58 蒼炎の魔神
S級vsゼノンのフルパワーです。
この白竜でかすぎだろ、王種って全部このデカさなのか?
ギラの時もそうだったが、デカすぎて遠近感がよくわからないぞ。
「あんたが光竜か、さっそくで悪いんだけど要件いいか?」
『構わぬ。だが言わずとも分かる、その者が持っているブレイブソードの解放であろう? まだ担い手の定まっていないブレイブソードの宿主への定着、それ自体はそんな難しいことでもない』
どうやら言わなくてもわかっていたようだ、まあこの島に来る人間なんて限られているからわかるのかもしれない。
「そうだけど、その他にもここに観光に来た目的も兼ねている。あのダンジョンみたいなクリスタルの洞窟とか光る泉とか、見てみたいところが結構あるんだ。何度も来れるかわからないし、どうにかなんないか?」
「確かに時間がたてば空島は移動しちゃうからね、来るにしたって次いつになるかわからない」
そうそう。
まあ頼んでばかりじゃ悪いしこちらかもなんか提案しないとな。
といっても、相手がなにを要求しているかわからないから何も出来ないけど。
『フム、面白い。本来ここまで来ることの出来ない者が、ただの観光目的とはな。500年前に訪れた強き者は<ききゅう>? なるものを使ってここまで来たようだが、そなたらはどうやって我が城まで来た?』
「飛んだんだよ」
ビューンってな。
『……そなたらはどうやってここまで来た?』
あれ、聞こえてなかったか……
「いやだから飛んだんだ、飛行魔法で一気にひとっとびだな」
『……』
……あ、その眼しってる、ギラがしてきたのとソックリだぞ。
なんでや、俺なんも悪い事してないのに。
『どうやら嘘はいっていないようだ、ますます面白い。フム、もしそなたらが今後もこの島に来たいというなら叶えてやらないこともない』
よっ、さすが白竜ルクァン!
いちいち懐が広いぜっ。
「ありがとう、そうしてもらえると助かるな」
『ただし、この我と戦い認めさせることが出来たらだがな。竜種の格とは力の格だ、力無き者に対等に接することなどありえない。一部の例外を除いてな』
確かにギラも同じことを言っていた、それが竜のやりかたなんだろう、異文化ってやつだな。
だが例え相手がS級だろうとパーティ戦でそうそう負ける気はしない、その話乗ってやろうじゃないか。
「俺はいいぜ、みんなはどうする?」
「もちろんやるに決まってますわっ! こんな機会そうそうあることじゃないですもの、お父様に追い付くためにはこのくらいの壁は乗り越えないと話になりませんっ」
「ドラゴンの頂点と決闘か、確かにこんなことはそうそうあるものじゃない。僕がどこまでやれるようになったのか確かめるチャンスさ、やらないなんてあり得ないよ」
2人はやる気満々なようだ。
まあヴァニエの思考回路は魔族としてドラゴンに通じるところがあるからな、当然だ。
エレンだって大陸闘技大会でギル兄さんに負けてから必死に修行してきたんだ、逃げるなんてあり得ないだろう。
「ゼノンくん、ボクは」
「無理ならしなくていいんだぜ? ここで負けても死ぬわけじゃないしな。なによりフィッテが無理するくらいなら竜と決闘なんてこちらから願い下げだ」
別に空島なんてもう一回探して見つからないわけじゃない、めんどくさいだけだし。
最悪のケースとして俺一人で戦ってもいいとこまでいけるんじゃないかと思ってる。
「……ううん、ボクはもう自分の足で立ち上がるって決めたんだ。ならこんな壁くらいで躓いてたら話にならないよっ! ボクもやるよっ!」
フィッテが急にやる気になった、なら全員大丈夫だな。
「こっちは全員やる気みたいだ、4対1になるが大丈夫か?」
『構わぬ、もとより竜の文化を押し付けているのはこちらだ』
「なら決まりだな」
それにしても、あのフレンドリーな人が言っていた意味はこういう事だったんだな。
剣の開放やらなんやら含めて、強き者でなければ最低条件を満たさないという訳か。
まあそれが対価だってんならどんと来いだ。
『クルォォオオン……それでは先制攻撃はそちらに譲ろう。いつでも掛かってくるがいい』
ルクァンが白く輝くオーラをまとって宣言してきた。
それにしても先制攻撃の確約か、それならそれでやれることは沢山あるぞ。
あとでやっぱナシなんてダメだぜ。
「みんなはとりあえず準備だけしておいてくれ。俺が先制攻撃を放ったら一斉にスタートしよう」
「了解さ」
「うんっ!」
「デカいの決めてやりなさいっ!」
3人はドラゴンに対して有効である位置取りに移動し、それぞれスキルなんかで準備をしてくれている。
じゃあこっちもいきますかね。
俺は片手をあげて、上空に魔力の塊を溜め始めた。
魔力をいっきに体から放出し上空に貯め込んでいき、内包魔力がなくなってきたらいったん溜まった魔力を魔力操作で渦を巻くようにコントロールする。
【不死身の情熱】で魔力が回復するまでの時間稼ぎだ。
……そしてまた魔力を溜め始める。
「なんなんですのあの魔力量は、ありえないですわ」
「ははは、前にギラを治療したときにもありえないって思ったけど、今回のこれはちょっと頭おかしいね。もうどれくらいの魔力なのかわからないレベルだ」
「ふええ、……ふええ」
ヴァニエとエレンが変態を見る目でみてくる。
頭おかしいってなんや、おかしいのは魔力量じゃん!
フィッテに至っては俺も何を思っているのか分からない、大丈夫なのかこの子は。
さて、この工程を3回ほど繰り返し俺の魔力総量の約3倍、6万近くの魔力を上空に溜め込んだ。
これをどうするのかというと、こうだっ!
「……それじゃ俺の全力全開、本気でいくぞっ!【蒼炎の魔神】っ!!」
………ギュォォォオオオッ!!!
本来物質に干渉しないはずの純粋な魔力が嵐のように風をかき乱し俺へ集まっていく。
魔神モード中は自分の全魔力を使うからパワーアップ以外の行動がとれなくなるが、今回は違う。
こんだけ時間がありあまってるなら、上空に俺の魔力を溜めてそれを使えばいいんだ。
まさに裏技である。
スキルは上空に溜まっている魔力が俺の魔力だと思ったのか、俺の体内でフルに溜まっている魔力には目もくれず俺の周囲に魔神の力だけが集まってきたようだ。
それも、ノーリスクでだ。
「まさに、蒼炎の魔神ならぬ【不死身の魔神】だなっ!! みんな、いっきにいくぞっ!」
無茶苦茶な超エネルギーを纏った俺が白竜につっこんでいく。
『……なんだそれはっ!? 人があんなエネルギーを処理しきれるはずがないと思っていたが、まさか神の力なのかっ!?』
おお、あせってるあせってる。
「半分正解だっ! 一発目いくぜ、ただのパンチ!」
『グルゥオオオオオオオオオオオオッ!!?』
……………………
………………
………
「白竜が吹っ飛んでいった」
天空城からいなくなってもうた、どうすんだこれ。
「……バカですわ、究極のバカですわ」
「あ、あははは」
「キャーッ!キャーッ!!」
どうしよ。
S級相手に張り切り過ぎたらしいです。




