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40 一度負けたボスが雑魚キャラになるのはリアルでも同じの様です

現れたのは以前に町で倒したのと同じくらいのボス鰐男だ。

恐らく今回はコイツが群れのボスではないのでミドル鰐男とでも改名しておこう。

そしてミドルはやはり力が強い様で足元の拘束でもあまり速度が落ちていない。

ただ、俺が挑発を使っている事で他の前衛には目もくれずこちらに向かってっくる。


「ギャアーーー!」


その段階で俺は一旦下がり後衛から武器を受け取った。

実はここに来て手榴弾を良く投げていたので投擲のスキルが手に入っている。

そして準備してもらったのも昨日のコボルト戦で回収した大量のナイフだ。


「これでもくらえ。」


俺は後衛の人に渡されるナイフをミドルに向かって次々に投げ付けた。

すると全力の投擲に相手は深く肉を斬り裂かれ、体に突き立って行く。

それにコイツは体が大きいので当てるのも簡単なので今では20を越えるナイフが突き刺さり大量の血を流しながら足を止めている。

しかし最後の抵抗と俺に向かって口を開き捨て身で飛び込んで来た。

その瞬間に俺は剣を引き抜いて最大の急所である口蓋の奥側へと突きを放つ。


「ギャーー・・・」

「まずは1匹だな。」


俺は思っていた以上に上手く行った事に頷くと落ちたナイフの回収は任せて再び前線へと向かった。

どうやら一度倒したボスキャラは次回から雑魚扱いとなる法則がリアルでも通用する様だ。

それでもまだここまで来ていないだけで複数の大きな気配を感じる。

そして、それを上回る気配も感じるのでまだまだ油断は出来ない。

今のはあくまで複数いる強敵の1匹に過ぎず、以前のようにここで終わりではない。

そして前線に復帰してすぐにそこで戦う兵士の1人に声を掛けた。


「どうだ。状況的にまだ余裕はあるか?」

「今の所問題ない。後方の報告で大まかな敵の討伐数も1000を越えたと報告があった。」


恐らく以前と同様なら部下が尽きたミドル鰐男が突撃してきたのだろう。

既に敵を倒した数が1000を越えたのなら順次さっきみたいな奴が突撃してくるはずだ。

そうなれば複数同時に現れる事も想定されるので今の様な小細工が出来ない可能性もあるな。


「また来たぞーーー!」


そして少しすると再び声が上がり今度は3匹のミドル鰐男が姿を現した。

すると兵士たちはノーマル鰐男と戦いながらジワジワと下がり始める。


「良し、予定通りだ。そのまま戦線を下げながら時間を稼げ。」


指示はこの場を指揮する人に任せてあるので俺はすぐさまミドルの1匹へと駆け寄って戦闘を開始する。

それほど余裕がある訳ではないので半分は捨て身に近い特攻となる。

敵の爪をギリギリで躱し頬を深く抉られ敵が噛み付こうとしてくる口に飛び込んで噛みつかれる前に急所へと一撃を入れる。

そのため噛まれた腕に大きな穴が開いてしまったけどポーションを飲んですぐに回復させ次へと向かう。

コイツ等は単純だけどバカではないので戦闘中に戦い方を変えてくる。

