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351 道に迷う ①

現れた邪神は水着の様な服を着て黒いマントを羽織っている。

ハッキリ言ってその際どい服装では今時のコスプレ会場だと出場停止をくらいそうだ。

それに頭には悪魔(山羊)の様な角があり、ルリコが見れば少し羨ましがるかもしれない。


「それでアナタはどちら様ですか?」

(マルチ、そいつを連れて退避していろ。)

『・・・分かりました。』


そしてマルチは素直に転移で遠くに退避すると、この場には俺と目の前の女性だけとなった。

恐らくは用があるのは俺だけなのでマルチは見逃してもらえたのだろう。

今の俺から見てもかなり力のある邪神だと思うのでその気になれば一睨みで意識を刈り取る事も出来たはずだ。


「それでは2人っきりになった所で自己紹介をしましょう。私の名前はファルマリスと言います。」

「まさか邪神帝国の首領のお出ましか。」

「知っていましたか。実はある報告を受けましてアナタをスカウトに来たのです。」

「俺を邪神にでもしに来たのか?」

「そこまで知っていましたか。この世界で多くの邪神が討ち取られ、その中心にはハルヤという亜神が関わっていると聞いたのです。私の力でアナタを神にまで引き上げてあげますよ。」

「いえ結構です。出来ればこの世界から手を引いてくれると助かるんだけど。」


そうすれば俺もボルバディスの問題を解決すればしばらく楽に暮らす事が出来るだろう。

時々はクオナ達の依頼を受ける事になるだろうけど、大学を卒業するくらいまでは大丈夫なはずだ。

しかし俺の提案は笑顔を浮かべるファルマリスによって呆気なく否定されてしまった。


「私にも目的が有ります。世界を滅ぼさない訳にはいかないのですよ。」

「そうか。交渉が決裂して残念だ。」

「そんな気持ちもすぐに消える事になります。私の力を受けて邪神とならない者は居ません。」


するとファルマリスの瞳が血の様に赤く輝き、俺の目を覗き込んで来る。

どうやらコイツの能力は魔眼の類の様だけど俺に変化は何も起きていない。

あえて言うなら全身マッサージを受けて体が軽くなった気がするくらいだ。

しかしステータスを確認すると『神』と書かれている所が『邪神』に変化しようとしている。

一応効果はあるようだけどこれで何か変わるのだろうか。

そして完全に邪神と変わってしまったけど俺自身に変化は何もない。

しかも指先でちょっとステータスを弾くと簡単に神へと戻ってしまった。


「何かしたのか?」

「そんな!私の力が跳ね返された!?いえ・・・きっと強がっているだのね。今度は更に強くして記憶の改ざんもしてあげる!」

「記憶の改ざんだと!?」

「そうよ。私は相手の最も大事な者との記憶を改ざんして私の事を一番大事に思わせる事が出来るの。」


どうやら、これが邪神に落とした者を従えるカラクリのようだ。

しかし、その相手が大事にしている者が観賞魚とか亀だったらどうするつもりなんだろうか。

流石にそれではバレるのではないかと思わないでもないけど、それだけこの能力が強力なのだと思う事にしよう。

しかし俺はその直後に受けた不快感は理性を失うには十分なものだった。


「これが記憶の改ざんか・・・。」

「こっちは無事に効いている様ね。」


ちなみに俺の中では大事な者は沢山いるけど婚約者であるアズサだけでなくアケミやユウナ達までファルマリスの顔に変わって行く。

それにこの時の感覚は以前にも感じた事があり、あの忌まわしい百足の魔物と初めて出会った時と一緒だ。

あの時は世界の理とかいうクソみたいなルールによってアズサとの記憶だけでなくユウナとの記憶まで消されてしまった。

しかし、その記憶を取り戻した時に俺は二度とその記憶を手放さないと誓っている。

その誓いを再び犯そうとする奴は相手が誰であろうと容赦するつもりは無い。


「お前は他人が触れてはいけない大事なモノに手を出した。その報いを受ける時だ。」

「まだ逆らう気力・・・が・・・。」


俺は怒りを爆発させると悪魔王の姿へと変わっていく。

そして変わりながらファルマリスへと近寄りその首を掴み上げて空中で締め上げた。


「あ・あなた・・まさか・・・最初から・・邪神!」


俺はイザナミの話を聞いて怒りと憎しみから生まれた事を知った。

だから今はこの状態こそが最も自分の力を発揮できる事に気付いている。

そのためミルガストと戦っていた時は能力が10倍程度だったけど、今ではあの時の何倍も力が湧いて来る。

それに1パーセントしか使っていなかった神の力を今ではフルで使える様になっている。なのにやけに少ない上昇だと思っていたけど、俺が力を使い切れていなかっただけみたいだ。


