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262 野外活動 1日目 ①

朝になって目を覚ますと部屋にミミは居なくなっていた。

もしかすると不貞腐れて他所へ行ってしまったのかもしれない。

しかし連れて行くにはそれなりに準備が必要なので流石に無理だ。

例えばテントを準備したり、食料を準備したり・・・なんだか連れて行っても問題ない気がしてきたな。


「ダメだダメ。ミミの為にも我儘を聞いてはいけない。」


俺は服を着替えると1階に降りて周囲を見回した。

そこには母さんが料理をしていて父さんが新聞を読んでいる。

アズサ達はこれからキャンプという事で今日はそれぞれの家で食べて集合する事にしているのでここには居ない。

なんだかこうして見ると3人だけの家は寂しく感じてしまう。


「父さんミミは?」

「ん?あ、ああ。さっき散歩に出かけたぞ。」

「そうなんだ。迷子にならないと良いけどな。」

「大丈夫よ。何かあったら連絡してくるから。」

「そうだよね。」


ミミもスマホで電話を掛けるくらいの事は既に出来る。

家でもゲームで遊んでいるし機械の操作も苦手ではない様だ。

そして並べられた料理を食べているとアズサが家にやって来た。


「おはようハルヤ。」

「おはようアズサ。今日からよろしくな。」

「フフ、そうだね。」


そして席に着いてお茶を飲んでいるとアケミとユウナもやって来た。


「おはようお兄ちゃん。」

「おはようございます。」

「おはよう。2人とも昨日はしっかりと眠れたか?」

「もちろんだよ。今日から色々と楽しい事がてんこ盛りなんだから。」

「そうです。今日は朝の3時に起きて準備もしていたので気合も十分です。」


それは朝と言っても良いのだろうかとも思うけど、何か買い忘れた物を思い出したのかもしれない。

そして、これで全員が揃ったのでそろそろ出かける頃合いになった。


「それなら出かけるか。」

「そうだね。」


しかし玄関に行くとそこには背負子に固定された50センチほどの葛籠が置いてある。

さっきまでは無かったのできっとユウナが言っていた準備をして来た物かもしれない。

しかも葛籠には『生物』と書いてあり、上の部分には竹筒が飛び出している。

俺は奇妙に感じて近寄ろうとすると3人が揃って背負子を持ち上げ、俺へと背負わせてしまった。

まあ生物と言うなら、もしかすると生きた魚でも入れているのかもしれない。


「これは背負わないとダメなのか?」

「うん。ゴメンね手間を増やしちゃって。」

「気にしなくても大丈夫だ。これくらいはどうって事ないから。」

「落とさない様にしてね。」

「大事な者が入っていますから。」


そしてアケミとユウナが揃って念を押して来るので慎重に背負い直して位置を調整しておく。

更に最終チェックもしてもらってから靴を履いて外へと向かって行った。

しかし体を傾けると葛籠の中で何かがゴロゴロしている気がする。

もし水槽なら大変なのでなるべく揺らさない様に移動しよう。


「それじゃあ行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

「しっかり面倒を見るんだぞ。」


あれ?いつも父さんは面倒を見てもらえって送り出すのに言い間違えたのか?

