308 訓練合宿 最終日 ②
ササイとタチバナの試合は無事に終わり次はマコトとフドウの試合となる。
しかし俺が呼び出すために声を掛けようとした瞬間にCチームの方から悲鳴が上がった。
「お兄ちゃん!」
するとその声に反応して殆どの者が自分の武器に手を掛けて臨戦態勢へと移行する。
どうやら数日の訓練で戦士の気構えが身に付いているようで、これなら引っ手繰りに遭遇しても対処が出来るだろう。
そして悲鳴を上げたのはこの島に唯一兄妹で参加しているナゴミだ
その足元にはマコトが血を流して倒れており、その横にはナゴミに剣を突き付けたフドウが顔を引き攣らせて笑みを浮かべていた。
「お、お前等!俺を嵌めやがったな!」
「何を言っているの!ナゴミを放しなさい!」
「黙れーーー!俺はお前達と違って選ばれたんだ!なのに誰も俺を認めようとしない!」
どうやら生き返った直後で錯乱しているようだ。
それに自分から攻めて来て嵌められたとはどんな良い訳だろうか。
イノウエが声を掛けているけど、その度に「黙れ」の一点張りで会話が成立していない。
手に持っている剣はナゴミの首に突き付けられ、既に僅かに刺さり血の雫を垂らしている。
この状況が長く続けば何かの切っ掛けでブスリと突き刺しそうだ。
するとそれを見てササイが視線を向けて来るので鎮圧は誰がするのかと聞いているのだろう。
『お前は動くな。』
俺は背中越しにハンドサインを送るとササイに動かない様に指示を出した。
それに今の状況でも俺達なら助け出すのは簡単なので、ここは最も相応しい者に任せるべきだ。
そして倒れているマコトの指がピクリと動くと地面となっている岩を掴んで握り潰している。
どうやらイノウエが時間を稼いでいたおかげで傷を治し終えた様だ。
ただし僅かに上げた顔には憤怒が宿り、既に怒りが上限を超えている事が分かる。
その子供には不釣り合いな表情に、多くの者達が自分に向けられているのではないにしろ緊張を感じているようだ。
そしてマコトが動き始めた事にフドウも気付くと、力の弱いナゴミに向けていた剣先をマコトへと向けた。
「お前も人質だ!動くとぶっ殺すぞ!」
「・・・ああ。そうしてくれ。そうすれば俺もテメーをぶっ殺せる。」
マコトはフドウの命令を無視して腕を地面につくとゆっくりとした動きで起き上がった。
しかし、いまだに背中は向けてはいるけど、その纏っている気配はフドウに危機感を与えるには十分だ。
そのため剣は今もマコトへと向けられ、いつでも攻撃出来る様に間合いへと入れている。
そしてフドウへと振り向いた時、マコトの顔は怒れる鬼へと変貌した。
その吊り上がった目は憎むべき相手を真直ぐに睨み、服の上からでも分かる程に筋肉が発達して隆起している。
額には真直ぐに伸びる1本の角を生やし口からは大きな犬歯が突き出した。
「こ、コイツ!魔物だったのか!」
「ウオァーーー!!」
フドウはその姿に驚きと恐怖を感じ、すぐさま向けていた剣で突きを放った。
しかしマコトはそれを躱すどころか自らの右胸で受け止めると柄の付近まで一気に突き刺しフドウの腕を握り締めた。
『ボギ!バギ!』
「く、クソが!放しやがれ!」
マコトの手にはナゴミから送られたグローブが嵌められている。
たとえ防具の上からだとしてもフドウの腕を握り潰す事は容易い事だ。
そしてマコトは歪に曲がったフドウの手を離すと、胸に剣を刺したまま間合いを詰めた。
しかし、その1歩は地面を砕き、力とスキルの乗った拳がナゴミの横を通り過ぎフドウの横腹を貫通する。
「ガハ!何が起きているんだ!」
フドウは痛みからナゴミを手放し、後ろへと数歩下がって膝を突いた。
しかし、その僅かな距離は致命的な間合いとなり、マコトに踏み込む隙を与えてしまう。
「アアアーーー!」
その間合いを利用して勢いを得たマコトはそのまま鳩尾から上に向かい拳を振り上げた。
その攻撃は前面を覆っていた鎧を砕くだけに止まらず、胸を抉って首から上を粉砕してみせる。
