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297 訓練合宿 1日目 ④

現在この日本には大きく分けて3つの特殊な家系がある。


1つは天皇家であり、この日本では最大の権力と地位を有している。

特に神の存在が確定し、天皇の一族を神の子孫と公言してからは多くの人がその存在を敬う様になった。


2つ目が安倍家となり、その当主が天皇家を式神で襲撃するまでは天皇に次ぐ特権を有していた。

しかし、その事件がきっかけで怒りをかい、今まで与えられていた非合法な特権は全て剥奪されている。

同時に大量の不祥事や隠蔽されていた事件も明るみになり、酷い者によっては裁判だけで一生を終えるのではないかと言えるような状態になっていた。

そのため社会的な信頼も完全に失い、黄龍も組織として大きな改革の時期を迎えている。


そして、もう1つは一般市民には知名度は無くても一部の高官や権力者が無碍には出来ない家系と言うか血筋がある。

それは邪神を封印した事と各地で人々を救った伝説のある人物。

すなわちハルヤがミズメ達と愛し合う事で生まれた子孫たちだ。

彼らの多くは数代に渡り日本を裏から護って来た一族として一部の者からは特別に優遇されている。

しかし、その血筋には稀に大きな欠点を持つ者が生まれる事がある。

多くの者はハルヤの妻となった者の因子を受け継いで優秀であるため社会へと完全に溶け込む事が出来ている。

しかし稀に強い力はあれど怠け癖が強く次第に手の付けられなくなる者が生まれる事がある。

誰に似たのかそんな困った者達は社会では不適合者とされ、ハルヤが合宿を行っている島の生徒にも含まれていた。


しかも、ここに来て居る者達は素行が悪く、自尊心も強くて能力もそこそこある。

九十九学園はそういった者達を受け入れ更生させる受け皿ともなっているがその事実を知る者はこの島には居ない。

それに彼らは今も自分達の体に流れる血の意味も知らず、義務も果たさないままに自由と言う言葉の意味を履き違えて生きている。

その者達はこの島に来てすぐに今まで抑えていた自分を解き放ち始めていた。


「おい、お前等!教師が居ない様だから俺がリーダーをやってやるよ。」


そう言って声高に叫んだのは目付きが鋭く、不良を思わせる大学4年生の立花タチバナ 伊吹イブキと言う男だ。

すると集団のあちらこちらに散らばらせていた仲間たちから賛同するような声が上がっる。


「俺は賛成だ。」

「今は俺達しか居ないんだから誰かが変わりをしないとな。」


すると、その声に乗せられて他の者達も渋々ながら任せてみようと思い始めていた。

その裏にはこの状況でリーダーなど責任がありそうな仕事をしたくないというのが本音として含まれている。

しかし誰も反対意見を言わない事で同意としようとした直前に再び声が上がった。


「タチバナ。俺はお前に従う気はない。このまま別行動を取らせてもらう。」


そう言って前に出てきたのはタチバナと同じ大学4年生である敷道フドウ 健二ケンジだ。

普通そうな青年に見えるがここに居る時点で好青年であるかは怪しい。

本人は神に選ばれ過去の記憶があると公言しているが証明を行った事は一度もなく、彼を知る者からは口だけの男と言われている。


「またお前かフドウ。」

「またとは心外ですね。僕は素直に意見を述べただけですよ。それにアナタはこれからのプランはありますか?水はともかく食料は?夜を明かすためのテントは?何処に向かいますか?」

「そんなの誰だって持ってるだろうが!」


するとタチバナは面倒くさそうに顔を歪めるとフドウを怒鳴りつけた。

しかし怒鳴られたフドウは軽くヤレヤレと首を左右に振ると、誰でもすぐ分かる事実を口にした。


「皆さんの中には既に気付いている人も居ると思いますが食料やテントなどはアイテムボックスから消えています。そんな事も知らない者にこのまま付いて行っても大丈夫でしょうか。きっと何らかの方法で食料を手に入れても奪われるのがオチです。」

