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252 動物園

今日は待ちに待った遠足の日だ。

ただし前日に雨が降りそうとか言っていたので本気の咆哮で雲を消し飛ばし、気流を操作して晴天へと変えてある。


(天気予報のお姉さんごめんなさい。)


そして学校へと集合するとクラスごとにバスに乗り込んでいざ出発だ。

空を飛べばバスよりも早く到着するけど、この時間も楽しみの1つと言える。

皆で騒いで歌ってと1時間ほどの移動時間を満喫する。

ただ、ちょっと羽目を外し過ぎてアニソンを熱唱した時は半分ほどのクラスメートに引かれてしまった。

それ以外には有名なアニメの主題歌でもあったので共に熱唱している。

まあ、これも言うなれば黒歴史の1ページと言ったところなので、きっと数年後に話に出れば悶え苦しむ奴が何人か出るはずだ。


ちなみに俺が能力測定で歴代最下位を取った噂は既に学園中へと拡散しており、今では落第者や落ち零れと言って後ろ指を指されるような状態だ。

それに比べて俺以外のクラスメートは平和な日常を過ごしている。

多くの者が能力テストで大人も驚くような成績を叩き出して一目を置かれる様になった。

ただし学校とはある意味では閉鎖社会なのでこうして弱い者を虐げる傾向がある。

自身のストレスを自分よりも弱い者にぶつける事で解消し心のバランスを取っているのだ。

その捌け口にされた対象からすれば堪った物ではないだろうけど、周りにその自覚は無い。

ストレスが解消される快感に流され、現実が見えなくなっているのだ。


ちなみに今回の遠足は1年生~6年生の全学年がここに来ている。

そのクラス数も20を超え、総数で言えば600人以上となっているのでかなりの人数だ。


「それでは到着したので下りてください。」

「「「は~い!」」」


やっぱり動物園に来ると昔を思い出すと言うか、なんだかワクワクしてくる。

これはちょっと気合を入れ直して入園しないといけないな。


「それでは並んでください。中では自由に行動しても構いませんが動物を刺激したり虐めない様に。」

「「「は~い。」」」


人間が他の動物を虐めたりすれば動物虐待になり、今の時代ではかなり厳しい罰が下される。

それにアフリカからVIPなホワイトライオンが来日しているらしいのでそれに手を出せば国際問題だ。

いくら争いの少ない世界となったと言っても切っ掛けがあれば喧嘩になる事もある。

それをちゃんと理解できない九十九学生ではないだろう。


「それじゃあ行こうよハルヤ。」

「私達もお供します。」


そして、いつものメンバーで集まるとフリーパス券をスマホに入れてゲートを潜って行った。

しかし、その先では何故か阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっている。


「何だ今年の猿たちは!」

「なんでこんなにフンを投げて来るんだ!」


見ると既に何人もが正面にある猿山から飛来する汚物をくらって汚れてしまっている。

しかも統制された一斉投擲は逃げる隙間を塞ぎこちらの被害を甚大なものにしていた。


「少し待てば落ち着くだろ。」

「それは無理そう。」


そう言ってハルカは猿山の影に見える別の山を指差した。

しかし、それは岩山ではなく仄かに茶色い色が付いているので、どうやら汚物のストックは沢山あるようだ。


「まあ、俺達には関係ないけどな。」

「そうですね。これ位は防げないと九十九の生徒とは言えません。」


俺達は雨の様に降り注ぐ攻撃をシールドで防ぎながらのんびりと猿山を見学する。

足元が少し汚れているけどそちらは浄化で綺麗にしておいた。

すると猿たちの攻撃がこちらに集中したので他の生徒たちはそれに乗じてこの場を切り抜けて行った。

あとで通り掛かった臭い奴らはヒッソリと浄化で綺麗にしてやろう。


もちろん俺達のクラスメートもこの機に乗じて猿山をクリアしている。

でもこの状況だと高学年は全滅かもしれないな。


そして次に向かうとシマウマやダチョウなどが居る草食動物エリアだ。

広いとは言えないけど自由に歩き回る事が可能で準備されている餌などを美味しそうに食べている。

しかし俺達が姿を現すとその顔が一斉にこちらへと向けられた。


「なんだか警戒されてないか?」

「何でだろうね。」

「それなら1人ずつ試してみようか。」


ワラビの提案で俺達は可能性の低い順に1人ずつ視線から外れて行くと最後に残ったのが俺とアズサだ。

俺達は互いに2人で歩き途中から二手に分かれ距離を離していく。

するとその視線は1人へと集中し誰に向けられているのかが判明した。


「アズサ・・・。」

「え、ちょっと美味しそうだなって思っただけだよ。ダチョウの卵って大きいし、シマウマだって食べた事ないんだもん。ダチョウだって鳥だけど食い応えが最高じゃない?特に手羽とか大きいのが取れると思うよ。」


