77 意外な展開
双方のパーティが向かい合うように構えを取った、準備ができたみたいだ。
ヴァニエが魔法書でどんな魔法を習得し学校でそこから先にどう変化したのかわからないけど、魔力量やスキルのレベルだけで判断すると2チーム目はかなり不利だ。
ただ元素魔法のレベルが高いのと魔法の技が使えるのは必ずしもイコールではないので、どうなるかは分からない。
「それでは双方準備はいいな、……試合開始だ」
イーグル先生が開始の宣言をすると同時にエレンとフィッテの強化が始まった、取り巻き君も強化魔法を使っているが強化の速度が遅い、あれではだいぶ遅れての参加になりそうだ。
「私の魔法をお見せしてあげますわ。【サンダーエンチャント】っ!からの【フルパワー】ですわっ」
え、なんだそれエンチャント?
エンチャントなんて魔法があるのか。
ヴァニエが自分自身とハンマーに雷属性の付与を行ったみたいだが、あれが本の魔法だったのかな?
だが、これはかなりフルパワーと相性がいい魔法だと思う。
フルパワー中は魔法が行使できないが既にかかった魔法を打ち消すわけじゃない、あくまでも本人が「発動」できないだけだからな。
魔力眼で見た感じあのエンチャントは人間には劣化アクセル系、武器には感電効果といったところだと思う。
エンチャントとフルパワーで上乗せした敏捷による猛スピードのヴァニエが突っ込んでいった。
「ふーん、編入生が凄いって聞いてたけど、本当にレベルが高いんだね」
俺が鑑定で気になった謎の少女が身体強化もせずに観察していた。
この子は戦闘に関するスキルレベルが軒並み低いんだが、不思議なスキルを何個も持っているからどう戦うのかわからないんだよね。
「うーん、あの少女の戦闘方法がわからない」
「あいつはSクラスの中でも特によくわからない奴だ。実力は確実に俺が上だが試合した結果で完全に勝てたことは一度もねぇ、戦った感じがしないのも納得がいかねぇんだよ」
ファイスが気に入らないといったように言葉を吐き捨てた。
だが言いたいことはわかる、あの子のスキルに攻撃や防御といった趣旨のわかる戦闘スキルがほとんど成長していないからな。
「エレンくん、ヴァニエちゃんを抑えてっ!接近戦のみだと分が悪いっ」
「ああ、任されたよ」
エレンがヴァニエと接近戦を行い始めた。
技術がなくエクストラのフルパワーのみでエレンより少し弱い程度だったのだが、今は槌系に関する接近スキルを軒並みあげてさらにエンチャントがかかった状態だ、ブレイブモードだけだとエレンが押し切ることはできないな。
聖剣解放のタイミングは選んだ方がいいけど、授業を受けたエレン的にどの技術を隠しているかによるな。
「ヴァニエちゃんには悪いけど2体1で対応させてもらうよ!まずは主力から抑えるのが定石だもんね、【ウィンドボム】ッ」
「させねぇーぜ? ……アバァ!?」
……え、どいうこと。
昨日話しかけてきた少年がフィッテの魔法につっこんでいったと思ったら、暴風の爆発に巻き込まれて吹っ飛んでいった。
盾を持っている所をみると防御するっぽい感じを臭わせていたが、完全に基礎力不足だったみたいだ。
今は目を回している。
まあ、確かに1回だけ防ぐ分にはガードできてるかな。
するとやっと強化が終わった取り巻きの少年もヴァニエにつっこんだ。
戦闘に参加しない謎の少女は戦力外とみなしたのだろう。
「うおぉ!」
「……赤髪の人、右斜め後方に下がって」
「……ッ!? わかりましたわ!」
「おおおっ! グハァッ」
謎の少女がヴァニエに指示を出したと思ったら、下がったヴァニエのところに取り巻きの少年が突っ込んできた。
……そしてその場所には剣を振り下ろそうとしているエレンがいるわけで。
結果として、1グループのメンバー同士がフレンドリーファイアを起こしてしまった。
エレンが取り巻きをぶっとばしてしまったのだ。
……あの子すげえな。
「えっ!? なんで君が飛び込んでくるんだい!?」
「エレンくん、ヴァニエちゃんがまた来てるっシルヴ出てきてっ【ウィンドミキサー】」
「赤髪の人、そのまま加速して。【ファイアーエンチャント】」
謎の少女が放った炎のエンチャントがウィンドミキサーを吸収して威力を上げただと…
なるほど、エンチャント系は特定の魔法に対して耐性を持つこともできるのかっ…勉強になる。
てかあの少女、判断が完璧すぎる。
「炎のエンチャント……、力が漲ってきましたわっ! 私の全力をくらいなさいっ」
「【聖剣解放】っ、だめだっ間に合わないっ!」
エレンがもろにハンマーの直撃を受けた、聖剣解放そのものは間に合っていたのでダメージは減ってそうだが、あのエンチャントが2つのったフルパワーではそれでもダメージは通ってるはずだ。
かなりふっとんで距離がとられたので、戻ってくるまでに多少のタイムラグがあるかな。
そしてフィッテがエレンという盾を失い2体1になってしまったことで、シルヴを盾に回すしかなくなった。
これだとかなりの魔力消耗になるな…それに炎のエンチャント状態だと中堅程度の風魔法では逆効果だ。
なんだこの展開、以外すぎる。
「シルヴ、エレン君が戻るまで全力でハリケーンだすから維持してっ!【ウィンドハリケーン】っ!」
「キャァァッ!?」
「……赤髪の人へのダメージにはならないけど足止めってことね。それならそれでもいいけど【弱・身体強化】【ファイアーエンチャント】」
フィッテが足止めをしたと判断するやいなや、簡易的な身体強化とエンチャントでフィッテにつっこんでいった。
だがあの強化率じゃ接近戦ですらフィッテに勝てないと思う、おそらく気になっていたスキルを使うんだろう。
「どうやら戦闘そのものは苦手みたいだねっ!それじゃボクには勝てないよっ、【芭蕉棍・突】っ」
「【解析眼】【集中】」
「えっ!?うそっ!」
少女がギリギリでフィッテの攻撃をよけた。
いや、ギリギリっていうよりもあらかじめ攻撃が来ないところが分かっていたように移動した。
何やこの少女、めちゃめちゃ強いやん。
いくらフィッテが接近は苦手だといっても、物理だけでC級下位くらいの戦闘力はある。
それを一発だけとはいえノーダメージで回避とか、すさまじいな。
「もらった……」
「ははは、そう思うかい?【極光剣・瞬】」
「えっ!? ……カハッ!」
だが、その間にエレンが突如として現れた。
あれ光属性の幻術だな、途中まで姿がほとんど見えなかったし。
その後、謎の少女が気絶したことにより2対1になったヴァニエが力負けして試合は終わった。
なんだかいろいろと以外な展開になったな。
「よし、とりあえず試合は終了だ。次は3組と1組の戦闘訓練を始める。準備しろ」
俺たちの出番のようだ。
吹っ飛んでいった取り巻きはやっともどってきた。
「まあ俺も修行で得た手の内は2人に話したし、これでおあいこかな」
「お前と組むのは気に入らねえけど、あの金髪と互角に戦うには今のところそれしかねえか」
それじゃ空間魔法を試してみますかね。
謎の少女は【解析眼】【集中】を高レベルでもっており、【無属性・火属性・格闘術・体術】がかなり低レベルです。
ですがそれでもD級中位くらいはあります、さすがSクラスですね。
次はハドウの閑話になります。