まあ結果は変わらないので指摘するほどの事も無いだろう。

それにミミが帰って来なかったので出発の挨拶が出来なかったのが心残りだ。

帰ったらヘソを曲げているかもしれないので何か美味しい物でも買って帰ろう。


そして俺達は目的地である学園へと向かって行った。

今日は物を背負っているので速度を落としていた為に10分ほどの時間が掛かり集合時間ギリギリの時刻になってしまった。

俺達は到着と同時に挨拶を済ませると準備していたバスへと乗り込んで行く。

これは学校が所有している物で他の車と同様に自動運転となっている。

20人程が乗れるサイズで今回の人数ならこれ1台で移動が可能だ。

移動時間は2時間ほどなので途中の道の駅などに寄ったりして昼過ぎに現地へと到着予定となっている。

そしてバスの中には今回同行する事になっているサトウ親子の姿もある。


「ソウマさんもなんとか来れたみたいですね。」

「ああ、若いのが仕事を変わってくれてな。ウチの奴等は子持ちを気遣ってくれて助かるぜ。」


最初はソウマさんがコイズミさんの仕事を代わりに請け負う事になっていたけど、同じ職場の若いインストラクターの人達が揃って手を挙げてくれたそうだ。

ただし、これを親切とだけ受け取れるかは微妙なところだけど、飽きさせない事だけは保障しておく。

それにコイズミさんの顧客は若くて美人が多い様なのでそれが目当ての可能性もある。

本人としては好きな人が居るので不本意かもしれないけど、周りから見ればモテ男にしか見えないだろう。


そういう事もあり今回はサトウ親子は3人揃って全員参加だ。

そして、その息子であるショウゴ少年も人見知りをしない性格なのか周りとは上手くやっている。

聞くのも話すのも上手な様でコミュ力が高そうなので、会うのは初めてだけど仲良くなれそうだ。


そして出発の時刻となり全員が揃っている事を確認してバスが出発すると、最初の目的地である高速のパーキングへと向かって行った。



『もうじき目的地へと到着します。』


すると30分ほどで目的地であるパーキングエリアへと到着した。

ここはユカリが家に来て少しした時に訪れた所であの時は皆でチェリーとカスタードクリームの乗ったパンを買って食べた記憶がある。

俺にとっては200年くらい前だけど、あの時の事はしっかりと覚えている。

同じ物をユカリからお土産として買って来て欲しい言われているので、ここで買う必要がある。

そして立ち上がろうとすると足元に置いていた葛籠が動き始めた。


『ガタガタガタ!』

「プハ~!」


すると蓋を押し開けて中から白い生物が姿を現したけど、それは家で留守番しているはずのミミで間違いない。

なんでここに居るのかと疑問には感じるけど、その答えは朝の3人がとった行動からすぐに思い至った。


「まさか3人もグルなのか?」

「え~と・・・ドッキリ大成功~!」

「「パチパチパチ~!」」


すると3人は何とか笑顔に見える顔で拍手をして誤魔化している。

まさかアズサ達までこんな行動を取るとは思っていなかったので完全に油断していた。

仕方なく俺はミミを抱き上げて肉球をプニプニしながら心を落ち着かせる。


「は~和む~。」

「ちょっとハルヤ!」


すると俺達の中で一番ズバッと意見を言うミキが声を掛けて来た。

やはり勝手に参加者を増やすのは良くなかった様だ。


「何であなただけがその子を独占してるのよ!私達にも撫でさせなさいよ!」

「あれ?皆はオッケーなのか?」

「きっと知らなかったのはハルヤさんだけかと。」

「が~~~ん!・・・マジか!?」


俺は言われて周りを見回すと笑いを堪えている奴らが多い事に気が付いた。

そして皆で揃って・・・。


「「「ドッキリ大成功!!」」」


と言われてしまったので、さっきのアズサのはこの為の前振りだったみたいだ。

確かに今のは完全に驚かされたのでサプライズドッキリは成功と言えるだろう。