すると動物たちは危機感を感じたのか一斉に走り出すと反対側にある檻の端まで移動していった。

微妙に警戒から恐怖に変わっているのは気のせいではないだろう。


「このままここに居たら先生に怒られそうだから先に進もう。」

「「「うん。」」」

「待ってよ皆!誤解なの!」


この状況で誤解も無いだろう。

野生ではないだろうけど弱い立場にある獣たちは自分の身を守る為に危険には敏感だ。

ただ、家に帰ったら両方あるので渡しておこう。


そして歩いているとキリンエリアへと到着した。

どうやらここでは餌やりが出来る様で葉の付いた枝が配られている。

どのキリンもそれぞれに長い首と舌を伸ばして、どれにしようかと悩みながら食べているようだ。

これは草ソムリエである俺の出番ではなかろうか。

俺はアイテムボックスから毒の無いノーマルシリーズで一番美味しいと思える草を取り出し空いている端の方で手を伸ばしてみる。

するとキリンたちの顔がこちらへとグルっと向きを変え我先にと集まって来た。


「ハハハ!流石は俺の同類だな。この味が分かるのか。よしよし、沢山あるから喧嘩するなよ。」


なんだかアンドウさんの気持ちが少し分かった気がする。

こうして同じ趣味を持つ者を見つけると少しは贔屓したくなってくる。

そんな中でキリンを奪われた生徒たちは唖然としながらも陰で声を漏らした。


「アイツ落第者だろ。」

「もしかして日頃から雑草を食ってるのか。」

「人じゃなくて獣だったのか。」


ハハハ、半分以上は正解だな。

しかし、この旨さが分からないとは可哀相な奴らだ。

昔ミズメが雑草を食べようとして止めた事が何度もあったけど、今ではその気持ちが少し分かるぞ。


「ねえ、ハルヤ。そろそろ行かない。スタッフの人が睨んでるよ。」

「そうです。ここは指定された餌以外はあげてはいけないようですよ。」


そう言ってアズサがスタッフに視線を向け、アンが看板を指差して教えてくれる。

どうやら俺とした事が興奮してルール違反を犯してしまったらしい。

スタッフには軽く頭を下げて謝ると次の場所へと向かって行った。


そして次に現れたのは大きな象だ。

穏やかに子象と歩くその姿はとても微笑ましい。

しかし、見ていると象に向かって石を投げた者が現れた。

それが子象にあたり「パオ~~!」と鳴いて母親の影へと隠れて行く。

それを見て母象は怒りの声を上げると石を投げた奴へと突進していった。

象はもともと感情が豊かで子供思いだ。

野生では子象がいる母象は神経質なので近寄れば相手を問わずに攻撃してくる。

俺も何度かそういう場面に遭遇して襲われた記憶がある。


ただ、ここは広大なアフリカの大地ではなく堀に囲まれた動物園だ。

このままでは母象はそこに落ちてしまい大怪我をしてしまうだろう。

仕方ないので生徒の方は先生に任せて俺は母象を止めることにした。


「ふ~~~。」


俺は母象へ向けて柔らかめな咆哮を放ちその勢いを削いで足を止めてやる。

それを背後から受けた生徒たちは悲鳴を上げてはいるけど、そんな事は愛情溢れる母象を救うためなら大した事では無い。

すると堀の手前で勢いが止まり、危険に気付いた母象は少し下がって大きく声を上げる。

今も先程までの怒りは収まっていないのだろうけど、象は怒らせるとしつこいので落ち着くまでにはしばらく掛かりそうだ。

そう考えているとアズサが少し浮かんで視線を確保すると軽く手を振って魔法を使った。

どうやら聖女特有の精神を安定させる能力を使ったみたいだ。

母象は渋々と言った感じに背を向けると子象の所へと戻って行った。


「危なかったね。」

「そうだな。」


ちなみに石を投げた犯人はスサノオに捕まって厳しい説教を受けている。

この学校ではこういった時に体罰は無いけど威圧などのスキルを全身に浴びるので殴られるよりもきつそうだ。

でもやっているのがスサノオだとヤリ過ぎて相手が失神しないかが心配になる。


その後サイのエリアを無事に通り抜け水牛のエリアへと到着した。

そこには10頭ほどの水牛が水を飲んだり草を食べている。

何とも穏やかな光景に見えるけど、その目はチラチラとアズサへと向けられているようだ。

なるべく心を穏やかにして無心で過ぎ去ろうとしているのにこれなのだから、アズサは生まれながらに捕食者の血が流れているのかもしれない。


そしてチーターのコーナーも通り過ぎると次には小動物のエリアへと入った。

ここにはポニーや子山羊などと触れ合えるようになっている様だ。

ここでは山羊が大好きになってしまったルリコが一直線に駆け出して行く。


「山羊ヤギ山羊です!子山羊が居ます!可愛いです!」


するとあまり人気が無いのか寂しく柵の中で留守番している子山羊へと向かって行った。

それを見て横に居るスタッフがすぐさま声を掛ける。


「抱いてみますか?」

「抱きます!撫でます!」

「元気ですね。驚かせない様に気を付けてくださいね。」

「はい!」


そして山羊を抱っこしたルリコはベンチに腰を下ろして存分に触れ合いを堪能する。

するとその前にもう1匹の山羊が姿を現した。


「メ~。」

「ハルヤさん。ここでそんな事してると檻に入れられますよ。」

「・・・め~。」

「仕方ないですね~。」


そう言いながらルリコは俺の頭も嬉しそうに撫でてくれる。

何故かアンにも撫でられているけど両方がなかなかの撫で撫でスキルを持っている。

ルリコも以前よりも上達しているのでかなりの修行を積んで来たみたいだ。

それににここに来るのを俺の次に楽しみにしてたので、ここが狙いだったのだろう。


「あれ?もう一匹ヤギっていたっけ?」


ヤバイ!

