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88 出張 ③

俺はダンジョンに入ると地図を見ながら奥へと進んでいた。

一度は入った事があるとは言っても道順を一度で覚えられるはずがない。

今は渡された地図を頼りに最短距離でダンジョンを進んでいる。

0時を過ぎているので魔物は復活しているけど、ダンジョン全体で言えば大した数ではない。

出現場所はランダムなので数匹倒せば階段へと到着できる。

俺がこうしてあまり焦らずに突入したのも先に入った連中が地図を持っていないと知っているからだ。

下へと降りる階段は見つけるのが大変なのでそれ程には進んでいないはずだ。


そして無事に階段を見つけて降りていると2階層のフィールドへと到着した。

以前と同じく空は黄昏色をしており、遠くまでを見通す事が出来ない。

俺達は周囲に視線を向けながら進み擦違わない様に真っ直ぐに3階層へと続く階段へと向かって行った。

途中でこの階層の魔物である人型ゾンビと戦闘をしたけど俺とアーロンの敵ではない。

敢えて言えばアーロンがその匂いで顔を顰めたくらいだ。

そして、ここでも短時間で階段を発見して下りて行くと途中で駆け上がって来る足音が聞こえて来た。

状況から見て階段ですれ違うとすれば人間に間違いはないだろう。

魔物がダンジョンから溢れる条件が何なのかは今も分からないけど、その時以外は魔物は階段を使用しない。

そして案の定、俺達の前に現れたのは2人の人間だった。

ただし、1人は意識を失っているのか男の肩に担がれている。

するとこちらに気付いた男は俺達の前に来ると焦った表情を浮かべて声を掛けて来た。


「お前はアーロン!それならコイツが日本の言っていた助っ人か!?」

「まあな。それよりも何があったんだ。メンバーは6人のはずだろ?」

「そ、そうだ。でも他の奴らは5階層で突然現れたオーガの群れを押しとどめるための犠牲になっちまった。い、いや。もしかしたらさっきオーガの足止めに残ったアンジェは生きてるかもしれない!だから頼む。残った奴らを回収して来てくれ!」


どうやら既に勝手に動いて勝手に死んだ奴らが居るみたいだ。

別に助ける義理は無いけど、それだと後々になって俺が困る事になる。

それにオーガの群れと言うのが引っ掛かる。

このダンジョンも10階層まで進めているけど未だに普通のオーガなんて出た事が無い。

しかも群れと言う事は明らかにもっと深い階層から階段を使って現れていると言う事になる。

もしそうならダンジョンが出来てからは2回目の異常事態なので、これが一時的な物なのかも調べないといけない。


そして最大の理由がアズサたちが近くのホテルに泊まっている事だ。

距離にすれば100キロは離れているだろうけどアイコさんの例もある。

もし、その体質によって魔物が引き寄せられるとしたらそれこそ他人事ではない。

それにオーガはゴブリンと同じく人間の女性を好むという情報も既に得ている。

そんな奴らを1歩たりともダンジョンから出す訳にはいかない。


「なら今回の報酬はしっかりと考えておけよ。」

「わ、分かった。国に何とか交渉してみよう。だから頼む!」


コイツにとっては藁にも縋る思いなので権限がないと言える状況ではないのだろう。

それでもこうして了承するという事は犠牲になった奴等は大事な仲間だと思っているに違いない。


「それとアーロン。今回は相手の強さがどの程度か不明だ。もし、俺との戦闘を見て勝てないと思ったら絶対に戦闘へ参加するな。ただし、もし死体があって可能だと思えば回収だけはして行ってくれ。」

