317追加合宿 2日目 ①
俺は目を覚ますと体が重い事に気が付いた。
まさか金縛りかと思ったけど、今の俺の動きを縛れる存在が部屋に居るとなると皆が危ない。
今回は偶然にもこの部屋には俺の婚約者が集合しているので何かあれば一網打尽にされる。
そう思って目を開けると金縛りの原因が理解出来てホッと胸を撫で下ろした。
「皆どんな寝相をしてるんだ?」
見ると全員が俺を枕にして穏やかな寝息を立てており、それが理由で体が動かず金縛りになった様な気がしただけのようだ。
それにしても、このままだと手足どころか頭も動かせない。
今も額の上には子ライオンの姿になったミミが顎を乗せていて前足で抱える様にして眠っている。
時々顔を舐めて来るけどこれは寝癖みたいな物で起きている訳では無い。
家でも時々寝ながら顔を舐められるので枕が涎で濡れている事がある。
それ以外だと手足はそれぞれに数人が頭を乗せ、お腹や胸まで枕として使用されている。
ただ楽しい夢でも見ているのか、どの顔の口元も緩んで笑っているようだ。
これを邪魔すると言うなら例え神でも許しはしない。
それに時計を見ればまだ朝の5時なので起床時間まで2時間はある。
普段はともかく教官の仕事をしていると早く起きてしまうのでこのまましばらくは皆の寝顔を堪能させてもらおう。
しかし、こうしていると昨夜の奴等にリア充と言われるのも分かる気がして来る。
これこそリア充と呼ばれる者の特権かもしれないと思いながのんびりと時間が過ぎるのを待ち続ける。
そして2時間近く皆の寝顔を堪能すると、そろそろ起床時間となったので1人ずつ声を掛けて起こし始めた。
「ミミ起きろ。」
「ガウ~・・・。」
「俺は朝ご飯じゃないぞ。」
すると目を覚ましてはいるけど寝惚けているのか、手頃な出っ張りである鼻先を噛み始めた。
別に牙が立つ訳では無いけど、このまま隣で寝ているミキに同じ様な事をすれば鼻が無くなってしまうだろう。
「う~ん・・・味がしない。・・・ならこっち。」
「・・・ちょ、何よ!」
すると少し手遅れだったようでミミはミキの方へと行ってしまった。
ただ噛みつくのではなく鼻を舐めただけなので怪我はしていないようだ。
それにビックリしたことでミキは跳ね起きて犯人である寝惚けたミミへと視線を落としている。
「もうミミ!あとちょっとだったのに!」
「何があとちょっとだったんだ?」
「それはね・・・言える訳ないでしょ馬鹿!」
そう言って近くにあった枕を手にすると顔に振り下ろして来る。
痛くは無いけど対応が過激に思うのは俺だけだろうか。
そしてミキが大きな声で騒いでくれたので俺が起こさなくても良い目覚ましになってくれたようだ。
目を擦ったり欠伸をしたり、背伸びをしたりしながら起きると1人ずつ「おはよう」と声を掛けてくれる。
「おはよう。良い夢でも見てたのか?」
「うん。とても幸せな夢を見てたよ。」
「私はお兄ちゃんの夢を見てた。」
「私は3年後の夢です。子供に囲まれて幸せでした。」
なんだかユウナの夢はちょっと計算が合わない気がするから正夢にはならないはずだ。
それだと予定よりも早く皆に手を出さないとダメなので、流石に請われたとしても許す事は出来ない。
まあ、夢の中での話なのでそれくらいは小さな誤差の範囲だろう。
「私はデートしてました。」
「私はハルヤと一緒に潜入工作です。」
「私は迎えに来てくれた時の夢です。」
するとアン、ハルカ、マルチの順に夢の内容を教えてくれる。
しかし俺は潜入は苦手なのでいつもハルカの足を引っ張っていた記憶しかない。
結局は力技で俺が暴れている間にそれを囮にしてハルカが犯罪の証拠を手に入れていたので俺の方は潜入と言うよりは陽動だろう。
しかしマルチの方は最後に俺に刺されたはずだけど悪夢では無いのだろうか?