そしてフドウの体は空へと打ち上げられると放物線を描きながら海に落下し、回遊していた鮫たちに群がられて餌となった。
するとマコトは血に塗れた拳を下ろすと自分の体が変化している事に気付き恐る恐る確認を始めている。
すると顔に振れ額から生えている1本の角に気付くと、その視線が目の前で座り込んでいるナゴミへと向けられる。
「な、ナゴミ・・・俺・・・。」
「大丈夫だよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだからね。」
しかし、その言葉こそ今の自分の姿が人間でない事を現している。
マコトはすぐさま背を向けて駆け出そうとしたので、その首に尻尾を伸ばすと巻き付けて捕獲した。
「だ、誰だ!放しやがれ!俺がここに居たらナゴミに迷惑が掛かるんだ!」
やっぱり逃げようとしたのは自分が魔物の姿になったからではなく、妹であるナゴミに変な疑いが掛からない様にと考えたからのようだ。
しかし、それだと誤解が生まれてナゴミが更に疑われるかもしれないので逆効果になる。
それでなくても魔眼という特殊な力を持っているので条件は揃っていると言える。
まあ、そんな事は俺がさせないのだけど、マコトのこういう思考は本当に俺とそっくりだ。
それにコイツは大きな勘違いをしているのでそれを正さないといけない。
「落ち着けマコト。」
「お前だったのか・・・て、化物ーーー!」
「だから落ち着け。」
マコトは俺の姿を見ると全力で暴れて尻尾の拘束を解こうとしてくる。
しかし今のマコト程度の力では外すどころか動かす事すら出来ない。
それに今の俺は四つ首のキメラの姿なので聖書に出て来る悪魔よりも不気味な姿をしているはずだ。
そんなのが突然現れて更に自分を拘束していれば驚いて混乱するのも仕方がない。
「俺だマコト。」
「お、お前は!ど、どうなってんだ!?」
俺は尻尾を残して元の姿に戻ると少しだけ落ち着きを取り戻したマコトへと説明を始めてやる。
「別にお前が魔物だと思ってないから安心しろ。俺だって姿が変わってただろ。」
するとマコトよりも先に周りから大きな頷きがされており、ここに居る連中ならこの程度は気にしないだろう。
それにあの姿に比べれば、ちょっと鬼っぽくなった姿なんて可愛いものだ。
「まずは落ち着いてステータスを確認しろ。スキルに鬼人化が増えているはずだ。」
「あ、ああ。確認してみる。」
そしてマコトはステータスを確認し、そこに増えているスキルを見て完全に落ち着きを取り戻した。
ちなみにこのスキルは俺が以前に持っていた獣化のスキルに似ている。
マコトの場合は鬼になる事が出来るので姿が変わっているけど自分の意思で簡単に戻る事が出来るだろう。
効果は肉体とステータスの強化なので格闘主体のマコトにはピッタリだ。
ただし組織のサイトにアクセスして見た記録によれば、このスキルには精神を侵食し暴走させる効果がある。
恐らくは職業のベルセルクと同じ様に怒りなどの負の感情で我を忘れやすくなるのだろう。
さっきフドウを殺した時に一切の容赦が無かったのはそれが原因だ。
そのため歴史上で本当の鬼となった者が何人も討伐されたと書かれていた。
それと称号に俺の持っているのと同じベルセルクが付いているので互いのスキルは相性が良さそうだ。
それもスキルを使いこなせればの話だろうけど幼いマコトには難しいかもしれない。
そして無事に人の姿に戻れたマコトはホッと胸を撫で下ろした。
「良かった。これでナゴミの傍に居られそうだ。」
しかし、それも今のままでは僅かな時間だけだ。
それでなくても精神的に未熟なので、またいつ怒りに呑まれるか分からない。
恐らく今ならクラスメートを皆殺しにするのに1分と掛からないだろう。
なのでコイツには1つの辛い提案をしなければならない。
「マコト。お前は妹の為に死ぬ覚悟はあるか?」
「・・・ある!」
「お兄ちゃん!」
「ナゴミは黙ってろ。これは兄同士の大事な話だ。」
