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294 訓練合宿 1日目 ①

俺は小学生最後の夏休みを迎えている。

そして俺が居るのは周囲を広大な海に囲まれ、何処までも続く様な青い空と照り付ける太陽の下にある無人島だ。

直径が数キロはある大きな島で数年前に海底火山が噴火してできた場所になる。

裏の事情を言えば日本政府からの依頼でシュリと一緒に作ったんだけど、ちょっと轟砲を強く撃ち過ぎて海底で大噴火を起こしてしまい予定よりも大きな島になってしまった。

大きい分には問題は無いと言う事だけど落ち着くまでに少し時間が掛かり、ようやく最近になって使える様になっている。


だからここには飲めるような水は存在せず、動物も住んでは居ない。

あるのは僅かな草と海を渡って来た海鳥くらいだ。

食べれる物と言えば海に魚などの海洋生物が生息しているくらいだけど、ここは出来たばかりの島で海底も荒れている。

魚は陸から流れて来る栄養で育ったプランクトンを食べて育つため大きな陸からそれなりに離れたこの島だと海と言えども生き物は少ない。

今後はシュリとダイチが追加の依頼を受けて色々と整えるらしいけど、それはもう少し後の話になる。

だからその前に使わせてもらおうとゲンさんが言い出してここに来ている。


それに言わなくても分かると思うけど、あの人の発案なので碌な用件でここに来てはいない。

今回ここに来た目的の1つは単純なもので、島には九十九学園の学生が300人ほど上陸している。

しかし彼らの目的はここの調査でも無ければ野外活動でもない。

学年は小学6年生・中学3年生・高校3年生・大学4年生の中から選ばれている、と言うか必然的に決定したと言うべきで簡単に言えば全員が落第生という奴だ。

誰もが能力を認められて推薦入学やスカウトによって学園に来た連中だけど成果を出せなければ進学、又は卒業が出来ない。

それなのにプライドは高いので努力を怠っていたらしく、今では周囲に追い抜かれた上に生活態度も悪いと来ている。


しかし九十九学園は実力至上主義なので普通に努力をすれば才能はあるので進学は容易い。

それすら怠った連中なので学園は今まで何もせずに容赦の欠片もなく切り捨てていた。

でも今はダンジョンが一般開放されているので学園としては1人でも多くの人材が欲しい。

なので今回の様に最後のチャンスを与える事となった訳だ。


そして退学や転校の通達は夏休み前にされるので全員がここに来た理由は分かっている。

だから学園に残るため、又は卒業するために全力で足掻いてくれるだろう。


ちなみに俺のクラスは全員が既に中学に上れる事が確定しているのでここに居る小学生はもう一つのクラスの奴等だけだ。

だから本音を言えば人を馬鹿にして上ではなく下を見ているからこうなるんだと言いたい。

まあ下に見ていた相手は俺なんだけど、学校行事で上級生の催し物を見ていれば自分が如何に弱いかが分かるはずだ。

それすら分からない連中がここには集まっているので今回はかなり苦労させられそうだと覚悟もしている。


それと他の皆に関して今回は自由行動でここには誰も連れて来ていない。