「何勝手な事を言ってやがる!」


タチバナは見た目通りに短気な性格をしており、怒りに任せてフドウの胸倉を掴むと拳を振り上げた。

するとフドウは簡単な挑発に乗って来た事を内心で笑い、手を広げて無防備をアピールして見せる。


「見てください。この男に付いて行けば今の僕の様に暴力を振るわれるのです。皆さんは誰に付いて行くのが最良かをよく考えてください。」

「テメー!」


しかし殴ってしまえば逆効果だと感じたタチバナは舌打ちをしてフドウから乱暴に手を離した。

すると今度は人の間を掻き分けて1人の少女が姿を現し周りへと声を掛ける。


「それなら私も別行動を取らせていただきます。異論はありませんね。」

「何だとテメー!」

「それは困りますね。これから更にチームを分けると非常時に対処できません。」


すると、さっきまで一触即発だったとは思えない様に2人は揃って少女の言葉を否定した。

しかし彼女はそんな意見は関係ないと2人の視線を跳ね退けると言葉を返した。


「この島には今のところ危険な存在は居ません。今回の合宿のシオリにも一定期間のサバイバルを終えて終了とあります。それにこのページの最後にそちらの方が言った事は事前に書いてありますよ。」


すると周りで聞いていた者達の多くがここに来る数日前に配られたシオリを開けて最後のページを確認する。

そしてそこには虫眼鏡でなければ見えない様な小さな文字で『食料とキャンプ道具の持ち込み禁止。持って来た者は没収する。』と確かに書いてある。


「おいおいマジかよ!」

「こんな所まで読まないわよ!」

「これを作った奴は心が捻くれてやがる!」


ちなみにこれを作ったのは学園だが、最後に追記をしたのはハルヤである。

そして、ここに連れてきたスタッフの中にはアイテムボックスの中の物を無断で取り出す事の出来る『盗み』のスキルを持つ者が紛れていた。

それによってここに居る者達から食料などを抜き取り今後のトラブルを避けるために全員を島から帰したのだ。

ただしハルヤがこの生徒の中に参加していたとすれば全てを奪う事は出来なかっただろう。

100年以上も掛けて集めた食料の量は既に気が遠くなる様な量となっており、ハルヤ自身も何がどんな物かは分からないだろう。

それらを全て抜き取るには途方もない時間が必要となる。


「そういうことなので私は自由にさせてもらいます。着いて来たい者を拒むつもりもありません。それでは互いに頑張りましょう。」


そして少女はその隙をついてその場から抜け出してしまうと来た道を戻り始めた。

それを追うのは先程まで様子を見守っていた女性や少女たちだ。

自主的にリーダーをやるつもりは無くても今までの様子から危機感を抱いていた者は多い。

彼女達は顔見知りや同級生たちと少し話し合うとこの機会を逃せないと判断して少女を追い掛けて行った。


「おい!お前等も行くのか!」

「あの子は小学生でしょ!危なくは無いと言ってたけど何が有るか分からないわ!」


そして大学生と思われるメンバーも揃って同じ言い訳をして集団から離れて行った。

それに多くの生徒が在籍している九十九学園では、成績が悪いという共通点だけで友達と言う訳では無い。

顔は知っていても知り合い以下の者が殆どで義理なども無いため小さな切っ掛けでも離れる事が出来る。

もしここでフドウが何も言わずに従っていれば彼女達もタイミングを失って1つの集団として行動していただろう。

2人のリーダー立候補者は互いに歪めた顔を見合わせると、この島の中央にある唯一の山の左右に分かれて海岸沿いに進んでいった。



そして彼らと別れた女性組は揃って先程まで歩いていた道を逆走していた。


「ねえ、もしかして戻るの?」

「その通りです。もしかするとさっきの波に流されたテントが回収できるかもしれません。それにあの場にはあの人が居ます。」

「あの人?さっき置いて来た子達の事?」

「厳密に言えばその内の1人です。皆さんの安全を確保するためにはあの人の傍が最適です。」