「ここでお前を殺せば少しは世界が平和になるのか。」

「・・いや・・・死にたくない。」

「今頃になって命乞いか。これまでどれだけの迷惑を周りに掛けてきたか分かっているのか。」

「・・・パパ。」

「パパ?」


すると遠くからこちらに向かって来る気配を感じ取った。

そしてそちらに視線を向けるとミルガストのブレスで飛んで行ったはずのカオスブレードが真直ぐにこちらへと飛んでくる。

そして、その切っ先は敵であるはずのファルマリスではなく俺に向けられていた。

しかし俺はそれに対して右手に掴んでいるファルマリスを盾にする形で向ける。

するとカオスブレードの動きが直前でピタリと止まり、位置を横に動いて彼女を避けようとする動きを見せた。


「そういう事か。」


俺はカオスブレードを鑑定しある程度の予想が着いたのでファルマリスを地面へ落として解放した。

意識は既に失っているけど首が千切れたり折れている訳では無いので命に別状はないだろう。

するとカオスブレードもそのまま地面へと落ちて突き刺さるとそのまま動かなくなった。


「また面倒な問題が出来たみたいだな。さて、これからどうするか。」


もしこのまま彼女が邪神帝国であるイビルフェローズに戻らなければ今までよりも多くの邪神がこの地球を目指して現れるだろう。

俺の事はあちらも調べているようだし、コイツがここに来る事も知っていそうだ。

そうなるとコイツを帰さない訳にはいかないのだけど、ただ帰すだけだと何をするか分からない。

下手をしたら一斉攻撃とかされたらかなり面倒だ。


「仕方ないか。皆には少し謝っておいてコイツと一緒にイビルフェローズに行くしかなさそうだ。」


それにエリスを助けた時のお返しとしてクオナからイビルフェローズへの潜入の依頼が来ている。

既に信用できる2名の人間を潜入させているらしく何やら重要な情報を掴んだそうで俺の力が必要らしい。

まだ何の説明も受けてはいないけど会えばすぐに分かるだろうと言われている。

そして覚悟を決めるとスマホを取り出してアズサへと連絡を入れた。


『どうしたの?』

「実はちょっとイビルフェローズに行かないといけないんだ。」

『・・・すぐに帰って来れる?』

「分からない。でも絶対に帰って来るからな。」

『絶対だからね。ハルヤが居ないとご飯も美味しくないんだから。』

「そう言ってくれるだけで俺はご飯が3杯は行けそうだよ。」

『馬鹿。それなら皆にも代わるから声を掛けてあげて。』

「ああ。」


そして俺は時間を掛けて皆と電話越しに再会の約束を交わした。

転移を使えば直接会えるけどファルマリスを置いて行く訳にもいかず、触れようとするとカオスブレードが反応して護ろうとしている。

こちらに来るのも安全とは言い難いのでこうして電話での会話となってしまった。


「さて、話は終わったからコイツを起こすか。」


するとカオスブレードは突き立った体勢から次第にファルマリスの頭へと傾き始めた。

それを眺めていると柄の部分が角が良い感じに後頭部へと迫っている。


『ゴッ!』

「う~ん・・・パパあと5分~・・・。」

「いったい今までどんな起こされ方をして来たんだ?」


かなり鈍い音がしていた気がするけどそれを意に返さずに余裕で眠り続けている。

