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42 討伐完了

戦場に戻ると彼らは十分と言って良い程に奮戦していた。

ただし、やはりミドルの相手が厳しかった様で、奴らがいる所は確実に押されている。

どうやら相手の膂力と突進力に対応できていない様で連携が上手く取れていない。

やはり職業が有ると無いとでは状況的に無理があったのだろう。

そのため俺は戦線に復帰するとミドルたちを優先的に狩り尽くしていく。


他は任せても大丈夫そうだし、この大陸にはこいつらが発生するダンジョンがある。

残りを自分達で倒せば十分称号も手に入るだろう。

そうなれば今後の戦闘が楽になるはずだ。

それにコイツ等の家族が居る方向からリザードマン達が現れたとすれば残った個体も居るかもしれない。

それらを処理するためにも称号は確実に必要になる。

その他の蟻とコボルトに関しては既に彼らなら余裕で討伐できる。


それに俺はここが終わったら日本に帰る方法を探しに港に戻るつもりだ。

ここに残ったのはあのトラブルメーカーであるアイコさんの後始末もあるけど最大の理由は違う。

俺の目的はあの場で理由を知りながら逃げ出すと、後でバカな言い掛りをし始める奴が出るかもしれないと思ったからだ。

そうなればアケミとユウナの高校生活が台無しになるかもしれない。

マスコミや世間の全てがそういった事に配慮してくれるとは限らないので問題にありそうな事はともかく潰しておく。


そして全てのミドルを始末すると後方に戻ってステータスを開いた。


「俺の手伝いは一応ここまでだ。危なくなったら声を掛けてくれ。」

「分かりました。ここまででも十分です。」


俺はその後、最後の1匹が居なくなるまでその場でステータスの強化と次に取得するべきスキルの確認を行う事にした。

今の俺は


ハルヤ

レベル25→30

力 100→115

防御 67→72

魔力 25→30


となっている。

そして今回倒した魔物の魔石によって魔石ポイントが更に10獲得できた。

これは全て防御の強化に使用し72→82へと強化してある。

流石にそろそろ離れ過ぎた数値を修正しておかないと不味いと感じたからだ。

なにせスキルで倍になると言う事は力が230、防御が144とかなり離れた数値になってしまう。

そのせいでいくら強化されていても体に負担がかかり始めていたのだ。

特にゾーンに入ると時間の感覚が引き延ばされる分、常に全力で動くことが出来る。

そのため体への負担が想像以上にキツイ事が分かり、このままでは再び全力で戦えなくなる時も近そうだった。

でも今はそれも若干解消され再び自由に動けるようになり始めている。


なので今の段階で力を強化するスキルは取れない。

そうなると取るとすれば攻撃力にダメージを上乗せするスラッシュなどの技系スキルだろうか。

でもこれは加算できる威力が魔力依存となり、魔力が低い俺だと効果はあまり期待できない。


そうなると防御系か補助系のスキルになる。

そして、この中で俺に必要な能力は・・・。


「望遠のスキルか。」


今回の事では情報の入手が一番の課題と言えた。

周りに情報を持っている者が居たから良かったものの、そうでなければここまで上手くはいかなかっただろう。

やっぱりこれから生き残るためには敵の情報は不可欠だ。

それが魔物であろうと人間であったとしても・・・。


ちなみにこの望遠のスキルはカメラの望遠レンズと違って壁があってもその先を見る事が出来る。

透視に近い能力があるのだけど視力以上に遠くも見られるのが利点と言える。

別に女性の服を透視たり、部屋を覗き見するためにこのスキルを取得した訳ではない事だけは言っておこう。


そして、ついでも兼ねて後衛をしている人に言ってアイテムを譲ってもらう事にした。

今の所それに関しては日本のダンジョンでドロップしていないのでどうしても手に入れておきたい。


「悪いけどドロップした毒と毒消しを譲ってくれないか?」

