243 3人の試験
さて、あれから月日は経過して5年の歳月が過ぎた。
皆もそれぞれに可愛く成長を果たして遊びに勉強にと奮闘している。
何の勉強かというともちろん資格試験に他ならない。
俺はアンドウさんがゴリ押しをしたので資格を取れたけど皆の場合は実技とペーパーテストを受けないといけかいからだ。
ただ3人ともが既にレベルが100を超えている事もあって、それ以外に関しては余裕で合格できるだろう。
なぜ壁を超えているのかはよく分からないけど生まれる前にはイザナミが管理する黄泉で400年は寝ていた事になる。
本人達は何も覚えていないそうだけど眠る前に何かをしていたのかも知れない。
そして明日は魔法実技の試験となるけど無事に乗り越えてくれるだろう。
「ご苦労様。お茶を淹れて来たよ。」
「ありがとうハルヤ。」
「ありがとうお兄ちゃん。」
「お兄さん、ありがとうございます。」
それに過去の記憶は無いけど未来の記憶はあるので3人とも以前と呼び方に変化は無い。
俺はお礼を言われながらアズサの横に腰を下ろすと追加で苺のショートケーキも皆の前に並べておく。
やっぱり頭を使う時には甘い物が一番だろう。
そして小休止を入れる事となり、勉強道具を横に寄せてペンの代わりにフォークを手にした。
「今日は何処で買って来たの?」
「先日テレビでしてた東京のお店だな。みんな食べたそうにしてただろ。」
「それならもしかしてあれも買って来てくれたの!?お兄ちゃん!」
「ああ。一揃え買って来たよ。食べたい時には言ってくれな。」
アレと言うのは同じ番組でしていたパンの事だ。
石窯焼きの美味しそうなパンだったので特にアケミが食べたそうに眺めていた。
なので朝の内に一飛びして並んで買って来た物だ。
今の時代は色々な所に美味しい物があるのでより取り見取りだけど、やっぱり遠い所はなかなか行き難い。
たとえ車が自動運転で言えば何処にでも連れて行ってくれると言っても移動時間を考えれば限界がある。
ちなみに飛行機も自動操縦で空港間を行き来しているけど、そこも以前と同様の場所にしかない。
だから今の所は空を移動できない皆の代わりに俺が買い出しを担当しているという訳だ。
それ以外にも実技指導教官として各地を周っているのでそのついでに買って来る事も多い。
皆が明日の試験に合格したら空の散歩を計画しても良いかもしれない
既に飛翔を覚えているので日帰りで遠出も出来るだろう。
その後、ケーキを食べ終えて少しの間を雑談に使うと再び勉強が始まった。
そして明日の実技に備えて今日は早めに終えるとそれぞれの家に帰宅して行った。
次の日の朝になると俺達は揃って車に乗り込み会場へと向かって行った。
そこは俺も以前に実技試験を受けた所で今日も観客は満員だ。
そして受験者たちは貸し出された服に袖を通し、個人ごとに持参した杖や指輪などを持って来ている。
それらの装備は魔法の効果を高めてくれるので試験では必須と言える物だ。
専門の店も全国に幾つもあって組織や企業が経営をしている。
ちなみに一番人気の店は組織が経営する所で、2番手が僅差で九十九商会だ。
そのためトウコさんはいつかはその順位をひっくり返してやろうと虎視眈々と機会を狙っている。
アズサ達が持っているのは九十九商会で購入したと言うか、そこから送られて来た物だ。
宣伝効果を狙っているのか目立つ様にロゴまで張られていて周りの視線を集めている。
なにせロゴが付いているという事は3人のスポンサーが何処なのかを教えている様なものだ。
ただ、ここに居る人達も、まさか曾孫とその友達だとは誰も思わないだろう。
それに九十九商会は世界的にもトップクラスの企業として成長している。
恐らくはそれ程の企業がバックで支援してくれている者はこの会場全体でも居ないかもしれない。
そして俺が何処にいるかと言えば今日はスタッフとしてここに来ている。
主な仕事は標的を作ったり受験者を誘導させたりで、その他には怪我をした時の治療も担当する事になっている。
・・・あれ?おかしいな?
