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263 野外活動 1日目 ②

小さなトラブルはあったけど俺達は無事にキャンプ場へと到着することが出来た。

そこは松の雑木林が広がるキャンプ場となっている。

ただ手入れが行き届いていないのか落ち葉が積もり少し寂れている感じだ。

そして管理棟には誰も居らず横には使われていない薪が積み上げられている。

その様子にここの常連であるらしいサトウ一家も首を傾げているようだ。


「おかしいわね。ここはいつもならもっと活気があるのに。」

「そうだな。管理の人も居ないみたいだし使っても良いのだろうか?」


通常は管理棟に行って使用料を払い、名簿に人数や名前を記載しなければならない。

もし無断で使えばここは私有地でもあるので不法侵入と言われ、警察に通報されたとしても文句は言えないだろう。

しかし実を言うとこの山のキャンプ場は何処もこんな感じになっている。

それどころか組織から避難指示が出ているので今この周辺に居るのは俺達だけのはずだ。

でも許可は事前に取ってあって利用料も振り込み済みなので、普通に使うのなら問題になる事はない。


「大丈夫ですよ。こちらで既に手続きは完了してますから。薪や施設は壊さなければ好きに使っても構わないそうです。」


俺はここの管理人から送られて来たメールを見せて納得してもらった。

それにあちらとしても精霊をどうにかしてもらわないとお客が呼べずに生活も出来ない。

これからが掻き入れ時なので状況が改善するなら施設ぐらい自由に使われても問題は無いのだろう。

それでも帰る時は来た時よりも綺麗にして帰るのが利用者のマナーという奴なので汚したまま帰るつもりは無いけど。


「俺はトイレ周りを確認して来ますから、コイズミさんはココノエ先生とシャワーが使えるか見て来てください。何かあったらすぐに呼んでくださいね。」

「分かったわ。それじゃあ行きましょうか。」


そう言ってココノエ先生はコイズミさんの手を取るとシャワーのある管理棟へと向かって行った。

今回はココノエ先生もやる気に満ちている様で席を隣にしたりと積極的に行動しているmで、今のあの人なら少しくらいなら大丈夫だろう。


そしてトイレに到着するとやっぱり使っていないからか臭いが酷い。

俺は既に経験から慣れているけど他の皆はそうはいかない。

俺は中に吹き込んでいる枯葉などのゴミを風で綺麗に追い出すと浄化を使って徹底的に綺麗にしておく。

今なら見た目を気にしなければ舐めても大丈夫だ。

ちなみにここは見た目は水洗だけど、裏に汲み取り式のタンクがあるので臭いはそこが原因たったようだ。

後は生活付与にある虫除けを付けたアイテムを幾つか置いておけば虫も入って来ないだろう。

灯りはちゃんと点く様なのでこれでここは大丈夫だ。


そして炊事場に関してはアズサ達が綺麗にしてくれている。

浄化を使えば傷はともかく汚れは消えてピカピカになる。

燃えカスなどの灰も無くなり、これで気分よく使う事が出来るだろう。


「アズサ。後はテントの設営場所の調整を頼む。」

「任せて。」


そして俺達は皆の所へと戻り、それぞれにテントを張る場所を決めて行く。


「私達はここだね。」

「大まかな事は俺達でしておくから仕上げを頼む。」

「そんなに強度は要らないよね。」

「そうだな。後の事も考えて土を固めた程度で良いんじゃないか。」


俺達が作っているのはテントを水平に立てる為の足場作りだ。

ここは剥き出しの地面にテントを立てるらしく、木の根があったり傾きがあったりしている。

寝る向きを考えれば苦にはならないけど、それでも制限は出て来る。

纏まってテントを立てるにはどうしても必要な作業なので大工のスキルのあるアズサの出番となる。

アズサならミリ以下の単位で平坦な地面を作る事が出来るのでその上にテントを張れば転がって行ったりはしない。

寝相が悪いのはどうにもならないけど、その場合は毛布で素巻きにしてやれば良いだろう。


「なんだかキャンプ場が作り変えられていくみたいだね。」

「そうね。でも快適になるなら良いんじゃない。」

「それもそうだな。」


