閑話 アーゼイン・マモン
更新がだいぶ途絶えていたので、あらすじを書きました。
1話~50話までのあらすじ。
見えない者たちの不幸に取りつかれた主人公が死に、膨大な魔力もち転生することに。
その後、転生直後に0歳児から修行を重ね、最強を目指す。
しかしあまりの急成長っぷりに両親は困惑し、3歳になるころには勇者だなんだと持ち上げられる事になる。
そしてその道中、ハーフエルフの少女<フィッテ>を仲間として迎え入れ、冒険者育成学校へ行くことに。
帝国で運営される冒険者育成学校へ到着後、帝国の王子にして親友<エレン>、狼の少女<ミーシャ>、と仲間になり、学校対抗戦の闘技大会へ出場する権利を得た。
しかし闘技大会では魔族の襲撃があり、ユニークスキル【蒼炎の魔神】を覚醒させるも、力及ばずエレンと共に魔大陸へ。
魔大陸ではツンデレドリルのお嬢様<ヴァニエ>が待ちかまえていたが、常識知らずだったのでうやむやにすることに成功。
その後、彼女も人間大陸へ戻るたびに同行することに。
旅の道中、チタンスライムとよばれるスライムをテイムすることに成功し、<スラキュー>と名付ける。
その後なんやかんやあって、結局へ大陸へ戻ってこれることになる。
補足:人間大陸に戻る途中でブラックドラゴンの王、ギラと対面し、傷を癒すことで友になった。
50話までは、あらすじとしてこんな感じです。
続きはまたいずれ。
ヴァニエの父、ヴェルゼブブ家の当主がその手で娘の命を刈り取ろうとした直後、彼らの死角から死の糸が舞った。
「待たせたねぇ、ヴァニエェッ! ハハハハッ!」
「アーゼインあなた、なんで……」
ヴァニエがどうして自分を助けるのかと問うが、彼の目は相変わらず魔公爵家の当主達へ向けられている。
だが答えなどなくとも、その表情からはどこか、彼なりの譲れない物が感じ取れた。
「あいつ、マモン家の跡取りじゃん。それに魔王サマとクロウのクソジジイ。もしかしてなくても、これちょっとこれヤバイじゃん?」
「……ぐふぉふぉっ。そう焦らなくとも、あの者たちには何もできんよ。我らが邪神様に歯向かうということは、自らの命を否定するのと同義。あの何も知らない世間知らずの小娘ならいざ知らず、彼らがその事実を知らないわけがない」
「……納得じゃん。それならさっきの筋肉みたいに油断しなければ、あいつらはたいしたこと出来ないじゃん」
子共姿の魔族が問うと、肥満体の魔族が余裕をもって答えた。
実際彼らにはそれを裏付けるだけの理由があり、自らを生み出す果てなき力を持つ邪神には、生殺与奪を握られていると同義なのだ。
「命、ねぇ? クハハッ」
「なんの、なんの話をしていますの?」
「いやぁ? 別にたいした話じゃないさぁ、ヴァニエ、君の誇りに比べればねぇ……」
しかし、アーゼイン・マモンは揺るがない。
どこに彼の自信を裏付ける根拠があるのか、彼の言葉を聞いた魔公爵家たちは探ろうとするが、答えはでないようだ。
すると、そんな事も気づかないのかと言うようにアーゼンが続けた。
「まあ確かに? 邪神に遠く及ばない、力なき僕たちが神に歯向かえば、消滅は必須さぁ」
「なら、その自信の根拠はどこにあるじゃん? 今のお前からはどこか、あのカーネインの匂いがぷんぷんするじゃん……」
「ハハハッ! 父さんと一緒にしないでくれよぉ、僕は僕さぁ。それに、根拠なんて簡単さぁ、いまからその邪神を越えればいい。……ただそれだけの事だ」
そう言い放った彼の目には、さきほどまでのおどけた様子はない。
その瞳の奥には、得体の知れない「何か」が宿っているように感じられた。
そして、彼はその「何か」を思い出すように言葉を紡いだ。
「……覚えてるかいヴァニエ。ずっと昔、君が僕に言った事を」
そう、それは彼にとっての原点。
すべての始まりの約束だった。
──
─────
────────
今から数百年ほど昔。
とある研究所で、一人の魔公爵が魂の研究を重ねていた。
彼は大昔、大魔王と恐れられた自分を変えてくれた、他の何にも代えがたい少女を失った敗北者だ。
だが彼は、その敗北の反動で力の大半を失ってもなお、少女を取り戻す事を諦めてはいなかった。
「ふム? スキルの根源を集めて自分の複製を作ってみたガ、やはリ失敗カ。魂というものは本当に厄介だナ」
「…………」
