せられているようだ。
ミカエルとリリアはこいつの事をウザイとは思わないのだろうか。田中は二人がいる方向を見る。
「きゃー!!!可愛い!!!面白い喋り方~!私こういうの好き~!」
「すごい!!!!このスライムめちゃくちゃ喋る!!!」
大興奮の二人に呆れる田中。おい!!!煽られてる!煽られてるんだぞ!!!早く気づいて!!!!
「よろしく、僕ミカエル!!!!!!」
王子様のようにスライムに片手を差し出すミカエル。何をこいつは思ってるのだろうか。握手を返すことはスライム野郎には出来ないぞ。
「はい出ました〜自己紹介から漂う陽キャ臭。お前みたいなん絶対クラスの中心おったタイプやろ?ワイみたいな底辺スライムとは住む界隈ちゃうんやろなぁ、嫉妬ちゃうで。」
次々となんJ民口調を使って来るスライム。(辞めろ辞めろそれ以上喋るなスライム!!!!俺の心にその刃が真っ直ぐに突き刺さる!!!)
「陽キャ?????僕陽キャなの?????陽キャってなに?????」ミカエルはこちら側を見てくる。あのですね。説明すると長くなるんですよね。ミカエルさん…。
「陽キャって言われてるなら陽キャなんじゃない?」リリアも首を傾げながら言う。田中ははぁ、とため息をつく。やっぱりこの世界にまともな人間はいない。
「ごちそうさま」リリアは食べ終わった三人と一匹分の寿司下駄を隅にまとめて片付けた。
ミカエルは「そうか!じゃあ僕は陽キャだ!!!!」と叫ぶ。(駄目だこいつら、会話になってない…)田中は諦めた。
そして三人と一匹は1-4のダンジョンに辿り着く。三人と一匹で背中合わせになりながらさらなる敵を待ち構える。
(スライム如きに何が出来るんだろうか…)田中はスライムへのあたりが少々強い。
「7.6秒ブラザーズです!」黒服二人がリズムに乗りながら登場する。生前の世界で聞いたことがあるフレーズに、「!?!?」と誰よりも反応する田中。
「ラッスン○レライ♪」「えっえっなんて???」
黒服二人が生前の世界で聞いたことがあるネタを披露する。
(なんだこのエンターテインメントに長けた黒服は…)
「この二人、リズム崩さん限り何食らっても死なん化け物らしいで」
スライムが言う。リズムを崩さない限り絶対死なない敵。
「ラッ○ンゴレライ!フー!ラッ○ンゴレライ!フー!」
黒服の一人が手拍子をしながらリズムを刻み、もう一人の黒服が踊りながらその場をウロウロする。
「リズムを崩さない限り死なないってどうしたら勝てるの!?!?」
ミカエルがスライムに問う。スライムは「調べるで!!」と飛び跳ね、「ピャー!」と叫びながら発光した。
「この黒服、誰か一人リズム崩した瞬間即終了らしいでwせやからリズムを崩せばええんやでwww」
スライムが言うと、リリアも、「ラッ〇ンゴレライ…」とリズムに乗る。ミカエル、田中も黒服二人がぶち上げるバイブスに合わせながら、身体を揺らしたり、手拍子をしたりする。
(なぜラッ〇ンゴレライが今更黒服の間で流行ってるんだ…?)
田中は疑問に思うが、それには触れないことにした。