他の皆は1人一役だったはずだけど、どうして俺だけこんなに仕事を振られてるんだ?
「すみません。私は何処に行けば良いですか?」
「あ、君はあそこね。」
「すみません。転んで擦りむいちゃって。」
「はいはい。これで良いかな。怪我をしたらまたおいで。」
「お~い。次の標的を頼む!」
「はいはい、ただいま~。」
なんだか俺だけやけに忙しくないか?
しかもこれってボランティアだからタダ働きなんだよな。
そういえば今日の責任者は誰なのだろうか?
確かスケジュール表に名前が書いてあったはずだ。
「う~んと、確か一番最初のページだったな。・・・アンドウ。そうかアンドウさんだったのか。それでこんなに俺だけ忙しいんだな。やっと納得できたよ。ハハハのハ~!」
んな訳ねーだろ!
これで納得してたらブラック企業も真っ青だよ!
俺は心のアンドウさんを呪いながら来るもの拒まずで仕事に精を出している。
「あ、お兄ちゃん頑張ってる。」
「大丈夫ですか?1人だけ大変そうですけど?」
すると俺の傍にアケミとユウナがやって来て励ましてくれる。
傍から見たらかなり年の離れた兄妹に見えるかもしれないけど今ではちゃんと同い年だ。
だから一部の奴は犯罪者を見る様な目は止めろ。
しかし2人に励まされてやる気が漲って来たぞ。
「大丈夫だよ。これくらいはどおって事ないからな。」
俺は標的になっている土人形を次々に作り出し、怪我人を治療して行く。
これくらいは良いのだけど案内スタッフとしてはここで話し込む訳にはいかない。
「それじゃあ2人も頑張れよ。」
「「は~い。」」
そして迷っている人を案内すると周囲を見回して他に仕事が無いかを確認する。
しかし、それにしても魔法実技はやる事が多い。
空歩や水上歩行に加えて火、風、土、水の基本である4属性を標的に当てたりしている。
威力は機械が測定してくれているみたいだけど、あれはきっと異世界製だろう。
そう言えばアズサは何処にいるんだろうか。
少し気になって見回すと今は空歩で走っている最中のようだ。
既にかなり高くまで上がっているようで普通の人なら双眼鏡が要りそうな所を走っている。
どうやらもうじき終わって下りて来そうだけど周りの観客たちはハラハラと心配しながら見守っているようだ。
まあ、可愛い女の子があんなに高くまで上がってしまっては仕方が無いだろう。
今日は俺の時と同様に何人か転落者も居たので余計にそう感じてもおかしくない。
ただ、その人たちは素早く俺の方で回収したので怪我も無くて既に別の試験を受けている。
しかし女性を受け止めた時に鋭い3つの視線を感じたので試験が終わってからフォローが必要かもしれない。
そして、そうこうしていると走り終わった様で上から会場内へとゆっくりと降りて来る。
その姿は羽があればまさに天使と言っても過言ではない。
その姿に会場に居る人たちも見とれて一時の静寂が訪れている。
そしてアズサはそのまま俺の腕に収まるとニコリと微笑んだ。
「ただいま。」
「お帰り。これでみんなと空の散歩が出来そうだ。」
「そうだね。まずは何を食べに行こうかな。」
もはや行った先で何かを食べる事が決まっているようだ。
それに関しては良いとしてそろそろ下ろさないと背後から向けられている2つの視線が痛い。
この様子だと帰るまでは持ちそうにはないだろう。
俺はアズサを下ろすと周囲を見回し、試験の進み具合を確認した。
するとどうやらアズサのテストが最後だったみたいで既に片付けが行われている。
これだと後は最後に残っている実戦形式のイベントだけのはずだ。
「俺はあっちを手伝って来るからこの後も頑張ってな。」
「うん!ハルヤも頑張ってね。」