「ああ、分かってるよ。お前も気を付けろよ。」


そして俺達は分かれたポイントを確認してそこへと走り出した。

階段を駆け下りて通路や壁を走り、奴等の大声のおかげもあって1分もしない内に目的の魔物を見つける事に成功する。

どうやらオーガ達は今から捕らえた女性を使って良からぬ事をしようとしている様だ。

声がするので2人とも生きてる様だけど残りの2人は何処にも見当たらない。

さっきの男からは詳しい話が聞けなかったのでコイツ等を助けたらアーロンに確認させレば良いだろう。

俺はオーガ達と距離を詰めるとニヤついているその横顔へと声を掛けた。


「間に合ったみたいだな。」

「ガ?ガアーーー!!!」


すると挑発も使わずに声を掛けただけで敵愾心がマックスまで上昇してしまった。

もしかしてそんなにお楽しみ直前を邪魔されたのに腹を立てたのだろうか。

しかし女性を組み伏せていたオーガは立ち上がると同時に手元に居る女性の首を掴んで持ち上げこちらに突き出して来た。

見ると服は破り捨てられ胸元から下半身までが完全に見えてしまっている。

これが今のような状況でなければ確実に悲鳴を上げられていただろう。

しかし女性も強く首を絞められているのか息も出来ない様で次第に苦しそうにして顔色を悪くなっていく。

このままだと窒息して死ぬのも時間の問題なので無言で見ているとオーガもそれに気付いたのか息が出来る程度まで力を緩めた。

しかし宙吊りにされている事に変わりはなく、体力も限界なのかピクリとも動かなくなってしまった。

それでもオーガはまるで人質でも取っているかの様に強気な笑みを浮かべている。


「もしかして、本当に人質のつもりなのか?」

「ガ?ガーーー!」


するとオーガは女性を一瞥すると首を傾げ、再び叫びと共に突き出して来るけど何が言いたいのか全く伝わってこない。

すると群れを掻き分けて一回り以上は大きなオーガが姿を現した。


「ガ・・ゴガ、あ゛あ゛あ~。」


すると何やらマイクの前で発声練習でもしているかの様に声を出し始める。

しかも声が安定すると、その口からは俺でも理解できる言葉が発せられた。


「ごいずを助げたくば、あるぎんげんを連れてごい。」

「魔物が喋れるのか?まあいい誰を連れてくれば良いんだ?」


喋った事には少しだけ驚いたけど俺達の言葉を扱うオーガには興味がある。

テイムしたオウカも最初は俺達の言葉が理解できなかったと言っていたし、第二ダンジョンでも最初の頃に対話が試みられているけど失敗をしている。

恐らくこれが魔物との会話という面ではファーストコンタクトと言えるかもしれない。


「ならばぎ様に偉大なる我らが主のごと葉を伝えでやろう。あの方はクラタ アズサどいう人間の女をじょもうだ。づれて来ればこいずらは返してやる。」


興味が湧いて会話をしてのは俺だけど一瞬で思考回路が停止してしまった。

別に交渉に乗る気は全くなかったとは言え、ここでアズサの名前が出て来るとは思わなかった。

しかもそれがオーガの口からとなると一瞬とは言え仕方ない事だろう。

当然コイツの言っている主が誰なのかも知らないし目的さえも分からない。

ただコイツ等の行動から見て碌な要件ではないだろと確信が持てる。

そして俺は噴火直前のマグマ溜まりに、更にマグマを溜める様な思いで会話を続けた。


「それで・・・そいつを手に入れてどうするんだ?」

「知れた事よ。我が主の贄となってもらう。苦しめ、絶望させ、体と魂を隅々まで穢し尽くす。それこそが我らがあの御方から授かった使命なのだ。」


オーガは次第に流暢に喋り始めると狂信者の様に瞳を輝かせ、全身で喜びを表現しながら宣言を行った。

それにまるで神にでも選ばれたような口の利き方で自分の言っている事は素晴らしいと信じ切っている。

すると俺の中である仮説が頭を覗かせ、それは次第に確信へと変わっていった。


「もしかしてその御方と言うのは・・・神か?」

「その通りだ。我らは言わば神の使徒。貴様ら人間が話しかける事すら無礼であろうが今は目的達成のために仕方ない。あの御方も身動きが取れず、せっかく捕らえた贄を連れ攫れてしまったそうだからな。」