そしてテントを立てる足場が出来る頃になるとココノエ先生たちも戻って来たので後はテントを立てるだけだ。

ただし殆どの者がテントを立てた経験がないので、ここでようやくキャンプ・インストラクターの出番と言う訳だ。

俺達のテントはドームテントなのでそんなには難しい作業ではない。

棒を繋いで伸ばした後にテントの角から差し込んで通してやれば完成となる。

少し面倒な所があるのでそれぞれに付いて貰ってコツや注意点などを教えてもらう。

そしてテントがドーム状に膨らむと上からカバーを掛けて各所にペグと言う杭を打ち込む。

これで風に飛ばされる心配も無くなり雨風を凌げるテントの完成だ。


そして、ここのキャンプ場は地面での直火は禁止なので焚火台を設置し、これならここでも薪を燃やす事が可能になる。

薪も自由に使ってくれても構わないと言われているので、通常なら一束500円する束を幾つか持って来ておく。

後はバーベキューの準備をしたりしていると日が落ち始め周囲が暗くなり始めた。

ここは西側に高い山があるので暗くなるのも普段より早く、山から冷たい風が下りてくるので夏でも夜になると20度を下回る事がある。

なので早めに設営を終わらせると夕飯の準備に入った。


「今日はカレーで良かったよな。」

「後は魚と茸に根野菜でちゃんちゃん焼き風ホイル蒸しを作るね。材料も一緒だからシチューも作ろうかな」

「鍋はこれを使えば良いよな。」

「そうだね。火は自前でするからここは任せて。」


ちなみにアズサはいつも30人前を自分で作るのでこれくらいの料理は問題なく行え、そこに他の皆が加われば十分な量の夕飯が作る事が出来る。

きっと皆を合わせてもアイコさん1人分くらいしか食べないだろう。


「それなら、皆で芋を洗って皮を剥きましょうね。」

「ねえ、あそこで凄い事している子が1人居るけどあれは良いの?」

「ウチの生徒を気にしちゃ負けよ。あの子はちょっと特別なの。」


まあ、普通に1人で30人前を作ろうとしている子供を見れば1児の母親としては気になるだろう。

しかも抱えているのが本人の胴回りよりも大きな深鍋なので猶更だ。

でもあの量だと全部合わせて50人前にはなりそうだ。

きっといつもと違って開放的な環境がアズサの胃袋を刺激してしまったに違いない。

それにいつもは何品目も作る所を3品目と少ないのも原因かもしれないな


「ねえ、あの子の手が見えないのだけど。」

「いつもの事だから大丈夫よ。それよりもこっちは普通の子達だから指示を出さないと進まないわ。」

「それもそうね。次は玉ネギを剥いて人参も洗いましょう。」

「「「は~い。」」」

「ああ、家の子は普通で良かったわ。」

「私も産むなら普通の子が良いわね。」


そんな会話がされている横で鍋に水が張られ、下からは魔法の炎が鍋を加熱し始める。

そこに素早く斬られた材料が投げ込まれると蓋が閉められ上から空気の圧力が掛けられる。

あれをすると圧力釜と同じで野菜に早く火が通り、短時間での料理を可能にしてくれる。

まさに見えざる工夫と言うしかないだろう。


「それとどうしてハルヤ君だけ料理をしてないの?」

「あの子は・・・その・・・料理に関して重大な欠陥があるの。だから何かあった時の救護班なのよ。」

「そうなのね。人は万能ではないって事が分かって安心したわ。。」

「痛!」


すると言っている傍から不器用なミキが包丁で指を切ってしまった。

それを見てココノエ先生はすぐさまこちらに手招きをしてくる。


「治療をお願いね。」

「任せてください。手足が無かろうと完全に治して見せますから。」

「指を切っただけで大げさね~。それよりも早くしてちょうだい。」

「お任せあれ。」


俺はミキの手を取るとそこに回復魔法をかけて傷を綺麗に消し去った。

皆には強化済みの下級と中級ポーション・改を渡してあるけど俺が傍に居れば節約できるからこの程度では使う必要が無い。

そして指の傷が消えたのでそっと手で包んで完了を伝えてやる。


「これで大丈夫だ。俺みたいに調理台まで斬り裂くなよ。」

「それが出来るのはアナタだけよ。」


そう言って頬を染めたミキは手を引いて料理を再開した。

もしかして以前に部室にある簡易キッチンを壊した事をまだ怒ってるのだろうか?

