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俺は皆に集まてもらい1つの決断を伝える事にした。

主に集まってもらったのは盟主であるファムと、戦闘に参加するゲンさんやトウコさん。

四天王のハルアキさんとアンを含む戦闘参加希望者だ。

今回いつもの3人であるアズサ、アケミ、ユウナが不参加なのはサクラが忙しい以外にも他のメンバーに譲った意味合いもある。


「今日集まってもらったのは計画を一部変更することを伝えようと思ってのことだ。」

「残りの本丸を陥落させるんじゃな。」

「もう反抗勢力はあそこに残っている邪神だけになったものね。」

「それに関しては2人が尽力してくれたからですよ。ちょっと予定よりも犠牲者が増えましたが・・・。」

「ちょっと?」

「ファム。あれ位は想定の範囲内だ。例え町が半壊状態で半数に近い犠牲を出したとしても、この人達が関わって皆殺しにならなかった事こそが奇跡だと思っている。それに俺が命を奪った訳じゃないからいずれは復活する。そう考えればこれくらいは些細な事だ。」


そもそも邪神は攻めていった世界で倒される事もあり定期的に死ぬ者まで居る。

その最大の要因が死神たちによる討伐であったみたいだけど、イビルフェローズは彼等と不可侵条約を結んだことで邪神の死亡率がかなり下がってしまった。

そのせいで力を蓄え強力になった邪神と数が急増し大問題へと発展している。

その全てが俺が滅ぼしたブレーンによって作り出されたものだと奴の拠点を調査したハルカとマルチが突き止めてくれた。

死神の上層部にも奴の協力者が居て甘い汁を吸っていたようだけど、そちらはイザナミ様が吹き飛ばしたのでしばらくは自分達の対応で手一杯のはずだ。

もし何か言って来るようならば今度は俺が乗り込んで肉体的にお仕置きをしてやろうと思っている。。


そしてファムを納得させると参加メンバーの同意を取って決行と決まった。


「は~~~今日はハイキング日和だなアン。」

「はい。でも2番島と違ってこちらは緑がないですね。」

「あそこはオウカと世界樹のおかげで一番生命が溢れてるからな。4番島は同じ様にオウカが長い年月をかけて緑を増やしてくれたんだ。中央島も外周から少しずつ緑が増えてるしな。」


いずれはこの飛島全体が緑で覆われる日も来るだろう。

その時までには下の海に島でも作り、土地を増やしたり生物を増やしたいとも思っている。

やはりこれだけ広い世界にここ以外の陸が無いのも少し寂しい気がする。

ファムもいずれはそうなると嬉しいと言っていたのでフィリアの存在は更に高まったとも言える。


「ねえ、あそこが目的地かな?」

「きっとそうです。あそこにだけ高い塔がそびえ立っていますから。」

「それにしてもミキとカナデまで参加するとはな。」

「ここに来てサクラの手伝いしかしてないから戦闘の勘が鈍りそうだったのよ。」

「あそこもある意味では激戦区ですけどね。」

「ク!俺が手伝えれば・・・!」

「「「それは止めて!」」」

「そうなるよね~。」


以前に判明した事ではあるけど俺の力に耐えられる食材があれば料理が出来るのではという考察があった。

しかし、あの時は半神だったのでドラゴンクラスならどうにかなるかなと希望が持てた。

しかし神になってからその希望は尽く粉砕され、2か月の異世界放浪生活はその現実を尽く教えてくれている。

既に料理の味は別にしても見た目ならファムの方が真面な物を作ってしまえるだろう。

それに比べると俺は炭になった串焼きが限界で、その事が皆に知られてからは再び厨房への出入りを禁止されてしまった。

別に料理は女性の仕事だと前時代的な事は想っておらず、逆に自分で何かを作ってあげたい派だ。

今はそれが出来ないので買ってプレゼントしたり狩ってプレゼントしているけど、いつかは俺自身の手で何かを作って贈りたいと思っている。

だから再構築の力を使いこなせればそれも可能かもしれないので現在はトウコさんからの要望を受けてバリバリ宝石を作り出しているところだ。


(・・・何だか純粋な思いを良い様に利用されてる気がするな。)