その間に聖剣も戻って来たので丁度良いけど、ピッタリ5分経つと倒れているカオスソードが再び動き始めた。

しかも今度は浮いたままファルマリスの真上に動くと一気に加速して急降下する。

これでは下にある見た目だけは綺麗な顔に風穴があいてしまうだろう。

まさかこの段階で瞼で白羽取りしたり、口に咥えて防いだりは出来ないはずだ。

もし、それが可能だというなら、俺はコイツに弟子入りを申し込むかもしれない。

しかし期待とは裏腹にファルマリスは直前で目を覚ますと、向かって来る刃を見て素早く横へと転がって躱して見せた。


「お~~~、あのタイミングで避けれるとは思わなかった。」

「アナタ!何て起こし方してくれるの!」

「いや、俺じゃなくて剣が勝手に・・・。」

「そんな噓を言っても無駄です!それよりも良くもやってくれたわね!」

「それなんだが、俺はお前と一緒にイビルフェローズに行く事に決めた。だから案内は任せたからな。」

「ど、どうして私がアナタの様に危険な存在を連れて行く事になっているんですか!?」

「嫌なの?」

「嫌です!・・・って、ちょっと!なんですかその手は!?」

「いや、ちょっとさっきのお仕置きをしておこうと思っただけだ。」

「待ってください!もしかして私を辱めるつもりですか!?」

「まあ、似た様なものだな。周りに誰も居なくて良かったな。目撃者は誰も居ないぞ。」

「ま、待って!待ってください!連れて行きます。連れて行きますから!・・きゃ~~~!?」


俺はファルマリスの腰に手を回して持ち上げるとマントを捲って水着の様な布面積しかない服に包まれたお尻を前に向ける。

そして手を上げるとそこに向かい適度な力で振り下ろした。


『パシン!』

「ひゃう!や、止めなさい!この様な辱めを・・・。」

『パシン!』

「や、止めて!」

『パシン!』

「もう・・・しませんから・・・止めて。」

『パシン!』

「お・・お願いします。止めて・・ください。」

『パシン!』

「あん!おねがい・・しまう。もうひゃめて・・。」

「なんだか声が反省してないな。」

『パシン!』

「も、もうぶたないで・・・。げんかい・・なの。」


なんだか声が変に熱くなっているけど少しやり過ぎただろうか。

顔も赤いしそろそろ止めてやるか。


「反省したか?」

「は、はい。だから止めないで。」

「は?」

「・・・な、何でもありません!早く離しな・・!」

『パシン!』

「ひゃうっ!ひ、卑怯ですよ!」

『パシン!』

「反省したか?」

「はい・・・しました。」

「良し。それなら解放してやろう。」

「ホッ・・・!」

『パシン!』

「あ~~~・・・。」


やっぱり気の抜けた時の1撃は良く効くな。

昔も自分の子供が悪い事をした時はこうやって叱ったもんだ。

なんだかあの時に比べると反応はちょっとおかしい気がするけど反省したようだから解放してやった。


「どうしたんだ膝を抱えて座り込んで?」

「責任を取ってください。」

「何の?」

「自分の胸に手を当てて考えてみなさい!」


もしかしてトイレの我慢でもしていたのだろうか。

以前にも稀にそういう事があったのを覚えている。

持ち上げる時に腹部を圧迫するので特に女の子は我慢が出来ずに洩らす事が・・・ゴホン!