「マルチは最後まで覚えてるのか?」
「はい。マスターにこの身を貫かれた時は私にとって始まりでもありました。あの時の痛みは一生忘れません。」
「ハルヤ?」
「お兄ちゃん?」
「お兄さん?」
するとマルチとの会話を聞いてアズサ達が笑顔で金棒を取り出した。
それを見て俺の傍に居た他のメンバーも素早く避難して身嗜みを整え始める。
「もしかして。もしかするけど何をしたのかな。」
「私は信じてるけど、ちゃんと教えて欲しいな~。」
「あの時となると5年も前ですよね。それならどうして私達には手を出さないのですか!?」
「いや、まずは落ち着いてくれ。なあマルチ。みんなに説明を頼む。」
「そ、そんな恥ずかしい事を女性の口から言わせるなんて・・・。『ポッ!』」
なんでそこで頬を染めて視線を逸らすかな~。
そんな事をしたら俺がどんな説明をしても信じてもらえなくなるだろ。
ほら~・・・3人が金棒を手に素振りを始めちゃったよ。
「ま、まずは落ち着いて聞いて欲しい。あの時のマルチはまだ人の体じゃなかったんだ。」
「え?そうだったの?」
「そう言えばマルチって最初はゴーグルだったような。」
「お、お兄さんはそんなマルチちゃんに欲情をぶつけて・・・。」
頼むからユウナは変な事を妄想して煽らないでくれ。
流石の俺も早朝から金棒の刑は辛いのだ。
ただ今回は皆の過去の記憶のおかげでなんとか首の皮1枚で勝利を勝ち取る事が出来た。
そうでなければ確実に実刑は免れなかったので今日ほど記憶を引き継いでくれている事に感謝した日は無い。
「もう~マルチったら。冗談は程々にしてね。」
「は~い。」
俺の方はもう少しで冗談では済まされない状況だったけどマルチは軽くアズサが注意して終わりだ。
まあ、こうしたちょっとしたハプニングでそれぞれの事を知って行くのも印象に残って良いだろう。
アズサ程ではないけど俺もここに居るメンバーには甘いので他に言う事は無い。
「皆もしっかりと目が覚めた所で朝食に向かうか。」
「そうだね。だからハルヤも早くパジャマから服を変えないと。」
「おっと、そうだった。これで良いかな。」
今では神衣のおかげで着替えも楽々だ。
後は靴下と靴を履けば準備万端・・・『ガシ!』。
「あれ?」
「ハルヤ・・・。またそんな服を記録してるの?」
「・・・。」
フッフッフ・・・どうやら寝惚けているのはミミだけではなかったみたいだ。
胸元を見るとそこには蛙の軍人さんが必死に土下座する絵がプリントされている。
きっとさっきの危機的状況のせいで服を変える時のイメージがこれになってしまったのだろう。
蛙だけに変える服を間違えたと言えば見逃してくれるだろうか?
