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126 アテナの企み

─翌朝。


勇者を拘束した件について王と約束がある俺たちは、食事という形で王室に招待されていた。

まあ拘束もなにも、ファイスが魔族と一緒にコロっとっちゃったわけだけどね…

だけど王族に対しては無断で殺しちゃった訳だし、ここらへんで色々と問題が発生しないかちょっと冷や汗ものだったりする。


向こうとしても魔族が絡んでいる以上は文句は言えないし、ある意味ありがたい事なんだろうけどね。

ただ、王族や貴族の権力が大きいこの大陸ならではの見栄やプライドが心配だ。

…無駄な揚げ足取りなんかがない事を祈ろう。



「まぁ、そういうわけで伯爵の話しから勇者の違和感につながったわけだよ。どうやって捕まえたかは内緒だけどね、冒険者の奥の手ってやつだ」

「…なるほど、ここまでの経緯はだいたい理解した。勇者と魔族の繋がり、そしてその問題解決については感謝してもしきれないな」


どうやら素直に納得してくれたようだ。

貴族優位すぎる社会制度は腐敗しやすいと思っていたが、この国の王は結構まともな人のようで良かった。

ちなみに国王は長めのヒゲを綺麗に整えたお爺さんで、アカデミアの校長を少し若くした感じだ。

年齢で言うと60歳くらいに見えるな。



「だが、確かに君たちの話しの内容には矛盾はないが、一つ気になることがある」

「…ん?」


なにかマズったかな?


「ボクたちはウソなんて言ってないよ王様!…ゼノンくんは正直にはなしたよ?」

「いや、そうではないのだ。そうではないのだが、…君たちの登場があまりに唐突すぎるのだよ。まるでこの人間大陸へ唐突に現れたかのような違和感を感じる。君たちほどの者がまだ冒険者に成り立てな事も、そのような者達が前線基地付近でウロウロしていたことも全てな」


やっべぇ…この王様めちゃくちゃ頭がキレるぞ。


確かに俺たちの存在はこの大陸じゃ無名だったし、唐突に現れたことに関しては言い訳のしようも無いんだけどね。

だけど、洗脳や魔族事件を解決してもらってプラスの印象をもっているはずだし、なおかつ自分たちの味方についてる有益な人物を疑うとか冷静すぎるだろう…

なぜあの魔族程度につけ入る隙があったのか不思議なくらいだな。



「…ふむ、無言か。もし仮にだが、なんらかの理由で私の首…ひいてはこの国の転覆を狙っているのだとすれば無駄な事だ、こちらもそれ相応の切り札という物があるのだよ。たとえばそう…ミュラ・ヴァルキュリアとかだな…」

「いえ、待ってください。確かに僕達はこの点に関して証明できるものを持っていませんが、いまさらそれをする理由がありません。もしやろうとするならば、勇者の魔道具を壊す必要なんて無かったはずです」


エレンの言う通りだな、もしこの国を転覆しようとしてるならチャンスは何回もあった。

いまさら王の前で説明してまでそんなことを狙っているはずがない。


…っていうか、ん?

この爺さんちょっとニヤけてるぞっ!?

まさか遊んでるんじゃないだろうな…

校長といいこの王といい、なんで爺さんは若い者を手玉に取りたがるんだ…


「フッ…やはり動じないか。…いやいや、今のは失敬した。君たちの眼があまりに真っすぐなのでな、少し試させてもらったのだよ」

「驚かせんなよ爺さん、いまちょっと杖に魔力込めちまったぜ」

「…ファイスの言う通り、あのまま話が進めばこちらも対応せざるを得なかった」


セレナも召喚に必要な準備をし始めていたらしい、魔力が循環しているのがわかる。

この王もギリギリのラインを攻めてくるな…

茶番にしてはやりすぎだ。


「俺たちの眼のことはよく分からないけど、わざわざ揺さぶりをかけたってことは何か理由があるってことかな?」

「…やはり分かるかね。…ふむ、それでは君たちが我々の知っている大陸ではない、未知の場所から来たという前提で話すとしようか。正直に言えば、その方がありがたくもあるのだ」


やっぱそっちの方はバレてるか。

前提というより、もう確信に近い状態で話が進められている。


「まず最初に宣言するが、私はもうアテナ様を信じる事ができない。過去数百年を辿ってもそうだが、常に戦争・侵略の繰り返しばかりだった、そしてその環境を今のアテナ様の教えが助長しているようにも思える。神には神の事情があるのだろうが…私にはもう限界なのだよ」

「…まあ、俺には詳しいことは分からないけど、他からも聞いた限りではそうみたいだな」


だが一個人の考えだけでこの王が国を巻き込むはずがないし、他にも事情がありそうだな。

洗脳されていた時の記憶もあるみたいだし、もしかしたら貴族に化けた魔族の狙いなんかも察知済みなのかもしれない。



「…そして極めつけはこの騒動だ。勇者の件で確信したが、一部の者には女神アテナ様が魔大陸ではないどこか…未知の大陸に攻め込もうとしているのは把握済みなのだ。さきほどはヴァルキュリアを引き合いに出したが、あの者とも数ヶ月前から連絡が取れていない。たまにフラっと現れてはすぐに消え、また現れたと思ったら武器や神聖騎士を要求してくる。…何かの準備を進めているとしか思えないのだ」

「…と言う事は、魔族と勇者が手を組んで、別大陸に侵攻しようとしてたのもお見通しだったわけね」

「無論だ。あの勇者がやってきた一部始終は記憶に残っている」


…こりゃあ色々と大変なことになったな。


魔族だけかと思ったら女神までグルでこっちの大陸に攻めてくるつもりらしい。

ヴァルなんちゃらさんも、勇者への反発と女神への協力っていうよくわからない行動をとっているし、まるで意思が二つあるみたいでチグハグだ。


勇者の準備が結構進んでいたことから女神の計画もだいぶ進んでいる頃だろうし、もしかしたらもう攻め込む直前だったりするのかもしれない。

少数で当たっても負けるのは目に見えてるからそんなことはしないだろうけど、もし他の大国の内部に入り込んだ者が多かったらその限りではない。


ギル兄さんやパパンがいるからカーデリオン王国の心配はあまりしてないけど、それ以外が心配だ…

ちょっともどって様子を見た方がいいのかもしれないな。


それにこの王からは悪意を感じないし、なにより女神に反発している以上は味方として見た方がいいのだろう。

…とりあえずこっちの事を話しておくとするかな。


「だいたいの話しはつかめたかな。俺たちにも関わる話だったし、一応こっちの事情も伝えておくよ」

「…やはり君たちは別大陸から来た者達だったのだな。うむ、宜しく頼む」


さて、向こうの準備が整ってからのスタートになっちゃったけど、ここから追い上げるとしますかねっ!



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