そのため短期決戦こそが一番望ましく、相手にこちらの情報を渡さず確実に殺して行けば単純で素早く相手を殺す事が出来る。


そして2匹目との戦闘では少し小細工をしてもらう事になっている。

俺は敵の間合いに入る直前に挑発を使って奴の目を俺に集中させる。

その瞬間に枝の一つが鋭く尖り、その目を串刺しにした。


「ゴアーーー。」


その瞬間にスキルを全開にしてその胴へと剣を走らせ体を大きく斬り裂き、反対の手にあるショートソードで喉元から頭までを串刺しにする。

それによって2匹までを危なげなく倒すと3匹目へと向かって行った。


「時間を掛け過ぎた。」

「い、いや、構わない。死者は出てないから大丈夫だ。」


俺が3匹目に到着した時には相手をしていた3人の兵隊が既に重症となっていた。

まだ手足は付いているけど腹や腕は深く斬り裂かれステータスの力で無理やり立っていると言った状況だ。


「少し下がって回復を優先しろ。」

「すまない。」


3人は俺の言葉で後ろに下がると後衛からポーションを受け取っている。

恐らくはすぐに復帰して戻ってくるだろう。


俺はそれを横目で確認するとミドルへと正面から向かって行った。

しかし今度の相手は俺の挑発と目潰しのコンボを躱し、攻撃を仕掛けて来る。

どうやら先程の戦闘を見て警戒を強めているみたいだ。

俺はその攻撃を横に躱すとその腕に向かって剣を振り下ろした。


「ギャーーー!」

「残念だけど小細工しなくても勝てるんだよ。」


俺の剣は見事にミドルの腕を切断し、大きなダメージを与え。

先程までのは時間を節約するためにあの様な戦闘になったけど1匹になった今ではその必要はない。

そして斬り下ろした剣をそのまま返して相手の腹から胸にかけて大きく斬り裂くとそこに向かって先程下がった3人が一気に突撃してその胸を串刺しにした。

それによってミドルは消え去り彼らは士気を高めて前線へと戻って行く。

しかもここまでの戦闘でかなりレベルが上がっているのか精霊達は足止めの他にも攻撃を加えて鰐男にダメージを与えている。

この状況ならノーマルが何匹来ても問題はないだろう。


そして半数を倒したあたりで戦場に変化が生じた。


「ハルヤ大変だ!精霊達が異常を訴えている!」


そう言ったのは精霊魔法を使って後方で待機している人たちだ。


「何があった!?」

「恐らく毒だ。俺達の体力のヘリも増えてきている。」


そう言えば先程から敵の侵入が激しくなってきているので、これは木の精霊が力を発揮できていないのが原因のようだ。

ここに来て相手に新たな戦法が加わるとは・・・。


「そう言えば鰐男達の中にそうでないリザードマンが混ざってたな!」

「はい。偵察によってそれだけは判明していますが能力までは確認できていません。」


精霊は魔法の一種で通常のダメージからは守られているはずだ。

この状況で毒の可能性があるとすれば魔物由来の物だけ。

そうなると魔物の中に毒を扱う個体が存在すると言う事になる。

しかし、そうなると俺達が毒を受けた場合、回復の手段はあるののだろうか?