すると周りからは「そこは男同士ではないのか?」と疑問の言葉が聞こえて来る。
しかし俺は別に間違えている訳では無いので周りの声は無視して話を続けた。
「今のままだと遠くない未来にお前を誰かが殺す必要が出て来る。それは俺かもしれないし、組織から派遣された他の誰かかもしれない。もしかするとお前にとって最も大事な奴の可能性もある。」
俺はそう言ってナゴミにも視線を向け、可能性の1つとしてある事を無言で伝える。
そしてマコト本人も先程は怒りに呑まれた経験から俺の言いたい事を理解して頷きを返して来た。
「俺はどうすれば良いんだ?」
「残念だが俺に出来る事はあまりない。レベルが上がっても心は鍛えられないからな。」
「そうなのか。」
恐らくは俺が覚醒させても無駄になるだろう。
逆にナゴミに何かあれば一瞬でキレる様になりそうなので逆効果だ。
なので鬼の事は鬼に聞くべきだろう。
「だから紹介状を書いてやるからちょっとあの世に行って訓練を受けて来い。」
「・・・は?」
そして、サラサラとカブト宛に手紙を書いてマコトへと渡してやる。
「ちょっと待て!本当に大丈夫なのか!?」
「夏休みが終わる頃には生き返らせてやるから安心しろ。ナゴミの事もこちらで面倒を見ててやるから。」
「わ、分かった。それしか手が無いなら俺はあの世に行くぜ!」
そして俺は幾つかの事を教えると一瞬でマコトの首を落とした。
後は死体を回収して持ち帰れば好きな時に生き返らせる事が出来る。
そして小さなトラブルはあったけど無事に対戦も終了し後は纏まって帰るだけとなった。
しかし、どんな事だろうと帰り着くまで気を緩めてはならない。
特にこの海域にはまだ1つの問題が残されているので帰る前にどうにかしないと船も近づけないだろう。
そして、そいつは先程マコトが海にバラまいた撒き餌に反応し、こちらへと向かって来ている。
「ねえ話しは聞いてたから何も言わないけどこれからどうするの?」
「もちろん予定通りに合宿は終了して帰るだけだ。その前にもう1つ片付ける仕事が残ってるからちょっと待っていてくれ。」
そしてササイも呼び出し説明するとこちらは既に気付いていたようだ。
「それなら俺達は海から離れた所に避難しときますね。」
「誘導は2人に任せた。」
「話しは分かったけど大丈夫なの?あなた達の言ってる事が本当なら相手ってアレよね。」
するとイノウエは海の沖の方を向いて海面に見えている物体を指差した。
そこにはこの場所からでも分かる程に大きな頭が覗き、こちらへと向かって来ている。
そして島に近付くにつれて水深が浅くなるとその全体が見え始め、人型の何かという事が分かってきた。
「ああ、やっと餌に喰い付いたみたいだな。」
「餌?」
「いや、何でもない。こっちの話だ。それよりも早く離れた所に避難しろよ。巻き込まれるぞ。」
「・・・後で説明してもらうわよ。」
そしてイノウエは最後に呆れた顔をするとCチームを誘導して駆け出して行った。
それを笑みを浮かべて見送ってから真剣な表情に切り替えると、問題の巨大生物に視線を戻す。
既にかなり近づいて来た事で腰までは見えており、動きからして二足歩行で移動をしているようだ。
そこから想定すれば大きさは50メートル以上はあり、顔は鯨を思わせる形をしている。
「まさか海底に沈めた自分の体とこんな再会をするとは思わなかったな。」
コイツは俺が鯨時代に日本海溝へ沈めた体で間違いない。
ただ、俺がこうして転生しているのだから中身は全くの別人のはずでゾンビ等の類ではなく何者かが中に入って動かしている。
すると海岸まで来た二足歩行する鯨の化物は俺の前で足を止めた。
「ガァッハッハッハ!この依り代は素晴らしいぞ!見つけた時にも驚いたが、こんなに我と馴染むとは思わなかった。そこの人間。貴様は我がこの世界に来てからの栄えある1人目の犠牲者だ!良き悲鳴の旋律を奏で存分に楽しませろ。」
「一応確認だが、観光客じゃないよな。」