そして、こんな隠れる場所の無い荒野を進んでいれば簡単に補足されてしまうのは当然と言える。

あちらも警戒を怠っていなかったようで、塔から飛び立った邪神がこちらへと向かって来た。


「儂らは先に行っておるぞ。」

「フフフ。そのままのペースで来ても良いのよ。」


そう言って2人は翼を生やして空に上がると弾丸のような速度で飛んで行ってしまった。

その数秒後には遠くで戦闘音と悲鳴が鳴り響き、邪神の数が次々に消えていっている。


「このままだと私達の相手が居なくなってしまいますね。」

「もう任せた方が早くない?お披露目は次の機会という事で。」

「お姉ちゃん。ここまで来て引いてたら修行の成果を出せなよ!」

「仕方ないわね。」


確かにゲンさん達は他人に譲るような性格はしていないので負けて死なない限り相手は残らないだろう。

ただ競争相手が居るので美味しい相手は最初からにしたのか、強い奴から順に手を出している。

激しい攻防で衝撃波が生まれて空気が震えているけどゲンさんの方はとても楽しそうだ。

逆にトウコさんの方は戦闘をしているとは思えない程に静かで聞こえてくるのは悲鳴だけと剣戟の音も聞こえて来ない。

相手の攻撃は全て神喰丸で流されており一撃必殺の攻撃によって相手が次々に姿を消している。

しかも今では大きさも自由自在のようで身の丈ほどもありそうな刀身は相手を事如く両断して行く。


「あれには俺も食べられない様に気を付けよう。」


最近は何処からともなく捕食者の視線を感じるので微妙に落ち着けない時がある。

アズサ達は何も感じないらしいけど、そういう時はトウコさんと神喰丸が近くに居る時なので絶対にアイツ等の仕業だと思っている。


そして3人も到着したので戦闘に加わっており、こちらは神として目覚めて2ヵ月だけど親はイザナミ様なので神としての格が違う。

力の制御は取り込んだ精霊に任せているようだけど、下級程度なら1撃で滅ぼしている。

俺の加護も重なっているので今のところは安心して見ていられそうだ。


「それにしても3人の面攻撃が凄まじいな。」


アンの炎はイザナミ様すら殺し得る威力を持っているので簡単に防げないのは分かっていた。

相手の武器を熔かし、血肉を灰に変え、再生さえも阻害している。

おそらく、あの力は死神の攻撃とそれほど変わらない結果をもたらしているだろう。


ミキは水と風刃を織り交ぜた水竜巻を飛ばしており呑まれた奴等は全身を切り裂かれて粉々にされている。

破壊の加護が作用しているとは言っても即死はしておらず何とか生きてはいるようだ。

しかし戦闘継続は不可能なまでのダメージを受けて地面に倒れて動けなくなっている。


カナデに関しては見た目が似ているけど渦の中に流れているのは土ではなく硬度のあるダイヤモンドのようだ。

触れた相手はその部分を尽く削り取られ、飲み込まれれば真面な姿すら残さずに消えてしまっている。

まあ、俺でも初めてでダイヤモンドの塊を作り出せたのだから、土の属性を持つ精霊のサポートがあればあれ位は簡単に出来るだろう。


それにしても、あの2人はこうなる事が分かっていたから急いでいたのだろうか?