そして少女が誰の事を言っているか分からないまま彼女達60人はそのまま来た道を戻り海岸へと到着した。

しかし目的の人物は見つからず、もうじき夜になろうとしている。

そのため仕方なくその日は魔法で水を作りそれを飲んで喉を潤すと硬い地面を砂に変え毛布を敷いて眠る事にした。


「明日は海に行って魚でも取るしかないわね。」

「そうですね。きっとそこで合流できるでしょう。今日は星空を天井にして眠る事にします。」


そして彼らは目を閉じると明日に備えて眠りへと落ちて行った。

しかし、そこから2時間ほど経過すると彼女達は顔に落ちる冷たい感触によって目を覚ました。


「皆さん起きて下さい。」

「もしかして雨?」

「その通りです。これは激しくなりそうなので海岸から離れましょう。高潮が来るかもしれません。」

「分かったわ。みんな寝起きで大変だろうけどすぐに移動するわよ。」

「「「は~い・・・。」」」


そして彼女達は内心で後悔を浮かべながら海岸から離れ始めた。

しかし、しばらく行った先で人工物へと遭遇する事になり、これが彼女達にとっての最大の分水嶺ともなった。




「降って来たな。」


俺は外の気配を感じて目を覚まし窓から外を覗いてみた。

すると窓には雨粒がぶつかり、空には稲光が瞬いており、ちゃんとした部屋を作っておいたのは正解だった。

もともと雨は想定内だけど雷を避けるには乾いた家の中が最適で、もし外に居て雷が傍に落ちるとそれだけで感電してしまう。

俺には大した事は無いけどマコトやナゴミでは死んでしまうかもしれない。


「寝てる間に戻って来たのか・・・傍に60人くらい居るな。もしかしてマコト達を心配して戻って来たのか?」


気配から敵意は無いので戦闘になる事は無いだろう。

マコトはナゴミと一緒に寝ているだろうし、今日は色々とあったので疲れているはずだ。

それにナゴミにもかなりスキルを使わせたので本人は何も言わなかったけどかなり消耗している。

なので、このお客さんに関してはこちらで対応させてもらい、さっきの3人組みたいな奴等なら丁重にお帰り願えば良いだけだ。

俺はそう結論付けると扉を開けて雨と風が激しくなり始めた暗い外を歩いて行った。


「あそこに何かあります。」

「あれはもしかして昼に別れた子達が作ったのかもしれないわね。」

「でも私達だってあんなの作れないわよ。」

「現にあるのだから信じるしかないわ。」


俺が近寄るよりも先に彼女らはこちらのシェルターを見つけたみたいだ。

周囲で地面が盛り上がっているのはここだけなので稲光の間に発見するのは難しくないだろう。

それにしても女性ばかりだけど何かトラブルでもあったのだろうか?

何故か先頭に同い年位の少女が居るけど顔に覚えが全くない。

クラスが違っても遠足や運動会なので顔を合わせる機会は何度もあるので知らないはずは無いのだけど。


「こんな夜中に何をしに来たんだ?」

「やっと見つけました。」


すると先頭を歩く少女が一息ついて言葉を漏らした。

そこから考えると、どうやら俺に用があるのは間違いないらしい。


「ねえ、もしかしてあなたの言っていた頼りになる奴ってアイツの事なの!?」

「そうですが何か?」

「何かってアイツは学園でも常に最下位を独走してる役立たずなのよ!頼りになるはずないじゃない!」

「それはきっと擬態です。どうせ張り切り過ぎていつも測定器の計測できない力を発揮してるだけです。」

「擬態って・・・でもこのままじゃ嵐の中で夜を明かす事になりそうだわ。」

「話は終わったか?」


言っては何だけど雷鳴のせいで自然と声が大きくなっているのか、こちらまで丸聞こえだ。

それとも元々隠す気が無いのかもしれないけど女性のセリフは全員の共通認識なのだろう。

向けられている視線がいつもの様にあまり心地の良い物でないのがその証拠だ。

しかし横の少女だけは違い痛い所をズバズバ突いて来るので、もしかして俺の隠れファンか何かなのだろうか?


