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326 ダンジョンに邪神襲来 ①

ダンジョンに入り最初に分かった事はここの制御が失われているという事だ。

既にダンジョン内には多くの魔物が湧き出しており各階層でも100を超えている。

但し、それは低層に限っての事で12階層に居る邪神よりも下の階層では魔物の大発生は起きていない。

これは予想でしかないけど、この魔物の発生はここに入って行った邪神の影響と思われる。

それならアイツを倒せばこの異常も改善するかもしれない。

後はこの中に入っている探索者のデータが欲しい所だな。


そう思っていると丁度マルチから情報が送られて来た。

今このダンジョンに入っている人数は5人でどれも20階層よりも下のようだ。

生徒たちで入っている者は居らず、全て一般の探索者と言う事らしい。

それならこれから急いで15階層付近で捕捉すればどうにかなりそうだ。


俺は向かって来る魔物の群れを正面から弾き飛ばすとそのまま下に降りる階段へと向かって行った。

それにどうやらここに入って来ている邪神は下に降りる階段の正確な場所は分からない様で階層を彷徨っている節がある。

それでも移動速度が早いので既に13階層へと降りているけど、これなら十分に追いつけそうだ。

そして予定した通りに15階層で追いついた俺はその背後から声を掛けた。


「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。」

「なんだ?何者かが近づいて来ていると思えば人間と雑魚の神か。」


そして邪神はこちらを一瞥しただけで興味を失うと再び移動を始めた。

どうやら俺達の相手をするよりも他に何か目的があるようだ。

なのでその進行方向に回り込むとSソードを手にして立ちはだかる。

しかしその姿は外で見たのとは明らかに違い限りなく人間に近い。

性別も男性の様に見え、肌や髪が灰色をしていなければ剣道着を着た探索者と見間違えそうだ。

しかし、その見た目以上に放つ気配と、その身に内包した巨大過ぎる力がこの男が人間ではないと語っている。

それに俺の事はともかく、身に纏っている装備が神武装であると見抜ける奴もそうは居ないだろう。


「ここで何をするつもりだ?」

「知れた事よ。このダンジョンの最下層に封印されている者に用があるだけだ。」

「まさか封印を解くつもりか!?」

「まあ似た様なものだ。今の我は強い肉体を欲している。それが無ければ真の力を発揮できんからな。」

「それだと今の姿はどうした?」

「これはこのダンジョンで死んだ者の魂から丁度良いものを見つけたのでな。それを取り込んで仮初の肉体を作り出したまで。それに技と技術は高い様だが所詮は非力で下等な人間よ。如何に自身を限界まで高めたとしても我らの足元にも及ばん。だから我がそれを有効活用してやるのだ。」


