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325 追加合宿 マンツーマン ⑥

俺はエクレの姉である雷神シスターズに呼ばれる形で同席する事になったのでそちらへと向かって行った。

そこは足元に堀のある長テーブルの席で一度に12人は座る事が出来る。

そして空いている場所は真ん中に2つと後は端の方にあるだけだ。

なのでエクレを内側にして一番端に座ると素早くテーブルの上にあるメニューに手を伸ばした。


「え~どうしてその位置なのよ!?こっちに来れば良いのに~!」

「せっかく良い席を空けてあるのだからこっちに来なさいよ~。」

「お姉さんたちが可愛がってあげるわよ。」


ここは何時からキャバクラになったんだ?

外の看板にはちゃんとステーキハウス ビックリミートって書いてあるはずなのにな。

それとも俺の見間違いでここは素敵なハウス ビックリミート(肉食系)だったのか?


「それよりも、もっと露出の少ない服は無いのか?」

「これじゃダメかな?」

「完全なアウトだ。」


何せ下は褌に近く、お尻は隠しているけど深いスリットでラインが丸見えだ。

上は殆ど露出していて胸を軽く隠す程度の服を羽織っているだけで胸元は全開になっている。

その上を半透明のストールみたいな羽衣が隠しているだけなのでチラリストに最高の光景を提供しているだろう。

ハッキリ言ってこんな服装で町を歩いていると痴女に思われてもおかしくない。


「イテ!」

「テメーお客様に対して失礼な視線を向けるんじゃねえ!」


どうやら、さっそく店員に犠牲者が出たらしい。

このままでは営業妨害にもなりかねないので先にこちらをどうにかしなければならない。

それにさっきからワザと際どい角度で肘を突いたり体を傾けているので後ろから忍び寄るアケミたちの気配が怖すぎる。


「エクレ。お前の服から適当に見繕ってコピーさせろ。」

「それなら皆の協力も不可欠。」


そう言えばエクレも服にはあまり頓着しないからあまり種類を持っていなかったな。

寝巻だけは沢山持ってるけど、ここでそれは別の意味でアウトだろう。


「なら適当に有志を募って連れて行ってくれ。」

「分かった。」


そして皆と協力して店の一角に更衣室が仮設で作られ、そこで御着替えタイムとなった。

しかし漏れ聞こえてくる声から周囲に居る店員の気を引くのは仕方がないだろう。


「ねえ、この薄い布は?」

「これは現代の女性下着だよ。」

「ここに穴が開いてるけど誰か前に尻尾でも生えてるの?」

「それはそう言うデザインなので気にしないでください。」


どうやら変な下着を出した者が居たみたいだ。

それと同時に数人が顔を抑えて厨房を出て行ったけど料理の熱で逆上せたのだろうか。

ヨコヤマさんは黙々と料理を作り続けているのに弟子たちは意外とひ弱なんだな。


「ね~このスカート短くない?」

「さっきのに比べれば長いですよ。」

「このブラジャーっていうの蝶々みたいで可愛いわ。」

「それは決戦兵器ですからこう言う所では使わない様に。」

「ああ、それで先端が開いてるのね。」


いったいどんな下着や服を着せる気なんだ!?

もしかして人選を誤ってないか?

既に男性店員は全滅して何処にも居ないしヨコヤマさんと女性店員だけが奮闘を続けている。

それでもアズサの注文が止まらないのであちらの仕事量は減るどころか増加傾向だ。

すると仮設更衣室を覆っていたカーテンが空けられると想像していたよりも真面な服装に整えられた雷神達が姿を現した。


「まさかここでアイドル衣装で出て来るとはない。」


確かにスカートは短く、中は見えない様に短いスパッツを着用しているようだ。

脚には足袋を履いて靴の代わりに可愛い飾り下駄を履き、着物を思わせる服を着せられている。

そう言えば船の中でDJN99があんな感じの服を着ていたな。

傍にアイリも居るので偶然持っていたのだろう。

何故それを選んだのかは別にして意外と似合っている。

ただ、どうしてエクレまで同じ服を着せられているのだろうか?