「言っとくけど俺の部屋は狭いからな。そんな大所帯で来られても入れないぞ。」

「なら一夜の宿を所望します。料金はこちらでどうですか?」


すると少女は何かを取り出すとこちらへと放り投げてきた。

それは何処から見ても一目で壊れていると分かり、古くてボロボロで細い穴まで開いている。

しかし、それを俺は受け取ると薄く笑みを浮かべ彼女たちに背中を向けた。


「分かった。但し個室無し、シャワー有りのトイレは共用だぞ。」

「この状況では至れり尽くせりですね。」


俺はそう言って周囲の地面をある程度平らにすると高さ1メートル程の基礎を作り、そこに6人が入れるくらいの部屋を作っていく。

形としては俺のとそんなには変わらないけど大きさは10倍くらいにはしてある。

そして外観を作ると窓を作り室内を整えていく。

まずは簡単な個室を作って上にタンクとシャワーを作りライトを設置する。

こんな無人島なので出来栄えとしてはこんな物だろう。

上のタンクに堪った水をお湯に変えれば暖かいシャワーが使えるはずだ。

ただ、いつもならベットを出したり絨毯を敷いたりするのだけど、ここには持ち込めない設定ににしてあるので作りはとても簡素だ。

虫なども居ないので後は床に雑魚寝してもらえば良いだろう。


そんなのを10室ほど作ると後は共用トイレを外に作っておく。

女性はトイレが近いというので30個ほどの個室を作っておけば良いだろう。

施設が無いので簡易トイレと一緒で下に落ちるだけだけど水を入れたバケツを置いておけば流すのに問題ない。

紙は没収する項目から外しておいたのでトイレットペーパーを置けば完成だ。


「さて、一夜の宿が出来たから使ってくれ。ちなみに明日からは別料金なのを忘れるなよ。」

「どうやら聞いていないみたいですね。」


そろそろ本降りになりそうだから急いで作ったのに、このままだと意味が無くなってしまう。

仕方ないので抱え上げてから適応に部屋へと放り込んでいき、最後には目の前に少女だけが残された。


「お前はどうするんだ?」

「何処に置いてくれますか?」

「・・・分かった。マルチは俺と一緒だな。でも来るなら事前に言っておいてくれ。まさかここで再会するとは思わなかったから驚いたぞ。」

「周りの人が狙ってやった事です。私は止めたのですが早く会いたい事には変わりなかったので了承しました。迷惑でしたか?」

「いや、俺も会えて嬉しいよ。」


そう言ってマルチに微笑むと一緒に自分の部屋へと入って行った。

これが高校生や大学生なら如何わしい想像をする者も居るかもしれないけど、俺達の見た目は互いに小学生だ。

だから窓から覗いてる奴等は変な期待を込めた目を向けない様に!