それに皆が良いのなら俺に反対する理由はなく、一緒に来られて嬉しいと思っている。

きっと昨夜のミミを見てアズサ達が皆に確認を取ってくれたに違いない。


「皆ありがとうな。」

「ハハハ!ハルヤがしおらしいと気持ち悪いぜ!」

「それは無いだろ。」


そしてバスの中が笑いに包まれた所で、まずは買い物をする事になった。

その後にミミの魅惑の肉球を順番に堪能する事となり、俺達はバスを降りて施設内へと入って行った。


「アズサは買い過ぎに注意な。」

「・・・分かってるから大丈夫!」


これはあんまり分かってない時の返事だな。

まあ20人近く居るのだからアズサが買い占めなくても殆どのパンは消えてなくなるだろう。


ちなみに今回は学校の野外活動だけでなく、ダンジョン部の合宿としても申請してある。

だから部費が使えるので好きに買い物をしてもらっても構わない。

それにコイズミさんへの依頼料もそこから出す事が出来たので各御家庭への負担も0にする事が出来た。


「確かハルヤ君と言ったね。本当に私達の分も払ってもらっても良いのかい?」

「3人くらい増えても問題ありませんよ。それよりも欲しいパンを早く買わないと無くなりますよ。」


既にアズサが突撃した時点でそれぞれのパンの半数が消えて行っている。

きっとあれで遠慮しているんだろうけど、絶対に2回目も並んで余ってるパンを更に購入するつもりだ。

おかげで数人分のパン程度なら紛れ込ませる事が出来るので、きっとそれを狙っているのだろう。

日頃を知っているとあまりにもポジティブな考えだけど、この考えで突き通す事にした。


「部費は充実してますから気にしないでください。特にソウマさんには休暇を利用して無償で来てもらってますからその分くらいは気にせずに買ってください。」

「すまないな。それなら有難く買わせてもらう・・・と、本当に無くなりそうだ。お前達も早く買うぞ。」

「そうね。ショウゴも行きましょう。」

「はい!」


そして俺の分は放っておいてもアズサが買ってくれる・・・はずだ。

ちょっと心配なのでミルクフランスとクルミパンだけは確保しておいた。


そして、風の・・・違うな。

暴風の様に訪れた俺達は食パンからサンドイッチに至るまでのパンを買い占めて店を去って行った。

ただ少し心配になって奥を見てみると既に焼き上がったパンがトレイに乗せられて待機している。

しかし、ここで出せば再び買い占められると考えているのか今は出す気配がない。

あれなら俺達が居なくなれば店内は再びパンが溢れるだろう。


「それでは領収をお願いします。」

「分かりました。またのお越しをお待ちしています。」


買うのに20分ほど掛かってしまったけどレジはまるで戦場の様な賑わいでパンを包んで渡してくれた。

その殆どがアズサのアイテムボックスに消えて行ったのは見なかった事にして、それぞれにお目当ての商品は買えたみたいだ。


その後、俺達はバスに戻るとそれぞれに買ったパンを手にしてお腹を満たし、ミミも嬉しそうに分けてもらいながら肉球を差し出している。

何とも和やかなその光景にバスの中には穏やかな時間が流れた。


『もうじき次の目的地へと到着します。』


すると再びバスの中にアナウンスが流れ、目的地への到着を知らせてくれる。

そして、ここではこの近辺で取れる旬の果物を使ったジュースやジェラートが有名だ。

もちろん果物も売っているので目利きの出来るアズサが次々に籠に入れているのが見える。

そしにジュースやジェラートもそれなりに買っているので夜に焚火を囲んで食べるつもりだろう。


「なんだかあの子が食べ物を買う時は鬼気迫る物を感じるわね。」

「食べる事に真剣なだけですよ。」


そして同行しているカホさんに軽く笑い返しながら答え、俺は積まれた籠をレジへと運んで行く。

ついでに野菜などもあるので良い物を選んでもらい買って行った。


「それじゃあそろそろ行こうか。」

