96 交差する運命
サンドレイク帝国首都、サンレイ。
冒険者の帝国と呼ばれるだけあって、形式にとらわれない様々な店や民家が立ち並ぶカラフルな街だ。
今年の闘技大会はその首都サンレイの闘技場において開催されるようである。
そして今、俺は闘技場の受付で大会の登録申請を行っていた。
「いやいや、だからお・れ・た・ち・が! 闘技大会に出場するんだって!」
「しかしな~、いくら一般参加可能な大会とはいえ、下手したら死人がでるんだぞボウズ? 12歳で闘技大会に出場なんて聞いたことも無い。この歳じゃ各国の学校対抗に出るのが関の山だろう」
「俺は4年前その学校対抗で優勝してるんだよっ!」
「はははっ!あの伝説の少年の話しか?髪なんかも同じ色に染めてるしファンってやつかな?」
ダメだこのおっさん、完全に俺たちのことを舐めている。
闘技大会の受付のおっさん兵士に抗議すること10分、あの手この手で参加を躱されいまだに申請ができていない。
そろそろ他の受付に行こうかな、不毛な気がしてきた。
すると、4年前にどこかで見た事のある騎士が割って入ってきた。
「ふむ、そこの者、その子供たちの参加を認めてあげなさい。彼は正真正銘4年前の学校対抗で優勝したゼノン・クロスハート殿で間違いない」
「こっ、これは騎士団長っ! 了解でありますっ! へへへ、坊ちゃんたちもそうならそうと言ってくれよ、人が悪いぜ?」
何回も言っただろうが、なんておっさんだ。
話しかけてきたのは聖女と共に居た帝国の騎士団長さんだった。
「なあゼノン、このおっさん殴っていいか?」
「いや、さすがにやめとけ」
今のお前のレベルで一般の兵士を殴ったらシャレにならない。
「久しぶりだね騎士団長。後で父さんたちの所に顔を見せにいくから少しまっててくれ。しばらく顔を出せなかったことの埋め合わせはするつもりさ」
「いえ、王子が気になさることではありません。それにしてもお強くなられたようですな…もはや私が本気で戦っても簡単に勝つことはできますまい」
「はははっ! それは勝負してからのお楽しみさっ、それじゃ僕はもう行くよ」
「はっ! それでは王城にてお待ちしております」
エレンが騎士団長とやりとりしているのを見ると、やっぱり王子だったんだなっていうのを思い出すな。
ちなみに迷宮都市にもここに来るときに一度寄ったのだが、ミーシャも闘技大会に出るとかで既に出発していたようだった。
ミーシャの方は学校対抗部門のようだが、いずれ会うことになるだろう。
「金髪おまえ、王子だったのかよ。驚愕だぜ」
「オホホホッ!私の仲間ですもの、このくらい当然ですわっ」
ファイスが驚愕していた、まあいままで言ったことないしな。
あとヴァニエの理屈はよくわからん。
「えへへ、ゼノンくんとヴァニエちゃんも公爵家の子だよ? ファイスくんにはまだ言ってなかったけどね~」
「……みんなすごい」
「まじかよ、初対面の時に伯爵家の肩書きを自慢していた俺っていったい」
気にするな、気にしたら負けだ。
その後受付で全員が登録を済まし、一旦自由行動をとることになった。
俺とフィッテ、ヴァニエは帝都見学。
ファイスとセレナは大会に向けての訓練。
エレンは王城へ向かうようだ。
「それにしても思いっきり中世ヨーロッパの街並みだな…それをカラフルにするとこんな感じなのか」
「ゼノンくん、中世ってなに?地域の名前?」
「時代のことだよ、まあヨーロッパっていうのは遥か彼方にある地域の名前だな」
ある意味そういうことになる。
「ゼノンは時々謎の知識をもっていますわね。まあ面白いので聞いていて飽きませんが」
「まあ色々な~」
色々もなにも全部この星にはない知識だけどね。
そして店でうだうだしたり美術館と思われる場所でだらだらしたりしながら過ごしていると、見た事のある人物が視界をよぎった…
って、あんたなんでここに居るんだ!?
「なあ、あれクロウじゃないか?なんでここに居るんだよ…」
「本当ですわね…間違いなくクロウですし、あの近くにいる人形を連れた者は魔公爵家の跡継ぎですわ。名はアーゼイン・マモン、私は性格が合わないのであまり付き合いはないですが、間違いなく跡継ぎの中では最強の実力を持った者です」
なんでそんな人物が2人もここに来ているんだ。
まさかとは思うがまた魔族の襲撃か?
いや、クロウがそんなことをするはずがない。
絶対にありえないとこれだけは言える。
「あっ! あれハドウくんだっ! 髪の毛の色を染めているから分からなかったけど、間違いないよっ!」
「ハドウって確か、父さんに鍛えてもらってた召喚者か? …なるほど、だいたい見えてきた」
アーゼインって奴との経緯は謎だけど、クロウと一緒にいるってことは魔大陸に出掛けていたんだろう。
魔王と勇者は切っても切れない関係だからね、一人で魔王城に赴いててもおかしくない。
それでクロウ経由の移動手段でまた人間大陸に戻って来たって訳だ、戻ってきた理由はおそらく人間との友好ってとこかな?
クロウが動くとしたらそれしか考えられない。
「んっ? この声はフィッテさん…?」
「どうしたんだいハドウ、誰か知り合いでもいたのかなぁ?」
「お~いっ!ハドウくん、ここだよ~っ!」
フィッテがハドウたちに大声で手振っていた。
ここ美術館だからちょっと声量さげよう。
「フム。見た目が成長していて一瞬気づかなかったが、あの尋常ではないプレッシャー、ゼノン殿で間違いないようだな。相変わらずスライムと仲が良いようでなによりだ」
「キュッ!」
「えっ!? あの人がゼノンさん!? ……確かに異常なプレッシャーだ、クロウさんとどっちが上かわからないくらいとか強すぎて意味が分からない」
「久しぶりだなクロウ、……それとハドウさんだっけ。そっちはそっちで尋常ではない気配を感じるな…ここに来たってことは闘技大会に出場するのかな?」
なぜか鑑定が弾かれている、レベルそのものは俺の方が上っぽい気配だが、なんというかレベルでは表現できないなにかを感じるんだよね。
「へぇぇ~。君がハドウの言っていた最強の勇者かい? 確かにこれは想像以上だねぇ。人間というのはやっぱり面白い、ハハハハッ!!」
「アーゼイン…相変わらずの狂人ですわね」
「うるさいよヴァニエ」
ヴァニエとアーゼインの間でにらみ合いが始まった。
この二人混ぜるな危険ってタイプのアレかもしれない、今回はこちらが引いておこう。
「まあ積もる話もあるだろうけど、とりあえずまたあとでな。俺たちは一般参加の闘技大会に出場する予定だから会いたかったらそこに来てくれ」
「俺たちも出場する予定ですよゼノンさん、その時は宜しくお願いします。それと俺のことはハドウでいいですよ」
「じゃあ俺もゼノンでいい、よろしくな」
「ああ、俺も楽しみだよゼノン」
ハドウと握手を交わしてその場はお開きとなった。
さて、クロウが出るとなると今回の闘技大会は荒れそうだな、対策でも練っておくか。
まだお互い様子見の段階ですが、ついにハドウとゼノンが接触しました。
闘技大会はギール・ハドウ・ゼノン・その他陣営が集います。




