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22話 お互い黙っていると気になるもので

「お邪魔します」


「いらっしゃい」


 午後、朱莉が尊の部屋を訪れた。

 昨日言っていたように一緒に宿題をするためだ。


 朱莉は荷物を置き椅子へと腰かけると机の上に目を向ける。


「このお菓子昨日からあったっけ?」


「ああ、さっきコンビニで買ってきた」


「わざわざ買ってきたの?」


「摘まめるものあった方が宿題も捗るかなと」


 一緒に宿題をやるにあたり何か準備をした方がいいと思った結果お菓子を買ってきた。

 もっと何かあったかもしれないが女の子と一緒に宿題をやるなんて経験が尊にはなくわからなかったのだ。


 たまに陽菜の宿題をみることはあるが、その時は隼人も付いてくるので今日のような状況とはまた違う。

 ただその際、陽菜はいつも大量にお菓子を持ってくるのでそこは参考にさせてもらった。


「なんかごめんね気を使わせて」


「気にするな。一応招いた側だしな」


 朱莉は申し訳なさそうに眉根を下げているが、尊が勝手にやったことなので本当に気にする必要はない。


 尊も椅子へ腰かけ朱莉と向き合う。


「よし。じゃあ始めるか」


「ええ」


 お互いにノートや問題集を取り出し宿題に取り掛かる。

 しばらくシャーペンがノートを滑る音のみが部屋に響いた。




 宿題に取り掛かってしまえば時間の流れも速いもので、もう一時間が経過していた。


 なかなか進んだのではないかと尊は自分の宿題の成果をノートを見ながら確認する。


 不意に朱莉はどうだろうかと気になり視線を向けてみる。


 朱莉は問題集に視線を落としながら綺麗な字ですらすらと問題を解いていた。

 流石は学年でもトップクラスの成績だ。見る限り宿題も尊より先に進んでいる。


(俺ももう少しがんばるか)


 宿題に集中する朱莉に触発され再び問題集に視線を落とした。




 一方の朱莉はというと――。


(……どうしよう。全然集中できない)


 はたから見れば集中して問題を解いているように見えるが、朱莉の内心は集中とは程遠いものだった。


 チラッと朱莉は尊の顔を覗き見る。


(なんで平野君そんなに平然としているの)


 淡々と宿題を進める尊に対し僅かだがムカムカとしてしまう。

 一応女子と二人で勉強しているのだ。少しくらい意識している態度を見せてほしいと朱莉は密かに思っていた。


 尊も決して平然としているわけではないのだが朱莉にわかるはずもなく。


(最近何ともなかったのに、慣れてきたと思ったのに)


 尊の部屋を訪れるようになってもう数日が経つ。

 最初の頃こそ緊張で落ち着きもなかったが、最近は自然に部屋まで入ることができていた。


 だが、今日初めて二人で宿題をやることになり、お互い黙っているとどうしてもいろいろ気になってしまう。


(あっ。平野君結構字綺麗なんだ。指もすらっとしてて綺麗。――ってそうじゃなく!)


 尊のちょっとした仕草にも反応し普段考えないようなことも考えてしまい宿題が全然手に付かない。


 様々な感情で頭の中がごちゃごちゃしているが一応宿題は進んでいるから大したものである。

 頭を振って思考をリセットする。自分から誘っておいて情けない、と自分を叱咤し目の前の問題に集中するように手元のシャーペンに力を入れた。

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