15話 自分なりに楽しみを見つけよう
「やったよみーくん!全教科赤点回避だよー!」
テスト期間が終了し返却されたテストを持って陽菜が尊の机にやってきた。
キラキラと目を輝かせながら答案用紙を掲げている。まあ、その点数はとても自慢できるようなものではなかったが。
「そうか。それは良かったけど、やっぱりもう少し勉強した方がいいな。全教科本当にギリギリだな」
「折角テストが終わったのに勉強の話なんてしないでよ」
「まあ、陽菜にしては良くやったんだし今回は大目に見ようぜ」
隼人も近づいてきて陽菜の肩に手を置く。
流石はーくん、と嬉しそうに陽菜が笑うので尊はため息をついた。いつものことだが人目も気にせずよくイチャつける。
「あとは夏休みを待つだけだし、これなら学校来るのもあまり苦じゃないな」
「俺は次の体育が苦なんだが」
「体育とか他の授業に比べたら全然ましな方じゃんか」
「この暑い中外走り回るとか正気の沙汰じゃない」
今日も太陽は地上に燦燦と強い日差しをまき散らしている。こんな炎天下の中運動するなんてとてもじゃないが隼人のように尊は喜べない。
「私も座って授業聞いてるより体育の方がいいかな。時間過ぎるのも早いし」
「女子でもこんな暑い中体育の方がいいのか?」
「私はってだけで普通の子は多分嫌なんだと思うよ。汗かくし臭い気になるし」
「その辺気にしない陽菜は女子としてどうなの?」
「失礼な!私だって気にするよ。ちゃんと制汗シートとか使ってるんだからね」
ムスっと頬を膨らまし抗議する。陽菜の性格上ジッと授業を受けるより体育みたいに身体を動かしていた方が性に合ってるんだろう。
「陽菜は運動部入ってるし元々運動も好きだもんな」
「うん。身体動かすのって気持ちいいんだよねー。みーくんも部活入ればいいよ。楽しいよ」
「気が向いたらな」
「うーん。これは全く気がない人の返事だねー」
陽菜が言う通り部活に入る気は全くない。何かやりたい部があれば別なのだが、これと言って引かれる部は無いのだ。
「別に運動苦手ってわけじゃないだろ尊は」
「苦手ではないが自分から進んでやろうとも思わない」
「全く勿体ないねー」
やる気のない尊に苦笑する隼人。
「今年の夏はどこ行こうな陽菜」
「そうだねー。海にプールにお祭りも行きたいし迷っちゃうね」
「高校最初の夏休みだし目いっぱい遊ぶぞ!」
おー、拳を突き上げながらくっ付くように陽菜が寄り添ったので再びイチャつきだし二人の世界に入る。
イチャつく二人を見ててもしょうがないので、こちらはため息を吐き窓の外に目を向けた。
(夏休みか……)
雲一つない透き通るような青空を眺めながら物思う。
高校最初の夏休みは一体どんなものなのか。今までと比べて何か違うのだろうか。
楽しそうな二人に当てられたわけではないが数日後に迫る夏休みに自分なりに楽しみを見出そうと思う尊だった。
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