「そうだね。これで少しの間は野菜に困らないよ。」


あれだけ買って少しの間なのはアズサらしい言い方だ。

周りは既に他人のフリをしてバスに戻っているので早く戻らないといけない。

そして、その後も俺達は幾つか寄り道をすると山道へと入って行った。

ただし、ここは山道と言ってもそんなに悪い道ではない。


車幅も十分にあって大型バスでも余裕を持って擦違う事が出来る。

しかし最近はこういう道には困った者も現れる様になっていると聞いている。

ドンなのかと言うと、こういう道をレース場と勘違いして走り回る連中が居るそうだ。

別にマニュアルで運転する事は犯罪ではないのだけど、車を改造して安全装置を解除し暴走行為をするのは明確な犯罪になる。

俺も免許を取り直そうと教本を読んでみたけど、以前よりも難しくて細かなルールが設定されていた。


俺が免許を取った頃は酒気帯び運転で3年以下の懲役、または50万円以下の罰金。

酒酔い運転だと5年以下の懲役、または100万円以下の罰金だった。


しかし今では酒気帯び運転で5年以下の懲役、または100万円以下の罰金。

酒酔い運転だと15年以下の懲役、または300万円以下の罰金に格上げされていた。

自動運転で車が動くのだから酒を飲んで運転してしまえば自業自得だろう。

しかも今の車はアルコール検知器も内蔵されていて、酒を飲んで運転が出来ない様になっている。

それが出来るという事は違法改造をして安全装置を取り外している証拠なので言い逃れも出来ない。

それで人を死なせれば複数の殺人を犯したのと同じ扱いとなるようだ。


ハッキリ言って俺も自動運転でこうして移動していると免許を取る有効性をあまり感じられなくなっている。

事故を起こした時のリスクが高すぎて運転をする事が怖いくらいだ。

しかし、それでもこの手の違反者は必ず一定数は居る様らしく、そいつ等は制限時速を守ったりはしない。


「みんな気を付けろ。違法改造車が後ろから迫って来てる。」

「分かった。皆も急停車するかもしれないから気を付けるんだ。」


俺の言葉で皆も席に座り直し、トラブルが起きた時に備えて慎重に身構える。

この自動運転には緊急時に急停車するプログラムがされており、前方に急な割り込みをされるとセンサーが反応して車が停止する事がある。

それ以外だと後ろから急接近をされると後方のセンサーが反応して道に止まってやり過ごすために避けたりする。

そして、しばらくすると激しいモーター音を響かせながら2台の車が接近してくる。

その速度は100キロを超えているためバスは異常を検知すると、やり過ごすために近くの路肩へと車体を寄せた。

これだけ開いていれば車も十分に躱して行けるだろう。


しかし向かって来る車はそう考えていなかったみたいだ。

2台の内の1台は反対車線を爆走し、左の車線を走る車を追い抜こうとしている。

どうやらレースでもしている様で互いに1歩も譲る気はない様だ。

しかも右車線を走る車は車間を詰めているのでこのままではこのバスの右後方に激突してしまう。

それでも左の車は行けると確信があるのか速度を抑えるどころかアクセルを踏み込んで加速を始めた。

これではサイドミラーを破損する程度では終わらず、あのスピードで激突すれば双方に被害が出るだろう。


「皆は中に居ろ。馬鹿が突っ込んで来るつもりだ。」

「お願いねハルヤ。」

「魔法で吹き飛ばした方が早くない?」

「それだと私達が後で怒られてしまうかもしれませんよ。」


それもあって俺が出るんだけど、このまま何もしなければ数秒後には大惨事になる。

そのため衝突するであろうバスの後方へと飛び出すと軽く掌を振って向かって来る車を弾き飛ばした。


その瞬間にぶつかった車の運転手は俺の顔を見て驚愕し、反対の車の奴は俺の吹き飛ばした車に巻き込まれながら苦り切った表情を浮かべている。

どの道、バスに接触すれば結果は変わらないのにどうしてその事が分からないのだろうか?

