119 カーネイン・マモン②
──そして10年後。
あの日人形店で出会った少女は15歳になり、大悪魔の家に入り浸っていた。
「ねぇカーネイン?このボードゲームの仕組みどう思う?」
「……面白いね。面白いねこれ!く、くははは!まったく良い拾い物をしたよ僕は。まさかあの時の少女がゲームなんてものを開発しちゃうなんてね!…そうだ、今日からこれは僕のライフワークにしよう!」
あれから10年…
いままで世界を脅かしていた大魔王、カーネイン・マモンが突如として姿を消した。
その知らせは世界中の大陸を駆け巡り、争い疲弊していた魔族・人族はひとまずの平和を得たようだ。
だが、カーネインに続く上位の存在がそれを不審に思わないわけもなく、各国の勇者・聖女・教会が束になってその原因を探し出した。
そして10年間の間神々と交信を取り続け、ようやくこの大陸の神の一柱である<戦神アテナ>と魔大陸に存在する<邪神>がカーネインの存在を嗅ぎつけたのである。
<戦神アテナ>はカーネインを抹消するために、<邪神>はカーネインに取りついた邪魔な存在を消すために、両者は手を組んだ。
…そして人形屋の存在する付近の町は戦火につつまれ、駆け付けたカーネインが気づいた時には全てが遅かったようだ。
「…魔王様、町が…」
「…ああ、わかってるよ。…ちょっと遊び過ぎたみたいだ。<アリサ>は後ろに下がっていてくれ」
「えっ!?カーネインがあんな化け物と戦うのっ!?無茶苦茶じゃない、人形作るだけのあんたじゃ5秒持たないわよ!?」
「くはははは!大丈夫さぁ、…君だけは必ず守る。あっ…言ってなかったけど、こう見えて僕は歴代最強の魔王なんだよ。はははは!」
「…えぇええっ!?」
だが、カーネインには分かっていた、今回の相手は今までとは違うことを…
その身に神を降したヴァルキュリアを相手に…
10年の間修行を積んだ勇者たちを相手に…
幾多の英雄、大魔獣を相手に…
──1人で勝つことなど不可能だということを──
「…でもねぇ、こんな僕にも引けない時っていうのがあったみたいだ。どうしようもなく、…どうしようもなく失いたくない者ができたんだ。アリサがよく言ってたけど、これが人間の心ってやつかな?…わかんないや!はははは!」
─さあ始めよう、最後のゲームを─
「アンリミテッドスキル【サクリファイス】…この僕に、奴ら全てを殲滅するだけの力を寄越せ」
─そして代償は、僕の魂─
…………ドクン、ドクン
………ドクン
……
…
そして、カーネインの心が消えた。
「……ハ、ハハハハハハハハハハハ!!」
「魔王様!?…っ!アリサさんいけません、ここから離れますぞ!」
「えっ!?ちょ、どうしちゃったのカーネインっ!」
そして戦いはカーネインの一方的な展開で進み、圧倒的な勝利で決着かと思われた頃…
突如として絶望が現れた。
「ハハハ、邪神さまのおでましかイ?女神のほうハ、ヴァルキュリアを倒した時に飛んでいったからネ…ン?」
カーネインが不審に思い邪神の手に意識を向けると、そこにあったのは…血まみれのアリサの死体だった。
「人の心を失いお前を狂わせた人間も死んだ…どうだ、正気にもどったかカーネイン・マ…ケペッ!?」
「うるさいヨ…まだ、その人は終わっていない」
しかし、心を失ったが故にカーネインは冷静に邪神を瞬殺した。
そもそも、【サクリファイス】によりブーストのかかった今の彼ならば、今のアリサを治療することなどわけはなかったのだ。
「じゃあもう一回使おうかなアレ…自分の所有物じゃないと代償にできないけド、今倒した<邪神の死体>は僕の物だしネ、都合がいイ。まァ、これは邪神の仮の体だけド…」
…だが、いくら邪神の肉体を元にサクリファイスを行ってもアリサが蘇ることはなかった。
「なぜダ…邪神はこの世界で最高位の神の一柱のハズ!…その素材を使用して不可能な事などあるはずがなイ!!」
そして何度も何度もサクリファイスを繰り返し、邪神の素材が尽きてしまった頃…アリサは目覚めた。
…それが、アリサなのかどうかは別として。
「んー?」
「アリサッ!…ハハハハ、ビックリさせないでくれヨ…ココロを代償にしたのに、またココロを取り戻しかけてるヨ。君には勝てないナ…ハハハハ」
「あらぁ、あなた誰ですかぁ?ん~?あ、この体の記憶的に、カーネインさんですね?」
生き返ったのは、「別の何か」だった。
邪神がアリサを殺してからだいぶたっており、アリサの魂は既に女神の元へと送られてしまっていたのだ。
そして無理やりサクリファイスを繰り返した結果、「邪神の肉体を元に、新しい魂が形成された」のである。
そしてその後…「半分だけ」心を取り戻し連続でサクリファイスを使った代償として、ほぼ全ての力を失った「元大悪魔」カーネイン・マモンは行方をくらました。
…いずれ神々に復讐し、アリサの魂を取り戻すために。
──────
「っと、いうわけなのよねぇ~。あ、お茶ついであげる」
「どうもどうも…ズズ…」
ふむ、つまりアリサさんは邪神の肉体をベースにしたホムンクルスであり、およそ1000~2000年の時間を修行してきたからこの強さなのか。
納得した。
「まあ、ベースは邪神でも構造が人間だからね~、長く生きられること以外はただレベルが高いだけよ」
「ふむふむ、それでサクリファイスで余った邪神の残りカスみたいなのが、【魔王の怒り】っていうアイテムになったわけね…便利な能力だ…ズズ…」
「そうねぇ…ズズ…」
そんなわけで、しばらくお茶を飲みながらゆっくりしといた。
アンリミテッドスキルなんていうのも色々聞けたし、収穫ありだったわ~。
まさか、アリサさんが邪神だとは思わなかったけどね。
まあ今の所あの人形魔族に動きはないみたいだし、人間のことを意味もなく襲う事はないみたいだ。
ってわけでまずは勇者とヴァルキュリアの方が先かな。
「あ、お茶お代わりください」




