135 クロスハート再び
ファイスとセレナに合流し、ヴァニエを回収しに教国まで瞬間移動してきたのだが、目の前の戦場では予想以上の激戦が繰り広げられていた。
ヴァニエと教国が結託して立ち向かっている所までは予想通りなのだけど、まさかアーゼインやクロウ、ハドウまでが一緒に戦っているとは思わなかったな。
だがしかし、これは好都合だ。
相手側も力のある魔族たちみたいだし、あの数の大魔族相手にヴァニエ一人で立ち向かえたとは思えない。
現に、今の彼女からは聖魔混合の力も限界突破の勢いも感じないしね。
おそらくこの戦いの序盤で消耗しつくし、満身創痍になったのだろうと予想できる。
「それにしても、とんでもないなアーゼインの奴。あいつがあんな必死な顔で戦うなんて、想像したこともなかったぞ」
「だな。あの鬼気迫る魔力、もしかしたらお前といい勝負なんじゃねぇの?」
……ありえるな。
なんていうか、今の奴からはスキルやステータスなんてのに囚われない、何か特別な物が宿っているように感じるし、実際に闘技大会の頃より数段強い。
というか、もしかしたらこういう存在の想いこそが、本来の「ユニークスキル」発現の兆候なのかもしれない。
俺が蒼炎の魔神を発現したときも似たようなものだったし、あいつの中の何かが変わりつつあるのだろう。
ちなみに、アーゼインの戦い方は糸を使った戦い方なのは相変わらずだが、今の奴はパペットを召喚しておらず、金色のオーラを纏って単独で戦っている。
魔力の質も完全に変化していて、まるで自分の命を爆発させているかのような、ものすごい積極性を感じさせる攻めに転じているようだ。
パペットを出していなくてもトリッキーなのは相変わらずなので、単純に個としての存在が強化された感じに見えるな。
「まあでも、いくらアーゼインやクロウ、ハドウたちが参戦したって言っても、相手の魔族は全員A級上位は確定みたいだし、強い奴はS級に届いている。これは間違いなく助太刀はした方がいいな。魔族の数も多いし、このままじゃ確実にジリ貧だ。……初手は頼んだぞファイス、セレナ」
「はっ、任せろ。ちょうど魔力があり余っていたところだ」
「……ん、任せて」
今の戦況に加え、広範囲の雑魚を一網打尽にできるファイスと、強力な召喚でアーゼイン勢力の壁になれるセレナが加勢することで、かなりの時間稼ぎができるはずだ。
その間に俺は魔力の回復に努め、【蒼炎のクロスハート】状態への準備に取り掛かる。
ギル兄さんの所にフィッテとユリアをおいてきてしまったのが痛いが、ここにはヴァニエとスラキュー、ファイスとセレナが居る。
最低でも倍率は5倍だし、負ける道理はない。
それに向こう側としても、無駄に兵力を消耗させる戦いをするはずもないし、俺がクロスハート状態になれば撤退するのではないかとも考えている。
いくら勝つためにはなんでもする奴らでも、そもそも勝てない戦いを続ける意味はないからな。
あ、ついでにこの待ち時間を利用して、あの金色のオーラを鑑定しとこ。
(ユニーク)
【アーゼイン・マモン】
└自身の持つスキルを対価にする事で、莫大なステータスを得る。対価にしたスキルは戦闘終了後に返却されるが、自分が戦いに負けたと感じると、ペナルティとして返却が遅くなる。対価にするスキルが強大で多いほど、効果は高まる。
これはあれだな、魔力を対価にする蒼炎の魔神の、スキルバージョンだ。
だが魔神と違って対価にする量を選べるし、ペナルティもそこまでひどい物じゃない。
完全に使いやすさを重視した、奴らしい能力だ。
パワーの変換効率は魔神より少しだけ劣るようだけど、使い勝手がいい分実践向きだな。
ちょっと羨ましいぞ。
というか、これなら俺のアンリミテッドスキルでアーゼインを強化した方が早くないか?
よし、そういう方針に切り替えよう。
「ということで、そろそろ魔力が回復しそうだ」
「【連続魔法・アイスバーン】ッ!! ……相変わらず謎の回復速度だな」
まあ、不死身の情熱だって腐ってもユニークスキルだし、この程度は造作もない。
「それじゃあいくぜ、受け取れアーゼインッ!! 【クロスハート】ッ!!!」
アンリミテッドスキルによる効果を奴に切り替え、切り札を発動させる。
すると予想通りというべきか、クロウとハドウはアンリミテッドのスキルの効果範囲に選択されたようで、ステータスの上昇量が2倍、3倍とグングン高まっていく。
「……よし、4倍、5倍、……って、えっ、おい!!?」
予想以上に倍率が増えたぞ。
いったいどうなっているんだと周りを見渡してみると、クロウやハドウの他に、俺やヴァニエの分まで重ね掛けされたのが確認できた。
信頼してくれるのは嬉しいけど、なんかちょっと予想外だなこれは。
でもまあ、強くなる分には問題ないか。
「ちょ、これヤバイじゃんっ!? カーネインの跡取りが急に強くなったように見えるじゃんっ!? というか、強すぎ……グベェッ!?」
「……感謝するよ、ゼノン・クロスハート」
「まあ、目的は同じだからな」
俺の力を利用して急激に強くなったアーゼインが、子供姿の公爵級魔族を瞬殺した。
やはり尋常じゃない力だな、冷や汗ってレベルではない。
というかつまり、俺がアテナと戦っている時もこんな感じだったのか、確かにこれは引く。
だが見物してるだけってのもアレだし、せっかくだから参戦するとしようかな。
くらぇっ、ゼノン砲っ!!
「連続魔力波っ!!」
メインのA級上位魔族は奴に任せておけるっぽいので、今回は極太ビームでつゆ払いに徹しておく。
さて、ここまでくればもう、あとは流れ作業だな。
撤退するならいつでもどうぞ。