これは俺の知るアズサで間違いない。

そして連れ去ったと言う人物は間違いなく俺の事だろうけど、この会話の様子からすると詳しい事は何も知らないようだ。

もし本人が何処に居るのかを正確に把握できているのならこの会話自体が成立していなかっただろう。


そしてコイツ等は絶対に相容れる事のない明確な敵となった。

俺は刀を抜くとスキルを完全発動し噴火口へと火薬をセットする。

それとこの間に魔眼を使用して相手の足を縛ろうとしていたけど、その効果はいまだに出ていない。

それなりに強いか耐性を備えていると見るべきだろう。

そして俺の動きで交渉が決裂した事を感じ取ったオーガは口元を吊り上げて笑みを浮かべた。


「やはり愚かな人間には俺の優しさは分からなかったようだな。ならば貴様を殺して探しに出れば良い事だ。今度は以前の様にはいかんぞ。」


以前って何の事を言ってるんだ?

俺にオーガの知り合いはいないし、出会った魔物はオウカとハクを除いて皆殺しにしている。

それに紫のオーガを見たのは初めてだから何処かで擦れ違ってさえもいないはずだ。

俺は若干の疑問を感じながら剣を構えると女性を人質にしているオーガへと襲い掛かった。


「そう来ると思っていたぞ。そいつを盾にして攻撃をさせるな!」

「ガウアーー!」


するとオーガは女性を前に突き出しオークがしていたように肉の盾として使用する。

しかし魔物の考えている事はこちらもお見通しで俺は刀を横に一閃するとオーガの腕を切り落とした。


「ガアアーーー!」

「何だと!貴様人質ごと斬ったというのか!?おのれ狂人めが!こうなったら全員で奴を取り囲め。!」


俺の1撃によって確かにオーガの腕は切断され、地面に落ちた。

しかし、それは盾にされていた女性も同様で首と胴が切り離され、そのまま地面へと落ちている。

すると横でその光景を見ていた男性は火事場の馬鹿力とでもいう様な力を発揮して拘束から抜け出すと俺の足元に落ちている女性へと駆け寄っていった。


「あ・・ああ、アンジェーーー!」


そう言って頭を大事そうに抱えると俺を見上げて睨んで来る。

しかし、そんな暇があるなら早く体も回収して下がってもらいたい。

それでなくてもオーガ達は命令を受けて俺を包囲しようとしているので傍に居るとせっかくのチャンスに逃げられなくなってしまう。


「早く行け。後で生き返らせれば元に戻る。大事な人ならお前の手で生き返らせてやれ。」

「言われなくても分かっている!」


分かってないから言ってるんだけど、どうやら逃げる気にはなった様だ。

男性は頭と体を抱えると包囲が完了していない所から抜け出し外へ向かって走り出した。

あちらはアーロンにでも任せれば問題はないだろう。


「ハハハ、人間ゴッコは終わりか化物め。貴様こそ魔物と呼ばれるに相応しい存在だな。」

「なら、お前らはどうなんだ。他人を苦しめてそれを笑い。さらには命まで奪う。それが正常な者のやる事か?」

「私達は神からそれが許されているのだよ。人間が偉そうにするんじゃない。」


何やら凄く自分にだけ都合の良い事を言っているな。

それに以前にも似た様な事があった気がするけど、いまいちその時の記憶が思い出せない。

恐らくは俺にとってはその程度の出来事だったんだろうけど、そろそろ俺も怒りを抑えるのが限界なのでお前らには1匹残らず死んでもらう。


「それなら勝った方が正義ってことで良いよな。」


俺はそう言って動き出すとオーガ達へと向かって行った。

それと同時に我慢を止めて溜まりに溜まった怒りと言うマグマを噴火させる。

そして先程手首を切り落とした個体へと攻撃を放ちその胴体を1撃のもとに両断する。

それによって一体のオーガが死にそのまま消えて行く。


「なに!あの御方より力を授かった我等を容易く屠れるだと!」


そして余程自分達の強さに自信があったのか喋るオーガから驚愕の声が漏れる。