ちゃんと次の日までにアズサと一緒に新しいキチンを作って設置したのに・・・。


ちなみに生活付与を使ったコンロも設置してあって魔力を流せば電気やガスを使わずに加熱も出来る。

皆もある程度はレベルが上がって魔力と体力が上がっているので使い勝手は良い筈だけどな。


「ねえ、あの子って天然なの?」

「天然のジゴロなのよ。」


そして俺に呆れた視線を向けココノエ先生は溜息を吐き出し、それを見てカホさんは苦笑を零した。

なんだか不名誉な事を言われているけど、後でココノエ先生とは俺の認識についてじっくりと話し合う必要があるかもしれない。

しかし既に風評被害は始まっている様でカホさんは周りを見渡してからココノエ先生に哀れみの籠った視線を向けた。


「何でこの班に女の子が多いのか分かった気がするわ。あなたも苦労してるのね。」


イヤイヤ、それはどちらかと言えば俺に向けて言ってもらいたいんだけど。

少し前までドが付くヘタレだった先生に比べれば俺の方が何倍も頑張ってる気がする。

しかし、そんなココノエ先生も自分の生徒を落とすだけでは可哀相と感じたのか、微妙なフォローを入れてくれた。


「そうだけど良い所も多いみたいよ。学校全体では嫌われてるけど、それで自分から問題を起こしたりはしないしね。」

「そうなの!それはちょっと驚きね。もしかしてモテ過ぎちゃって妬みでもかってるの!?」

「それもあるけど色々規格外だから測定できない事も多くて成績が悪いって認識なのよ。」

「そういえば九十九ってそういった子を認めない風潮があるものね。でもその子達の方が心配かも。あの子暴れたりしないの?」

「それが殆ど暴れないの。それどころかあの子に目が集まるから他が目立たなくて今年は問題が極端に少ないくらいよ。」


ちなみに俺の事をボロボロに言われているけど、今では全学年から目の敵にされている。

ただ手を出して来れば後悔させてやるけど、そうでなければ好きに言わせておくつもりだ。


「それでこの状況なのね。」

「そういう事ね。あの子ハーレム王でも目指してるのかしら。」

「そうかもしれないわね。」

「そんな事有るか!俺はこう見えても普通に生きてるつもりだ。それにさっきから話が全部聞こえてるぞ!」

「あら、ごめんなさい。フフフフフ。」

「そんな事気にするハルヤ君ではないでしょ。フフフフフ。」


なんだかココノエ先生も最近は図太くなってきたと言うか逞しくなってきた。

原因は分からないけどやっぱり恋をすると人は変わるのかもしれない。


「・・・彼のアレは独り言なの?」

「良くあるんだけど心の声が洩れてるの。皆はもう慣れてるから気にしないであげて。」

「そう、能力は高いのに残念な子なのね。」

「ええ、残念な子なのよ。」


2人が小声で話してるけどきっと俺に気を使っているのだろう。

それにしても怪我をする人が多いけど、これだと料理が進まず周りが完全に暗くなってしまう。

やっぱりレベルを急成長させたのが良くなかったのかもしれない。

でもレベル30くらいならスキルを使わなければそうでもないはずで、俺もこの頃ならインスタントラーメンくらいは作れたはずだ。


それにここで俺が手伝ってもこの炊事場を壊すか自分の指が宙を舞うだけだ。

そうなれば俺の血で食材が汚れてしまうので皆の気分も良くないだろう。

せっかく死人が出るのを止めて気分良く初日を終わらせようとしているのだから、ここで台無しにする訳にはいかない。


「お兄ちゃん指切っちゃった。」

「大丈夫かアケミ?解毒・浄化・回復をしておくからな。」

「お兄さん。私もお願いします。」

「ユウナはいつもしっかり者なのにどうしたんだ?お前にも解毒・浄化・回復をしておくからな。」

