45話 ちゃんと説明しないとな
「もう!みーくんのせいであーちゃんに怒られた!すんごい怖かった!」
「誰もあそこまでやれなんて言ってなかっただろ。自業自得だ」
謂われのない非難を尊は突っぱねる。
授業も終わり帰るもの、部活に行くものと教室の人の出入りが多い。だが、人の出入りが多いのは他にも原因があり、
「しかしまあ、一日で有名人ですなあ。その辺の気持ちはどうですか」
「ただただ息苦しいよ。見られるってのは結構きついんだな」
おちゃらける隼人の相手も疲れるが、今日は人の視線に晒されまくっていたのでそちらの疲労が大きかった。今は一日で急に変わった尊を見ようと廊下にまで人が溢れている。
(鳴海はいつもこんな視線の中で生活してたんだな)
実際に味わってわかった鳴海の苦労は想像以上のものだった。それなにいつも毅然と振る舞っていた鳴海は尊敬する。
「二人は部活だっけ」
「ああ、行ってくるわ」
「私も。それじゃあまたね、みーくん」
出ていく二人を見送り尊も帰ろうとしたとき、スマホが振動しているのに気づいた。
画面を確認すると一通のメッセージと朱莉の名前が表示されている。
スマホを操作しメッセージを開く。
『帰ったら家に行っていい?』
いつもはメッセージなど送らずに勝手に来るのに、やはり今日一日のことで聞きたいことが山ほどあるのだろう。
指を動かし返信を送る。
『今から帰るから着いたら連絡する』
すぐに『わかった』と返ってきた。
(ちゃんと説明しないとな)
尊たちが何をしようとしてるのか。その全てを。
家に着くと朱莉に帰宅した連絡をメッセージで送ったらすぐに玄関のチャイムが鳴った。
確かめるまでもないのですぐに扉を開くと案の定、朱莉が立っていた。
「……どうも」
「……おお」
お互い言葉が見つからずしばらく黙り込むが尊が扉を更に押し開く。
「どうぞ」
「うん。お邪魔します……」
靴を脱ぐと綺麗に並べ朱莉は部屋へ入っていく。
入った後も落ち着きなくそわそわしているのでいつも二人で食事をしている机を指さし、向かい合って座った。
「………」
「………」
再び黙り込む二人。ここ数か月ほぼずっと一緒にいたがここまで気まずくなるのは初めてだ。会話のきっかけを見つけようと意味もなく部屋を見渡すが物がなさ過ぎて何も思い浮かばない。自分の部屋の殺風景さに尊はこの時ばかりは呪った。
ずっと黙っているわけにもいかず尊は息を吐くと視線を朱莉に向け本題へと入った。
「えーと、まずは説明だな」
「……ええ、何をしようとしてるのかちゃんと教えて」
尊の視線に真っ直ぐと見つめ返す朱莉。
尊はこれまでの経緯の説明を始めた。




