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26話 友人たちと買い物

 夏休みも中盤といった頃。

 隼人と陽菜に誘われ尊は近場のショッピングモールに来ていた。


「外暑かったねー。店内涼しくて最高」


「今年の最高気温らしいぞ。これなら店内で待ち合わせにすればよかったな」


「そうだねー」


 暑い暑いと言いながらもお互いくっ付いて歩いている隼人と陽菜。

 二人のイチャイチャを見せつけられながら尊は後ろについて歩いていた。


「お前らイチャイチャするなら俺はいなかった方がいいんじゃないか」


「えー、みーくんも一緒に遊ぼうよ」


「そうだぞ。どうせ家で一人暇してたんだろ」


「まあ……そうだが」


 今日の朝急に連絡が来て半ば無理やり外へ連れ出された。


 歩くだけで汗が噴き出してくる暑さに何度引き返そうと思ったか。

 それでもここまで来ているのは尊としても楽しみにしているからだろう。

 それにわざわざ自分を誘ってくれる友人には素直に感謝している。


(鳴海も今日は用事があるって言ってたしちょうどよかったかもな)


 これまでの夏休み毎日のように鳴海とは顔を合わせていた。

 宿題も大分進み最近は別々で行動することも増えたが夕飯になれば尊か朱莉の部屋に集まる。


 少し前までは考えられないような生活である。学校の有名人でもある鳴海朱莉と一緒にご飯を食べているなど。


「それでどこに行くんだ」


「うーん、とりあえずなんか冷たいもの食べたい」


「いいな。外暑かったし俺も食べたいと思ってた」


 流石はーくん!、とさらにイチャイチャ増量する二人。

 そんな二人を見ながら、なぜ自分はここにいるのかと尊は冷めた目を向けていた。


 尊がいても構わずいちゃつくのは今になってのことではないが独り身には何とも目の毒だ。

 そんな二人の背中を見ながら尊は後に着いて行った。




 フードコートでアイスを食べたあと店内を散策し今は雑貨屋に入っていた。


「ねえ、みーくんこれどう?」


「どうって、なんだよこれ」


 陽菜は何かの動物の置物を尊へ見せてきた。


「みーくんの部屋何にもないからどうかなって。ほら、可愛くない?」


「可愛いのか、これは」


 眉間に皴を作り動物の置物を凝視する。


 左右の目が非対称で口を大きく開けたその置物は可愛いというよりもキモイと言った方が合っているような気がする。そもそも何の動物かわからない。


「可愛いでしょ。ねえ、はーくん」


「まあ、陽菜のセンスって独特だからな」


「どういう意味それっ!」


 わーわーと騒ぎ出す二人。頬を膨らませ隼人に詰め寄っているがそこまで怒っているようには見えない。いつものいちゃつきの延長線上なのだろう。

 いちゃつく二人をよそに尊は一人店内を物色し始めた。


「これといって欲しいものないんだよな」


 元々物欲があまりない尊は買い物自体あまりしない。

 店内を意味もなくぶらぶら歩いて、気になったものを手にとっては戻すを繰り返していた。


「ん?」


 しばらく適当に歩いていると尊の目に留まるものがあった。

 そっと手に取り手元で回しながら見る。


「これは……うさぎか?」


 尊が手に取ったのはガラスで作られたウサギの置物だ。


「こんなの鳴海の部屋にもあったな」


 尊の部屋は置物などは全くない殺風景なものだが、鳴海の部屋は女の子らしいいろいろと可愛らしいものが飾られている部屋だった。

 その部屋の一角。棚の上に飾られていたガラスの置物のことを思い出していた。


「あいつこういうの好きそうだな」


 この場にいない朱莉のことを考えながらうさぎの置物をまじまじと見ていると後ろから声を掛けられる。


「尊。なんかいいものあったか?」


「っ!」


 咄嗟に置物を身体で隠すがあまり意味がない。

 近寄ってきた隼人にあっさり気づかれる。


「ん?なんだ?ガラス?ガラスのうさぎか。尊こういうの好きなのか」


「いや……なんか目に留まって見てた」


「そうか。でもいいんじゃないか。何もない尊の部屋に飾っても」


「俺がこんなの飾ってたら変だろ」


 置物を棚へと戻す。

 そんな変でもないだろう、と隼人は言ってたが無視してその場を離れる。


(ああ……びっくりした)


 朱莉のことを考えてた時に急に話しかけられ暴れ出した心臓を落ち着かせる。

 自分でもなんでこんなに意識してしまっているのかわからずしばらく平静を装いつつ店内をぶらついた。




「よかったねみーくん。いいものあって」


「よかったじゃねえよ。変なもの買わせやがって」


 結局陽菜が最初に尊に見せてきた何の動物かわからない置物を買い三人は店を出た。

 あまりにも陽菜がしつこく置物の良さを尊に語ってきたので仕方なく。


「次はどうしようか」


「陽菜服みたいって言ってなかったか」


「えー、でもはーくん私の服選び長いっていつも文句言ってるじゃん」


「今日は尊がいるし多少長くったって大丈夫だ」


「おい、勝手に巻き込むな」


 一緒に買い物をする女性がいないので知らないが、女性の服選びは長いと聞く。

 正直乗り気がしないが、横でやったー、と喜んでいる陽菜を見るにもう決定事項のようだ。

 ため息をつき陽菜の先導のもと店へと向かう。


 そんな時だ――。


「え?」


 歩いている途中、ふと声が聞こえた。


 本来なら聞き逃してもおかしくない程度の大きさだったのだが、その声は尊にとって最近最も多く聞いていた声と一緒だった。


「あ……」


 足を止め声がした方に視線を向ける。

 そこには同じように尊に視線を送る朱莉が立っていた。

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