「お兄ちゃん。今からその服を差し出すのと部屋をチェックされるのはどっちが良い?」
「私は部屋をチェックする方をお勧めします。」
クッ!そんな事をされてはせっかく集めたコレクションまで燃やされてしまうので、こうなれば素直に差し出すしかない。
「・・・こ、これをお納めください。」
「よろしい。後は服のメモリーもチェックして余計な物を消去っと。」
そして持っていた服は没収された挙句に焼き尽くされてしまった。
しかも帰った後に部屋はマルチによって完全にスキャンされ、俺のコレクションは尽く没収、処分された。
エロ本とかは無いからそっちは大丈夫だけど、毎回の事ながらダメージが大きい。
しかもマルチの参入によって何処に隠そうと見つけ出されてしまう。
俺はこの時初めて自分のパーティメンバーの能力が充実すると自分の逃げ場も塞がれてしまう事を知った。
どうやら微妙な服コレクションの安息の場は永遠に失われてしまったらしい。
まあ、その話は置いておくとして、朝食を食べた俺達は今日のチームを組みダンジョンへと向かって行った。
ちなみに昨日の夜に適当な部屋へ投げ込んだ数人に関しては朝になって確認するとなんだか悟りを開いた様な穏やかな顔をしていた。
きっと賢者タイムという奴で昨日の夜はあまり眠れなかったのだろう。
その程度で根を上げる様な奴等ではないと思うけど、タチバナに会った時に「おはようございます教官。」なんて言われた時は1日休ませようかと本気で悩んだ。
でも、そうなるとパーティを組む事が確定したヒナタ達4人も休ませる事になる。
それだと朝から明日までの24時間を使って部屋に籠る事になるかもしれないので敢えて参加させる事にした。
きっと今の疲れもポーションを飲んでレベルを上げればいつかは解消されるだろう。
体力の限界が上がったとしても時間的な制約はあるので一晩程度ならそんなに遠い事では無い。
それまではタチバナには耐えて耐えて耐えて頑張ってもらおう。
それにアイツも今の方が危機感が持てて訓練に集中できるかもしれないし、怠けていればあの4人に吸い尽くされるのも時間の問題だろう。
そして今日のメンバーは1人目が昨日と同じミドウさん。
それ以外だと男子メンバーから4人付けられ、DJN99のメンバーも4人来ている。
昨日は全員が大学4年生だったけど今回は全員が高校生だ。
すなわち男性メンバーは来年から大学生となれるかもしれない連中になる。
男性メンバーの名前は加藤福田竹内菅原。
そして女性メンバーが命鈴純恋愛莉だ。
今回は何か意図があるのかヤベさんの娘であるアイリが加わっている。
ただし俺達の目的はカップルを作るのではなく、パーティを組めるようにその橋渡しとチャンスを与える事だ。
今は深読みはせずにそれぞれの実力を評価してどうするかを決めさせてもらおう。
「それにしても今日は客が少ないな。」
「そうですね。昨日は通れないくらいに多かったですけど。」
すると俺との面識のあるアイリが気楽に返して来るけど、それに比べて他のメンバーは何処となく緊張気味だ。
もしかして新しく組んだメンバーに問題でもあるのだろうか。
しかし、そんな不安を感じているとスズがアイリの手を引いて俺から遠ざける様に引き摺って行った。
「ねえ、あの人って先輩が言うには凄い怖いらしいけど大丈夫なの!?」
「大丈夫だよ。家に買い物に来た時はとても優しくて良い人だったよ。」
するとそこに男性陣も会話に加わり更なる情報が追加された。
「でもよ。俺達の先輩もあの人は人間じゃないみたいな事を言ってたぞ。」
「何でも逆らった奴をミンチにしたとか。」
「俺は魔物を頭からバリボリ食べたって聞いたぞ。」
「ゲ!それって本当ならマジで人間じゃないんじゃない!?」
それはある程度の範囲で真実ではあるけど、フドウに関しては逆らったんじゃなくて攻めて来たんだ。
きっと話した奴が自分の仕出かした事を話せずに誤魔化したのだろう。
しかし聞いていたミコトも人間ではないとは鋭いツッコミを入れてくる。
でもまさか自分の言った事が的を射ているとは思っても居ないはずだ。
「で、でも、昨日はヒナタさん達と凄く仲が良かったよ。それにパーティも組めたって凄く喜んでました。」
「そうだな。そう言えば俺達の方でも意見が分かれてるんだよな。振り分けが決まって傍に居たササイさんに聞いたら、あの人に着いて行けば問題ないって言ってたしな。」
「そう言えば昨日の昼まではタチバナさんも喧嘩腰だったのに今日になってからは別人みたいになってたな。2人ともそれまでは不良みたいだったのにあの人に関わると人格まで変わるのか?」
どうやら、ここに居る男性陣は賢者タイムを知らないらしい。
それに比べて女性陣は既に周りから噂くらいは聞いているのか顔が少し赤くなっている。
これが意図した事だとすればセクハラで訴えられていたかもしれない。
それにしてもカトウもなかなかに鋭い事を言うな。
ササイは過去の記憶が蘇って人格に影響を与え、タチバナに関しては真に覚醒した事で人格というよりも心が大きく変化している。
タチバナに関しては肉体と心の両方が満たされた為にあの状態なので慣れれば少しは元に戻るだろう。
それにしても意外と関係は良好の様なので一体何が心配なのか全く理解できない。
もしかすると歴史が変わって人の考えも変わってしまい今の俺では現役高校生の感覚は理解できないのだろうか?