そして部屋に入るとまずは部屋を3倍ほどに広げて面積を確保する。

さっきまでは1人用で雨風が凌げて寝られれば良かったので部屋の広さは4畳ほどだった。

もちろんシャワーなんて付いていないので窓が無ければ箱や物入と言われてもおかしくなかっただろう。

でも今はマルチが訪ねて来たので広さと座る物くらいは置く事にした。


「まあ座ってくれ。」

「ソファーは・・・キャンプ道具とはかけ離れていますね。」

「そうだろ。なんでみんなソファーとかベットとか持ち込まないんだろうな。俺なんて家ごと持って来てるのに。」


なぜか俺といつも居るメンバー以外に聞くとそれは非常識だと言われる。

何時何処で何が必要になるか分からないのに最低限の寝袋や薪に食料しか持参しないとはこちらから言わせれば神経を疑ってしまう。

ただ今回は周りに合わせて俺も最低限の装備だけで生活をするつもりだ。


「それで今回の趣旨は彼らの鍛錬ですか?」

「そのつもりだ。あっちも丁度良い事に100人ちょっと位に別れてくれたからな。今夜はエクレたちに任せて俺が動くのは明日からだ。それでマルチは何でここに居るんだ?」


実の所を言うとマルチと会うのは邪神の所から回収して以来でクオナに問い合わせても検査中か調整中としか教えてもらえなかった。

精神生命体の寿命は長くて無限とも言えるらしく、シュリの話では彼らのちょっとは俺達の数年になるかもしれないと言っていたけどその予想は当たっていたと言える。

まさか5年も待たされることに成るとは思わなかったけど、肉体を作っていたのなら納得できる。


「簡単に言えば体の慣らしでしょうか。検査にかなりの時間が必要で肉体を作って入れてもらうのに1年以上も掛かってしまいました。その後は歩行の訓練に1年以上かけてしまい終わった時には3年の月日が流れてしまいました。」


なにせ400年以上も一緒に居た計算になるので邪神の影響を検査するためには時間が掛かったのだろう。

それに元がゴーグルに搭載されていたAIで歩いた事なんて一度もないから歩く訓練に時間が掛かったのも頷ける。。

人の体は無数のセンサーとバランサーの塊だというから機械の感覚から離れて肉体に成れるのにはかなりの苦労もあったはずだ。


「それは大変だったな。それでだ。」

「はい、何でしょうか?」

「そろそろ俺の上じゃなくてソファーに座ってくれないか。」


今まで普通にスルーしていたけどそろそろ外の様子がヤバイ。

マルチが俺の上に座ってから凄い嵐になっているので、これはトワコたちの嫉妬の嵐と言う奴だろう。

それに海から100メートルは離れていると言っても高低差はそんなに無いので高潮で浸水の恐れがある。

特に隣のドーム型シェルターはナゴミが作った物なので俺程には丈夫に作れていないため下手をしたら壊れてしまう可能性もある。


「仕方ありませんね。」


そしてマルチは俺から離れて対面のソファーへと腰を下ろしたおかげで外の嵐は次第に収まりを見せ始め、強めの台風くらいに弱まってくれた。

これなら死人が出る事は無いだろうけど念の為に他の奴等を確認してみる。

するとなんとか踏ん張っている様なのであれなら朝まで頑張れそうだ。

それに昼過ぎにボコボコにされた3人組も別れて合流している様でこの嵐で海に流されたと言う事もない。

きっと良い感じに先程の情報を流してくれるに違いない。


「それでマルチも今回の合宿に参加してるのか?」

「はい。その条件で中学生からは一緒に通えるという事なので受けました。実は戦闘面では色々と不安がありまして、出来れば彼女達と一緒に教えて頂ければ助かります。」

「知ってると思うけど俺の指導は厳しいぞ。」

「分かっています。」


とは言ってもクオナ達の技術で作られた体ならかなり高い性能を持っているだろう。

恐らくは歩く訓練と言うのも有り余る力の制御に苦労していたに違いないので、手加減が過ぎて負けない様に気を付けないといけない。


「なら明日に備えて今日は寝ろ。そのソファーならベットにもなるだろ。」

「一緒に寝るのは?」

「却下だ。」


それにマルチが変な事を言うから風は『ビュ~ビュ~』から『ゴーゴー』に変わり、雷も『ゴロゴロ~』から『ゴゴゴゴ!』となった。

雨は『ザ~ザ~』から『ドボー!』となっていて、他の連中が必死な顔で耐えているのが見なくても分かる。

こっちはそれを分かってやっているのか口元を抑えてコロコロと笑っているし、以前に比べて性格がかなり変わっているようだ。

俺はそんな事を思いながらマルチに毛布を投げ渡すと床で横になって眠りに着いた。

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