すなわちコイツの姿はこのダンジョンで死んだ誰かという事になり、しかも邪神が認める程の技と技術の持ち主と言う事になる。

それに口振りから言って姿は似ていても肉体はかなり強化されているだろう。

そんな使い手がアイリの父親以外にホイホイいるだろうか。

ただし、この邪神には1つの誤算がある。

それはどんな形になろうとも限界まで自分を高めた者を侮っているという事だ。


人の心は弱く脆い。

辛い事からは逃げたくなるし、朝の布団から抜け出すのも一苦労だ。

しかし心の中に大事な何かがある者はそれとは反対に柔軟で強靭な精神が宿る。

だからそういった者の魂は簡単に取り込んだりする事は出来ず、それはこの世界に封印されている邪神でも同じ事だ。

500年前にも魂を穢されながらも心だけは支配されていなかった者たちが確かに居た。

状況があの時とは違うのでそういった奴とは会った事が無いけど、もしそんな魂を取り込んだとすれば消化不良を起こすのではないだろうか。


「それなら試してみると良い。人間を馬鹿にしていると足元を掬われるぞ。」

「ならば見せてやろう。貴様は同じ人間によって生み出された技で命を落とすのだ!」


そして自信満々な顔で宣言をした邪神は腕を突き上げ大きな声を上げた。


「我が愛剣カオスソードよ、この手に来たれ!」


すると闇が凝縮する様にして形を作ると硬質な輝きを纏った黒く禍々しい剣が姿を現した。

それとは対照的に柄の部分は生物的で鍔には大きな瞳が覗いている。

もしかしてアレは俺を睨んでいるのではないだろうか。

ここはちょっと大人気ないが睨み返してみるべきだろう。


『ギロリ』

『クニャリ!』

「ど、どうしたのだカオスソード!」


てっきり睨んでいるのかと思って睨み返したのに怯えた様に刀身が曲がり邪神の陰に隠れてしまった。

どうやら邪悪な見た目に反してシャイな性格だったようだ。


「可愛い愛犬だな。」

「おのれ我に恥を掻かせおって!貴様の様な剣はもう要らん!何処へなりと行くがいい!」


すると機嫌を損ねたのか愛剣とまで宣言したカオスソードを地面へと投げ捨てた。

しかし、まさに愛犬と称した方が良いのか、まるで突き放された犬の様に必死に邪神へと縋り付いていく。

しかし邪神はその存在を完全に無視すると別の剣を取り出して構えた。


「待たせたな。」

「さっきの事は完全に無かった事にするつもりか。」

「黙れ!俺に愛剣など存在せん。これで貴様を切り刻み心臓を握り潰してやろう。それにこの駄剣も滅ぼした世界で捕らえた神を過ぎん。それを我が力で剣の姿に固定し使ってやっただけだ。貴様の纏っている防具と同じにな。」

「なに?」

「どうした?弱者など唯の消耗品であろう。傷付き飽きれば捨てるだけだ。」


・・・消耗品?・・・捨てる?

コイツはいったい何を勘違いしているんだ。

もしかして最初から神武装を纏って来たから俺を自分と同じとでも勘違いしているのか。

しかし、どうしてコイツ等はこうも俺の神経を逆撫でするのが好きなんだろうな。


俺は不機嫌な顔を隠す事なく邪神に向けると怒りの感情を声に乗せて言葉を返した。


「お前は大きな過ちを犯した。」

「最後の言葉になるであろうから聞いてやろう。」

「なら教えてやる。」


俺はその瞬間に奴の足元で動かなくなり瞳を濡らしているカオスソードへと視線を向けた。

そして鑑定によって全てを読み解き手を伸ばして声を掛ける。


「俺の許に来い!戦女神レギンレイヴ。そして新しい名を受け入れろステラ!」


するとカオスソードは再び動き出すとこちらへと一直線に向かって来た。

俺はその柄を掴むと精神力を流し込み、その刀身を覆う邪神の力を全て追い出してやる。

そして俺の特性であるらしい再構築で形を作り変え、一振りの刀へと変えた。

ただ俺は黒をイメージしたつもりだったのに真っ白な色へと変わってしまっている。

やはり使い慣れない力なので全てが思い通りとはいかなかった様だ。

するとすぐさま頭の中にトワコ達の声が鳴り響いた。


『どうして何時も勝手に眷族を増やすの!』

『アズサに怒られても私は知らない。』

『私は別に良いけど他の皆が何て言うか。』


いや、しかし勢いでついやってしまうって事もあるだろ。

それにまだ使えるのにそれを捨てるのを見ると拾いたくなるのは当たり前ではないだろうか。

それが嫌ならちゃんとゴミ袋に入れるかシールを張ってゴミステーションに持って行くべきだろう。

まあ、剣なんて捨てても不法投棄となってしまうからちゃんとした所へと持って行く必要がある。

今の時代にも剣などのゴミに関してはちゃんとした施設に持って行かないといけないし、破損していても材料が良ければ組織や一部の商店では買い取ってもらえる。

今はリサイクル精神が旺盛なので誰だって俺の様に思うはずだ。


話しは逸れたけど、せっかくの神武装を不法投棄するというのだから誰かが拾ってしまう前に俺が貰う!