「そろそろお喋りは終わりだ。今日は11階層から攻めていくぞ。」
そして彼らを引連れてドームに入ると、その横にあるサークルに全員を乗せてダンジョンへと入って行った。
「よし、まずはお前等の実力を見たいから順番に戦ってくれ。」
「パーティではなくてですか?」
「ステータスやスキルに関しては既に分かってるから後はどれくらい使いこなせているかだ。」
「それなら私達から戦います。」
「ならミコト、スズ、スミレ、アイリの順で戦ってみろ。」
そしてミコトたちがすぐに手を上げたので順番だけ指示を出して先に戦わせることにした。
ちなみに順番は学年順でミコト、スズが高3でスミレが高2でアイリが高1だ。
そして、レベルとスキルの数はアイリが一番低くて、そこだけ見れば実力も低い事になる。
ただしDJN99のメンバーになったばかりだと言うのならそれは仕方がないだろう。
俺が懸念していた様に虐められていたり嫌われている訳では無く、昨日のは気を利かせて1人で頑張った結果の様なので実力さえ付ければどうにかなるかもしれない。
しかし、アイリには他のメンバーには無い大きな欠点があるので、そこを解消させるために俺と組ませたのかもしれない。
そして11階層に到着すると俺が魔物を誘き寄せ、ミドウさんには様子を見ていてもらう。
ここの魔物は虎男で群れないので1対1で戦うには向いているけど腕力が強くスピードが速いのでこのメンバーではソロだとギリギリかもしれない。
そして1人目のミコトはダメージを受けながらも相手にダメージを蓄積させて少しずつ有利な状況へと追い込んでいる。
「やあ!」
「グワーーー!」
「ハァ~ハァ~・・・やりました!」
やっぱりソロならこの階層はギリギリのようだけど、高校生でここまでやれるなら十分と言えるだろう。
このまま順調に成長すれば今年中には20階層を突破できそうだ。
「良くやったな。」
「は、はい!」
俺が声を掛けるとミコトは元気な返事をして交代の為に下がって行った。
次はスズの番なので2人は擦れ違う時に声を掛け合い情報を交換しているようだ。
「ねえ、どうだった?」
「なんだか教官に褒められたらドキドキする。」
「そうじゃなくて魔物の強さよ!」
「ああ、そっちね。結構強いかな。スミレでギリギリ、アイリには無理かもしれない。」
「分かった。一応気を付ける。」
「うん。」
そして次の虎男を呼び寄せてスズと戦わせてみる。
すると腕力は敵わなくてもスピードは勝っているようで動きは悪くなさそうだ。
剣の腕もまあまあでフェイントも上手いので相手を翻弄しダメージを蓄積させていく。
自分の事もしっかり把握しており途中でポーションを飲み体力を回復させている。
結果としてはミコトよりも時間は掛かっているけど戦闘が上手いのはスズの方だろう。
「これで止めです!」
「グ・・グォー・・・。」
そして最後は急所への1撃が心臓を捕え小さな叫び声と共に霞へと変わって行った。。
「勝ちましたね。」
「良い動きだったな。その戦闘技術ならレベルが上がればすぐに階層を下げられそうだ。」
「そ、そうですか!」
するとスズは背中を向けると素早い動きで皆の所へと戻って行った。
途中で躓きそうになっていたけど戦闘中は綺麗な足運びだったので普段はドジっ子なのかもしれない。
しかしアレはスキルを使いこなしている以上にかなりの鍛錬を普段からしてそうだ。
「褒められてどうだった?」
「む~ミコトが言った通りでちょっと悔しい。それになんだか視線が熱い。」
