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304 訓練合宿 3日目 ②

Cチームに行く前にまずはマルチに連絡を入れる必要がある。

それに昨夜は俺が片付けたと言っても同じチームから襲撃を受けた結果となっている。

怖がられるのは問題ないが攻撃をされれば今のAチームでは成す術もなく敗北してしまう。

そうならない為にも信頼のあるマルチから先に一声かけてもらわなければならない。


「そちらの様子はどうだ?」

『問題ありません。』


ただ念話に乗って悲鳴のような思念が聞こえて来る気がする。

通常はあり得ないので気のせいだと思いたいがヤリ過ぎてはいないだろうか。


「それなら互いのチームで親睦を深める為に昼食にしないか。」

『・・・分かりました。そろそろ高蛋白質な食材が欲しいと思っていた所です。』

「それなら皆に話しておいてくれ。」

『はい。』


なんだか会話の途中にあった間が気になるけど行けば分かる事だ。

そして到着してみると昨日とは別人の様になったCチームが俺達を待っていた。


「せ、先生・・・助けて~。」


するとそこにはゾンビの様に疲れ果てた彼女たちの姿がある。

何をしたのか体の筋肉も美しさを保つ範囲で引き締められ脂肪もあまり残っていない。

心なしか胸も縮んでしまっている様に見えるのは触れないでおくのが彼女達の為だろう。


「マルチさん・・・何をしたのかな?」

「ちょと電気刺激で筋肉の成長を促しただけです。」

「・・・その電気は何処から引いたんだ?」

「部屋で寝ているエクレから拝借しました。」


何となく分かった気がする。

ようは電気で筋肉を強制的に動かして鍛え上げたって事だね。

あれってヤリ過ぎると超痛いんだよな。

俺も以前に父さんが使っていた機械を借りた事があるけど、強くやると足が攣った時みたいな痛みが走った。

それを朝から今までを回復魔法と併用して使っていればこの急激な変化となる訳か。

確かに俺も覚醒して最初の頃は似た様な事をしたけど、マルチって意外と鬼教官だったんだな。

しかし、これなら持って来た獲物の効果は高くなりそうだ。


「仕方ないからまずは飯にするか。」

「そこで現状をサラッと流すのは流石ですね。」

「あの状態だと飯を食べないと回復させても胸が萎むだけだろ。」


そのため、まずは取れたて新鮮で今回の主役であるマグロさんに登場してもらった。

それを数匹出して台に乗せると料理スキルを持っている奴に声を掛けた。


「疲れている所を悪いがこれを頼む。」

「死人に鞭を打つとはこの事です。」


確かに手足がプルプルして立っているのもやっとのようで、まるで生まれたての小鹿みたいだ。

恐らくは疲労が限界に達しているので、軽いナイフですら数十キロの重さに感じるだろう。

俺の神聖魔法なら回復が可能だけど、その場合は・・・胸が無くなるかもしれない。


「胸の為と思って許せ。」

「ならサービスを要求します。」

「・・・分かった。マグロを捌いた奴の評価は満点にしておこう。」


こういう所はしっかりと交渉まで出来る様になっており昨日とは別人のような姿に少しだけ哀れみが湧いて来る。

そして他の料理スキルを持っている者達も満点に釣られて解体を始めた。

素人作業だが血抜きはしてあるのでそちらは大丈夫そうだ。

それに捌くと言っても料理人がする訳では無いので3枚に卸してブツ切りにして行くだけだ。

流石に大トロ付近は油が乗っていて分かり易いけど俺にはトロと赤みの区別もつかない。

ただ栄養が足りてない彼女達の手はトロの付近に集中しており、男性陣は自然の流れで残っている尻尾の付近を食べる事になりそうだ。

どうやらいつの時代も男は尻尾の先した食べられないらしい。


それ以外にもコラーゲンが多そうな頭を女性陣は独占して食べており、今は野性味すら感じられる。

しかし会話が出来る状況ではないので全く親交が深まっている気がしない。