姉妹で顔の違いがあまり無いから今みたいに髪を纏めていると見分けがつきにくいんだけどな。


そして着替えが終わり8人が揃ってこちらのテーブルへと戻って来る。

俺はそれと同時に席を動きエクレの横へと移動して腰を下ろした。


「え~!どうして分かっちゃうの!」

「これも愛の力。」


そう言ってVサインをしているけどコイツも偽物だ。

その反対に居るのが本物のエクレなのでそちらの手に持ったメニューを見せてやる。


「何を食べるか決めないとな。」

「うん。」


するとエクレは嬉しそうに表情を崩すと笑みを浮かべて小さく頷いた。


「完璧な変装だったのに!」

「どうして分かるの!」

「これは母様であるイザナミ様でも分からないのに!」

「いや、姉妹なら順番を間違えるはずが無いだろ。なあアマテラス。」

「そこで何故私に話を振るのですか?まあ、私も余裕ですね。」


そう言って俺とアマテラスは同時に誰が何女かを間違える事無く当てて行く。

その光景に本人達も驚きを通り越して呆れた顔になり揃って溜息を零した。


「アケミに聞いてた通り凄い?能力ね。まさにそこだけなら既に神に匹敵してるわ。」

「それは最大の褒め言葉だな。まあ、それなりに楽しい余興だったよ。そう言えばもう1人居るって聞いてたけどどうしたんだ?」


確かエクレが俺の許に来たのでイザナミ様が新しい雷神を生み出したと聞いている。

でもここに居るのは7人だけなのでもう1人居るはずだ。


「そういえば言ってなかったけどイザナミ様はイザナギ様をボコボコにした後に何とか仲直りしたの。今は周辺の世界の調査という名目で旅行に出かけてるのよ。最近は邪神も多いから気になっているの。」

「そうなるとこの世界に2人は居ないのか。」

「あと数年もしたら帰って来ると思うわよ。調査は異界の連中もしてるらしいから。」

「やっぱり邪神が多いのか?」

「ええ、普通はこんなに現れるはずは無いのよね。アナタが倒したのとは別に、他にも現れたみたいなの。」

「そっちは日本じゃないから他の神が片付けてくれてるわ。」

「オーディンとかシヴァとかヴィシュヌとか、北欧とかヒンドゥーには強い神様が多いからね。」

「最近は特にアニメや漫画で取り上げられる事も多いから信仰を集め易くなったって喜んでるわ。」

「あれなら子供から大人まで沢山の人に見てもらえるからね~。」


そういえば最近は彼等のような神を題材にした作品が増えている気がする。

気のせいかと思っていたけど神の差し金だったみたいだ。

まあ、面白ければ登場人物の名前に関係なく人気が出るので何処かの某七福神の1人のような事をしなければ俺が気にする事では無い。

それにあの2人の近況を聞けたのは大きな収穫だった。


「それならスサノオたちにも頑張ってもらわないとな。」

「何言ってんだ。俺は学校と黄泉の管理があるからそんな暇がある筈ねえだろ!」

「どう見ても飲んだくれてるだろうが!」

「ガハハ!神にも息抜きは必要だからな。」


なんだか黄泉の状況が心配になって来たな。

それに雷神たちがコソコソ話しているけど頑張っているのはアイツじゃなくて雷神と鬼たちみたいだ。

そうなると他にはと思わないでもないけど神の面々がどういう訳かこちらへと視線を向けている。

どうして純粋な神がこんなに揃っていて俺に役割が回って来るんだ?