「ハルヤ~指を火傷しちゃった。」

「おお、アズサも大丈夫か。傷跡が残っちゃいけないから神聖魔法を掛けておくからな。」


あれ?3人は回復魔法が使えるどころか、俺と同じで神聖魔法も使えるよな。

それに今は殆どのメンバーが再生を持ってるから俺って要らなくね?

要らない子だよね俺。


「お兄ちゃん。これってどうやって使うの。」

「ミミか。この包丁はこうやって・・・。」

「「「包丁を持たしちゃダメ~~~!」」」


すると皆が一斉に俺に飛び掛かり手足を拘束してくる。

俺はミミに包丁の使い方を教えているだけなのに酷い扱いだな。

ちょっと玉ネギの切り方を教えようと思っただけなのに。


「包丁を渡しなさい。」

「・・・はい。」


悪いなミミ。

俺は包丁の使い方1つ教えられないダメなお兄ちゃんなんだ。


「悪いけどそこに居る2人のお姉さんに教えてもらいなさい。」

「は~い。」


そして仕方なくココノエ先生とカホさんにミミを任せる事にした。

すると皆も俺から離れて行くと一息ついて包丁を動かす速度を加速させていく。

どうやらゆっくりやっていると俺が再び包丁を握るかもしれないと危機感に囚われたみたいだ。

その後は怪我人も無く無事に料理は完成を迎えた。

周囲には美味しそうな匂いが充満し料理の準備が整った事を知らせ、皆は焚火を囲んで椅子に座っている。


「それじゃあ頂こうか。」

「そうだね。ハルヤご飯頂戴。」

「ああ、少し待ってくれ。ココノエ先生お願いします。」

「・・・あれ?」

「「「あれ?」」」


そう言えばご飯は誰が炊いていたんだ?

アズサはカレー、シチュー、ちゃんちゃん焼き担当。

他の女性陣はカレー担当。

俺は回復担当で・・・。

他のメンバーは何をしていたんだ?


確かダイキとショウゴは女性陣に混ざってカレーを作ってたな。

ダイキに関しては俺と同じかと思っていたのに酷い裏切りだ。

しかも明らかにシュリやミキよりも手慣れた感じだった。

それなら残りの2人の大人な男性は何をしていたのか。

こっちは置いていた椅子を出して並べたり、薪を燃やして焚火を作っていた。

別にビール片手に遊んでいた訳では無いので問題ない。

しかし俺の鼻には確かにご飯の炊ける匂いがしていたはずだ。

そう考えているとここに居ないもう1人が戻って来た。


「ただいま。誰もご飯を炊いてなかったから、あっちの炊事場を使って作って来たわよ。」

「「「おお~!!」」」


ご飯を炊いてくれていたのはトワコ先生だったのか。

姿が見えないなと思っていれば自主的に周りの状況を確認して足りない物を作ってくれているとは。


「流石ですトワコ先生。」

「気にしないで。ちょっとしたついでだったから。」


そう言ってトワコ先生は巨大な五右衛門風呂の様な釜を取り出した。

人が簡単に入れそうな程に大きいけどこんなのを何処から持って来たのだろうか?


「地獄・・・。ゴホン、前の職場から借りておいて良かったわ。」


え?と言う事はあれって罪人(人間)を茹でていた釜ではなかろうか。

流石に地獄で炊き出しをする訳ないし、よく見ると側面に顔の様な模様が・・・。

これって確かシミュラクラ現象とかいう3つの点が近くにあると顔に見えるってやつだろ。

一応、何か呪いがあっちゃヤバいから鑑定と浄化をしておこう。


そして鑑定をするとそこには見事に『超呪われた地獄の大釜』と出ている。

その瞬間にやっぱり鑑定するんじゃなかったかなと後悔したのは秘密にしておく。

そして浄化を掛けると赤黒かった釜の下の方が少しだけ綺麗になった・・・気がする。

もしかしてこれって超ヤバイ物じゃないのか!?