これならもっと早い段階でポーションによる毒の治療を試しておけばよかった。

俺は内心で溜息をつくと後衛に声を掛ける。


「毒が広がっている場所は分かるか?」

「私の精霊が毒を受けていますからあちらの方です!」


今は嵐のおかげで足元の水にも流れが出来ている。

それに足止めをしているエリアは目視できる場所なので影響が出る程の強い毒なら必ず前線に姿を現しているはずだ。

俺は言われた場所の周囲に視線を向けると問題の魔物を探した。


「アイツか!」


俺の見つけた魔物は予想通り蛇の様な姿で首から上が1メートルはある。

そして地面に向かって何か毒々しい色の液体を口から吐き出して水へと混入させている。

どうやらアレが問題の魔物で間違いなさそうなので奴の事は蛇男と呼べば良いだろう。

そして俺は先程の報告と状況を考え後方へと指示を出した。


「と、言う事は・・・。後衛は可能なら敵の足に傷を付けろ。魔物の攻撃は魔物にも効果がある。」

「「「了解!」」」


俺の指示で後衛は精霊に指示を出してその足へと小さな傷を付けはじめる。

奴らの背中の皮膚は分厚くて駄目でも足なら外皮は薄い筈だ。

そして魔物の足に目を向けると水に浸かっている場所に小さな傷が出来始めた。

それが次第に他の鰐男にも増えていき、その個体は目に見えて動きが悪くなっていく。


「よし、やっぱり毒は即効性だ。俺が奴を仕留めるまでそれで凌いでくれ。」


俺は敵の中に飛び込むと両手の剣で敵を斬り裂き、倒すよりも道を切り開くことを優先させる。

そして傍まで行くと目的の魔物もこちらに気が付いて口にある長い牙を剥いた。

すると尾と首を曲げて力を溜めるとこちらに向かって飛び掛かって来る。

戦法としては鰐男と一緒だけど速度は鰐男よりも早く牙には毒がある。

それでも今の俺なら余裕で躱せるので体勢を変えて攻撃を躱し、通り過ぎていくその首へと剣を振り下ろした。


その一撃て蛇男は消えて二つのアイテムを落とした。

俺はそれを素早く拾うと再び眼前の鰐男を斬り裂きながら敵の中から脱出する。


「防御は鰐男よりもかなり低いな。そしてこのアイテムは・・・。毒と毒消しか。」


するとそれは今まで手に入れた事のないアイテムだった。

もしかすると毒消しは毒を持つ魔物からじゃないとドロップしないのかもしれない。

そうでなければ今まで多くの魔物を倒しているのにドロップしないはずはない。

俺はそれぞれをポケットに入れると近くに居る仲間にその事実を伝えた。

これで一応毒に犯された仲間が出ても1人は救う事が出来る。

それにこれでポーションに解毒の効果が無い可能性が高まったので俺自身も気を付けなければならない。


「少し下がって戦場を変えよう。毒の影響のない場所まで後退だ。」


このまま戦っても毒の影響で精霊の動きが悪い。

それに毒に犯されている個体は敵の一部なのでそれを倒し終わると蛇男が居なくても俺達の不利になる。

相手の動きが鈍い内に後方へ移動し、戦場を整えた方が有利に戦えるだろう。

それに彼らもレベルとスキルが充実してきている。

一度大きく下がり魔石による強化も行うべきだ。

そして、俺の考えを理解した指揮官は無線を使って全体へと命令を送る。


「後衛は移動しながらパートナーに魔石を渡してやれ。そして強化の間は後衛が全力で敵の動きを阻害し、全員が強化を終わらせた後に攻勢に出る。」


そして全員が息の合った動きで撤退をはじめ俺はその間にサポートを行う。


「良し。この辺で停止だ。」

「ギャアオーーー。」


すると魔物の叫び声が上がり、このタイミングでミドルを大量投入してきた。

その数は10を超え木をなぎ倒しながらこちらへと向かって来る。

まだ足元の構築も終わっていないので先程よりも動きが早くこのままでは1分もかけずにこちらに追いついて来るだろう。


「奴らこのタイミングで!」

「ここは任せろ!お前らは後退を継続、水の精霊をサポートに付けてくれ。」

「分かった。お前ら任せたぞ。」


俺は即座に動くと背後で呼び出された精霊が俺の後に付いて来る。

それを感じ取ると前を向いたまま彼らへと指示を出した


「奴らが薙ぎ倒して散った葉を巻き込んで視界を塞げ。」


鰐は水中でも視界を確保するために瞬膜と言う膜を目に持っている。

そのため普通の水や泥水程度だと視界を塞ぎきれるか怪しいので今のこの状況を利用させてもらう。

すると精霊達は俺の言った通り、その身に葉を巻き込むとミドルたちの目周辺に憑りついた。