「ガァッハッハッハ!観光客とは笑わせる。我は幾多の世界を滅ぼして来た大いなる邪神の1人である。平和を破壊し、その世界の生物を滅ぼす事こそ我が使命!」
どうやら俺の体の中に入っているのは邪神だったみたいだ。
それにしても最近は自称で邪神と名乗る奴がやけに多い。
もしかしてこの世界への観光ツアーを企画している奴でも居るんじゃないかと疑いたくなる。
「なら、手加減は要らないよな。」
「矮小である人間風情に何が出来るというのだ。だが今の我は機嫌がいい!貴様に何が出来るか見ていてやろう。その手段が尽きた時に絶望の中で嬲り殺しにしてくれる!」
邪神にしてはやけに親切な性格をしているようで、まさか先手を譲ってくれるとは思わなかった。
ならここはその言葉に甘えさせてもらおうと、まずスマホを取り出すとアズサへと連絡を入れる。
『どうかしたの?』
「ちょっと邪神が湧いたから今回は承認を頼もうと思って。」
『分かったわ。勇者の能力を全開放する。』
すると体に力が漲り、勇者の称号が起動した事が分かる。
しかし、それでも目の前の邪神は驚くのではなく声を上げて笑ってくる。
「ガァッハッハッハ!その気配からして貴様は勇者であったか。しかし、貴様程度の者は今までに星の数ほど殺して来たぞ!」
「まあ、待ってろよ。準備はまだ終わってないからな。エクレ、エヴァ。」
「うぅ~・・・良い夢を見てたのに・・・。」
「呼んでくれて嬉しいわ。」
そして俺の呼び声にエクレは眠そうに目を擦り、エヴァは嬉しそうに姿を現してやって来る。
その姿に邪神は鼻を鳴らして笑うと僅かに目の色を変えた。
「神に助力を頼んだか。しかしその程度の神では・・・。」
『神武装・雷速天翔』
『神武装・風殻衝覇』
「何!貴様らに神としてのプライドは無いのか!」
「五月蠅い。安眠の敵は排除する。」
「そういう事は私達に勝ってから言うのね!」
「フッ、しかし神を纏ってこの程度か。先程から力が殆ど変わっていないではないか。」
すると邪神は俺を無視する様にエクレとエヴァを鼻で笑うと不機嫌そうに歯を剥いて見せた。
ただ身に纏っている状態の2人にはその理由が分かっているので何も言い返さずに無言を通している。
そして、とてもとても鋭い視線を背後から感じるのでそちらに対しても声を掛けておく。
そうしないとまた後で何を言われる事か。
「トワコも来い。」
「はい!『神武装・金剛龍鱗』。」
するとトワコの姿が鎧へと変わり前後から合わさる様にして上半身を覆って行く。
形は龍鱗と言うだけあって鱗状をしていてスケイルアーマーに似ているようだ。
冷たさは感じず、まるで抱き締められている様な暖かさが伝わって来る。
『フフ、初めてあなたと1つになれたわね。』
「初めてなんだから無理はするなよ。」
『大丈夫だから安心して。この状態なら首が無いから死なないわ。』
言われてみれば確かにそうだな。
人魚は首を切り離されないと死なないと以前に言っていたけど、今のトワコには首と呼べるものはない。
これならトワコが死ぬ事があるとすれば俺も死んでいそうだな。
ただ、いまだに強い視線が1つ残っており、そちらを見るとポツンと佇む少女がこちらを見詰めていた。
「マルチも何か出来るのか?」
「もちろんです。『メタモルフォーシス・タイプ マスカレード』」
するとマルチの姿が仮面へと変わると俺の顔を覆って来る。
しかし視界は遮られず、まるで何も着けてはいないようだ。
それにスキルを使わなくても周辺状況や位置情報など、複数の事が知りたいと思うだけで頭の中に浮かんでくる。
更にマスカレードというのは仮面舞踏会という意味だった気がするので効果は情報関係に限定してでは無いだろう。
「貴様!どれだけの神を従えているのだ!」
「従える?コイツ等は俺の家族だ!それを従えるとは勘違いするのも大概にしろ!」
どうやらこの邪神の頭は腐ってしまっているようだ。
もしかすると元は俺の肉体だと言っても古過ぎたのかもしれない。