しかし今の俺は全てのスキルと称号によって途轍もない程のステータスになっている。

大まかに言えば


ハルヤ

レベル45

力 165

防御 155

魔力 45


このステータスが身体強化で1.5倍

剛力で2倍

マンイーターで1.5倍


普段はこれだけでも俺の能力は742程になる。

さらにベルセルクによって2倍以上の強化がされて1484に上昇。

これに装備の効果が加われば2384ものステータスになる。


それに比べれば、碌な武器も持たないコイツ等が俺に勝つのは不可能と言える。

それでも俺は慈悲や哀れみの心なんて持ち合わせていない。

一切の躊躇も容赦もなく刀を振るい眼前の敵を塵に変えて行く。


「ヒ、ヒィーーー!」


すると喋るオーガは恐怖の表情を浮かべると周囲の仲間たちを盾にして逃げ始めた。

しかし、この群れのリーダーは明らかにアイツだ。

明らかに知能が高く、指揮権も持っていて周囲の奴等が命を無駄にしようと守ろうとしている。

アイツを逃がせばこれからの生活でアズサへの危険度が増すことになるので、あのオーガだけは絶対に仕留めなければならない。


「逃げるのか!」

「こ、これは逃げているのではない!転進だ!作戦なのだ!」


俺は奴の命令に従いこちらへと向かって来るオーガを斬り捨てながら逃げるオーガを追って行く。

しかし敵を倒していくうちに僅かな違和感に気が付いた。


「もしかして強くなってないか?」


オーガを倒すごとに切り裂く感触が僅かずつではあるけど重くなっている気がする。

しかし一番の変化はその姿と大きさかもしれない。

1匹倒すと周りのオーガの身長が少しずつ大きくなり筋肉も発達して行く。

そのため今では1.5倍の程の身長になり、3メートルを軽く超えてしまっていた。

今の段階で半数を倒してこれなら最後の1匹になった時にどれだけ大きくなるのだろうか。

ただし反比例的に大きくなるのではなく、緩やかに比例的と言った感じなので予想では最終的にでも5メートル前後と言った所だろうか。


そして最後の10匹となった所で奴らの大きさが4メートルを超えた。

そうなれば敵を倒すのも大変になり、リーチが長くなった事で俺の間合いの外からの攻撃が増てくる。

それでも相手のパンチを交わすと同時にその腕を切り飛ばし、蹴りを蹴り返して足ごと粉砕する。

しかし、その手足はまるでナ〇ック星人の様に勢いよく『ズボッ!』と生えて治り攻撃に転じて来る。


「凄い再生能力だな。」


それでも再生が早いのは手足を斬り落とした時だけだ。

首を斬り飛ばしたり体を両断した時には問題なく殺す事が出来ている。

俺は繰り出された拳を躱し、空歩で飛び上るとそのまま胴体へと刀を走らせ、横腹から肩に掛けて斬り裂いて止めを刺す。

ハッキリ言って手足への攻撃はもはや無意味と言っても良いだろう。


「ガーーー!!!」


そして奴らも命令を遂行するために必死なのか一斉に襲い掛かってきた。

ここまでの戦闘時間は5分にも満たない短い時間だけど最後尾では先程の喋るオーガが今の状況に気付いて偉そうに踏ん反り返り両手を天井へと掲げるポーズを取っている。

まるで「オラに元気を分けてくれ!」とでも吹き出しを付けてやりたい感じだ。

ただ変な弾は頭上に浮いてはいないので警戒の必要はないだろう。

周りのオーガ同様に強化はされているのでそれを感じて悦にでも浸っているのかもしれない。

それにあの様に感情が豊富なら、この短時間でのこれだけの強化を受ければ増長してしまうのも仕方のないことだ。

例え、その強化されているオーガが束になっても俺に倒されているとしても体に満ちていく力を実感すれば奴にとっては抗いようのない快楽と同じだろう。


「フハハハハ!力が漲るぞ!その調子てそいつらを倒して俺に力を注げ!そして、最強になった俺が最後に貴様を殺してやるぞ!!」


