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346 決戦前

ホテルに帰る時にジーナと別れたけど彼女はこれから国へ帰らないといけないらしい。

ただ凄い顔で泣いていたので再会は遠くないかもしれない。

なんでもジーナの国では女性と言うだけで冷遇される事もあるそうで彼女もその例に漏れていないそうだ。

そのため1度国に帰り日本への移住を仄めかせてみるらしい。

それで改善が見られなければ本格的に移住を考えると言っていた。

ちなみに今の日本はダンジョン関係の人材に関して優遇傾向が強く、ジーナ程の実力者ならゲンさんが逃がすはずもない。

恐らくは衣食住の他にもかなりの好待遇で迎え入れてくれるだろう。

トウコさん辺りは既に算盤を弾きながら黒い笑みを浮かべているかもしれない。


そしてホテルに戻った俺達はその直後に宇宙ステーションへと向かって行った。

そこには既にクオナが待っていてさっきのヒュドラに関しての説明をしてくれる。

それによると各国の反応を見るのが目的でワザとあそこへ誘導したらしく、既に動きが見られるようだ。


「ようは今回のダンジョン攻略で探索者をどの国が協力させるか、見極めに使ったって事か。」

「そうなりますね。今のところ協力要請に応じたのはオーストラリア、フルメルト、アメリカだけです。」

「あれ、日本は?」

「天皇からは死ななければ好きに使って構わないと以前から確約を貰っています。」

「あのやろ~~~!」

「しかし今回に限って言えば不参加は無いですよね。」

「もちろんだろ。」


今回はアズサだけでなく全員から参加希望が出ているので決定事項だ。

特にあのダンジョンにもヒュドラが居ることが判明しているので、あの味を知ってしまえば引く事は出来ないだろう。

しかし、そうなるとジーナが国に帰る様に指示を受けたのはこの戦いに参加させない為のようだ。

そうなると帰って日本への移住を仄めかすのは逆効果かもしれない。


「・・・え、はい。分かりました。」


すると何かの連絡が入ったらしくクオナは耳に手を当てて返事を返した。

そして短いながらもやり取りを終えたようなので何があったのかを聞いてみる。


「どうしたんだ?」

「一人追加です。ロシア代表のジーナ・ソコロフがここへ上がって来ているそうですね。」

「どこかで話を聞いて個人的に参加する事にしたんだろうな。それと悪いけど。」

「分かっています。何かあった時にはこちらで保護しましょう。」

「そうしてくれると助かる。最低でも時間稼ぎをしてくれればゲンさん達が手を打ってくれるだろうからな。」


そして今回の参加者が集まって来た様なので俺達は場所を会議室へと移す事にした。

そこにはアーロン、ジーナ、クレインが既に来ており、少し遅れてエリス、アイラ、デトルが入って来た。

するとジーナはアズサの姿を見てこちらに駆け寄り目をウルウルさせながら抱き着いている。

まあ、性的な意味ではないので今は好きにさせておこう。


「お姉さま~~!話は聞きました~!」

「危ないから帰っても良かったのよ。」

「そんな薄情な事は出来ませんよ~!」

「しょうがないわね~。無理はせずにクオナ達の指示に従って戦うのよ。」


そう言ってアズサは子供をあやすようにジーナの頭を優しく撫でて泣き止むのを待っている。

これではどちらが子供なのか分からないけどアズサもミズメと合わせれば100歳を超えているので間違いでは無いだろう。

その後、ウキウキ顔のゲンさんやトウコさんも到着し、エヴァやエクレも姿を現した。

それと偶然にも店の視察に来ていた『ニャン!チュ~!』店長のヒトミも加わり少しずつ戦力が増え始める。

すると珍しい顔ぶれが会議室へと入って来た。