だが、コイツが馬鹿正直に待っていたおかげでこちらの準備も十分に整った。
「さあ、今から俺の全力を見せてやろう。」
「ようやくか。しかし虫の様に・・・小さな・・・貴様では!?」
「どうした?見下ろされるとは思わなかったのか?」
俺はスキルをキメラの姿に変わると、腕は3対、頭を4つへと増やす。
そして装備となっている4人の事が心配でゆっくりと姿を変えたけど、腕の数に応じて手甲は増え、マスクも増えて獣の顔にフィットする形へと変わっている。
それに今の俺は既に邪神よりも大きく、さっきまで使っていた『手加減』のスキルを使っていない。
なので今では邪神から見て俺は巨大化と同時に強さすら追い抜いた様に感じているだろう
更に不動の邪眼を使ってみるとマスクによって強化され邪神を一瞬で拘束する事が出来た。
「な!状態異常に対して完全耐性を持っている我を縛るだと!」
「完全耐性が聞いて呆れるな。だがお前は俺の大事な家族を愚弄した。生きてこの世界から出られると思うなよ。」
「おのれ!この化物が!」
そう言って邪神は拳を握ると約束を破り先制攻撃を仕掛けてきた。
しかし、その攻撃はエヴァが展開した『風塵障壁』によってズタズタに引き裂かれ、俺に触れる前に形すら無くなってしまう。
「グオアーーー!」
しかし無くなった腕は瞬く間に再生して元に戻ると何度も攻撃を行って来る。
それにしても自分で言った事すら守れないとは、やっぱり邪神の言葉は信用できない。
俺は向かって来る拳を1対の腕で受け止めると同時に別の1対の手に拳を作ると振り下ろす様に叩きつけた。
「グハ!」
「言っておくが俺はお前の様に油断もしないし余裕も与えないぞ。俺の信条は『悪・即・殺』だからな。」
そして掴んでいる拳を握り潰し3対の腕で徹底的に殴りハンバーグの様なミンチへと変える。
それでも再生しようとしているので更に素手で引き裂き、4つの口に放り込むと咀嚼して飲み込んでいく。
すると次第に再生が出来なくなったのか、動かなくなり始めた。
そして最後の肉片を口へと放り込むと腹の中から声が聞こえてくる。
「お、おのれ!こうなればお前の体を支配してくれる!・・・ど、どうなっているのだ!我の魂が分解されて行く!こんな事が有り得るはずは無い!我が・・我が・・消えて・・・いく。まさか・・貴様は・・・暴食の・・・。」
そして、何かを言っていたけど結局は最後まで言わずに声は消えて行った。
ただ、最後に暴食がどうのと言っていたので以前の様な称号が付いていないかと思ってステータスを確認してみるけど、今の所は大丈夫そうだ。
ただ、このステータスは隠れている時もあるのでちょっと油断できない。
今度の時に再びエビスの奴を呼び出して確認をしてみるか。
それにしても今回の邪神はかなりステータスの強化をしてくれており力・防御・魔力の各ステータスが強化されて7000を超えている。
味は美味しくなかったけど良薬は口に苦しとも言うから、もしかすると食べた方が高い効果があるのかもしれない。
「そう言えば、今回の奴は邪神としてはどれくらいだったんだ?」
『あれは中級。』
『人ではどう足掻いても辿り着けない領域の強さを持ってるわ。さっきも言ってたけど幾つかの世界を既に滅ぼしていたからここも余裕だとでも思ってたのね。』
するとエクレとエヴァがさっき倒した邪神の事を評価してくれる。
確かにしぶとさもだけど強化された数値だけでも前回の5倍ほどだ。
トワコとマルチを纏っていた事での強化と勇者の称号を起動させていなければ簡単に勝てる相手ではなかっただろう。
そして俺は戦闘態勢を解除して元の姿に戻ると生徒たちの許へと戻って行った。
ただそこではササイ以外が放心状態になっていて声を掛けても誰も答えてくれない。
迎えを呼んでから帰るのにも時間が掛かり、家に着いたのは夜になる頃だ。
しかし夕飯には間に合ったので俺は2人の少女を連れて家の扉を潜って行った。