そして最後のオーガを倒すと奴の体は予定通りに5メートルまで大きくなり掲げている手を下ろした。


「どうしたんだ。手でも痺れたのか?」

「今の俺を見てもまだそんな口が利けるとはな。この姿に恐怖して気でも狂ったか。」


よほど大きな全能感でも感じているのか、既に会話すら成立しなくなっている。

ただ体があれだけ大きくなれば俺の身長では奴の足の膝くらいの大きさしかない。

まさに赤ん坊の手でも捻る様に俺を簡単に倒せると思っているのだろう。


「その傲慢が仇にならないと良いけどな。」

「まだ戯言が言えるのか。しかし貴様が地面に這い蹲って許しを請う姿が俺には見える。女を差し出すと叫ぶ声が俺には聞こえるぞ。ハ~ハハハハハ!」


しかし奴がそう言った瞬間には俺は奴の足元へと移動し刀を水平に構えていた。

するとオーガはそれを認識した直後に後ろへと大きく飛び退き驚愕の表情を浮かべる。


「いつの間にそんな所に・・・な!?」


しかし奴が飛び退いて地面に着いたのは足の裏ではなく切断された膝だ。

その為、身長が1メートル以上低くなり、それに気付いた奴は自分の下半身へと視線を向けた。

しかし、その一瞬の隙に俺は更に動くと奴の視線の先である足元へと移動する。

そして、再び先程と同じく刀を振り切った姿を見せた。


「な!おのれ離れろ!」


しかし腕を振り上げた瞬間に奴は体勢を崩して両足の付け根がズレてその場に倒れてしまう。

この状態ならば早く足を生やさなければ移動すら出来ないだろう。

しかし、どうやら混乱している様でいまだに再生を行う様子はない。

そのことからコイツ等の再生は自分の意思で行わなければならない様だ。


「もう一度言ってみろ。俺が誰に誰を差し出す姿が見えたって?」


コイツは既に言ってはいけない事を口にした。

先程のは俺の中では言ってはいけないランキング1位のセリフだ。

ちなみにアケミとユウナを差し出せというセリフも同率1位だったりする。


「どうした化物。早く足を生やして立ち上がれ。俺の怒りはこの程度で終わると思うなよ。」

「舐めやがってーーー!」


オーガはようやく足を生やすと俺の前に立ち上がった。

しかし次の瞬間には再び足を輪切りにされてその場へと背中から倒れ込む。


「ひ、卑怯だぞ!」

「殺し合いに何を言ってるんだ。」


俺は冷たい視線と声で告げると更に両腕も切断する。

しかし、これは別に遊んでいるのではなくこれは相手へのメッセージだ。


「見ているか邪神。アイツが欲しいならまずは俺を殺しに来い。俺が居る限りアズサに指一本触れられると思うな。」

「フフフ、面白い奴だ。」


すると喋るオーガの口調が変わり、聞いた事のない声が発せられた。


「お前が邪神か?」

「その通りだ。今回の余興は楽しませてもらったぞ。」

「なら早くベットに戻って大人しくしていろ。今回の勝負は俺の勝ちだ。」

「フフフ。本当に生意気な奴だ。ならば1つ良い事を教えてやろう。魔物はこいつで最後ではない。」


それだけ言うとオーガはまるで肉が腐る様にブクブクと泡立ち崩れ始めた。

肉が溶け、骨を晒し、眼球が崩れ落ちる。

かなりのスプラッタな光景に昔の俺なら吐き気を催していただろう。

そして崩れかけた口からは高笑いと共に最後の言葉が発せられた。


「守る・・者が・居る・・・弱さを・・知るが・・・いい。」


俺はそれを聞いて溜息を吐くと魔石やドロップ品を回収して歩き始めた。

残りの2人を探して回収する必要があるからだ。

そして俺は歩きながら皆の顔を思い出しながら小声で言葉を零した。


「馬鹿な奴だ。何のために俺がここに1人で来てると思ってるんだ。」


そして俺は何の不安も感じる事なくダンジョンの奥へと歩き始めた。

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