「そういう訳だからお前も今日から俺の仲間だからよろしくな。」

『でしたら一生付いて行きます!』


一生なんて大袈裟だけど、とても元気な感じの声が返って来た。

もしかするとさっき捨てられたばかりなので嫌われない様に必死なのかもしれない。

だから、こういう時こそちゃんとしたコミュニケーションを取り声を掛ける事が大切だ。


「俺は捨てたりしないからもっと緩い感じで良いからな。だからお前も嫌な事とか言いたい事があったらちゃんと言うんだぞ。」

『はい!』


まあ、元気なのは良い事だ。

今は空元気であったとしてもいつかは心の傷が癒えて本当に笑える時が来るだろう。

もしかすると元気を取り戻して落ち着けば俺達の傍から離れていくかもしれないけど、その時は優しく送り出してやろう。

そして前を見るとさっきまでの余裕な表情を消した邪神が怒りの形相で睨みつけていた。


「おのれー!まさか臆病者の分際で我を裏切るとはな!」

「捨てたのはお前だろ。勝手な事を言う位なら最初から大事に扱えば良いんだ。でも、こういうのは失ってから初めてその存在が如何に大事なのかに気付くんだよな。」

「貴様は黙っておれ!しょせん先程と同様に負け犬の様に陰に隠れて役に立たないに決まっておる!」


言われてみればさっきは隠れてたのに今は大丈夫そうだ。

それどころかシャドーボクシングでもしているかの様な鋭い呼気が聞こえて来る。

なんだかさっきまでと違って自分から斬り掛って行きそうだ。


『これはアナタが急に大きな力を流し込むからハイになってるのね。』

『ハルヤの影響も受けてる。』

『私も初めての時は体が火照って仕方なかったわ。』


するとトワコに続いてエクレとエヴァが解説を加えてくれた。

ただエヴァに関しては解説と言うよりは感想だけど、俺の力を受けてそうなるのはあくまで不可抗力なので責任はないと言っておきたい。

それに元気があれば何でも出来るとも言うので、このままの勢いで邪神との戦いにも集中してもらおう。


「お前も邪神なら今までにも多くの人から色々な物を奪って来たんだろ。今度はお前が奪われる番だ。」

「調子に乗るなよ人間が!貴様程度で我に勝てると思うな!」


すると邪神は剣を引くと突きの構えを取り向かって来た。

だがその構えには覚えがあり今日だけでも何度も見ている。

ヨコヤマさんとは少し違うけど、アイリとはまるで鏡を合わせた様に違いが見つけられない。

腕や剣の角度から、踏み込み方までが一緒で俺のスキルも反応するほどだ。

きっとアイリは1年以上の間を記憶にある父親の技をお手本にして頑張って来たのだろう。


「これで確定か。」

「何を言っている!」


今の俺なら見切りのスキルを使わなくてもこれくらいを躱すのは容易い。

ただそれではやる気になっているステラの出番が無いので突き出された剣先にこちらも剣先を合わせる。

するとステラはカステラに包丁を入れた様な容易さで邪神の剣を切り裂いて見せた。


「何だと!これは魔王をも倒しうる勇者の聖剣だぞ!」

「その割には竹刀みたいに綺麗に割れたな。」


それに聖剣と言っているけど聖なる力は微塵も感じられない。

装飾が過剰なので壁などに飾る装飾剣かと思ったほどだ。

もしかして勇者でないと力を発揮しないとか言うあれか?

そして邪神は柄だけになった聖剣を投げ捨てると次の剣を取り出した。

まさか邪神のくせに予備の予備まで準備しているとはな。

しかし投げ捨てた柄が偶然?地面を不規則にバウンドすると俺の足元へと転がって来た。

それを足先で蹴り上げるとステラを持つ手とは反対の手で受け止める。


「やっぱり何も感じないな。もしかして邪神の奴、拾って来る剣を間違えたんじゃないか?」

『それは早計であると宣言します。』


そして聖剣から声が聞こえたかと思えば破壊された刀身部分が引き寄せられ、輝きを放って元の形へと再生した。

しかも先程までと違い剣からは聖光に匹敵するほどの聖なる気が放たれて周囲を浄化し、魔物さえも消滅させていく。

まさに聖剣の名に相応しい一振りと言えるだろう。


「これがお前の力か?」

『この程度は私が発する聖気の余波に過ぎません。それに私の使命は勇者の武器として敵を切り裂き、聖女をサポートしてその身を護る事です。』


それならアズサの御守りにでもすれば良いかもしれないな。

確かにアズサは強いけど魔法と謄陀の剣では少し不安がある。


『そして使い手が勇者と聖女なら神にさえもこの刃は届き得るのです。しかし私を邪神が手にした所でただの頑丈な剣でしかありません。』


・・・まさか、これをアズサに持たせると金棒以上に危険なのではないだろうか?

