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17話 隣人からの評価が思いのほか低い

「ごちそうさまでした」


 そうめんを食べ終えしっかりと手を合わせる。


「はい。お粗末様でした」


 食べ終えるころには朱莉の機嫌もなおっており普通に会話もしていた。

 朱莉は立ち上がり食器を片付けようとするので尊も立ち上がる。


「俺が持ってくよ。てか片付けくらいはさせてくれ」


「いいよそんな、私が誘ったんだから」


「それでもだ。ご飯頂いて片付けまでさせれないだろ。洗い物くらいやるよ」


「洗い物って、食器洗うの?」


「そのつもりだけど。他人に洗われるの嫌だったか?」


「ううん。そうじゃなくて……平野君が食器とか割らないか心配で」


「おい」


 確かに家事は苦手だが食器を洗うことくらいできる。

 そんな漫画みたいに皿洗い中に割ってしまうなんてことは一度もない。


「お前こそ俺をどんな風に見てんだよ」


「どんなって。ろくに家事もできないの一人暮らし始めた後先考えない人だと」


「お前な……」


 間違ってはいなかったのだが相当低い評価に尊は頬を引きずる。

 朱莉の思っていることをはっきりと言うところは嫌いではない。清々しささえ覚える。


 だが、ここまでの評価だとは流石に落ち込む。


「あっ、ならこうしよう」


 朱莉はキッチンに向かいタオルとスポンジを手にする。タオルの方を尊に手渡す。


「ん?なんだ?」


「私が食器洗うから平野君は濡れた食器拭いて」


 なるほど役割分担すると。

 確かにこれなら朱莉も近くで尊を見張れるので安心だろう。


「わかった」


 皿を割ると思われている尊は少々不満だったが朱莉の隣に立ち、渡される食器の水気をタオルで拭き取っていく。

 朱莉の手際は言うまでもなく完璧で次々と食器が洗われていく。尊も急ぎつつしっかりと食器の水分をタオルで拭き取る。


「あ、そうだ。今日の夜何か食べたいものある?」


「夜も作ってくれるのか?」


 今日は昼ご飯を頂いたので夜はないと思っていたがそうではなかったらしい。

 驚いている尊に朱莉は微笑む。


「自分の分も作るんだしついでだから作るわよ。それとも夜ご飯はいらなかった?」


「いえ、そんなことないです。いただきます」


 まさか一日二食も朱莉の料理を食べれるとは。


「夏休み初日から何て良い日なんだろう」


「ちょっと大げさじゃない。ただのご飯よ」


「ただのって言うがお前の料理は本当に美味しいからな。それが一日に二回も食べれるんだからテンションも上がる」


「そ、そこまで言われるとこっちも作り甲斐あるけど。それで、何か食べたいものある?」


 照れたように頬を薄く染めるが今回は純粋に褒められたので朱莉も悪い気はしてないみたいだ。

 幾分機嫌も良さげである。


「そうだな。暑いしなんかガッツリしたもの食べてスタミナ付けたいかな」


「ガッツリしたもの……お肉とか?」


「肉いいかもな。あっ、ハンバーグとか食べたいな。高校になってから一回も食べてない気がする」


「一回もないの?一から作るのは確かに面倒かもしれないけど冷凍とか……あなたは冷凍ものもろくに調理できなそうだものね」


「おい。馬鹿にし過ぎじゃないか」


「じゃあできるの」


「……できないが」


「ほらね」


 いつにも増してズバズバと言ってくる朱莉はいつも以上に楽しそうだ。口角も少し上がっている。

 本当のことだから尊が言い返せないことをわかっているのだろう。


 尊も不服だったが普段学校では見ることのないこの表情を独り占めできているのだから我慢することにした。


「なら買い物行かないとね。お肉に玉ねぎもないし」


「それなら俺が行ってくるよ。今回も俺の注文だからな」


「大丈夫。今日は元々行く予定だったもの。他にも買いたいものあるし」


「それ含めて行ってきてもいいぞ。どうせ俺は暇だしな」


 夏休みに入ったのに全く予定がないので、こういう時くらいは外に出ないと身体にも悪そうだ。


「でも結構重い物も今日買うつもりだったし」


「なら尚更俺が行った方がいいだろ。いつもお世話になってるんだからこんな時くらい頼れよ」


 どうしたものかと思考を巡らせる朱莉。朱莉の性格だと一人で全て問題なくこなせることから頼ることに慣れていないのかもしれない。

 こちらから助け舟を出していく。


「買い物は一度行ってるんだ。何回行っても同じだから気にする必要はないぞ。俺としてはこの辺で頼ってもらわないと本当にダメな人間になっちゃいそうだしな」


 そこまで言われると朱莉も断るわけにもいかないので渋々了承する。


「はあ、わかった。じゃあお願いする。いつ頃買い物行く?」


「今すぐ行ってきてもいいぞ」


「なら買う物まとめるから少し待ってて」


 スマホを取り出し指を動かしていく朱莉。

 すぐに尊のスマホに通知が入る。内容を確認すると牛乳に醤油と確かに重たいものも含まれており、頼みずらかったことが頷ける。


「醤油と牛乳っていつも何買ってるんだ?」


「えーとね。これとこれ」


 キッチンから普段朱莉が買っている醤油と牛乳を取り出してくる。

 一応忘れないためにスマホで写真を撮っておく。


「それじゃあ行ってくるよ」


「うん。気を付けて」


 朱莉に見送られ尊は玄関を出て行った。

読んでいただきありがとうございます。

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