一応は浄化の魔法を掛けて綺麗にしてやろう。

出力を下げて使えば邪神でも大丈夫なはずだ。


「浄化。」

「キャ~~~!?(何なのこれ!?全身が羽で擽られてるみたい!)」

「あれ?」


なんだか予想に反して効果が出てしまったけど顔が真っ赤になって痙攣している。

表情が少しだらしなくなっているけど、そんなに痛かったのだろうか。

その後も何度か力の調整をしながら浄化を掛け、漏らさない力加減を習得するのに30分も掛かってしまった。

そして時間を無駄にしたけどファルマリスに案内され空間の裂け目へと入って行く。


「何だここは?」

「次元の裂け目です。そんな事も知らないのですか。」

「知る訳ないだろ。」


とは言っても以前にイチキシマヒメが作ってくれた道に似ている。

ただあの時と違って空間は不安定で揺らいでいるし道標と言える物は何も無い。

すぐ傍をファルマリスが歩いているけど気を抜いたら見失ってしまいそうだ。

しかしコイツと逸れたら目的地に辿り着けないので手を繋いでおこう。

これは決して俺が道に迷いそうだからではなくファルマリスが俺を置き去りにしそうだからだ。


「な!何を勝手な事を!」

「逸れたらどうするんだ。」

「・・・仕方ありませんね。」


ファルマリスは少し睨んで来たけど俺の言葉に視線を前に戻した。

代わりに手を握り返して来るのでダメと言う訳ではなさそうだ。

しかし、さっきから観察しているけど見た目よりもかなり幼く見える時がある。

見た目は18歳の黒髪で目元が鋭いキツめな顔の美女だけど何処となく無理をしている気がする。

特に目元を無理に鋭くしているのか時々引き攣ってるようだ。


「それで何時になったら到着するんだ?」

「・・・。」

「おい。もしかして・・・。」

「・・・ま、迷ってないのよ!ちょっと寄り道をしてるだけなんだから!」

「口調がちょっと変わってるぞ。」

「うっ・・・。ア、アナタが急に手を握るから方向を見失ったの!こうなったのはアナタの責任なんだからどうにかしなさいよ!」

「は~仕方ないな。どうやったらここから出られるんだ?」

「その辺にある空間が揺らいでる所が全部出口よ。壊れ易くなってるから素手でも壊せるわ。」

「そうか。それと俺はアンタじゃなくてハルヤだ。名前で呼ぶ事を許してやるから俺はお前の事をファルと呼ぶからな。」

「何を勝手に決めてるのよ!私は女王なのよ。」

「はいはい、迷子の女王様。それなら周りに気にする奴が誰も居ない時だけな。」

「もうアナタって・・・ハルヤは傲慢なんだから。」


その割りには顔がニヤけている様に見えるのはここの空間が安定していないからか?

そして足を止めて周囲に視線を向けていると俺の耳に小さな声が聞こえて来た。


『誰でも良いから・・助けて・・・。』

「何か声が聞こえたな。」

「それはきっと誰かが発した魂の叫びね。この空間の歪みはイビルフェローズが作り出してる場所だから何処かで滅びかけてる世界があるのよ。」

「ふ~ん。」


ファルは強がって言っているけど傍に俺しか居ないからか顔が明らかに歪んでいる。

嫌なら止めさせれば良いのに女王と言ってもそんな権限もないのだろうか。

そういえば何か目的がある様な事を言っていたのでそれが理由かもしれない。

しかし、どんな存在になったとしても自身の力だけで解決できない事を叶える為には自分の思いを曲げないといけないと言う事か。

ただ、俺は邪神ではないのでそんな事は関係ない。

こちらはこちらでやりたい事をやりたい様にやるだけだ。


「なら最初の出口はここにするか。」

「任せた以上はハルヤの好きにしなさい。」

「ならしっかりと付いて来いよ。」


俺はそう言って空間の揺らぎを素手で砕いて外に出た。

するとそこは何処か分からない城の最上階で空には雷雲が立ち込めている。

そして足元には良く分からない魔法陣が血によって描かれ、そこには血濡れの少女が倒れていた。

その服はコスプレチックな巫女服の様で、その向こうには黒い鎧を身に付けた怪しげな魔物が立っている。

すると魔物は足元に倒れている少女をゴミのように乱暴な動作で蹴飛ばすとこちらへと近付いて来た。


「貴様が今回の邪神か。」

「今回の?何の事を言っているんだ。」


俺は邪神では無いし言うなれば偶然に通り掛った一般人だ。

今は神なので一般神という言い方が正しいかもしれないけど、何を言っているか全く分からない。

ここが自分の世界で雰囲気がシリアスでないならいつもの様に「説明プリーズ」と言っている所だ。

するとまるで馬鹿を見る様な目を向けて来ると舌打ちをして説明を始めた。


「貴様が2人目という意味だ。前回の奴は見た目はそれなりだったが想定を超えて雑魚だったからな。せっかく大量の人間を生贄に使って呼び出したと言うのに勇者に負けて滅ぼされてしまった。だから今回は生贄を厳選し聖女を攫って使ったのだ。」