さっきも早計とか言われたし、もうちょっとだけ慎重に考えてからプレゼントするか決めよう。


「でも頑丈とか言ってるけどさっき切った時は手応えが無かったぞ。」

『それはそちらが神剣だからです。剣としての格なら私よりも上なのですから頑丈なだけの剣など無いのと同じです。』

「そうか。でもそろそろお喋りは一旦終わりだ。向こうもそろそろ待ってくれそうにないからな。」


見ると新しい剣を取り出して構えているけど少しは警戒をしているのか斬り掛ってこない。

もし来たら聖剣の試し切りに使ってやろうと思っていたのに意外と慎重な奴だ。


「怖気付いたなら諦めて死んでくれないか?」

「良い気になるなよ人間!次こそはこのカオスブレードで貴様の心臓を串刺しにしてくれる。そして貴様が持つ2本の剣と鎧は俺が有効活用してやろう。」


そして再び不快な事を口走っているがソードの次はブレードか。

名前の始まりが同じカオスなので引っ掛け問題みたいだけどネーミングセンスが無いのかもしれないな。


そして邪神は出し惜しみをするのを止めたのか『最終奥義・滅魔の太刀』の構えに入る。

それと同時に刀身へは奴の邪悪な気が集まり黒いオーラに包まれて行く。

しかし、やはりと言うかこの最終奥義に関してはアイリよりも完成度が高い。

刃に宿ったオーラは一切の淀みが無く、完全に制御されている。

すると邪神はまるで自分の技の様に自信満々な顔で話し始めた。


「この者の習得している最大の技を味合わせてやろう。この技は我でもかなり消耗するが、次で貴様を確実に仕留める。それと先に言っておくがこの剣を奪おうとしても無駄だ。このカオスブレードはある方より賜った邪悪な者のみが使う事を許された宝剣。貴様は握るどころか触れただけで呪いを受け肉が腐り死ぬまで地獄の苦しみを味わうことになる!すなわち、これで掠り傷でも負えば貴様は死ぬと言う事だ!」


そして準備を終えたのか邪神の口元がニヤリと笑った。

色々と疑問に残る事もあるけどそろそろ決着と行こう。

それに今の会話はクオナにでも伝えておけば良いだろう。

周辺を世界規模で調査してくれている様なので少しは何かの足しになるかもしれない。


そして俺も両手に剣を構えると互いに1歩を踏み出し距離を詰めた。


「簡単に死ねると思うな!」

「ば・・・。」


声に出そうになったけどコイツは本当の馬鹿かもしれない。

この期に及んで自分の優位性を疑わず、必殺の一撃で掠り傷を狙っている。

そんな事をせずに本気で振り切ればもっと威力が出るだろうに、奴の雑念が剣と技を最低と言える状態へと貶めてしまった。

これならアイリの技の方が幾分かマシかもしれない


「喰らえーーー!」

「・・・躱す価値もない。」


俺は手に持っているステラを上に放り投げると放たれた斬撃をそのまま受けとめる。

そして強く握り締めると同時に反対に持つ聖剣で相手の右腕を切断した。

どうやら神にも届くと言っていたのはのは冗談ではなかったようだ。

それにしても技が使えると言う事と使いこなせるというのは全くの別物であると知らないのだろうか?

あれではまるでナイフを初めて手にした子供と同じだ。

殺気はあっても意志に欠け、力があっても使い方を知らない。

これだと俺でなくてもアズサでも余裕だっただろう。


しかし腕を切られ、その場にしゃがみ込んでいる邪神が肩を震わせて笑い始めた。


「はーはっはは!愚かなり人間。役立たずを庇ったつもりだろうが俺が言った事を信じなかった様だな!受け止められた時は僅かに驚いたが無傷では済むまい。貴様は自身が下した愚かな決断によってもうじき骨も残さず腐り果てるのだ!」

「そう言えばそんな事を言ってたな。」


しかし、確か剣に触れる事さえできないとも言っていた気がするな。

なのにこうして刀身に触れる事も出来るし・・・『ビュビュッ!』。

振る事も出来る。

それに奴が言っているのは斬られて傷が出来ればの話だろ。

あんな殺す意志の籠っていない斬撃で俺が傷付くはず無いじゃないか。

なので俺の腕はピンピンしているし、こうやって邪神を切る事も出来る。


『ザシュ!』

「な!どうしてお前がその剣を扱えるのだ!」

「俺が何時、正義の見方なんて言ったんだ?」

「ならばどうして我の邪魔をする!?我らと同じく邪悪だと言うなら世界を破壊する事に躊躇いは無いはずだ!」


見ると斬られた所が呪いによって少しずつ膿み始めているので、どうやら効果自体は本物のようだ。

しかし片腕を切り取られて体が呪いに侵されているというのに意外と余裕そうだな。

コイツが邪神だからか、それとも別に理由があるのか、もう少し話に付き合って様子を見てみよう。


「なら聞くが、お前は自分の物を奪われたらどうする?」

「そんな者は滅ぼすに決まっておろう!」

「ならそれが答えだ。どうして同じように悪だからと言って手を取り合わないといけない。それにお前がここに来た時点で既に多大な迷惑を被っている。お前を殺す理由はそれで十分だ。」

「おのれ!神をも恐れぬ狂人だったか。しかし、貴様は1つの間違いを犯した。」


するとさっきの意趣返しなのか同じ様な言葉を返して来る。

そして痙攣する様に体を震わせると体から黒い蒸気の様な物が噴き出し、周りを包み込んだ。


「掛かったな!我は寄生型なのだ。その世界で強い生物を探し負ける毎にその者に乗り移り最後には最強に至る。まさか2度目でここまでの肉体を手に入れられるとは思わなかったぞ。このまま貴様を支配し、貴様に関わった全ての存在を滅ぼしてやる!」