何故ならこの島は何も無くてめぼしい食べ物も期待できず、更にここへ来ている連中の相手をさせる訳にはいかないからだ。

今回は本当に厳しくして命懸けの訓練をしてもらうと決めている。

ただし、その中でもある意味で特別な3人だけはどうしてもと言う事で連れて来た。

それと重要な仕事をしてくれるスタッフを何人か貸してもらっており、そちらに関しては既に仕事を終えて本土に戻ってもらっている。

なのでここに居るのは俺を除けば前者の3人だけという事になる。


「トワコ、エクレ、エヴァ。3人にはどうしてもと言われたから連れて来たけどあまりやり過ぎるなよ。」

「分かってるわ。ここには教師としてではなくあなたの眷族として来ているのだから。」


だから心配なんだよな。

実はここに来ている奴らの多くは俺を馬鹿にして陰口を言っていた奴等だ。

学園だと教師としての役割があるので我慢をしていたみたいだけど、今はその枷から解放されている。

しかも今回は命懸けという事で死んでも良い様になっている。

蘇生薬は俺が持っているので頭さえ残っていれば後は何でも有と言っても良い。


「大丈夫。私はアズサ達に言われて監視に来てるだけ。この2人がハルヤに何かしようとしたら強制的に連れ帰る。」

「お前もだからな。」

「・・・・・・おかしい。私は助ける側。」


それならどうして返事をする前にそんな間が開いてるんだ。

コイツも要注意人物で他の2人よりは若干マシと言うレベルなので油断できない。

今はツクヨミたちと同じようにユカリの為に作った神棚に住んでいるんだけど何度ベッドに潜り込もうとした事か。

ミミが素早く気付いて起こしてくれるから良い様なものの、もし朝になって起こしに来たアズサ達がその光景を見れば金棒の刑にされるのは確実だ。

出来れば朝くらいは気分よく起きたいのでエクレとエヴァに関してはもう少し大人しくしてもらいたい。

ちなみにアズサ達も時々忍び込んで来るけどそれは小学生同士なので問題ない。


「エヴァも気を付けろよ。」

「ええ、大丈夫よ。私はエクレと一緒に嵐を起こせば良いのよね。」

「そうだな。でも嵐じゃなくて雨を降らせるんだぞ。」

「・・・・・・ええ、大丈夫よ。」


こっちもちゃんと返事はしてるけど釘を刺した時の間が凄く気になる

それに大丈夫という言葉がここまで軽く感じたのは初めてかもしれない。

ちなみにエヴァは何をやるにも感情に左右され易い。

一緒に住むようになってからは特に積極的で無理矢理に迫って来る事もしばしばある。

だから顔には出してないけど実の所を言うとエヴァが一番アイツ等に怒りを抱いている。

ちょっと力を入れ過ぎて島が半分になってしまうような嵐を起こしてもおかしくない。

その理由が俺の為だとしても相手から実害が及ぶまでは我慢してもらう。


なんやかんやでちょっとヤリ過ぎてしまいそうな3人だけど連れて来た理由としてガス抜きも兼ねている。

今回のこれで少しは気分がスッキリしてくれると良いのだけど、仕事の内容は楽になるどころかハードモードに格上げされそうだ。


そして釘を刺し終わると全員が仕方なしと言った感じの顔で溜息を吐いた。

ただエヴァは溜息に見せかけて竜巻を生み出そうとしていたので轟砲を使って妨害しておく。


