40話 覚悟
教室に戻っても尊に向けられる視線は変わらなかった。こそこそと話す声にも“平野”“鳴海”の言葉が混じっているのが聞こえる。
自分の席を見てみると予想外の人物たちがいた。
「あ、みーくん」
「尊どこ行ってたん。あたしら探してたんだけど」
「平野さんその……」
陽菜に奈月、沙耶香が集まっていた。
皆一様に表情が暗い。多分尊のことを心配して集まってくれたのだろう。
みんなのやさしさに心が温まる。
だが、今はそんな余韻に浸っている場合ではない。
「隼人ちょっといいか」
「ん?……どうした」
いつになく真剣な表情の尊に隼人の口調も堅い。
「前に俺の容姿について話してたことあったよな。ちゃんと見た目気にすれば言うことないって。あれどこまで本気だった」
「は?どこまでって……どこまでも何も俺は本気でそう思ったぞ。顔だって間違いなく整ってる方だしな」
一瞬きょとんと口を半開きにしたが隼人が自信をもって口にしてくれたのは伝わった。
顔については朱莉にも一度似た様な事を言われたので間違いないだろう。
そこまで聞いて隼人には予想が付いたらしい。
「え、お前まさか」
驚愕する隼人を見てから順にみんなへ視線を移していく。
「頼む。協力してほしい」
尊が何をするのかまだ詳しいことは伝えていないが――。
「当たり前だろ。何だって協力してやる」
「うん。何するか知らないけど、みーくんがそこまで真剣なら私も協力するよ!」
「なになに?なんか面白そうなことしようとしてんじゃん、あたしもやるよー」
「奈月そんな動機じゃ失礼だよ。平野さん私も協力します」
隼人と陽菜だけじゃなく奈月と沙耶香まで快く協力を申し出てくれた。
「……みんな、ありがとう」
そんな友人たちのやさしさに言葉が詰まる。でも喜ぶのは早い。これから尊がやることに確実な部分は何もない。本当の大博打だ。