しかしその瞬間、俺の中で何かが切れる音を久しぶりに聞いた。

しかも音はいつものプツンではなく、何本もの糸を寄り合わせたロープが一瞬で切れた様な激しいものだ。

俺は一瞬で人からキメラへと姿を変えるとそれぞれの手に武器を持った。

まず右手に取り出したのはSソード、正宗、獄卒の剣。

そして、左手には聖剣、カオスブレード、ステラだ。

ステラは上空で待機させていたけど俺が姿を変えると同時に手の中に戻って来た。


「貴様は人間ではなかったのか!」

「今頃気が付いたのか。」

「しかし、どんな武器を持とうと実体のない我を切る事は出来んぞ。」

「それはこれから試せば良いだけだ。」


そして、まずはSソードを持つ手に力を込めると力の限り振りぬいた。

その威力は今まででも最大でダンジョンの壁を数百メートルの距離で斬り裂いて斬痕を刻む。

すると周囲に満ちる邪神も大きく斬り裂かれ、周囲から悲鳴が上がった。


「グアーーー!な、なんだその武器は!」

「スピリチュアル・ソードだ。これは相手の肉体だけでなく魂や精神にもダメージを与える事が出来る。」


しかも俺が怒りを込めた精神力が限界まで充填してある。


「次は正宗。鞘から抜けたならやる気はあるって事だよな。」


そして再び振り切ると先程の様な派手な状況にはならなかった。

しかし、上がった声は先程の比ではない。


「グギャーーー!」

「これも効果あり。」

「き、貴様!どうしてそんな武器を複数持っている!」

「次はアンドウさんが作った獄卒の剣か。」

「止め・・・。ギャアーーー!」


俺は邪神を無視して剣を振るとまるで何かを殴り飛ばしたかの様な確かな手応えが伝わって来た。

それと同時に周囲を包んでいた邪神が風に吹かれたかの様に吹き飛ばされ、少し離れた所で再び纏まり始める。

その姿はダンジョンの外で見た姿と同じで煙の様で実体が無い。

ドームの天井を破壊した事から攻撃は可能だろうけどあの時に比べてかなり力を消費しているようだ。

恐らくはドームの破壊と、さっき使った滅魔の太刀に加え、俺が与えたダメージでかなり弱っているのだろう。

しかし俺が望む段階にはまだまだ足りていない。

その為、今度は左手に持っている剣の1つであるカオスブレードを振りぬいた。


「ガハ!何故だ!邪神の宝剣を何故貴様がこうも使いこなせる!」

「知るかボケ!お前より俺の方が邪悪だからじゃないのか。」


しかし本当にどうして使えるんだろうな?

こんな厨二病全開の剣なんて使えてもちっとも嬉しく・・・。

も、もしかして!

厨二戦士の称号のせいか!


俺は一瞬不安に駆られてステータスを開きそうになったけど今は大事な戦闘中なのでギリギリの所で我慢した。

もしかすると隠れた効果かもしれないので、後で恵比寿と弁才天を懲らしめて聞き出した方が良さそうだ。


そして今度は聖剣を振り上げると激しい光を放ちそれだけでも邪神を分断して見せた。

更に容赦なく剣を振り切ると漂っていた邪神の半分が消滅して消え失せている。

さすが聖剣と言うだけあって邪悪な存在には効果が高そうだ。

ただ俺にも光が当たり、少しピリピリしたのはどうしてだろうか?

まあ、きっと軽いフレンドリーファイアみたいな物だろう。

もし次に使う事があったら注意して使わせよう。


「これで最後か。」

「や・・止めろ。」


でも、これで最後のステラだけ効果が無かったら拍子抜けだな。

しかし、まるで大型バイクがエンジンを吹かす様に強いやる気が鼓動となって伝わってくる。

そうなれば、そのやる気を応援するのは仲間として当然の事だろう。

俺は更にステラへと精神力を流し込んでやり力を増幅させると邪神に向けて最後の1撃を放った。


「ギャーー!ガルマルク様に栄光あれーーー!」


そして邪神は最後に変な名前を叫びながら消滅していった。

恐らくはガルマルクと言うのも邪神だろうけど、他の邪神を従えるだけの力ある存在なのだろう。

もしかするとここ以外の何処かの世界に邪神が統治する世界があるのかもしれない。

これも後でクオナに報告するとして、俺はこのまま逆進して上を目指し、増え過ぎた魔物を始末して行こう。


そして人の姿に戻って走り出すとまずはこの階層に居る魔物から片付け始めた。

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