Aチームは肩身が狭く、彼女達の豪快な食いっぷりと奪い合いに恐れをなして離れた所で固まって食べている。


「食べた奴は並べ。今日も半ばだが特別にあれをやるぞ。」

『『『ギロ!』』』


するとさっきまでの事が前座だったかのように鬼気迫る気配が放たれAチームの男性陣を更に怯えさせた。

しかし、それも恐らくはもうじき消し飛んでしまうだろう。

何せ全ての条件はここに揃っているのだから。


「いつもながらに最初はハヤシか。」

「お願いします。」


しかし、その体には既に脂肪ではなく筋肉が付いている。

内臓脂肪も少しはあるのでそちらと胃の中身を使ってまずは体を直していく。


「これで体は大丈夫だな。」

「はい。今までに無いくらい軽いです。」

「それなら肝心な所を行くぞ。終わったらもう一度しっかりと食べる様に。」

「はい、乳先生。」

「だからその名前は止めろ!」


そして最後に胸を大きくしてやると服の上からでも分かる程の膨らみに成長した。

それは白いシャツを突き上げて周囲に居る男性を魅了し、今では背後で怯えていた男共の心を鷲掴みにしている。

しかし、まだ最初の1人目なのでその隆起した2つの山には女性陣の目も釘付けだ。

早く終わらせなければ暴動が起こってしまうかもしれない。


「良し、次だな。」

「ありがとうございます。」


それにしても少しぽっちゃりしていたから気付かなかったがハヤシは痩せると可愛らしい顔立ちをしていたようだ。

しかし、これだと帰ってハヤシを認識できる奴が何人いるかだな。

親でもパッと見で判断する事が出来ないかもしれない。


「次はイノウエか。」

「よろしくお願いします?」

「どうして疑問形なんだ?」

「いや、だって姿がその・・・大人で・・・ちょっとカッコ良いから。」

「ああ、今はあっちを教えるのにこの姿なんだ。いつもの姿だと侮られるからな。」


後半は聞き取れなかったけど前半は聞こえたので軽く説明をしておく。

イノウエも心当たりがあるだろうからすぐに理解して恥ずかしそうに顔を背けてしまった。

それにしても今頃気付くとはさっきまでは余裕がそれだけ無かったのだろう。

そして治療と豊胸を終えると医者と同じ様に笑顔を向けてやる。


「終ったぞ。」

「あ、ありがとう。」


すると少し声を詰まらせながら立ち上がると恥ずかしそうにしながら走り去ってしまった。

それにしても元々キツめな顔立ちだったけど、今は凛々しさが追加されてモデルみたいな顔立ちになっている。

俺にはきつい対応だけど女性同士では綺麗な笑顔で笑い合っているので、アレを他にも向ければ胸なんて無くてもモテると思う。

まあ、巨乳を目指している奴は居ないので成長させても、大学生だとあと1度か2度と言ったところだ。

中学生以下はここで終了で、高校生でもあと1度くらいか。

それを目途にして訓練を一旦終了させよう。


そして治療と豊胸が終わった頃になると10匹を超えるマグロが骨となっていた。

その代わり塩焼きや兜焼きなどが皿に盛らられてテーブルを彩っている。

調味料が塩しかないので仕方ないけど、教官と言う設定を追加したので少しは調味料を出しても怪しまれないだろう。

とは言っても既に料理は終わっているので出すならアズサが持たせてくれている付けダレくらいか。


そう思っているとCチームを代表してイノウエが声を掛けて来た。


「ねえ、ところでそっちの男達は誰なの?」

「マルチから聞いてないか。」

「え~と・・・何か言ってた気がするけど、あの状態だったから・・・ハハハ~。」


確かにあの状態で説明をされても頭には入って来ないのは理解できる。

仕方がないのでこれまでの経緯を説明して今のAチームなら安全である事を強調しておいた。


「ん~アンタが言うなら良いけど・・・。」

「「「フフフ。」」」


すると後ろで聞いていた他の女性陣の中から笑い声が漏れ聞こえて来た。

その途端にイノウエは後ろへと向いて「うるさい!」と声を飛ばして。

もしかすると数日ぶりの男に緊張でもしているのだろうか?


