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鬼の魔法使いは秘密主義  作者: 瀬戸 暁斗
魔法高校交流会編

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アサルト・ボーダー決勝戦②

「ここまで来れば、もう誰にも邪魔はされない。もっとも、俺とお前の勝負に介入できる魔法使いがこの島にいるとは思わないけどね」


 アサルト・ボーダーの試合会場には、外周を取り囲む高い壁が張り巡らされている。これは予選の時から共通しているが、外壁付近には占有すべきキューブはない。加えて、各チームの試合開始時の位置は会場の中心付近。この大会の間、この壁の近くで戦いが展開されることはなかった。


「介入できる奴ならいるだろう。学生だけで何人『七元素』がいると思っているんだ」


「彼らは手出ししようなんて思わないよ。彼らはそういう性格だからね。ちょっかいを出せるとすれば、この試合をカメラ越しに見ている『七元素』の大人達。でも、そんな大物が動けば不審すぎる。やっぱり誰も動けない」


 刹那が勝てば、多少強い魔法使いが生まれてきたが『七元素』の権威は揺るがないと民衆は感じるだろう。

 だが蒼真が勝てば、『七元素』が持つ絶対的なイメージが崩れ去る恐れがある。現に、土の『七元素』 ——土岐岳は、崇に出し抜かれたことこそ何の記録にも残されていないが、蒼真に敗れた場面をはっきりと大勢に目撃されてしまっている。

 蒼真があげた1度目の勝利は、相性やコンディションの問題でお茶を濁すことができる。しかし、刹那にも勝ってしまえばその実力を認めざるを得ない。運で実力不足の者が2度も勝てるほど、「七元素」は甘くはないのだから。

 したがって、「七元素」の上層部は刹那の勝利を切に願っているのだが、彼に有利になる支援などはできない。仮に手を出したことがどこかの筋から情報が漏れたなら、彼らの立場は失墜する。それに、援助をしている時点で「無元素」である蒼真の力が「七元素」以上だと認めているようなものだからだ。


「それに、この勝負に手出しをするようなことは、俺が許さないよ。もし誰かに邪魔をされることがあれば、俺は『七元素』を敵に回しても構わない」


「大層な覚悟だな。だが……俺もお前と戦うのは楽しみに思っていた」


 初めは白雪へ言い寄る刹那に、彼女が勝手な宣戦布告して生まれた因縁。だが、刹那は術士の崇と、蒼真は『七元素』の岳と戦い、互いに認識を改めていった。

 刹那は『無元素』の魔法使いのことを。蒼真は『七元素』の魔法使いのことを。

 そして、2人は力をぶつけ合うことができるこの決勝戦を待ち侘びていた。


「もう、何も我慢する必要もない。全力をもってお前を叩きのめす」


「やれるものならやってみろ」


 一気に膨張する魔力の塊。蒼真の魔力で周囲の景色は歪み、刹那の魔力でバチバチと稲妻状の火花が散る。

 この島にいる魔法使いなら、感知能力の鈍い者でも気がつくほどの巨大な魔力の衝突。2人ともこの瞬間のために目標を設定してきただけあって、互いに交流戦期間中で最大の魔力を解き放っていた。

 ただし、ここは流石の「七元素」と言ったところか、刹那の魔力総量は蒼真のそれを上回っている。鬼人化を使えば、魔力において並び立てるが、衆目を集めている中では使うことができないのを彼は十分理解している。

 彼が今使うことのできる武器は、魔法に対する豊富な知識とそれを実践できる技術、そして数多の死戦場を潜り抜けてきた経験だ。


「さぁ、いくぞ!」


 膨れ上がった魔力を残像のようにその場に残したまま、刹那の姿はフッと煙のように消えた。

 七属性の魔法のうち、最速の魔法——雷魔法を操る雷電家。中でも「最速の魔法使い」「雷帝」として名を轟かせている家長の雷電瞬亮(しゅんすけ)に次ぐほどのスピードを刹那は誇っている。さらには彼のテンションは最高潮に達し、普段よりも体が軽く感じていることだろう。俗に言う、「ゾーンに入った」状態である。その状態で発動した「電磁加速(エレクトロ・アクセル)」は、中継カメラで彼の姿を追うことを許さなかった。


「エネルギーは速さの2乗に比例する! つまり、速さこそが力だ!」


「っ!」


 目が追いつかないほどのスピードで移動しながら繰り出される連撃。並の魔法使いならば、反撃はおろか数発耐えることすらできないだろう。

 だが、この刹那の猛攻で蒼真が膝をつくことはなかった。姿が見えないのなら、全身に強化魔法を張り巡らせて守ってやればいい。しかし、この強化にも限度はある。いくら蒼真の強化魔法とはいえ、「七元素」が相手では完全に防ぎ切ることはできず、確実にダメージが蓄積されていた。

 このダメージを軽減すべく、攻撃を受け流そうとするが彼の動作よりもずっと早く刹那は仕掛けてくる。そのまま蒼真は連打を浴びながら、壁際へとずるずる追いやられてしまっていた。

 一発一発の攻撃が重く体の芯にまで響き、後退した彼の踵がついに壁に接する。


(もうここまで……)


「よそ見しているんじゃない!」


 ちらりと足元を確認した蒼真の目線の動きを、高速移動の中でも刹那は見逃さなかった。

 雷魔法の速度に任せたバックステップからの、猛烈な突進。目にも留まらぬ閃光の如き一撃を——。


「フッ——」


 蒼真の足が刹那の頭を捉えていた。

 一瞬のうちに起きた出来事に、観客席では困惑の声が上がる。攻撃を仕掛けた刹那はおろか、カウンターを決めた蒼真の動きですら彼らは見ることができなかったのだ。


「クッ……ハァ……お前、急に加速を……」


 蒼真の蹴りをまともに喰らい、頭を手で押さえ、多少足元がふらついているが、しっかりと2本の足で立っている。刹那はスピードだけでなく、タフさの面でも相当の地力があることが窺えた。


「何度もお前の魔法を見ているからな。少し真似させてもらった」


「何、だと……見て真似できるようじゃないだろうが……。それに、お前の属性は……」


 蒼真がこの交流戦で見せた魔法は、複数の属性であり、それらの練度が高かった。特に、岳との戦いで最後まで彼を翻弄させきっていたことから、幻惑に適した光属性か地面を操ることのできる土属性と考えられていた。


「俺が土岐に勝って、お前達が何を勘違いしたかは知らないが、俺の()()()()()()の属性は雷だ。お前と同じな」


 そう言うと、蒼真は再びスピードを上げた。

 雷属性の魔法使いとしては、彼は刹那に劣る。鬼人化無しでは魔力量も少なく、同じ魔法を使えば蒼真の魔法の出力は刹那の魔法には届かない。

 だが、今の蒼真の移動速度は刹那に匹敵するほどだ。彼は術師としてのノウハウと、魔法使いとしての知識を総動員して、刹那の「電磁加速」をアレンジしていた。


「なるほどな。お前の加速のタネはよくわかった。だからといって、勝ったなんて思うなよ。お前はこれでやっと俺のスピードに追いついたんだ」


「何もスピードだけじゃないぞ。もたもたしているうちに、俺はお前の全てを写し取る」


「面白いじゃないか。第2ラウンドも楽しませてくれよ!」


 蒼真と刹那。雷を纏い、閃光となった2人が衝突した。

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