なんだかそんな気がするので判断としては間違っていないような気がする。

ゲンさんとトウコさんは面攻撃や遠距離攻撃が可能でも使いそうにないので最初にこれをされていると到着までには2割は削られて残りの半数は満身創痍となってしまっていた。

今でこそ分散しているから良いけど、さっきのミキのセリフをトウコさんが呟いていた可能性もある。

そして周囲が片付いて静かになると、塔へと向かって歩き出した。


「なんだかバベルの塔の実物を見てるみたいだな。」

「人間が神に挑み罰を受けたというアレですね。でもクレハさんが三途の川にも似たような物があると言っていましたけど。」

「でも皮肉に見えるのは私だけかな?それに神様って高い所が好きなの?」

「確かにイメージ的に上に住みたがるイメージがあるけど、下に住んでるのも居るからな。馬鹿は高い所が好きという理論に当て嵌めるのは良くないぞ。」

「お姉ちゃんはそこまでストレートに言っていませんけど、ハルヤさんならこれを壊すのは簡単ですよね。」

「でも皆と言葉が通じなくなったら嫌なんだけど?」

「それは人間の場合でしょ。ここに人間なんていないから大丈夫よ。」

「そういえばそうだな。」


素材は焼き煉瓦みたいだけど、ピラミッドの様に紙が差し込めない程に綺麗に作られている。

完成度は高くて巨大なので壊すのが少し勿体無い。

もしかするとマジャリの城もこんな感じだったのかもしれないけど、来た日に戦闘に巻き込んで倒壊してしまったのでどんな形だったのかさえ覚えていない有り様だ。


「壊すのは簡単だけど部屋も多そうだし、集合住宅として使えそうだから残しておかないか。」

「中もそこそこ綺麗なようじゃし整理すれば使えるじゃろう。」

「マンション経営のノウハウなら教えてあげるわよ。」

「貸すにしても死神たちですからお金は取りませんよ。3番島に関してはクオナが派遣してくれた人たちが調査を続けていてしばらく掛かりますから移ってもらうならここが最適だと思います。」

「でもそれだとカルマが戻って来た時に鉢合わせしたら大変ですよね。」

「だから島の高さだけ調整してしばらくここは保留だな。あっちの調査で上手くカルマが向かった世界が分かれば良いけど。」


ブレーンはそういった資料も持っていたそうなので、もしかすると分かるかもしれないと調査を優先してもらっている。

ただ紙媒体なうえに最近の物は整理が不完全で時間が掛かっており、今のところは難航しているそうだ。

戻ってきてくれれば一番早く片付くのだけど、聞き取りによると出掛けたのは俺がここに来る1ヵ月くらい前という事らしい。

最低でも1年は戻って来ないのが邪神のお仕事というものらしく、普通は数年先まで戻って来ないとハルアキさんが話していた。


「滅ぼすのならパッと行ってパッと終わらせれば良いだろうにな。」

「邪神にも拘りがあるそうじゃからな。色々と趣向を凝らしておるんじゃろ。」

「相手をさせられる方も大変だな。でも、それだと流石に俺の方の勉強が遅れるからどうにかしないとな。」


今のところは優秀な先生がたくさん揃っているので遅れを取り戻して2学期の授業内容までは終わらせている。

以前からこういう状況を想定して準備もしていたとは言っても出来れば半年以内には終わらせたい。

ただ、これでこの世界から邪神が一掃されて平和が再び訪れたことになる。

これからお仕事から戻ってくる邪神も居るだろうけど、そちらはファルが居ればなんとかなるだろう。

正確には別の奴に任せるつもりなんだけど、今の俺ならそろそろ出来そうな気がする。

そして、ここの調査もクオナの派遣してくれた人たちに引き継ぐと、2番島へと戻る事にした。


「ん?何だか足元から光が立ち昇ってる気が・・・。」

「ハルヤの足元に魔法陣が描かれています!」

「ああ、これは召喚の魔法陣だな。何処かの馬鹿が邪神でも召喚しようとしてるんだろ。」


ファルが言うには何処かの世界で邪神を召喚しようとすると殆どがイビルフェローズから呼び出されるそうだ。

野良の邪神も居るらしいけど、そちらが呼び出される事は滅多にないらしい。

その仕組みを作り出したのもブレーンらしく自然とここに邪神が集まって勢力が拡大する仕組みを作り出している。

自称頭脳派だと思っていたけど本当に優秀ではあったようだ。

もし洗脳なんて力を持っていなければボコボコにして生きている事を後悔させた後に普通の神に戻してやっても良かったかもしれない。


「この世界で召喚に応じる事が出来るのが俺だけだからな。ちょっと行って片付けてくる。」

「それなら一応アズサ達にも知らせとくね。」

「早めに帰って来てください。」

「ふむ。そこには敵が居るという事か。」

「定員はなさそうだから私も混ぜてもらうわね。」

「そ、それなら私も!」


ゲンさんとトウコさんが魔法陣に入って来たのに乗じてアンまで来てしまった。

場合によっては人間を相手にしないといけないのであまり連れて行きたくはないけど、前世からそのまま転生しているアンなら大丈夫だろう。

ミキとカナデは俺達の中だと常人枠に入るので無理だけど、いざとなったらゲンさんとトウコさんに任せれば問題無い。

それに今の俺なら称号の色欲の効果で世界を越えてもアズサ達の場所を特定して戻って来られる。

その気になれば日帰り出張を繰り返す事も可能なので安心しで連れて行ける。


「どうやら召喚が始まったようじゃな。」

「外と内を隔てる様に壁が出来てるわね。」

「どれどれ・・・『ビキ!』おっと!そんなに丈夫な壁では無いみたいだな。・・・ゲンさんとトウコさんは張り合って壊そうとしないで下さい。召喚が途中で止まったらどうするんですか。」