『ドーーーン!』

「な、なんだ!何が起きた!」

「見て!高い水柱が立ってるわ!」

「に・・逃げろーーー!津波が来るぞーーー!!」

「「「ワーーー!」」」


ちょっと轟砲で逸らす予定が想定よりも強く放ち過ぎてしまった。

そのせいで50メートル近い水柱が上がり波となって学生たちの居る海岸へと襲い掛かる。

ただし、近かったので逃げるにしても時間が限られており、到達までに1分と掛からないだろう。

それに彼らの傍には今回の訓練で使う事になっている最低限の食料と備品が置いてある。

どちらも必要と言う訳ではなく、どちらかで言えば不要な物になる。


食料が欲しいなら海に出れば手に入るし水は魔法で出す事が出来る。

それに備品と言っても古いテントで廃棄寸前の物を持って来ているのでここで壊れるのが前提の物ばかりだ。

だから当初の計画では夜襲を掛けて壊してやろうと思っていたので、ここで無くしても構わない。

ただ海を汚してしまうので後でしっかりと回収しておかなければ問題になる可能性がある。

もし残骸が何処かに流れ着くと校章が付いているので罰金を払うだけでなく不法投棄の疑いなどから学園のイメージが悪くなってしまう。

そうなればトウコさんの頭に角が生えるのは確実なので、後になってどんな事をさせられるのか分かった物じゃない


そして生徒たちは津波から逃れるために上へと飛び上った。

その早さは年齢に比例し最初に安全圏へと上がったのは大学生の面々だ。

その次が高校生、中学生と続き、なんとかギリギリで小学生達も安全圏へと上がって来た。

しかし、そんな中で小学6年生には見えない2人が取り残されている。

互いに手を強く握り必死で上がって来ているけどあの幼さでは間に合わないだろう。


手を引いているのは男の子で身長や見た目からすると兄のようで、もう一方は妹と言ったところか。

2人とも何処となく顔つきが似ていて鑑定でも名字が一緒なので間違いはなく、学年は年齢からすると3年生と2年生辺りになる。

しかし俺はこの2人に関しては何も聞いておらず、本来ならこんな所に居ないはずなのでどうして紛れ込んでいるのだろうか?


俺は急いでタブレットを使い個人情報を確認すると『その他』という項目を発見した。

そこを開けるとあの2人の事が書いてあり何故参加しているかが書いてある。

2人の名前は兄が坂本サカモト マコトで妹が坂本サカモト 和心ナゴミとなっており、参加した理由は学費の免除のようだ。

何でも親が交通事故で死んでしまっただけでなく運の悪い事に破損が酷くて蘇生薬の効果が出ないと諦められたらしい。

恐らくは事故が酷すぎて頭部が粉砕し、その後で高温の火で燃えてしまったのだろう。

事故の内容も書いてあり可燃性の化学薬品を運搬中のトラックに巻き込まれた様だ。

相手の運転手は逃亡の末に逮捕されているけど彼らは両親を失っている。

もし九十九に通い続けるならかなりの大金が必要になり、それを2人分となるとかなり大変なのは間違いない。

しかも保険金を狙って親戚筋が引き取ると言って来ているらしく、その場合は九十九から他の普通の学校へと転校させられるようだ。

何処からツッコんだら良いのか分からない程の凄い状況だけど選択肢はいつも一つだ!


