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19 俺「はっ、甘いぜ……」

ゴブリンロードの赤いオーラは魔物専用スキルです。

次々にゴブリンを屠っていくイケメン君だったが、さっき見た時のイケメン君からはこんな力は感じなかった。

鑑定したわけではないが、魔力量や体術なんかの技量はだいたいわかるはずだったんだがな。

いまのイケメン君からは明らかに違った魔力を感じる、冒険者ランクでいえばDランクくらいだ。


そんなことを考えていた時、ゴブリンたちに異変が起きた。

追い詰められていたゴブリンたちは、なぜか一匹のゴブリンの元に集まっていき、そのゴブリンに首をはねられていく。


なんだ?

諦めて集団自殺か?

いや、そんなわけないけどさ。


そのことを不自然に思ったのか、イケメン君も追撃するのをやめて警戒の構えを取っているようだ。

……と、そのとき、首をはねていたゴブリンの魔力が急激に膨れ上がった。


あぁっ、そうか!

レベルアップかッ!


「……ッ!?」


イケメン君もなにかを感じ取ったのか、剣をもつ手に力が入る。

そして、ゴブリンの変化はそれだけに留まらず、魔力と共に肉体が変質していった。

てか、あれ進化してね……?


「グォオオオッ!!」


しちゃったよ。


ゴブリンが意図したわけではないだろうが、進化の咆哮と共に狼獣人の少女が尻餅をついた。

当然そうなれば、イケメン君はその場から離れるわけにもいかず、大ゴブリンの攻撃を避けることもできなくなる。

大ゴブリンがその隙を見逃すはずもなく、暗く赤いオーラをまとってショルダータックルを真正面から受ける展開に。


「……くっ! ゴブリーンロードのスキルかッ」


あれがゴブリンロードなのか、キングの一歩手前だな。

単体での討伐ランクはCに届かないDくらいだったはずだが、今のイケメン君には分が悪いだろう。


イケメン君が自由に動ければ違ったのだろうが、いまのままじゃスピードはないがパワーが極端に高いゴブリンロードに押しつぶされるだけだ。

仕方ない、俺が助けるか。


俺は最大出力で身体強化を発動し、ゴブリンロードに超威力の飛び蹴りをお見舞いした。


ドンッ


ゴブリンロードのタックルと俺の飛び蹴りは一瞬だけ拮抗したが、やはり俺の威力のほうが高かったのか相手の態勢が崩れたようだ。

うし、このままいける。


「君はッ!?」

「いいから、イケメン君はとりあえず女の子の護衛を頼むよ。まだチラホラゴブリンが残ってるしね?」

「……あっ!」


イケメン君は俺の登場に驚いて気が抜けたみたいだったが、すぐに残りのゴブリンに注意を向けたようだ。

そうだ、それでいい。



俺はイケメン君から意識を外し、ゴブリンロードの方を向く。

ここはやっぱり肉弾戦だろうな。


圧力魔法はいまのとこ切り札だし見せる気はないが、かといって今じゃアイアンメイデンよりも、レベル補正が掛かった身体強化と体術、グローブの格闘術を駆使したほうが安全だ。


そこまで考えた俺は、そのまま素手でゴブリンに突っ込んでいった。


「グォオッ!!」


ロードは俺がつっこんだところを、ボディーブローで対応してきたようだ。

ふむ、そんなもんか?

格闘術レベルは俺と大差ないようだが、はっきりいってその他の要素を含めたら俺の相手ではないぞ。


「ははっ!いきなり大技は甘いんじゃないのっそれはっ!」


俺はボディーブローを余裕で躱し、まずはロードのスネを蹴りつけた。


「ガァッ」


予想通りロードの動きは一瞬停止し、隙だらけになる。

魔物は力があるが、やっぱり人間に比べて知恵と技術が足りないな。


その後、隙だらけになったロードに追い打ちをかけるため、大きくジャンプ。

空中へ浮かび上がった俺は顔・後頭部・首など急所へ数多の拳を撃ち放った。


「おらぁ! 爆裂拳!!」


……そんな技ないけどね、技名なんて適当だ。


撃ち放った拳はロードに直撃し、衝撃で内部の骨を砕きながら肉体を破壊していった。

うむ、楽勝だったな。

油断しては元も子もないので、ストンッと着地した俺はしばらく様子を見ていたが、動き出す様子がない。


それじゃちょっくら、あまった時間でイケメン君の鑑定でもしますかね。

そうと決めた俺は、その場を猛ダッシュで過ぎ去り、鑑定のために近くの茂みに隠れた。



敵ではないと思うけど、謎のスキルを使う相手を警戒するに越したことはない。

今後の参考にもなるしな。


イケメン君はまだゴブリンと戦っており、背後の獣人少女にもケガはないようだ。

あと少しでこの戦闘も終わりそうだな。


ちなみに鑑定した結果、イケメン君には俺のまだ知らないカテゴリーのスキルがあったのを確認できた。


(エクストラ)

─遺伝魔法【光騎士:Lv.2】


……って、なんだそりゃぁ!

エクストラってなんだ、そんなのもあるのか。

もしかすると、俺のまだ解放されていない閲覧不可のスキルに関係するかもしれない。


詳しく見てみると、どうやらレベルに応じて武器防具・自身の肉体に光の身体強化をかける魔法のようだ。

身体強化の上位版である。


「おいおい、なんなんだコイツは」


ついでとばかりに名前も鑑定したら、「エレン・サンドレイク」となっていた。

ていうか、サンドレイク?


……ん?


確かこの帝国の名前がサンドレイクだったはず。


「つまり、王子、だと。よしっ! 逃げようっ」


悟った瞬間、一瞬で脳内裁判が勃発し決着していた。

だって権力怖いんだもん。

グッバイ王子。


「……あばよっ!」


「あっ、君っ! よかった、まだ居た!」


逃げ出した俺だったが、後ろから余裕で見つかってしまったようだ。

なんで声だした俺、バカなのか。


この距離なら聞こえないと思っていたんだが、あのスキルは聴力もよくなってるんだろうな。


「はぁっ、はぁっ。ゴブリンロードは君が倒したんだね、すごいよ。君が居なかったら僕も彼女も危ない所だった。自分でもだいぶ強いと思ってたけど、まだまだだな。ぜひ僕の家でお礼させて欲しい。……といっても実家はここじゃないんだけどね」


いや、おまえんちって帝国の王城だろ。


「だが断る」

「……えっ?」


とりあえず適当な言い訳をしておこう。


「あ、いやそっちの女の子のこともあるだろ? だから俺の相手をしている場合じゃないと思うよ」

「あぁ、大丈夫さ。彼女には外傷は見当たらなかった、攫われてすぐに助け出せたみたいだよ。……よかった。ただ、奴隷紋が刻まれていたから、解除にお金がかかると思うけどね」


逃亡計画が2秒で崩壊してもうた。

というか奴隷だったのか、見た目じゃわからないとこに刻まれているのかな。


「あっあの、私からもお願いします。私がいうのは筋違いだと思いますが」


狼少女ちゃんか。

うーん、ここで断ったらなんかかっこ悪いなぁ、はぁ。


「はあー、わかったよ。ただし、俺はここを離れるわけにはいかないから、そのつもりで」


結局お礼は受け取ることになったが、迷宮都市にいればさほど問題ではないだろう。

迷宮都市内ではギルドの力のほうが帝国より上だしな。


そうして、ピンキーラビットの討伐は明日以降へ持ち越しになり、迷宮都市内部へと戻ったのだった。



……あとでイケメンにスキルのこと聞いとこ。

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