「アンドウさんも来たんだな。」

「ああ。実はツバサとホノカのレベル上げをしようと思って来たんだ。俺と組めばダンジョンに入らなくても安全にレベルを上げをさせられるからな。」

「そういう事か。それで他のメンバーも連れて来てくれたって事か。」

「ああ、連れて来られるだけ連れて来た。そっちの目的はどうせ経験値よりも肉だろう。」

「流石アンドウさんだな。俺達の事を良く分かってる。それじゃあ、パーティに入れて経験値を分ける代わりに肉は貰うからな。」


それにレベルが高くなっても戦闘に参加できるとは限らない。

特に急激なレベルアップをした後は力の調整が難しくなり慣れるまでしばらく掛かる。

厳選して低レベルなドラゴンを回しても良いけど、その余裕があるか確信がない。

最悪の場合は全員で撤退戦をしなければならず、犠牲者も出る可能性がある。


「それと、もしもの時は遠距離から撤退の援護も頼む。」

「今回の敵はそれ程の相手なのか?」

「恐らく今回は手加減している余裕はない。ミルガストが出て来たら全員に即時撤退を呼びかけてくれ。巻き込まれたら魂ごと跡形もなく消されるかもしれない。」

「分かった。それに関しては全員に徹底させよう。」


すると話の切りが良い所で今度はエリス達が俺の許へとやって来た。

しかし今もアイラの方はご機嫌斜めの様で視線さえも合わせようとはしない。

エリスはそんな彼女の背中を押して前に出させると俺の前に2人で並んだ。

それにしても2人は双子だけどクオナが成長を調整してくれたのでエリスの方が身長は低い。

顔付は瓜二つだけどアイラは小麦肌くらいでエリスは白い肌をしている。

まあ400年前から世界的に紫外線が弱まって環境が穏やかになっているので体の色素が薄くなっているのかもしれない。

特にエリスに関しては日差しを浴び始めて数日しか経っていない。

ステータスのおかげで問題無く出歩けるけど、普通なら日焼け止めのクリームを塗って肌を保護したり、サングラスなどで目を保護しなければならなかっただろう。

こういう時にはステータスがあって良かったと実感できる。


「昨日の事をまだ怒ってるのか?」

「だって・・・初めてだったのに。」

「もう姉さん!そんな言い方だとハルヤには伝わらないって教えたでしょ。」

「う~・・・だって~・・・。」


するといつもは凛々しい雰囲気のアイラがまるで子供みたいに駄々を捏ねている。

これでは姉と妹が反対に見えるけど、実年齢は殆ど変わらないだろう。

そして決心が着いたのか上目遣いに睨んで来るとようやくこちらに話しかけてきた。


「ねえ・・・。私の事は認めてくれないの?」

「認めるも何もアイラはあの時に逃げて行ったから実力の殆どを見られなかっただろ。」

「なら、今回の戦いで活躍するから私の事もエリスみたいに認めてよ!」

「そう言われてもな・・・。『チラリ』」


このアイラの認めて欲しいと言うのがアーロンの様に戦友としてなら問題は無い。

しかしエリスと同じ様にとなると大問題に発展してしまう。

それに先程からの様子を見ると俺だけの勘違いでは無いはずだ。

そのため俺は確認する様にアズサ達へと視線を動かした。


「今回はハルヤの好きにしても良いよ。その代わりしっかりと責任を取らないとダメだからね。」

「それはエリスとアイラが同じ魂を持っているからか?」

「そうだよ。たとえ心が違っても魂はどうしても魅かれ合っちゃうからね。それは私達も一緒だから気持ちは分かるんだよ。これは神様にだって曲げられないんだから。」

「運命って奴か?」

「違うよ。そんな別の何かが決めた物じゃなくて自分の全てがその人を求めてる感じかな。それは心よりも反応が早いから最初は戸惑うかもしれないけど、すぐにそれが正しかったって分かるはずだよ。」


