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134 ヴァニエ・ヴェルゼブブ

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ゼノンが戦神アテナと戦い、ファイスとセレナが神聖騎士と対面している頃、教国の魔族領付近ではヴァニエが奮闘していた。

何者かの指示により迫りくる魔族に対し一歩も引く事なく、格闘術や槌術、果ては噛みつきでもなんでも使って応戦しているのだ。


その姿に、魔族を憎んでいるはずの教国の人間ですら共感を覚え、彼女を一人の英雄として認めていた。


そうしてしばらく殲滅戦が続き、魔族の勢いが若干衰えてきたところで、彼女が口を開いた。


「まったく次から次へと、キリがありませんわね。それにしても、なぜあなた方が人族を襲うのか理解できませんわ」

「…………」


しかし魔族は答えない。

まるで彼らなど食料だと言わんばかりに、人族に味方する彼女に対し、嘲笑うかのような顔を見せるだけだった。


「無言ですか…確かに、ゼノンと旅をして出会ってきた人族だって、誇りある者ばかりでは無かった。…ですが、彼らにも命があり、夢があり、生きたいと足掻き願う、心ある存在だったのですわ。その命を否定する事など、誰にできると言うのですっ」


そう言った直後、魔公爵家長女ヴァニエ・ヴェルゼブブの体からオーラが迸り、周囲に威圧をまき散らす。

唯一の切り札にして彼女の最強スキル、【限界突破】の始まりである。


「誇り無き我が同胞達に宣言しますわ。…そんな力では、私は倒せない」


すると、彼女が宣言に呼応するかのように闇が蠢き出した。

その闇は筋骨隆々の男性の姿に変わっていき、果ては子供のような魔族から漆黒の翼をもつ魔族までが出現した。


「……ふむ、なるほど一理ある。しばらく見ないうちに、ずいぶん成長したようだ」

「…なっ、お父様っ、魔公爵家当主達っ!?」

「では、第二ラウンドと行こうか…我が娘よ」


──絶望的な戦いが始まった。


それからの戦いはまさに地獄絵図。

人々は食いちぎられ、賢者は倒れ、英雄である彼女ですら一方的に叩きのめされる展開だった。


あまりにも多勢に無勢……

まるで最初からすべては計算しつくされ、勝機などどこにもなかったのように錯覚する。


「どうしたヴァニエよ、こんな力では倒れないのではなかったか?」


そう語る悪魔の顔は愉悦に歪み、親としての感情すらなく、殺戮を楽しんでいるようだった。


(…あまりにも数が多すぎますわね。ですが、ここで諦めるのはありえませんわ。考えるのです、あのバカなら、理不尽ゼノンなら、こんな時どうするのかをっ!)


「…ふ、ふふっ、見損ないましたわお父様。いつでも仕留められるはずの私に時間を与え、殺戮を楽しみ愉悦に浸るとは。油断や驕りが過ぎますわよ」

「なに、どんなに驕ろうともお前がこの状況を覆すことなどありえん。それよりも地上の地獄を味わい、楽しむのが先だとは思わんか」

「…………思いませんわね」


ヴァニエは父の答えに対し反論し、睨みあげた。

こうしている間にも彼女は必死に考え、なにか逆転の手はないか考えているのだ。


「それにしても滑稽ですわね。つい数ヶ月前、帝国で開かれた人族の闘技大会では、剣聖と呼ばれる者とその息子が見事な戦いを繰り広げていました。ですがまさか、魔公爵家の戦いがこれとは。魔族の名が聞いてあきれますわ」

「…何の話をしている」

「…簡単ですわ。あなた方のような者たちでは、あの誇り高き人族の足元にも及ばないということですっ!!」


ヴァニエが咆え、限界突破を維持して魔公爵家達に躍り出た。


「…なにを言うかと思えばそんな事か。…くだらんな」

「それが分からないから、見損なったと言ったのですわっ!!」


(私の考えでは、限界突破の本質は体に負担をかけた上での、リミッターを外した力の行使。スキルはただ、その負担を肩代わりしているだけですわ。そうであるならば、私の意志次第でさらに出力が上がるはず)


実際その考えは正しく、行使した限界突破は本来の上昇上限を超え、さらなる力を絞り出した。


「私は誇り高き魔族、ヴァニエ・ヴェルゼブブッ!! たとえこの身が砕けようとも、ここで引く事は許されないのですわっ」

「……ふむ、スキルの裏を突いてきたか。発想は悪くないが、まだ詰めが甘いな」

「なっ!?」


しかし、彼女の槌が父に届いた直後、その槌の勢いは完全に止まることになる。

それもそのはず、スキルの想定を超えた力の行使は体に負担をかけ、ダメージを加速させすぎたのだ。


いわゆる持久限界というやつである。


「こんな、ところで……」

「悪く思うな娘よ、これも邪神様の指示なのだからな」


そう言って悪魔は鍛え上げられた腕を振りかざし、娘の命を刈り取ろうと力を籠め──


──その姿勢のまま、何者かの糸によって首をはねられた。


「……えっ?」

「クハハハッ! 確かに詰めが甘いねぇ、戦闘を舐め過ぎだよ。アハハハハッ!」

「笑い過ぎだぞアーゼイン」


彼女のピンチに現れたのは、アーゼイン・マモン、ハドウ、クロウ達だった。


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えー、こちらゼノン。

ただいまファイスと合流した所だな。


「おせえぞゼノン、待ちくたびれたぜ」

「ああ、悪い。それと、とりあえずこっからみんなを回収していくから、そのつもりで」


やっぱりファイスチームは既に殲滅が完了していたようだ。

目の前には騎士が入った氷のオブジェクトがある。


「チッ、まだ他の奴らは終わってないのかよ。だがまあ、了解だ」

「…ん。はやく次行く」

「じゃ、次はヴァニエのところだな。あそこ敵の数多そうだし人数要るだろ」


てことで、教国へ瞬間移動だ。



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