しかし、さすが地獄で仕事をしていただけはあり、トワコ先生は褒めてもらいたそうに満面の笑みを浮かべてこちらを見て来る。

しかし、この極悪な呪いの掛かった釜で炊いた飯を皆に食べさせる訳にはいかない。

こうなればアズサ達3人にも力を借りて本気で浄化するしかなさそうだ。


「皆は悪いけど少しだけ待っていてくれ。」

「どうしたのハルヤ?」

「アズサとアケミとユウナは付いて来てくれ。ちょっと話がある。」


俺は釜を持って少し離れると地面に降ろしてからこれが呪われている事を説明する。

そして、その事に一早く反応したのはこの状況ではアズサしか居ないだろう。


「それなら私達の全力全開を見せるしかないんだね!」

「ああ、今回はそちらに特化したアズサが頼りだ。」

「私も頑張るよ!」

「今夜の為に英気を養わないとイケませんからね!」


そしてアケミとユウナもやる気十分なので、今夜から皆でパジャマパーティーを始めるのだろう。

夜更かしは良くないけど極論を言うとポーションさえ飲めば1週間は寝なくても遊ぶ事は可能だ。

そしてアズサは真剣な顔で手元に1本の杖を取り出した。

するとアケミとユウナも同じような見た目の杖を取り出して釜に向かって構える。

ちなみにこれはダンジョン最下層付近で倒してエルダーエントと名付けた巨大な樹木型魔物からドロップした木材をアズサが加工して作った杖だ。

魔力強化300パーセントを叩き出しているので装備者の魔力を3倍に高めてくれる。

普通の木なら1時間も掛けずに1本作るのに、その強度からアズサでも完成するのに3日も掛けた。

今の所は3本しか作っていないので、これを使うという事は釜にこびり付いている呪いの恐ろしさを肌で感じているのかもしれない。


「ホーリーサークル!」


そしてアズサが魔法を唱えると俺達の周囲が光の円に囲まれた。

地面から光が立ち上り、それだけで釜に浮かぶ顔が苦しむように動き始める。


「エンタイア・ブースト!」


すると今度は強化系の魔法によって俺達の魔力が数倍に跳ね上がった。

既に杖の効果と合わせれば3人の数値は1万に届こうかと言う程だ。


「私の勇者!力を見せなさい!」

「そこまでするのか!」


まさか杖の無い状態の俺に対して勇者の称号を発動させる事でカバーするとはどれだけ本気なんだ。


「希望の光!」


するとそのスキルによって俺達はアズサが持つ1つのスキルを同様に使用可能になった。

しかし使える様になったのは俺も見た事のないスキルだ。

効果は浄化と同じだけどこれはその上位の魔法か。


「皆行くよ!」

「「「「聖光!」」」」


これはあらゆる穢れを払う浄化系の最上位魔法と書いてある。

すなわち、これを使えば完全に邪神へと取り込まれた魂さえも救えるかもしれない。


「キギャーーーー!」


すると俺達の見ている前で地獄の大釜が悲鳴を上げ綺麗に浄化されて行く。

そして赤黒かった色は黒と白銀へと変わり、中にあったお米は真っ白な光を放つ程の輝きを見せた。


「浄化完了!誰も私のご飯を邪魔させないんだから!」


そう言って力強く拳を掲げると杖を収納して釜へと歩み寄った。

そしてそのまま軽々と持ち上げるとスキップでもしそうな足取りで皆の許へとで戻って行く。

どうやら呪いを危険視していたのは俺だけで、アズサにとってはご飯の邪魔者としか感じていなかったみたいだ。

やっぱり前世も今も、ご飯にかける情熱は変わらないと言うことだろう。


そして、ご飯の準備が出来たので皆で思い思いに料理を取り、焚火を囲んで食事が開始された。

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