アズサはいつになく真剣な顔で話すとエリスとアイラに微笑みかけた。

それを受けてエリスも笑みを返し、アイラは顔を赤くして俯いてしまう。

しかし考えてみれば環境の違いで性格が違うけど魂は同じなので一方だけを対象にするのは差別と同じだ。

そうなればあの時の約束もエリスだけに適用するのは間違いかもしれない。


「それならアイラの我儘も一つ聞いてやろう。ただし俺がお前を認めたらだ。」

「ホント!」

「俺は下手な嘘を言って場を濁したりしない。言った以上は絶対に護る。だけど無理をせずにアズサ達の言う事をしっかり聞いて行動しろよ。」

「分かった!」


どうやらさっきまで抱えていた不安が消えた様で今は拳を握って気合を入れている。

この後にどうなるかはアズサ達次第だけど、さっきの話の流れから決まった様な物かもしれない。

しかし、ちょっとその前にもう1人の相手にも声を掛けておかないとな。

さっきからほのぼのとした表情で聞いているけど、妹2人がこんな事を言っていて気にはならないのだろうか?


「デトルは何も言う事は無いのか?」

「俺はアイラとエリスが自分で決めた事なら何も言うつもりはない。それに、アナタのおかげで俺は今まで国を護り平和に導けた。それはサラスヴァティー様も認めてくださり、私に国を任せても良いと仰っている。それに国に残っても好きな相手と常に結婚できるとは限らないからな。」

「お前はどうなんだ?」

「ハハハ!私は既に意中の相手と婚約しているさ。もうじき結婚するからアイラの方が上手くいけばその人が王妃になる。元は俺の侍女だったが幼馴染と言う奴で付き合いも長いから気楽なものだ。」


どうやらデトルは俺の事に気が付いているようだ。

それに妹2人が俺に取られても気にしている様子はない。


それから少しすると粗方の代表者が集まったのでクオナが部屋の正面に移動し席に座る様に言って来た。

そして会議が始まり情報の共有が行われ、それぞれに配置を決めて行く。

それだけではなく、ここに居るのは主に前線で戦う者達だ。

ここ数日で俺達が作った装備品も配りステータスも出来るだけ強化しておく。

武器はアンドウさんが提供してくれているので全員が能力的にはかなり上昇しているだろう。

後で地上に降りたら能力確認も兼ねて俺が手合わせしてやろう。


それと残念だけどアンドウさんが連れて来た他のメンバーに配るだけのアイテムは準備が出来ていない。

ただここに連れて来て貰える程のメンバーなら既に俺達が以前に作ったアイテムで強化を済ませているだろう。

今回はそれで我慢してもらい、討伐で真面な素材が手に入ればそれに切り替えて行ってもらう。

今ではアンドウさんも付与が出来るけど素材の関係で出来ない事も多かったから丁度良いだろう。


「よし。これから下に降りてちょっと体を動かすか。」

「ちょっと待て!本当にちょっと体を動かすだけだよな!?」

「大丈夫だ。お前の相手はゲンさんがしてくれるからな。アイラとエリスはハルカに訓練してもらえ。」

「「はい!」」

「ちょっと待て!どうして俺だけその人なんだ!」


すると2人の元気な返事の後にアーロンがストップを掛けた。

どうやらゲンさんの強さと容赦の無さは海の向こうでも有名なようだ。

既に決勝の舞台で俺と向き合った時と同じくらいに色が悪く、冷や汗を滝の様に流している。

もしかして以前よりも若いのに更年期障害でも患っているのだろうか。

仕方ないのでここはもう1人の候補にお願いするしかなさそうだ。


「それならトウコさんにお願いするか。」

「良いわよ。若い子の相手は久しぶりね。」


するとアーロンの顔に明らかに安堵の色が浮かぶ。

どうやら普段は本性を表に出さないトウコさんの情報はアーロンも持っていなかったようだ。

本当はこちらの方が容赦が無いのだけど、そこは言わない方が良いだろう。

きっと訓練が始まれば存分に楽しむことが出来るはずだ。


そして俺達は地上に戻ると空き地で新装備の慣らしを行った。

一角だけは激しい悲鳴と穏やかな笑い声が聞こえて来たけど、トウコさんは楽しめたようだ。

アーロンに関しては・・・言わないでも分かるだろう。

ただ言える事は、ポーションだけで数十個。

蘇生薬が幾つか消費されたとだけ言っておこう。

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