「それでどうするの?」

「あのままだと津波に呑まれて2人とも死ぬな。数秒程度だからそれまで待ってみよう。」

「絆を確かめる?」

「兄のマコトが妹を見捨てるなら即失格で帰ってもらう。」

「もし揃って死んだら?」

「その時はチャンスをくれてやるだけだ。」


俺はそう言ってニヤリと笑うと2人の最後を見届けた。

その結果、マコトは最後まで手を離さずにナゴミと一緒に津波へと呑まれて見えなくなった。

2人はそのまま海水の中を翻弄されマコトはナゴミを少しでも守ろうと必死に抱き締めている。

そして地面や岩にぶつかり体は削れ骨は砕けて内臓が破裂しても妹を守る意志だけは砕けていない。

結局は死んでしまったけど妹を守り切り目立った傷も無く引き潮に乗って海へと消えて行った。


「良いものが見れた。」

「それならその邪悪な笑い方は止めてあげたら。一応は教師としてあの子達が心配になって来るわ。」


そう言いながらもトワコも少し笑みを浮かべている。

エクレは表情が滅多に変わらないので分からないけど、エヴァは感心しているのが良くわかる。


「良し決めたぞ。他の奴等は好きにしてくれ。俺はあいつらの面倒を見る。」

「え、良いの!」

「ああ。」

「好きにしても良い?」

「ああ。」

「皆殺しにしても?」

「そこは生かさず殺さずじっくりと。加減はトワコに任せる。」

「任せなさい!地獄仕込みの苦しみを味合わせてあるわ!」


う~ん・・・ちょっと心配だけどまあ良いか。

死んだら生き返らせれば良いから灰になったとしても問題はない。

そして俺は海に飛び込むと2人の許へと向かって行った。

するとこの周辺を回遊していた鮫たちが既に血のニオイを嗅ぎ付けて集まり始めている。

俺は海の中を泳ぎながら鮫の群れを威圧して散らすと死体を回収して海上へと上がった。


「コイツもちゃんと兄をしてたんだな。まさかここで会えるとは思わなかったけどあの時も妹思いの良い奴ではあったからこの結果も当然か。」


コイツは以前の時にアケミとユウナの卒業式で絡んで来た奴で不良のリーダーをしていた男だ。

あの時も感心するくらいに打たれ強い奴だとは思っていたけど、これもある意味では才能かもしれない。

あの後に九十九へとスカウトされていたけど、これも歴史の修正力が働いた結果だろう。

俺は2人を抱えて島に戻ると蘇生薬を使って生き返らせた。

すると海水が無くなった事で他の奴等も下りて来たのでこちらへと向かって来る。

そして同級生の男子生徒が顔を歪めながら話し掛けて来た


「おい落ち零れ!ここで何をしてやがる。」

「何って俺も参加してるだけだ。」

「チ!どうせお前じゃあ訓練を生き残れずに途中でリタイアするのがオチだ。俺達の邪魔だから大人しくそいつらの面倒でも見てろ。」


そして、やって来た男子生徒は一方的に怒鳴ると島の奥の方へと走り出していった。

その様子に俺が誰か気付いたのか殆どの奴はこちらに冷たい目を向けて去って行く。

予想はしていたけど言質は取ったので好きにさせてもらおう。

但しアイツ等は気付いていないのかもしれないけど、この訓練合宿には開始日時は決まっていても終了日時は決まっていない。

それを決められるのは俺だけなのでアイツ等が何処まで耐えられるかに左右される。


「さてと。それじゃあ俺も行動に移すかな。おい起きろ!」


俺はマコトに水を掛けると快適な目覚めを提供してやる。

顔に掛けるのは流石に可愛そうなので海水で濡れた服を中心に洗う様に浴びせてやった。


「・・・うわーーー!」

「起きたな。」

「え!水!波!ナゴミは何処だ!」


すると起きてすぐに周りを見回しながら自分の事よりも妹の事を気にしている。

どうやら俺が思っていた以上に見所がある奴のようだ。


「ナゴミならそこに寝かせてある。起こすか運ぶか選べ。」

「な、ナゴミ!・・・い、生きてるよな。」

「厳密にいえば生き返っているだ。お前が弱いから2人揃って死んでたぞ。」

「そうか・・・。もしかしてお前が生き返らせてくれたのか?」

「ああ。」


するとマコトの顔が歪み拳を地面へと叩きつけた。

その途端に拳には血が滲み目からは悔しそうに涙が流れる。


「クソ!クソ!クソ!どうして俺は肝心な時に役に立てないんだ!こんなんじゃあナゴミを守れるはずがない!俺にもっと力があれば!!」


そして泣きながら空に向かって吠えると歯を食いしばって憤怒の表情を浮かべる。

すると色々とうるさくしたからかナゴミの方も意識を取り戻したみたいだ。


「う・・ううん。お兄ちゃん・・・何処に居るの?」

「ここに居るぞナゴミ!」


マコトはナゴミが起きて手を伸ばしたのを見てその手を握ると自分の顔へと触れさせる。

するとナゴミは目を閉じたまま触れた手を確認すると笑みを浮かべた。


「良かった。また1人で泣いてるのかと思った。」

「な、何を言ってるんだ俺は泣かないぞ。」

「うん。そうだね。」


そしてナゴミは起き上がるとマコトに支えられながら立ち上がった。

しかし今も目は閉じたままで空ける様子はなく、焦点も定まっていないようだ


「もしかして目が見えないのか?」

「ああ・・・ナゴミは生まれながらに目が見えない。薬や魔法も色々と試したけど効果は無かった。原因も不明なままで誰もが匙を投げて今じゃ誰も見てくれる奴が居ないんだ。」