彼の目の前には物言わぬ人形のような分身が横たわっており、製作者である彼の命令には従うが、自分の意志を持って動くことがない。
今回の実験は失敗に終わったようだ。
……しかしその翌日、再び研究所を訪れてみると、昨日まで微動だにしなかった人形がいなくなっていたのである。
これはいったいどうした事かと辺りを見回すと、彼の使用している転移陣が作動しているのが発覚した。
人形は、自分の意志で動きだしたのだ。
彼はその結果に満足すると、再び研究に没頭しいった。
「……で、あなたは結局なんなんですの? うちの城に突然あらわれたと思ったら、何も思い出せないみたいですし」
「……僕は、僕は……?」
「はぁ…… やってられませんわ。じゃあ好きな物はないんですの? 楽しい事とか」
「楽しい?」
研究所をこっそり抜け出した人形は、赤毛の少女と謎のやりとりをしていた。
「分かりましたわ。それじゃ、ゲームをしましょう。ゲームは楽しいですわよ」
「やってみる」
そしてその後、赤毛の少女ヴァニエと大魔王の複製のゲーム大会が毎日のように行われた。
最初はヴァニエが必ず勝利を収めていたのだが、1ヶ月、2か月と経つうちに勝敗は逆転することになる。
1年経つ頃には、すでにヴァニエでは手も足もでなくなっていたのだ。
「あぁもうっ! あなた本当に、ゲームだけは強くなりましたわね。いったいどんな知能してますの?」
「クハハッ! ゲームは楽しいねぇっ! 教えてくれたヴァニエには感謝しかないよぉ」
「ついでに言えば、性格まで悪くなりましたわ」
「そうかい?」
彼は確固たる自我という物を持つまでに至り、いまでは楽しさという物がなんなのか分かるようになっていた。
「それで今更ですが、あなたは誰なんですの? 結局、名前も思い出せないみたいですし」
「僕かい? ……そうだなぁ。それじゃあ逆に聞くと、君は誰なんだい?」
彼女の問いかけに対し、彼は同じ問いかけで返した。
これは何も意地悪をするというよりは、本当に自分が誰かという手がかりが無いうえで、相手の意見を参考にしようとする彼なりの答えだった。
「私ですの? 私はヴァニエですわ。誇り高き魔公爵家の長女、ヴァニエ・ヴァルゼブブですわっ!」
「じゃあ、その誇りというのが君なのかい?」
「難しいことは分かりませんわっ! とにかく、自分の信じたことが、誇りなんですわ」
「…………」
彼女の答えに、彼は戸惑った。
だが、何かを掴んだように頷き、さらに質問を続ける。
「それじゃ、僕は何を信じればいいんだい?」
「そんなの、今のあなた全てですわ。感じてきた事、これからしたい事、全部」
「……全部、か。難しいねぇ?」
彼は少しおどけた表情を見せる。
「それにあなた、今までの記憶がないんですから、きっと何にも縛られず、何にでもなれますわ。それが例え、おとぎ話の神様があなたにどんな役割を与えようと、ですわ」
「クハハッ! さすがに神様に勝つのは無理なんじゃないかい?」
「関係ないですわ。あなたの信じたすべてが、あんたなんですもの」
「…………へぇ、それは良いねぇ。本当だったら、すごくいい」
ヴァニエは答える。
きっと、彼女にたいした意味はなかったのかもしれないと思いつつも、彼には何よりも大きな答えに思えて仕方がなかった。
そして、彼は最後にこう言い放つ。
「ハハハッ! なら、ゲームをしよう。僕が何者なのか、その答えを決めるゲームだ」
「どんなゲームですの?」
「ルールは簡単さぁ。ヴァニエが最後までその誇りを貫いたら、君の勝ち。僕は君の言ったように、僕の信じた僕になれる。でももし、君がどこかでその誇りを曲げるような事があれば、ゲームは<僕たち>の負け。僕は、やっぱり、僕じゃなくなる」
その彼の勝負に対し彼女も対抗する。
「……いいですわ。私は最後の瞬間まで、誇りを曲げませんわ」
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──
「……ゲームは、君の勝ちだ」
「…………」
「クハハッ! あれから一度も負けたことなんてなかったのになぁ。初めてゲームで、君に負けちゃったよ。……だから、もう相手が誰だろうと関係ないさ。超えてやるよ、邪神だろうが、なんだろうが。僕はアーゼイン・マモン、自分自身の誇りを持った魔族だ!!」
誇りを持つ魔族、アーゼイン・マモンが誕生した。




