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125 銀髪の死神

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ゼノン達がファイスの不在に気づいた頃、地下牢に閉じ込められた勇者のもとに一人の貴族…いや、闇が近づいていた。


「…これはいけませんねぇ勇者様。これでは貴方を支援した私達の存在まで疑われてしまいますよ」

「うるさい!なんなんだあの化け物は!?…あんな怪物が居るなんて聞いてないぞっ」


勇者は叫ぶが、闇を纏った人物はその罵声を何処吹く風と聞き流した。

その人物の態度からはどこか人間への侮りのような物が滲み出ており、まるで計画の一つが潰れただけに過ぎないという余裕が感じられる。


「…ふむ、怪物ですか。40レベル手前とはいえ勇者は勇者です、数多の魔道具とスキルでブーストされている貴方が手も足も出ないとなれば、それは確かに怪物なのかもしれませんねぇ」

「そ、そうだ!それに今回の計画だってユリアはオマケみたいな物だったろ!他の部分に関しては全て成功を収めているハズッ…」

「おお、他の部分は全て完遂していたのですね?それは僥倖です。まさか自分の種族を裏切るような外道が何かを成すとは思いませんでしたよ」

「なっ…」


貴族の姿をした闇は勇者を打ち破った人物について警戒したようだが、計画成功の報告を聞きそこまでの脅威ではないと判断したようだ。

そして成功を収めた部下を労うように、牢の前に一歩踏み出した。


「しかしいくら外道とはいえ、成功は成功です。…今回の失敗だけは見逃してあげましょう、別大陸への侵略には貴方の能力が非常に役立ちますしね…」

「ヒ、ヒヒッ!そうだぜ、俺の能力があればあらゆる分野のスキル・魔道具が入手し放題だ。あんたらには願ったり叶ったりだろう?」


そうして闇が彼の価値を再認識し、勇者を牢から連れ出そうとした時…

凍てつく怒りのような感情を宿した声が響き渡った。


「…よう。2人揃ってどこに行く気だよ?」


声の主は冷静に語る、まるでどこへ逃げようとしても無駄だと言うように。


「おや?どちら様でしょうか…ここには誰も入れるなと部下に伝えておいたハズなのですがねぇ」

「あ、あああ、あの銀髪!報告にあったガキの連れだ!まさかあの化け物が近くに…!?」

「あぁ?…化け物ってお前、理不尽ゼノンの事か?…あいつならいねぇよ、今回は俺の独断ってやつだ」


…声の主は銀髪の少年、ファイスだった。

彼はゼノンから貴族やそれに連なる人物が怪しいと報告を受けた時、勇者が死刑になる前に何者かが接触するであろう事を予想していたのだ。

故に、今までの会話を隠れて聞いていた事になる。


「独断だと…?は、はははははは!!馬鹿かお前っ、あの化け物さえいなければ、勇者である俺とこの魔族が負けるわけないんだよっ!」

「くくくっ…まあ、そうなりますよねぇ」

「…………」


だが彼らにとっては不幸な事に、向こうの人間大陸では最上位に入るファイスの実力を知らなかった。

確かに彼のレベルだけを見るならば、60を少し超えた程度とこの大陸の中位騎士クラスでしかない。

しかし装備やスキル・いままで数多の猛者と実践を繰り広げてきた彼にとって、「レベルだけの雑魚」など相手ではないということに2人は気づけていなかった。


「チッ…、まるで昔の俺を見ているようだぜ。…先に言っておくが、俺は奴みたいに優しくはないぞ」

「馬鹿が!身の程を知ってからそういう事は言うんだな!」

「…まあ聞く耳持たねぇよな、知ってたけどよ。それじゃあの世で後悔でもしてろ…連続魔法【アイスバーン】×9」

「「なぁっ!?」」


2人がファイスに攻撃を仕掛けようとした瞬間、姿を現す前から待機させていた大魔法を詠唱した。

そして大魔法の9連射という圧倒的な火力により、瞬時に二人は氷漬けになり…結果、勇者と魔族のオブジェが出来上がったようだ。


「…んじゃ、トドメだな。おらよっ!!」


……バリィンッ!!


氷漬けになった2人の脳天に、ファイスの魔槍杖が突き刺さった。

明らかにオーバーキルである事から、どのようなスキルを以ってしても蘇ることは無いだろう事が分かる。


「…これでひと段落だな。いつも詰めが甘いぜアイツはよ」


…そしてその後、彼は姿を消した。


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案内された城の客室でだらだらする事1時間、部屋でデザートを食べていると、やっとファイスが戻ってきたようだ。

どうやら俺の後始末をしてくれたらしい。


「おっす!いろいろお疲れ、いつも苦労かけて悪いな」

「…なんだよお前、やっぱり知ってたんじゃねぇか。こういう事は最後までキッチリやりやがれ」


めんどくさい仕事だったとでも言うように、ファイスがそこらへんのソファーに転がった。


恐らく勇者とその背後に居る貴族か魔族、そいつらの後片付けをしてくれたんだと思うが…

あの態度をみるに、やっぱり泳がせておいたら色々面倒臭い事になっていたっぽい。


「確かにそうなんだけどな、情報を得るためとはいえ泳がせ過ぎたかもしれない」

「…今後は気をつけろ。お前の作戦は確かに有効だが、こういうのは毎回上手くいくわけじゃねぇ」


ごもっともで、今日は頭上がらないなこりゃ。


あとから話しを聞いた限りでは、勇者と魔族が繋がっていた事が発覚したようだ。

別大陸への侵攻とか何とか言っていたみたいだし、おそらくこの大陸の人間を使って俺たちの大陸へ攻め込む計画があると見て間違いないようだ。


王にどこまで話すか悩む所だが、とりあえず魔族の件くらいまでで様子を見てみよう。

なにかタイミングがあればこの続きを話してもいいかもしれない。

そもそも、仮にこの大陸の人間が攻め込んだとしても、ギル兄さんやパパン達が守るあの大陸で好き勝手な事などできるはずがない。


まあでも、知った以上は止める方針でこれから動くつもりだけどね。

なんの計画かは知らないが、やる事が増えてめんどくさい限りだ…



「あ、ファイスお前!それ俺のデザートだぞっ」

「うるせぇ、お前の分まで仕事したんだからいいんだよ」


なんて事だ、俺のプリンちゃんが全て奴に吸収された…

許すまじファイス…


あれ、これなんかデジャヴ。

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