「ゴホン!それならせっかく作ったから皆で話しながら食べようか。」

「そうしてくれると助かるよ。」


これで、ちゃんと親睦会と言えるようになりそうだ。

ついでだからここでタレを渡しておこう。


「これは俺の婚約者が作ってくれた焼き魚に良く合うタレだ。」

「婚約者・・・。そ、そうだよね。それくらい居るよね。」


するとイノウエの表情が少し曇るけど、すぐにいつもの様な元気な笑顔を浮かべた。

なんだか少しいつもよりも元気に欠けている気がするけど大丈夫だろうか。

それでもその後は率先してAチームに声を掛けて場を盛り上げてくれている。

これなら大丈夫そうなので俺はこの場から離れた所へ移動して行った。


「さて、働き者の2人は来てるな。」

「やっと出番ね。」

「何をすれば良いの。」


するとすぐにエヴァとトワコが姿を現し返事をしてくれる。

ここに来ていないエクレはマルチの言っていた通り俺のシェルターでお昼寝でもしているのだろう。

昔から怠け癖と居眠りの常習犯だったので予想はしていたけど、1人でも十分なのでそっとしておこう。


「悪いけどBチームに行って過度に暴力を振るってる奴等を始末して来てくれ。」

「良いの?暇だからずっと見てたけど3分の1は居なくなるわよ。」

「構わない。死んだ奴は一旦失格にして後で真偽官に確認させる。」

「それなら人の姿じゃない方が良いわよね。」

「消し飛ばさない様にしてくれよ。」

「分かってるわよ。行くわよトワコ!」

「すぐに戻ってきますね。」


すると我先にとエヴァは嬉しそうに飛び立つとBチームがいる方へと向かって行った。

それを溜息をつきながらトワコも追って行くけど、どちらにも心配の種は尽きない。

しかし、いざとなれば持っている蘇生薬を使って生き返らせるだろう。

最低でも行方不明者を作らない様に後で確認だけはしておく必要がありそうだ。


そして少しこの場を離れていただけなのに思っていたよりも簡単に仲良くなれているみたいだ。

もしかすると同じ様な訓練を受けた事で何かシンパシーを感じたのかもしれない。

言葉の端々で俺の悪口を言っているので、それを抜きにすればとても良い親睦会に見える。

ただし今までの事が尾を引いているのか俺が近くに居ても悪口大会が収まる様子はなさそうだ。

これで酒が入れば大学生はもっと酷かったかもしれない。

そして騒ぎの間にもBチームの居る方向では風に掻き消される様にして悲鳴が鳴り響いている。

ここでそれを聞けるのは俺とマルチくらいだろうけど、明らかにヤリ過ぎているのが見なくても伝わって来る。


昨夜は俺がチャンスを奪ってしまったような物なので見ざる・言わざる・聞かざるの三猿の心で放置する事にしよう。

その後、彼らは本土に帰った後に再び飲み会を開く事を約束し合うと、出会った時よりも生き生きとした顔で別れて行った。

特に女性陣の一部は胸を強調して男共を魅了し、男達もそれに乗っかって視線を向けていた。

しかし忘れているようだが胸のサイズが大きくなった事で誰もブラジャーなどを着けていない。

そこに白いシャツとなれば言わなくても分かるだろう。

以前ならともかく、汗ばむ気温の中でそんな薄着で胸を突き出すと先端が強調されて服も透けて来る。

途中からその場を離れる者が男性陣に続出したのはそのためだ。

きっと俺達が去った後でマルチから知らされれば良い悲鳴が響き渡る事だろう。


そしてキャンプに戻って少しすると真赤な顔をしたCチームの大半が攻め込んで来た。


「アナタ達!何で言わないのよ!」

「お前等女同士でも分かるだろうが!てっきりサービスしてくれてるんだと思ってたんだよ!」

「そんな訳ないでしょ!」


ちなみに俺は予想が出来ていたのでこっそりと隠れて見物中だ。

こんな虚しい言い争いは犬どころかゴブリンにすら見向きもされないだろう。


「それと元凶であるアイツを何処に隠したの!1撃殴らないと気が済まないわ!」


そこは1撃ではなく1発の間違いでは無いだろうか。

どうやら怒った女性が手加減を忘れるのは今の時代だと一般常識となっているようだ。


「それならさっきまであそこに居たぞ!って、あの野郎!自分だけ逃げ出してやがる!」


そして言い争いをしながらも中学生以上は蹂躙されて行き、小学生の数人だけは難を逃れたが心に大きなトラウマを植え付けられる事となった。


「争いとは本当に何も生まないな。」

「見つけたわよ!」

「おっと見つかってしまったか。だがここはトンズラさせてもらおう。あばよ~とっちゃ~ん!」

「何よそれーーー!」


彼女達も追って来るのに必死で気付いていないけどスキルで『加速』を覚え瞬動が縮地へと進化している。