俺の婚約者や眷族に関しては除外するとして他にも幾らでも居るだろ。

八百万とも言われている日本の神々は何処に行ったんだ。


「疑問だと思うので教えておきます。この国の神で邪神と戦える力を単体で有している神はスサノオくらいです。」

「でも、俺は普通に倒せるぞ。」

「だからハルヤが邪神を担当している訳です。あなたの所に邪神が集まる様になっているので。」


ちょっと今の言葉はニュアンスがおかしいのではないだろうか。

偶然に出会うのならラッキー男の称号があるので可能性は0では無いけど・・・。


「弁財天?」

「・・・。」

「弁財天さん?何か知っていますよね?」

「・・・。」


しかし声を掛けても視線を逸らすばかりで返事が返って来ない。

仕方ないので傍まで転移するとその顔を掴んで俺へと向けさせる。


「説明をして貰えるかな?」

「そ、それは恵比寿が!」

「これは『お前!』が『俺!』に直接与えた加護だろうが。それに恵比寿が俺にそんな重要な事を秘密にしているはずないよな?」


そして弁財天の顔から手を離さないまま、首だけを回して恵比寿へと顔を向ける。


「も、もちろんじゃ。わ、儂は何も・・・知らん・・ヨ。」


しかし、こちらも急に挙動不審となり視線を逸らした。

どうやら問うべき事は1つでも知っている者は2人居るようだ。

なら1人を見せしめにしたとしても大丈夫そうだろう。


「お前も何か知ってるみたいだな。それならいつ話すかだけは選ばせてやろう。それに俺は常に寛容だ。最初に話した方は許してやる。」

「それなら私が・・・!ちょ・・潰れる~!」


そして俺は弁才天の顔を掴む手に力を込めて喋れなくしておく。

それを見て恵比寿は胸を撫で下ろすと呼吸を整えて口を開いた。


「儂が話そう。」

「ん~~~!」

「お前は少し黙って居ような。」

「ん~~~!」

「お兄ちゃん。それって変質者みたいだよ。」

「気のせいだ。これは正当な尋問だから問題ない。それにこのままだと皆にも危険が及ぶかもしれないからな。」

「それもそうだね。」


今迄にも家にある神棚の中や京都ではすぐ外でアズサ達が居る時に邪神と遭遇している。

多くの時間を一緒に過ごす事が多いので必然とは言っても、明らかに俺が危険を招いているのは確かだ

指先1つ、毛先さえも触れされるつもりは無いけど絶対とは言えない。

それに、もしそれで皆に何かあれば俺は自分の怒りを抑えられる自信がない。

今だってその原因を作ってしまった目の前の顔を潰したくて堪らないのを必死で我慢している所だ。


「・・・だ・だずけて!」

「それなら早く恵比寿が話す事を祈るんだな。」

「今話すから待て!イザナミ様の指示でお前の勇者の称号とアズサとを繋いでおるんじゃ。」

「それは知ってる。俺が死ねばアズサが死ぬ事だな。」

「今はそうならん様に変更しておる。その代わりお主が死ねば邪神が次に狙うのはその娘になる。」

「それは興味深いな。詳しく話せ。」


その辺の仕様の変更は初めて知った。

それにどうしてリボンがあるのにそうなるのかが気になる。


「この度のアズサという娘の魂の輝きは異常と言える。じゃからあのリボンだけでは抑えきれんのだ。それで邪悪な者を引き寄せる運命をお前が肩代わりする様にしてある。」

「すなわち俺はアズサの身代わりか?」

「そう言う事じゃ!悪いかこん畜生!」


もう口調が破れかぶれだな。

しかし・・・しかしだ。


「今まで馬鹿な事ばかりしてるから本当に馬鹿じゃないかと心配してたけど、たまには良い事も出来るんだな。」

「なら早ぐはなじで・・・。」

「おっと、悪い悪い。」

「ちょ、何で締めて・・・ギャーーー!『メキ!メキ!』」

「こういう重要な事は早く話そうな。」

「・・・ごめんなさい。」


そして最後に少し潰・・力を込めてから手を離してやる。

それに重要な事も聞けたしお仕置も済んだから許してやる事にする。

勝手に仕様を変えて黙っていたのはイケない事だけど結果は悪い事では無かったからだ。

恵比寿に関しては素直に話しをしたので約束通りに許しておいた。

アイツは俺の怖さをしっかりと理解しているので今みたいに簡単には裏切らないだろう。


「さて、楽しい食事を再開するか。」

『ゴゴゴゴゴーーー!!』


すると急に地震が来たかと思えば急激に揺れが激しくなり建物が左右に揺れた。

震度にして5・・・いや6はあるかもしれない。


「コイツはデカいな!崩れないと良いんだが!?」

「強化!浄化!」