「そうだよね。なんだかあの目で見られてると安心感って言うかやる気が出て来るよね。」
「・・・否定はしない。」
どうやら戦闘の感想を言い合ってるみたいだけど、そろそろ次のスミレを前に出してくれないかな。
そう思っていると少し恥ずかしそうな顔でスミレが前に出て来た。
「よろしくお願いします!」
「ああ、それじゃあ頑張れ。」
俺は次の奴を誘き寄せると同時に剣を抜いて一閃させる。
それにより虎男の右腕が切断されポトリと地面へと落ちると少し遅れて叫び声を上げた
「え、どうして?」
「お前とアイリだとこれくらいのハンデが無いと大怪我するぞ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
そして戦闘が始まり予想通りに片腕になっても虎男は善戦している。
もし両腕があったとしたら今頃はなぶり殺しにされていたかもしれない。
それでも虎男の速度は今も健在で強力な蹴りは命を脅かすには十分な威力がある。
そのためスミレの攻撃は下半身へと集中し、持久戦に持ち込む事で出血による体力の低下と動きが鈍る事を狙っているようだ。
それでも無傷とは言えず、防具が破損して体から血を流すと服が赤く染まる程のダメージを負っている。
しかし、ここで焦ってしまえば闘争心の強い魔物に反撃され負けてしまう恐れがある。
だから焦らず確実に止めを刺せるチャンスを狙い、相打ちになるギリギリの所で待ち構えている。
「・・・ここです!」
「ギャーーー!」
そして虎男は頭部に受けた唯一の傷から流れ出た血が目に入り、視界が半分閉ざされてしまった。
それをチャンスと見て鋭い1歩を踏み出すと止めの突きを放って眉間を貫いた。
その1撃が最後となり、満身創痍になりながらもスミレは魔物に打ち勝つ事が出来た。
「ハァ~ハァ~・・・これが・・・ソロ。パーティなら余裕なのに・・・1人だとこんなに辛いなんて。」
スミレは戦闘が終わると同時にその場に座り込んで肩で荒い息をしている。
それなりに深い傷も負っているので早く回復させないと意識を失いそうだな。
「すぐに回復させてやる。」
「あ、ありがとうございます。・・ひゃあ!」
「どうした?」
「いえ、何でもありません。」
なんだか顔が真っ赤だけど普通に回復させただけのはずだから問題はないはずだ。
しかし治ってすぐに立ち上って駆け出してしまったので何も聞けなかった。
「どうしたのよ変な声出して。」
「その・・・普通の回復魔法と違って温かくてなんだか誰かに抱きしめられてるみたいでした。」
「普通は回復魔法ってひんやりするのにね。」
「そう言えば聖人と言われる人が使う回復魔法がそういった感覚だと聞いた事がありますね。」
「え?それじゃあ教官は聖人ってこと!?でも日本には居ないんでしょ。」
「公式ではですね。でも、それでは説明の出来ない情報も幾つかあるようです。もしかすると彼には隠された何かがあるのかもしれません。」
スズは実力もあるけど良く物を知っているな。
それに自分の持っている情報が全てではないのでそれ自体を疑う事は良い事だ。
「それじゃあアイリ。お前はちょっとこっちに来い。」
「は、はい。」
「頑張ってね。」
「うん。でも何で私だけ呼ばれたんだろう。」
そしてアイリは呼ばれてすぐに俺の許へと駆けて来た。
その顔は少し不安そうだけどそれは仕方がないだろう。
俺はこれから大事な話をしなければならない。