「お主に言われると甚だ微妙な気分じゃな。」

「せっかくのお楽しみが途中で止まったら興覚めだから許してあげるわ。」

「は~・・・」


何故か皆がゲンさんと同じ様な目で俺の事を見ているけど、さっきのは本当に偶然なので故意ではない。

罅が入っている所も無事に修復されているのでこれなら影響は無いはずだ。


「そういう訳だからミキとカナデは皆への伝達を頼む。状況次第だと時間が掛かるかもしれないからな」

「任せておいて。それと言わなくても分かると思ってるけど、浮気はダメだからね。」

「もしもの時には迎えに行きますね。アンさん油断してはだめですよ。」

「可能な限り傍に張り付いて監視をしておきますから安心してください。」


何故か女性方面で全く信用が無いような会話が聞こえてくるけど気のせいだろうか?

そんな疑問を抱いていると周囲が光に包まれ、数秒すると何処とも知れない部屋の中へと移動していた。

足元には直径30メートルはありそうな魔法陣が描かれ、周りを甲冑を着た兵士達が囲んでいる。

ただ以前とは様子が違い呼ばれたのは俺達だけではないらしく、同じ魔法陣の上に3人の少年が立っている。

歳は高校生くらいで学生服を思わせる服を着ており距離も等間隔に離れている。

俺達は呼ばれた時のままの位置取りなので、彼等は別の世界から呼ばれたのだろう。

てっきり魔王や欲に塗れた何者かに呼ばれたと思っていたけど、もしかするとテンプレ召喚の方かもしれない。


「コイツ等にはあまり敵意が無いようじゃがこれからどうする?」

「どうも邪神召喚とは違うみたいですね。異世界物の定番として誰かが説明してくれると思うので少し様子を見守りましょう。」

「なんだか映画のプロローグみたいでワクワクするわね。」

「面白い事になったらそれを基にして制作してみたらどうですか?」

「それも面白いかもしれないわね。」


俺達が周りを丸っと無視して雑談をしていると先程の少年たちがこちらへとやって来た。

ここには大人が・・・見た目が大人な人物が2人ほど含まれているので、それを頼って来たのだろうか?

その割には見た感じだと冷静なようで堂々とした顔付きをしている。

まさかとは思うけど召喚される事に慣れているという可能性が頭を過った。


「もしかして君たちも突然呼ばれたのか?」

「は~!?突然も何も俺達は選ばれたんだろうが!そんで、お前等は何処の奴等だ?」

「見た限りでは4人も同時になんて有り得ませんね。それともこの人数で一人前という事でしょうか?」

「は!それならコイツ等って雑魚じゃん。足手纏いも良い所だぜ!」


オタク系男子でなければ何かを知っていそうな雰囲気だったので遠回しに探りを入れるとボロボロと情報を零し始めた。

相手を馬鹿にしたような態度と言動は褒められた物ではないけど、こういった奴等は九十九学園で既に慣れている。

しかし俺達に説明するための会話ではないので所々の言葉が省略されていて状況を把握するには色々と足りない部分がある。


「話が見えないな。もしかして、そっちは同じ世界から別々に召喚されたって事か?」

「そう言ってるのが理解出来ねえのか?見た目通りに頭が悪い奴だな。」

「お前たち!」

「落ち着けアン。返答は貰えたんだから怒る必要は無い。それにコイツ等はこういう事を想定した世界から呼ばれた連中みたいだ。様子からしてそれなりの実力も兼ね備えているんだろう。」


俺が馬鹿にされたのでアンが怒ってしまい、剣を抜こうと右手が柄を握り締めている。

それを上から手を添えて押し止めると、軽く説明を加えながら気にしていない事を伝えておいた。


「俺達はそちらとは違う世界から召喚された一般人なんだ。状況が理解できていないからこれからも色々と迷惑を掛けるかもしれない。フォローしてくれとは言わないけど、その事だけは理解してほしい。」