「構いませんが何に使うのですか?」


首を傾げるのも仕方がないけど俺は幾つかの毒と毒消しを手に入れる事が出来た。

そして、これからは毒消しの事を解毒ポーション呼ぶ事にして、俺は更に彼らから譲ってもらったナイフで傷を作ると毒をそこに垂らした。


「な、何をしているのだ!?」

「いや、これを何度か繰り返せば毒耐性が取れないかなっと。」


すると兵士は顔を引きつらせながら呆れた顔で頭を掻いた。

そんな顔をするのも分からない訳ではないが、毒によってはスズメバチの様にアナフィラキシーショックを起こして急死する事もある。

しかし死んだら生き返れば良いしポーションもあるので安全に解毒できる。

俺としては安全マージンは十分に取っているはずだけど何故かここに来てから誰も理解してくれない。


「いつもそんな事をしているのか?」

「いつもではないけどこれで俺がスキルを覚えられれば後に人が続くだろ。スキルを選んで取れる機会は限られるから自力で取れるスキルは努力で取っておかないとな。」


すると兵士は微妙な顔をしているけど納得はしてくれたみたいだ。

それに誰だって好き好んで毒状態にはなりたくないのでいざという時の為に耐性関係はなるべく充実させておきたい。

そしてステータスを確認すると初めて状態異常の表示を見る事が出来た。

どうやらおかしいと思った時はここを確認すれば自分の状態を知る事が出来るようだ。

これは新たな発見なので周りに情報共有しておく事にする。


「ここに状態異常が表示されるみたいだぞ。」

「そうですね。我々も初めて知りました。毒を受けた者は毒消しをすぐに服用していたので誰も気付けなかったみたいですね。」


戦闘中にステータスを開く余裕は無かったはずだ。

しかもこの毒は即効性なので早く解毒する必要がある。

現に俺が解毒ポーションを飲むとすぐに表示が消えてしまった。

それにしてもやっぱり毒のドロップに比べると解毒ポーションの数が少ない。

俺はちょっと戦場に足を踏み入れて毒持ちの蛇男を狩り尽くすと解毒ポーションを手に戻って来た。


「これだけあれば十分だろう。」

「なんだか、ここから離れる時よりも遥かに強くなってませんか?動きが目で追えなかったのですが。」

「まあ、色々スキルが増えたからな。」


俺は会話をしながら毒耐性を習得できるまで何度も毒状態を繰り返した。

そして、その回数が30回を過ぎたあたりでようやく毒耐性を覚える事が出来た。


「ふう。やっと耐性が付いた。ざっと30回くらいか。そちらも欲しいなら頑張ってくれ。」

「ありがとうございます。あなたの無謀な行為は必ず自分達を救ってくれるでしょう。」


恐らく皮肉も込められているんだろうけど俺は残った解毒ポーションと毒を彼らに渡した。

互いに少し使うだけで効果があるのでこれだけあれば前衛の人達の分は確保できるだろう。

それに彼らにとってはこれが前哨戦のようなものだ。

もしかするとこの世界で最も過酷な前哨戦だったかもしれないけど、これから家族を探して救い出さなければならない。

それが出来て彼らはようやく一息つけるようになるので、それまでは頑張ってもらわないといけない。


その後、危なげなく最後の一匹が消え去ると周囲から魔物の気配が無くなり、周りからは風による葉音だけが響いてくる。

しかし次の瞬間にはそれ突き破って空に響き渡る程の勝鬨が上がった。


「勝ったぞーーー!」

「「「うおーーー!!」」」


こちらは俺を入れても総数22人であちらは3000以上と戦力差は絶望的だった。

その中で彼らは命がけで最後まで戦い抜き、1人も欠ける事なく生き残った。

まあ、死んだら蘇生させるだけなんだけど、それでも奇跡と言って良い快挙だ。

きっとこの戦いは彼らにとっても大きな意味を持つ事になる。

これからどんなに辛い状況でもこれ以上に過酷な事はそうそうないはずだ。


それに、これでここは片付いたと言えなくもない状況まで待ち直した。

俺はこの国の兵士たちと肩を組んで一緒に喜び合っているアーロンの許へと向かう。


「ここの問題はこれで終了だ。港に戻って脱出する手段を探すぞ。」