どうやら自業自得のくせに本気で怒っていたみたいだ。

それに走っても胸の揺れは少ないのでここに来る前にサラシか何かを作って巻いているのだろう。


その後は夕方まで元気に追い駆けっこを続け、彼女達の慣らし運転にも付き合ってやった。

それにしても、この機会に俺をも利用して教え子を鍛えるとはマルチもなかなかやるな。

あの様子なら今の最強チームが何処なのかも分かっただろうからAチームの連中も下手に手を出したりはしないだろう。


「そろそろゴールが見えてきたな。」


俺は走りながらCチームのキャンプ地へと誘導しており、もうじき到着する。

見るとかなり限界まで動いたので体力の限界を迎えて動きが鈍くなっているようだ。


「これで今日の訓練は終了だな。」

「いつか絶対に攻撃を届かせて見せるわ!」

「ハハハ!その時が来れば良いな。挑戦者はいつでも大歓迎だ。」


そして、そのままマルチに後を任せると彼女たちにボコボコにされたAチームのキャンプ地へと戻って行った。

そこは今も屍の様に動けない者達が散乱し呻き声を上げている。

まるで戦場跡地の様なその光景と情けなさに溜息を零すと一気に治療を終えて声を掛けた。


「こっびどくやられたな。」

「へへ!まあ、良い物を見れた料金と思えば安いもんだぜ。」

「怒ってないのか?さっきはそう見えたが。」

「あれ位は話に乗っておかないとな。それに同い年であの姿を見ようと思ったら金を積んでも無理だろ。やべえ・・・ちょっとマジになりそうだぜ。」


どうやら彼女達を見て惚れてしまった者が出ているようだ。

誰が誰とは分からないが、ササイは頻繁にイノウエと話をしていた。

他にも居るけど相手が高校生でも来年からは大学生なのでダンジョンに通う事を続けていれば卒業生でも会うのは難しくない。

それに今の時代だとお酒は20歳ではなく、満18歳からなので飲みに行くにしても誘い易い。


それにしても殴られてマジになるとはこの時代の奴等はマゾばかりなのか?

なんだか少し不安になって来るけど、そうでない連中も居るので下手な詮索はしないでおこう。


「それならまずはもっと強くならないとダメだな。」

「ああ、明日からも頼むぜ!」


そして痛みに目覚めてしまった・・・ではなく、恋に目覚めてしまった者達はリーダーとなったササイに同意する様に大きく頷いた。


「なら明日からはもっと厳しく行くからな。」

「へッ!魔物程度なら楽勝だぜ。」

「その意気だ。『ニヤリ』」


そして気合も充実し言質も取ったので今日は明日に備えて早めに休むように伝えておいた。

それに最後には各チームから代表を出して試合をさせるつもりだ。

恐らくは今の段階ならAチームからはササイが出て、Cからはイノウエが選ばれるだろう。

後はBチームだけど何人残っているかな。


そう思って見に行くとそこには誰も居なくなっていた。


「ミステリーか?」

「え、ええ。そうですね。ミステリーですね。」

「ちょっとヤリ過ぎたけど反省はしてないわ。」


すると俺が首を捻っている所にトワコとエヴァが現れた。

トワコは視線を合わせる気が無いのか、顔が横を向き遠くを見ている。

その横に居るエヴァは隠す気が無いのか腰に手を当てて胸を張り、堂々とした姿でヤリ過ぎた事を言って来た。


「まあ、その予想はしてた。それで、ちゃんと死体は回収できたのか?」

「それは大丈夫よ。」


そう言ってトワコがエヴァに視線を向けると異空間から次々に体の無い死体?頭部が姿を現す。

しかし、そうなると体は何処に行ったのだろうか。

それにどれも無傷なのは一つもなく、最低限の回収がされているだけだ。

これなら中級でどうにかなるけど、念の為に強化してある方を使用しよう。


「なら、その中から蘇生させる奴らを選んでくれ。」

「ん~、多分これと・・これ?。」


確かに見た感じで破損が酷いので判別が難しいのだろうけど、これを他の者達が見たら今夜は眠れなくなるかもしれない。

それを普通に手にして判別しているのだから流石にトワコは元獄卒だけはある。

そして60人程が選ばれて蘇生させるとその場にジャージとダンジョンで10階層未満で手に入る武器を残してその場から立ち去った。

あの時はタチバナが一方的に断って来たとは言っても誰も反対をしなかったのでコイツ等は形式的には俺の生徒ではない。

もし今後に頼まれる事があれば別だけど、赤の他人に手を貸すのはこれくらいで十分だ。


そして今日の所は明日に備える為に自分のシェルターへと入り眠りに着いた。

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