「ケ!言い返す度胸も無いのかよ!」

「女性も居るようなので見栄を張って前に出過ぎないようにだけはしてください。」

「邪魔になってもぜっていに助けねーからな!自分の尻は自分で拭きやがれ!」


彼等は罵倒と忠告をこちらに浴びせると近くに居る兵士に声を掛けて部屋から出て行った。

その後ろを他の兵士達も付いて行き、部屋には俺達と1人の少女だけが残っている。

ただし、その子は部屋の隅に隠れるように潜んでいたので誰にも気付かれては居ないようだ。

俺達は最初から気付いていたのでそちらへと向かうとアンが隠れている子を捕まえて連れて来てくれる。


「な!どうして分かったのですか!?」

「え~と・・・ドレスの裾がはみ出してたから?」


俺達は一般人だと公言したので、まさか気配がしたからとかスキルがあるからとは言えない。

ちなみにドレスは本当にはみ出していたけど、端のフリルが2ミリ位なので20メートルも離れた場所から見える一般人は居ないだろう。


「それよりもアナタは誰ですか?服装からするとこの国の姫か貴族だと思うのですが。」


アンは過去から現代に至るまでリアル姫やリアル貴族と面識があり、今でも騎士爵の位を持っている。

動きにも礼節があり、子供に対してでも何処となく優雅さが感じられる。


「その・・・召喚された勇者の人たちに皆を救ってくださいってお願いしようと思って・・・。」

「しかし、あの態度では話し掛けられんじゃろうな。」

「フフフ。さっきみたいな態度をされたのは久しぶりだから逆に新鮮だったわね。」

「それでお前の願いは世界を救う事で良いのか?」

「はい。少し前から魔族が急に力を付けて戦争を仕掛けてくるようになったのです。占星術師が言うにはとても恐ろしくて強大な影が魔族たちに力を与えているのだと言っています。」

「どうやら私達はそれと戦うために呼ばれたみたいですね。」

「まあ、それが1つだけど最優先課題だろうな。」

「1つですか?」

「ああ。」


おそらくは本来召喚される人数は3人で、召喚を纏めていたであろう3人の神官とパスが繋がっていた。

しかし俺達が繋がっているのはこの女の子で世界を平和にしたいという子供らしい純粋な思いが伝わってくる。

ただ、余計な者が混ざっていても驚かれなかった事から推察すると、事故の様に関係ない者が召喚される事もあるのだろう。

だからさっきの奴等は俺達を勇者とは認識せずに放置して行ってしまったのだと思う。


「それなら俺達も微力ながら手伝ってやるからな。」

「でも私はお金や装備は与えられませんよ。」

「ホッホッホ!儂はこの身があれば十分じゃよ。」

「私も得物は持参してるから大丈夫よ。」

「私も問題無い。ただこの世界で行動するために旗印が必要なだけです。」

「俺も大丈夫だ。だからお前の名前を教えてくれないか?」

「分かりました!私はラルティーネと言います。この国では末の姫で上に姉が2人居ります。」

「やはり妹でしたか。」


するとアンの口から僅かな声量でそんな言葉が聞こえてくる。

そして立ち位置が移動して俺との間に割って入ると、その背中からは無言の警戒を感じ取ることが出来た。

まさか相手が誰かの妹だからと俺が拐かすとでも思っているのだろうか?

しかしアンの動きに気付いているはずのゲンさんが自然な流れで話を進めてくれる。


「ならば儂らの部隊名はラルティーネ殲滅軍なんてどうじゃ?」

「私もそれで良いと思うわよ。」

「私は分かり易ければ何でも構いません。」

「俺もそれで良いと思います。」


俺達は無事にラルティーネ殲滅軍を結成すると、さっきの連中を追い掛けて部屋を後にした。

しかし邪神としてではなく、別の世界で勇者をする事になるとは思ってもいなかった。

ただし、そちらは最初だけになるのでなるべく早く終わらせてしまおうと思っている。

そしてラルティーネの案内で目的の場所へと到着すると、先程の3人が話を終えて出て来るところだった。

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