「お前な~、もう少し喜んだらどうなんだ。」

「ついでの残業で帰宅が遅くなったんだ。だから早く運転手を頼むぞ。」


するとアーロンは周りに苦笑を浮かべて挨拶をすると俺の前では溜息を零した。


「それじゃあ行くぞハルヤ。」

「クソガキは止めたんだな。」

「ケッ!これからは戦友だからな。それじゃあ行くぞ。」


そう言って顔を赤くしながら車を置いてある方向へと歩き出した。

男同士でツンデレって誰得なんだろうな。

日本なら腐が付く女子くらいしか需要が無い気がするんだけど。


俺はそんな事を考えながら周りに軽く手を上げてその場から歩き出した。

兵士たちはそれに敬礼で返して俺達を見送ってくれる。




その後、彼らは数日かけて無事に家族を発見して救出したと手紙が届いた。

どうやら俺の住所が分からなかったので日本政府当てに手紙を送ったらしい。

しかし、これはもうしばらく先の話である。



町へ帰ると嵐は弱まり夕日が空を赤く染めていた。

しかし、港には船はなく地平の先まで一隻の姿も見えない。

やっぱり再び船が来るようになるまで待つしかないのだろうか。


「了解・・・。現在港へ到着した。」


すると先程戻って来たアーロンが独り言を始めた。

イヤ・・・よく見ると足元に大きな箱を置いて頭にはマイク付きのヘットフォンを装着している。

どこから持って来たのか緊急用の連絡手段を隠していたみたいだ。


「連絡がついたぞ。すぐに迎えが来るから少し待ってやがれ。」


そう言ってきたアーロンの顔は凄く得意そうだ。

感謝は感じているけどこの顔を見ていると何故か海に突き落としたくなる。

そして、しばらくすると小さなエンジン音が聞こえ始め俺達の前にゴムボートが現れた。


「まだ海は荒れているので気を付けてください。」


しかし、俺達は互いにニヤリと笑うとそのまま海に飛び降りた。


「何を・・・。あれ?浮いてる・・・立ってる!」


俺達は海の上に立つと、そのまま歩いて乗り込むと座席にしゃがむ。


「よっこいしょ。」

「へへ、邪魔するぜ。」


しかし、ちょっとしたドッキリのつもりだったけど船に乗っている兵士を予想以上に驚かせてしまったみたいだ。

言われた通り波がまだ高いので急いでもらわないと船酔いしそうなんだけど。

するとアーロンは兵士に気を使って代わりにエンジンの前に移動するとボートが来た方向へと進路を取り進み始めた。


「こっちで良いんだな。」

「は、はい。すみません驚いてしまいまして・・・私が案内します。」


そう言って操船を変わると陸から少し離れた場所へと進んでいく。

ここまで来ると今にも船がひっくり返りそうだ。

すると少し離れた場所に何か黒い物が突き出しているのが見えて来た。

ボートはその近くまで行きながらライトを点滅させると信号を送り始める。

すると海面が大きく浮き上がりそこに巨大な潜水艦が姿を現した。


「さあ、早く乗ってください。」

「分かった。」

「お前は俺が連れて行ってやるよ。」


そう言って船から降りると俺を先頭に潜水艦へと駆け出した。

目の前の高波は俺が剣で斬り裂き低い波は飛んで躱す。

そして最後に高く飛び上って甲板に着地すると驚く兵士を急かして入口へと向かって行った。

そして艦内に入るとハッチが閉まり潜水艦は潜航を始め、次第に揺れが穏やかになって行く。


「2人ともシャワーを浴びてこちらに着替えてください。艦長がすぐにお会いになります。」


そう言って兵士は綺麗にたたまれた服一式を渡してくれる。

ずぶ濡れの上に泥だらけだったのでこの心遣いは有難い。

そして体の汚れを落として服を着替え、装備を纏うと準備を整えた。

それにここはある意味では敵の腹に中と変わらない。

俺は彼らの決定を覆して色々やらかしているから逆恨みをされていてもおかしくはないだろう。

そして案内された部屋に到着すると俺達は中へと入って行った。

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