「ぐ!?ゴウオオーーー。」


そして目論見通り、奴らは手を使い精霊を払おうとその場で足を止めた。

しかし、精霊は襲い来る手をその無形な体を使って上手く躱し、その視界を塞ぎ続ける。

その間に俺は端から確実にその身を斬り裂いて大きなダメージを与えていく。

今は別に止めまでが必要なわけではない。

この間にも精霊が少しずつでもダメージを受けているのは変わらないのでともかく相手が動くことが出来なくなる程のダメージを与えられればいい。

そのためには腹を掻っ捌いて行くのが一番手っ取り早いので斬り裂きながら精霊達には次の指示を飛ばす。


「切り裂いた傷から中に入って体内を掻き回せ。」


すると俺の指示でミドルたちの顔から精霊が離れ、傷口から体内に侵入していく。

それにより奴らは更に苦しみ始め次第に消えて行った。


「このコンボは凶悪だけど使えそうだな。」


少し離れた所からは兵士たちも俺の戦闘を眺めて様子を確認している。

どやら彼らの足を止めている辺りが次の戦場になりそうだ。


俺は戦い始めて1分もしない内にミドルを殲滅すると彼らの許へと向かって行った。


「今の戦法は見たな。」

「はい、中々に効果的でしたね。」


彼らもそろそろミドルに十分なダメージを与えられるほどまで成長した。

色々危ない橋を渡った部分もあるけど犠牲を出さなかった事もプラスに働いている。

それに町を出る時は敵に思えていた嵐や環境も今では味方に付ける事が出来たのが大きい。

そして今の段階て敵の残りは恐らく1000と言ったところだ。

時刻は既に昼に差し掛かろうとしており、体力はともかく前衛では精神面の疲労が厳しくなってきてもおかしくない頃かもしれない。


「まだ戦えるか?」

「ケッ、俺はまだまだ余裕だぜ。米軍舐めんなよ。」

「我々も問題ありません。それよりもアナタの方は大丈夫なのですか?」


確かに少し前までの俺なら10分も耐えられなかっただろう。

でも、今は感情の起伏が無い分、精神への負担が少ない。

死にそうでも怖くないし痛くてもそれが思考を鈍らせることが少ない。

ただ、痛みが無い訳ではないので手足が切り落とされれば流石に危なくはあるだろう。


「俺も大丈夫だ。それよりも誰か職業を選択できる様になった者は居ないか?」

「それはこちらに来た時にあなたが選んでいた物ですね。残念ながら今の所その様な選択が可能になった者は居ないようです。」


さっき、俺がミドルと戦っている間に時間があったので確認してくれていたみたいだな。

個人の強化はこれからの戦いに必要不可欠なので、そろそろかと思ったのだけどまだみたいだ。

でも、魔石の質やレベルから言えばそろそろの様な気がする。

それともダンジョンに入っている時間などの別の条件も関係あるのか?

そして僅かな考察の時間も終わり再び魔物が此方に押し寄せて来た。


「来ました!しかも毒持ちも交じっている様です!」

「よし。それなら精霊は進行を妨害しつつ毒持ちを優先的に倒せ。そのほかの鰐男達は俺達で相手をする。」


毒持ちの防御が低い事は一度戦ったすぐ後に知らせてある。

奴らを残していると戦場を再び移動する必要が出てくるので優先的に倒す事にしたようだ。

それに既に精霊達は鰐男にもダメージを与える事が出来るので、この布陣が最も効率的に敵を倒す事が出来るだろう。

流石プロの指揮官は指示を出し慣れてるな。


「行くぞー!」

「「「おーーー!」」」


俺達は叫びを挙げて互いの士気を高めると敵へと向かって行った。

すると敵の後方から木を圧し折る様な音が響き渡りそれは次第にこちらへと近づいてくる。

そして音が静まると木々の間から赤く光る6つの光が飛び出した。


「何だあれは!」

「恐らくこいつらを統率しているボスだ。あいつらは俺が相手にする。」


コイツを倒せば司令塔が居なくなり奴らは烏合の衆へと変わるはずだ。

俺は挑発を飛ばしそいつらの気を引くと邪魔にならない様にその場から駆け出した。

すると上手く奴らは俺の後を追ってこちらへと向かって来る。

そして耳を澄まして聞くと、奴の移動に合わせて沢山の鰐男の悲鳴が聞こえてきたので少しは敵を減らせるだろう。


そして、まずは相手の全貌を知るために俺は森から出るとしばらく走り奴らを待ち構えた。

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