しかし興奮するとそんな単純な事も分からなくなるのかもしれない。

それにこのままだと制御を失った2台の車は横転し、この先の崖に落ちて運転手は死ぬだろう。


「まあ、それも自業自得と言う事で放置するか。・・・とは言ってもそれがキャンプ初日だとするとよろしくないよな。」


俺は車に追い付くと下から車体を素手で突き刺して支えゆっくりと地面へと降ろしてやる。

中の奴はショックで気を失い鞭打ちや脱臼はしているけど、シートベルトによる内臓破裂や骨折などは見られない。

これが唯の不運な事故なら魔法で治してやるんだけど今回は治さずに警察に引き渡す事にした。


そして、この光景は既にバスに付いている車内カメラで撮影され、警察へ通報と送信が行われている。

なので俺達はこのまま行っても良いのだけど、これも野外活動としての一環として今回は警察が来るまでここで待つ事にした。

ついでに今後も似たような事が起きた時に適切な対処が出来るようにショートセミナーを開催する。


「それでは予定外の状況ですが、こういう時の対処法をコイズミさんから説明してもらいます。」

「それよりもハルヤ君は大丈夫なのかい?なんだか車を弾き飛ばした様に見えたんだけど。」

「俺の心配よりもさっそく救助を実演してください。活きの良い怪我人が出来たばかりですから。」

「君って意外と容赦ないんだね。」


それは既に周りも同意見なのかコイズミさんの言葉に頷きを返している。

それでも安全面での確認は必要なので皆を連れて車へと向かって行った。

ちなみに通りすがる車は自動制御によって滞りなく俺達の横を通過しているので渋滞は起きていない。

こういう時は自動制御だと運転手による確認作業を無くせるので流れがスムーズだ

そしてコイズミさんは車に近寄るとエンジンとなるモーターが止まっているかを確認して扉へと手を掛けた。


「閉まってるな。」

「それなら扉は開いていたという設定でお願いします。」


俺は扉に手を掛けると「バキ!」と取り外して路肩へと置いておく。

どうせボロボロだからこれくらいは誤差の範囲だろう。


「これで良いですね。」

「・・・もう何も驚かない事にするよ。」

「その方が良いですね。」


そして首が折れていないかの確認をしてシートベルトを外すと息や脈も確認して行く。

それを2台の運転手に行い、いったんは終了となった。


「怪我の状態が分からない時は下手に動かしてはダメだ。モーターがオーバーヒートした時の出火を防ぐために動いている時にはなるべく早く停止させて安全を確保しておく。但しバッテリーの爆発や漏電の恐れがある場合は生命を優先して運び出す事も必要だ。その為に扉はなるべく開けておいて可能ならシートベルトを外しておくように。」


その瞬間、今のは俺に対するフリかと思ってしまったけど拳を握ってグッと我慢する。

それに車が引火した時の実演をするのは流石に可哀そうだ。

だから周りもそんなに危ない奴を見る様な目を向けないで欲しい。

流石の俺もその辺の我慢はキッチリ出来てるよ。


そして少しすると警察のパトカーと救急車のサイレンが聞こえて来た。

これでやっとここから離れてキャンプ場に向かう事が出来そうだ。

そして到着と同時にそれぞれの車から警官と救急隊員が姿を現した。


「通報を受けて来ましたが酷い状況ですね。皆さんの方は大丈夫でしたか?」

「はい・・・問題はありませんよ。それよりもあちらの2人をよろしくお願いします。」


そう言ってコイズミさんは僅かに俺へと視線を向けたけど、そこは何も言わずに怪我人の方へと彼らを案内した。

それに無傷である俺よりも怪我人である彼らを優先するべきと判断したのだろう。


「分かりました。映像の記録でちょっと気になる所はありましたが暴走車の2人はしっかりと撮れていましたから大丈夫です。」


すると再び俺に周りから視線が向けられるけど、それは俺個人の問題なので皆には問題ない。

もしかすると俺の映像も残っているので事情聴取くらいは来るかもしれないけど、その時は話せば分かってくれるだろう。

武力に訴えるのはその後でも出来ることだ。


そして彼らは事故車の運転手を救急車に運び込むと車を収納し辺りを綺麗にしてから去って行った。

アイテムボックスがあれば車の移動も楽に終わってこんな山の中でも処理は簡単なようだ。

それにあの2人は警察に叱られるだけでは済まないだろう。

違法改造に暴走行為だけでなく、人と接触事故まで起こしているからな。

ただ、その人が車よりも丈夫なだけで人身事故には変わりない・・・はずだ。


「これで憂いなくキャンプを楽しめるな。」

「もしかしてあの時に彼らを助けたのってその為かい?」

「そうですよ。初日に死人が出たら気分が悪くなる人が出るかもしれないじゃないですか。」


俺は苦笑を浮かべながら答えると、呆れた顔のコイズミさんと一緒にバスへと戻って行った。

ちなみに彼らは俺達の野外活動へ協力してくれたお礼に怪我を半分ほど治してある。

残りの半分は今回の事を教訓にしてもらうためにしっかりと苦しんでもらおうと思う。

そしてバスはその後も安全に進んで行き、予定よりも少し遅れてキャンプ場へと到着を果たした。

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