「そうなるとお前は勇者と敵対していてそこで死に掛けているのが聖女で間違いないな。」

「その通りだ。」


今も聖女であるらしい少女からはこの世界を救ってほしいと掠れた思念が届いている。

それに話を総合すると足元の魔法陣は邪神を召喚する物で聖女の血を使って書かれているのだろう。

しかし俺はコイツに呼び出されたのではなく、聖女の声に応えてこの場に現れている。

そうなるとコイツが本当に用があるのは俺の背中に隠れて様子を窺っているファルの方だろう。

ただ、ここで否定してお前は何者だとツッコまれるのが面倒なのでこのまま話を続けさせてもらおう。


「ならば問おう!お前の望みは何だ!?」

「我はこの世界を滅亡へと導く破滅の魔王ガイアクである。召喚者として貴様に命じる。勇者を倒し世界に絶望と恐怖を溢れさせるのだ。そうすれば我は更なる力を手に入れ神へと至る事が出来る。」


まさか望みを聞いただけで命令をして来るとは思わなかったな。

それとも元々が他人の話を聞かない奴なのだろうか。

召喚された邪神は7つのボールを集めて呼び出された龍の様に一つだけ願いを聞かないといけない決まりでもあるのか?


「ファル。こんな事言ってるけど命令を聞くのはお前じゃないのか?」

「この世界の壁を壊したのはアナタなんだから私は関係ないわよ。それにこの足元の魔法陣には隷属のルーンが刻んであるわ。」

「俺は全然アイツの言う事を聞く気が起きないんだけど。」

「命令に逆らうと激痛が襲って来るわよ。」


そう言われても痛みどころか何も感じない。

もしかすると俺が邪神ではないのでエラーでも起きているのだろうか?


「あ。」

「どうしたの!?」

「言われてみれば鼻がムズ痒い様な気がして来た。」

「え?」

「ハ・・ハ・・ハクション!」


そして俺は盛大にクシャミをしたけど、流石にファムに浴びせる訳にはいかない。

なので気を使って横を向くと丁度そこには魔王さんが立っていた。


『バシャ!』

「あ、魔王が消し飛んだ。」

「な・・何て事するのよ!これじゃあ完全に振り出しじゃない!それに魔王を殺してこれからどうするのよ!」

「いや、俺も神になったばかりだから力の制御がな。まさかクシャミにスキルが乗るとは思わないだろ。な。」

「な。じゃないわよ。きっと勇者は聖女を助ける為にここに向かってるわよ。そこで聖女は死んでる。魔王も死んでるんじゃあ勇者は誰と戦うのよ!」


確かに俺のスキルでも勇者がこちらに向かっているのが分かる。

大軍を囮にして魔王軍の奴等を惹き付け、真直ぐにこちらへと向かって来る。

もし呼び出されたのが邪神で魔王が死んでいなければまさにクライマックスバトルと言った所だろう。


「それだと仕方ないから聖女は俺が助けておくか。」

「それは無理よ。生贄にされたって事はその魂まで捧げたって事なのよ。召喚が成功した時点で死ぬのは決まってるの。」

「そんなのはやってみたいと分からないだろう。」


確かに聖女の魂は今にも消えそうになっている。

しかし、その魂は俺とリンクしていて消えるというよりもこちらに流れ込んでいると言った感じだ。

ならこちらから加護を与える要領で押し返してやれば助かるかもしれない。


「さて、ちょっと試してみるか。」


そして俺は聖女の命を救うために行動を起こす事に決めた。

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