「そうか。再確認させて悪いけど瞼を開けてみてくれないか。」


流石に死んで生き返った事は無いだろうから蘇生薬の効果で治っているかもしれない。

以前にはそれで効果が確認されているので可能性は十分にある。


「分かった。ナゴミ試してみてくれ。」

「うん。」


そしてマコトに促されたナゴミは目を開いて見せてくれた。

するとそこには殆ど白いだけの眼球があり、よく見ると瞳の輪郭が薄っすらとあるのが分かる。

それだけで答えを言わなくても結果はすぐに分かった。


「ダメみたいだな。」

「ごめんなさい。変な物を見せてしまって。」

「気にするな。眼球が無いのに比べれば綺麗なもんだ。」


きっと今までにその目を見て色々と言われてきたのだろう。

子供はそういう事には遠慮が無いし、目が見えなくても声の感じで相手が何を思っているかは何となく分かるものだ。

だから起きてから目を開けていたのは最初だけで、それからはずっと閉じていたのだろう。

それに目が見えなければステータスも確認が出来ない。

もし見る事が出来ればもう少し考えも変わるかもしれないんだけど、まずはそこからどうにかするしかなさそうだ。


「お前はそれで良いのか?」

「えーと・・・お兄ちゃんも居るし、パパやママも助けてくれるから。今はちょっと遠くへ行ってるけどここから帰ったらまた会えるってお兄ちゃんが言ってました。」


どうやらマコトはナゴミに色々と隠し事をしているようで嘘までついているようだ。

そしてマコトに目を向けると顔を歪めているのでこれでは目が見えれば一発で気付かれてしまう。

でも2人の年齢を考えればこれくらいが限界と言われても仕方がない。

しかし、もし帰って信頼している兄に嘘を言われた事に気付いたらどうするつもりなのだろうか。

そんな状況で真実を知ってしまうと、子供だろうと深く傷ついて誰も信用しなくなるかもしれない。


「マコト。」

「な、なんだ。」

「時間をやるから今から2人で話し合え。」

「な、何を・・・!」

「俺から言っても良いのか?お前らの両親は事故で・・・。」

「ま、待て!何でお前が知ってるんだ!?」

「お兄ちゃん?」

「・・・分かった少しだけ時間をくれ。」

「10分だ。それ以上掛かるようなら俺が出しゃばるからな。」


俺はそう言って少し離れるとマコトはナゴミを座らて真実を話し始めた。

しかしナゴミはなかなかそれを信じようとはせず、泣きながら首を横へと振って強い拒絶を示している。

そんなナゴミをマコトは強く抱きしめてやりながら一緒に泣くと俺へと視線を向けて来た。


「終ったぞ。」

「そんなに睨むな。帰ってから知られるよりも良いだろう。」

「ちくしょう!何なんだよお前は!俺達に何の恨みがあるんだ!」

「恨みなんてあるはずないだろ。それどころか俺はお前を気に入っているくらいだ。だからまずは希望だけは見せてやろう。」

「希望だと。」


俺はそう言って上級蘇生薬・改を取り出した。

それを2人の前に掲げると言葉を続ける。


「お前等が無事にこの合宿を乗り切れたらこの蘇生薬をくれてやろう。これなら体の一部があればどの部分からでも生き返らせる事が出来る。」

「な!そんな話は聞いた事が無いぞ!」

「一部の人間しか知らない秘密事項だ。でも信じる信じないかはお前達次第になる。どうだ?諦めた奇跡に縋ってみる気は無いか?」


するとマコトはチラリとナゴミへと視線を向けた。

その目は閉じられていても涙で目元が赤くなっているのはすぐに分かる。

それに2人にとってこの合宿を潜り抜けて学校に残る事はただの通過点でしかない。

どの道ここを突破する以外の選択肢は最初から残されていないのだから。


「分かった。お前が悪魔でも今は目的を達成するしかない。」

「私も頑張ります。」

「言っとくけど1人が突破しても渡す蘇生薬は1つだけだ。2つ欲しいなら2人とも突破して見せろ。」

「ク!コイツ、マジで悪魔じゃないのか!」

「わ、私も頑張るから一緒にがんばろ!」

「ああ、そうだな。」


そしてマコトとナゴミは共に手を握り合って決意を固めている。

しかし妹は完全な盲目な上に年齢的にも明らかに不利なので、ここは少しだけ手助けをしてやる事にした。

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