俺は皆の影に隠れる様にサササっと動くと人の姿に戻って姿を現した。

危うく本当にこの動物園の山羊として飼育される所だった。


「あれ?気のせいか。」

「き、気のせいですよ。」

「そうですよね。ハハハハ!」

「ハハハ~・・・。」


ここは笑ってどうにかなって良かった。

危うくこの動物園の山羊が1頭増えて、学校から生徒が1人消えるところだった。

まあ、それはそれで3食昼寝付きの生活がおくれるので素敵かもしれない。


「ハルヤ!」

「お兄ちゃん!」

「お兄さん!」

「・・・はい。諦めて学生します。」

「「「宜しい。」」」


どうやら俺の山羊ライフは却下されたみたいだ。

その後なかなか満足しないルリコを宥めて他を周ると鳥エリアへとやって来た。

しかし他の皆の肩には鳥が止まるのにアズサにだけは1羽も止まらない。

ハルカに関しては何処に居たのか鷹を乗せている程だ。


「お前のそれってここの動物園の鳥じゃないだろ。」

「うん。空に飛んでたから見てたら下りて来たの。後で連れ帰って家で飼おうと思う。」

「そう言うのは許可とかが要るんじゃないのか?大きいし危ないだろ。」

「大丈夫。ウチは許可を取り易いから問題ない。」


家によってそんな事もあるんだな。

今みたいな世界になってから行政についてあまり詳しくは知らないのでそういう事もあるのだろう。


「それじゃあ、ちゃんと大人しくさせとかないとな。」

「この子は良い子だから大丈夫。それにお腹が膨れれば他を襲わない。」


そう言って鳥のササミを取り出して肩に乗っている鷹に与えている。

もしかするとハルカの家に行くと猛禽類に囲まれているのかもしれない。


そして俺達は同行者を1羽増やし、今日のメインへと向かって行った。

しかし目的地の前に到着するとそこには生徒が溢れ返り、左右上下で見れる場所が無いのでホワイトライオンは大人気みたいだ。

スキルを使えば俺だけは見る事が出来るけど皆で見れないのでは意味がない。

そう思っていると集まっている生徒たちの間で悲鳴にも似た声が上がった。


「わーーー!コイツ大きさが変わったぞ!」

「檻の間から出て来ちゃうわ!」

「誰かスタッフを呼んで来い!」

「こ、これ位なら俺達でどうにか出来ないか!」

「俺達は九十九学園に選ばれた生徒だぞ!」


聞いている感じでは何らかの手段でライオンが檻から出て来たみたいだ。

それに対して対処をしようとしているけど雰囲気があまり良くない。

選民意識がある上級生がVIPであるライオンに手を出そうとしている様で、既に魔法を唱えている者も居りこのままでは傷つけてしまう可能性がある。

すると彼らの足元を潜り抜けて白いフワフワな物体がこちらへと駆け寄って来た。


「お兄ちゃん見つけた~!」


そう言って駆け寄って来るのは俺がライオン時代に妹であった可愛いミミだ。

神使となってオニャンコポンの許に行ったはずなのに、どうしてここに居るのだろうか?

それ以前にVIPなライオンって言うのはミミの事だったようだ。


「どうしたんだミミ。オニャンコポンはどうした?」