するとアズサが即座に建物を強化し、更に浄化によって天井から降っていた全ての埃や汚れを消し去った。

どうやら食事の障害となる物を取り除いたようだ。

しかし、アズサにとっての問題はそこでも、俺からすればもう1つの大きな問題がある。


「地震を感じたな。」

「何を言っているんですか教官。それは普通の事じゃないですか。」

「俺達は普通の地震は感じないんだ。もしかするとダンジョンで異常が起きてるかもしれないな。ちょっと行ってみるか。」

『ピピピピピ!』


しかし立ち上がってすぐにポケットに入れていたスマホから緊急を知らせる音が鳴り響いた。

俺はそれに出ると向こうからすぐさま声が聞こえて来る。


『ダンジョンで緊急事態です!何者かが外壁を破壊して侵入しようとしています!』

「分かった。すぐに向かう。」

『ワーーー!・・・』


しかし返事をした直後に悲鳴と共に何も聞こえなくなり通話が終了した。

なので視線をそちらへと向けると管理棟の窓が砕け外壁もかなり傷だらけになっているのが見える。

それに中に居たスタッフたちも重症で血を流し、床に倒れているので彼らには救助が必要だ。

そしてダンジョンを囲むように作ったドームも激しく振動し今にも破壊されそうになっている。

ただ傍に在る本堂は僧たちのお経のおかげか、それ以外の被害は出ていない。

しかし、その何者かの姿はハッキリと捉える事が出来ずまるで煙が動いているようだ。

それでも気配と存在感だけは濃厚でとうとうドームを破壊すると中へと入って行った。


「どうやらダンジョンにお客さんが来たみたいだな。」

「この気配は邪神のやろうか。さっそく任せたからな!」

「酒を煽りながら言われるとなんだか微妙な気分になるな。でも、何が目的か知らないけど今あそこを荒らされたら迷惑だ。」


俺以外にもアズサ達も立ち上がりすぐさま傍へとやって来た。

それ以外にもアイリとヨコヤマさんまで来ているので協力してくれるみたいだ。


「一応言っておきますけど、かなり危険だと思いますよ。」

「教官の訓練とどっちが危険ですか?」

「・・・俺の訓練の方がヤバいかもな。」

「それなら大丈夫だな!」


俺の訓練は魔物がダンジョンから氾濫するという最悪の事態を前提として行っている。

なので余程の事態でも起きない限りは簡単に死ぬ事は無い。

まだまだ訓練途中ではあるけど30階層前後までの魔物なら1000や2000程度を相手にすることも可能なはずだ。


「ホテルに居る生徒たちはどうする?」

「可能なら参加させる。良い経験になるだろうからな。」


使える物は何だって使うのが俺流なので嫌と言っても働いてもらう。

それにゲンさんとトウコさんが既に動いていて生徒たちに戦闘準備をさせてくれている。

戻ればすぐにでもダンジョンに入れるだろう。


「マルチにチーム編成は任せる。役に立ちそうにない奴らに関しては地上で救助作業をさせてくれ。」

「分かりました。」

「ハルヤに勇者の承認をしておくね!」

「ああ頼む。」

「聖女の名において命ずる!我が食事を妨げる者に鉄槌を!」


ああ、やっぱり凄く怒ってるんだね。

以前も思ったけど食事を邪魔された時の承認はいつもの5割増しくらいの効果がある。

これならマルチが居ないのもカバーしてくれそうだ。

出来れば邪神が相手なら連れて行きたいけど、町はさっきの地震で混乱していて正確に情報を整理して的確な指示を出すにはマルチの能力が必要不可欠になる。

俺達は九十九の関係者としてここに来ているのでダンジョンの問題だけを片付けて終了とはいかないのだ。


そしてアズサ達を連れて転移しホテルに戻ると、この場は任せてダンジョンに向かう。

同行するのは俺の眷族であるトワコ、エクレ、エヴァの3人で既にそれぞれが神武装となって俺の体を覆っている。


そして、すぐに背を向けるとダンジョンへと転移して行った。

それにしても、このタイミングで来るとは本当に間の悪い奴だ。

数日後ならここまで慌てる事も無かっただろうに。


そしてダンジョンに到着するとドームの頂上には大きな穴が開いており、ゲート横の転移陣も消えていた。

どうやら先回りは出来そうにないので1階から入って後を追わないといけないようだ。

ただ、ダンジョン内は別空間になっているのでここからだと状況が分からない。

そのため、まずはゲートを潜り中へと突入していった。

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