閑話 計画どおりっ!
以前に書き溜めていた閑話その1です。
ボクの名前はフィッテ。
両親には人族のお父さんとエルフのお母さんがいる、ごくごく平凡なハーフエルフだ。
だけどそんな平凡なボクには、平凡ではない大きな夢がある。
それはズバリ、ボクだけの英雄様を見つけることっ!
お母さんに教えてもらった「精霊の英雄さま」の物語では、ハーフエルフの少女は森を出て旅をしていくうちに、英雄さまに出会って恋をして最後には結ばれるらしいのだ。
つまりどういう事かというと、エルフの森から出て来たハーフエルフであるこのボクが、新しくお引越ししてきたクロスハート領でビビっと来る人を見つければ、その人はボクの英雄さまという事になる、たぶん。
だからボクはこの辺りで1番偉いって言われている、クロスハート家の馬車に乗り込む事にした。
きっと偉い人の周りにはすごい人が集まりやすいだろうし、このままここで待機していればそのうち分かるはずだ。
それに馬車に乗り込む時には、かくれんぼで鍛えた偽装(?)を発動させておいたし、運命の英雄さま以外に見破れるものはいないはず。
完璧な推理だねっ!
それから馬車で揺られる事30分弱、まだかまだかと待ちわびていると、ついに見つかってしまった。
この完璧な偽装(?)を見破るとは、誰だかしらないけどやるねっ!
さぁ、ボクにその姿をみせるがいいよっ!
そしたら目の前に、黒髪黒目をした同い年くらいの男の子がいた。
ゼノンくんと言うらしい。
物語りに出て来た英雄さまも黒髪黒目だったというし、目の前の男の子と完全に一致している。
これにはボクもビビっときたね。
そして悟ったのだ、彼こそがボクの英雄さまであるという事をっ!
「(ニヤッ)」
「……っ!?」
おっと、あぶないあぶない。
嬉しくてちょっとだけニヤッとしちゃった。
ゼノンくんの心を射止めるには、もっと可愛い笑顔じゃないとダメだね。
「えへへ……」
「こ、これから宜しくな?」
「うんっ」
こうしてボクは運命の出会いを果たした。
──4年後。
運命の出会いを果たしてからしばらく、7歳になったボクはゼノンくんやエレンくん、ミーシャちゃんといった仲間たちと冒険者育成機関に通っていた。
ゼノンくんは思った通り精霊の英雄さまだったらしく、授業や冒険でも無敵の勇者さまに相応しい大活躍だったよ。
それに最近使えるようになった【精霊術】で、彼の周りにはいろんな属性の精霊さんが飛び回っているのが分かる。
属性は【火・水・風・土・雷・光・闇・無】と、それに加えよくわからないタイプの精霊さん達。
普通の人は精霊さんたちが1属性か2属性そばに居れば良い方なのに、どう考えても規格外だよ。
最初は近接戦闘ばかりしていたので魔法がそこまで得意じゃないのかと思ったけど、全然そんなことは無かった。
きっと、冒険者育成機関の年長組の誰よりも魔法に長けていると思う。
そろそろ3カ国学校対抗の闘技大会があるみたいだし、ボクの英雄さまの実力を披露するためにも、ぜひとも出場したいところだね。
「という訳で、ゼノンくんっ!」
「うっ!?」
期待を込めた目で出場を促すと、彼の緊張が伝わってきた。
うんうん、やっぱりやる気みたいだね。
「ふっふっふー、言わなくても分かってるよっ!」
「ははは、どうやらみんなやる気みたいだね。それに、この闘技大会は僕の真価を試す時さ。ゼノン、君との再戦が待ち遠しいよ」
「いや、あの。……そうじゃなくてだな」
それじゃあ方針も決まった事だし、打倒年長組を目標に大会の参加申請をしてしまおうかな。
そしてボクたちは緊張しているゼノンくんを引きずり、合計で10名の出場枠への参加申請を行った。
年長組の人たちはあまり良い顔をしていなかったけど、この世界は弱肉強食なのだ。
己の未熟さを嘆くがいいよっ!
「……くっくっく」
「フィッテ、……お前」
「へにゃ?」
「い、いや。なんでもない」
なぜかゼノンくんがボクを見て震えてるけど、どうしたのかな。
あっ、もしかしたらボクが負けてしまうかもしれないって思っているのかな?
ちっちっち、それは甘いよゼノンくん。
最近使えるようになった【精霊術】を駆使すれば、この学校の年長組なんてけちょんけちょんだっ!
だけど心配性な彼を少しでも安心させてあげたいし、ここは見栄を張ってしまおう。
「ふふふ、ボクなら大丈夫だよ」
「そうか? そ、それならいいんだけどな」
「うん。本気を出してボコボコにしちゃうよ!」
「えぇ……」
周りから殺気が漏れ出すけど、残念ながら君たちではゼノンくんどころか、ボクにすら及ばないのだ。
さぁ、かかってくるがいいよっ!
そして数日後、帝国の代表となる育成機関10名の選抜試験を行った結果、見事ボクたちはその出場枠を勝ち取った。
正直まだまだ余裕があるし、やっぱり年長組なんて目じゃなかったかな。
これなら闘技大会でもゼノンくんたちと一緒に活躍できそうだ。
活躍すれば彼もボクに惚れ直すだろうし、すべて計画通りだねっ!