「その神様から言われてここに来たの。何でもお兄ちゃんとの連絡役に成りなさいって。」


な!何だと!

あの神はどれだけ俺の信仰心を掻き立てるつもりなんだ。

もしかしてアフリカで信仰を失いつつあるのか。


「オニャンコポン様は元気だよ。でもこっちはやる事が無いからって言ってた。もしかしたらここに遊びに来るかも。」

「よし。その場合はしっかりと持て成してやろう。」

「うん。それとこれをお兄ちゃんに渡せば問題ないんだって。」


そう言ってミミは2枚の紙を出して俺に渡して来た。

1つは日本政府からでミミの在住許可証で、もう1つはアフリカ政府からの委任状だ。

どうやらミミは国賓の扱いでこの日本に来ているらしい。


「それなら家で生活できる様に父さん達に頼んでみるか。」

「おい、ちょっと待て落ち零れ!」


するとミミを捕まえようとしていた集団から声が掛かった。

しかし俺はちょうど電話に母さんが出た所なのでマナーとして少し待ってくれないか。

俺は手を突き出すと待ったをかけて母さんへとミミの説明をして許可を求める。


「リリーの事もあるけど良いわよ。どうせ神棚の中に部屋はいっぱい空いてるだろうから。」

「それもそうだね。帰ったら聞いてみるよ。」

「おい!いつまで待たせるんだ!」

「し~~~!」

「クソ!舐めやがって!」


すると気が短いのか手に持っていた火の魔法を投げつけて来る。

俺はそれを虫を叩く様に手で払い退けると通話を終了した。


「良かったなミミ。母さんがOKなら父さんは大丈夫だ。それじゃあ一緒に帰ろうな。」

「うん!」

「ねえハルヤ?ちょっと話が見えないんだけど。」

「ああ、そうだったな。」


俺は後ろの奴等の事を完全に忘れてアズサ達にミミの紹介を行った。

個人的な意見を言えば前世の記憶があったなら3人の妹で、アケミは今でも俺の魂の妹なのでミミとは姉妹確定となる。


「だから仲良くやってくれ。」

「分かったわ。これからよろしくねミミちゃん。」

「私もお姉ちゃんだね。」

「私にとっても妹みたいなものです。」

「よろしく~。大好きなのは山羊のミルクだよ。」


そして互いに自己紹介を済ませると次の目的地へと向かい始めた。

しかし、その歩みに立ちはだかる集団が俺達と言うか、俺の前に現れ道を塞いだ。


「待てと言うのが聞こえなかったのか!」

「聞こえなかった。それじゃあ。」

「待て!」


トラブルは控えて穏便に通り過ぎようとしているのに少年は俺の肩を掴んできた。

別に不快とは思わないけど道を妨げるなら容赦をするつもりはない。


「まだ何か用があるのか?ミミは家に連れて帰る事をアフリカ政府と日本政府が許可している。それ以上の何が必要なんだ?」

「お前の態度が気に入らねーんだよ!いつも女に囲まれやがって良い気になるな!どうせお前なんて落ち零れの脳無しだろうが!」

「ああ、そうだな。俺は落ち零れの脳無しだ。今も昔もそう思わない日は1日もない。だからその手を退けて今日という日を楽しめ。もしかすると明日にはこの平和が壊れているかもしれないんだぞ。」


俺の言葉をアズサ達は噛み締める様に聞いているだけで口出しはして来ない。

それを裏付けるだけの記憶がちゃんとあり、今の平和がどれだけ大事な事なのかを知っているからだ。

若干ワラビだけは首を傾げているけど分からないならそれでも良い。

しかし怒りの感情に任せて声を荒げている奴等にはこれが脅しに聞こえた様だ。


「テメーに俺達が負けるはずねーだろうが!」

「1度痛い目を見ないと分からないみたいだな!」

「教師が来ると思うなよ!この近くに誰も居ないのは分かってるんだからな!」


確かにこの近くには居ないだろうけど、居ないからと言って見ていない訳では無い。

それくらいが出来ないと神は名乗れないだろうけど、止める気も無さそうなので自由にしろという意味で受け取ることにした。


「なら、好きにかかって来い。10秒だけお前らに時間をやる。」

「何処まで舐めてやがるんだ!」

「10秒あればテメーみてーな奴はボロ雑巾に変えてやるよ!」


そして誰が見ても容赦を感じさせない上級生たちのリンチが始まった。

拳を振るい蹴りを放ち、触れた所に色が付くなら触っていない所を探す方が難しい程の滅多打ちをしている。

しかし如何せん所詮は15年も生きておらず命を賭けた事のない連中なので俺とは積み上げて来た物が違い過ぎる。


「あと5秒。」

「どうして倒れないんだ!」

「雑魚のくせに!雑魚のくせに!雑魚のくせにーーー!」

「あと4秒。」

「良いからアレを使え!」

「お前が悪いんだからな!」

「俺達に殴り倒されてればこんな事にはならなかったんだ!」

「あと3秒。」

「「「あああああーーー!」」」


生徒たちはナイフを取り出すとそれを両手で握って突きを放ってきた。

狙っているのは単純に刺し易い腹部のみのようで、俺はそれを何もせずに受け止めると秒読みを継続させる。


「あと2秒。」

「刺さらねえ!」

「コイツどうなってるんだ!」

「この!この!刺されーーー!」

「あと1秒。」

「こんな事があってたまるか!」

「俺達がこんな奴よりも弱い訳がない!」

「俺達は選ばれたんだ!」

「「「あの方に!」」」

「0。これでお終いだ。」


俺は正宗を取り出すと鞘の付いた状態で生徒たちを容赦なく蛸殴りにして行く。

手を打ってナイフを落とさせ足を打って地面へと膝を折らせる。

そして最後に顔を往復ビンタする様に何度か殴るとそのまま倒れるままに任せて放置した。


「お待たせ。それじゃあ行こうか。」

「うん。」

「それにしてもこの子手触りが良いね。」

「リリーが居ない内に家に上がり込んで大丈夫でしょうか?」

「山羊には劣るわね。」

「私はもっと良い毛並みを知っているぞ。」

「ハルヤも容赦ないわよね。」

「これって背中に乗れるかな。」


俺達はそれぞれに雑談をしながら次へと向かって行った。

誰も倒れている生徒には目もくれず回復すらしようとはしない。

アズサ達3人に関して言えば少し不機嫌そうにも見える。

そんな中でミミはその姿を大きくすると気を使ったのか皆を背中に乗せて歩き始めた。

ミミも今では大きくて立派に成長しているので小学生数人程度なら余裕で乗せられる。

俺はその横に並ぶと労いながら頭や耳の付け根を撫でてやりながら笑みを浮かべた。


「どうやら学園内にも浸食が始まってるみたいだな。これは早めにどうにかした方が良さそうだ。」


そして、その後は周りの度肝を抜きながら動物園を周り、楽しい遠足は終了となった。

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