そして俺は片付けを手伝ってから今日も1人で会場の上空へと来ている。
実は今日の仕事はもう一つあって、それがゲストとして魔法の的になる事だ。
俺の防御力あっての企画なので滅多に見る事が出来ない。
しかも今日はこの5年の月日によって、ようやく半獣化が進化したのでそれを披露する時でもある。
そういう訳で実を言うとちょっと気合が入っていたりするのだ。
「さあ、始めようか。これが俺の獣化だ!」
俺は昔の様に50メートル級の鯨へと姿を変えるとその巨体で会場へと降りて行った。
そして、その巨大な影に気が付いた観客たちは俺を指差して大歓声を上げる。
どうやらこの姿は予想以上にインパクトがあったみたいだ。
「ボエ~~~!」
「アレを見て!黒鯨が現れたわ!」
「伝説は本当だったのか!」
「でもあれは300年以上昔の事だぞ!」
いえいえ、ちゃんと中身は本物の黒鯨さんですよ。
当時の体は日本海溝に沈んでいるけどね。
でも少し前に深海調査が行われるとテレビでしていたので骨くらいは見つかるかもしれないな。
そして何も知らされていない受検者たちは空を見上げたままで呆然としている。
ただし、それは一般の参加者であってその中の3名は既に動き始めていた。
「皆!イベントの始まりだよ。全力で攻撃してあの鯨をやっつけよう!」
「そ、そうよ。今回のイベントは私達の力を披露する場なんだから相手から攻撃は無いって言ってたわ。」
「よし!それなら皆に良い所を見せてやろうぜ!」
そしてアズサの掛け声で周りは次第に冷静な判断を取り戻して魔法を放ち始めた。
きっとこれはアズサの持つ聖女の称号にある効果の1つだろう。
確か『導く者』と言って仲間に勇気を与える事が出来る。
更に仲間全体の能力を向上させる『エンタイア・ブースト』を使ったみたいだ。
あれは任意のステータスを数倍まで引き上げる事が出来るので、きっと今は魔力を上昇させているはずだ。
・・・待てよ、そうなるともしかして。
「浮気者のお兄ちゃん!」
「私達の愛の鞭をくらってください!」
「「ダブル・ロスト・インフェルノーーー!」」
「ぼえ~~~!!!(ちょっと待って~~~!!!)」
2人の攻撃なので受けてはあげたいけど、これは直撃するとかなりヤバい。
今の俺でも確実に体の半分は無くなってしまう。
だからと言って魔法での相殺も不可能だ。
なにせ今の2人の魔力は俺の倍以上はあって更に合体魔法を使っている。
・・・仕方ない。
これはちょっとアズサへとSOSを送ろう。
『チラ!チラ!』
「ウフフ、仕方がないな~。」
すると俺の体に力が漲って来るので、これは勇者の称号が起動した証だ。
しかし、それでも俺がこれに耐えられるかは微妙な所と言えるだろう。
まさかこんな所でピンチを迎えるとは思わなかったけど、俺の愛する3人は半端ないな。
ただし、それはこの姿だったらの話だ。
俺は着弾と同時に眩しい光を放つ魔法の影に隠れて一気に体を小さくしてイルカと同じ位まで小さくなる。
そして、それにより上昇したステータスによって魔法を耐えきり、光が消える直前に水の魔法を使って水蒸気爆発を起こさせた。
これによって炸裂の演出を追加し、視界を塞ぐとその間に元のサイズへと戻る。
「ボエ~~~!」
「あ~狡いお兄ちゃん!」
「大人気ないですよ!」
それはこっちのセリフだよ2人とも。
アケミとユウナは既に以前の年齢である16歳と今回の成長に使った5年で実質は21歳だ。
見た目に騙されるかもしれないけどお兄ちゃんはちゃんと数えてるからね。
「ボエッ!ボエッ!ボエッ!(フッフッフッ!)」
それに今のやり方なら勇者の称号が無くても耐える事は出来そうだ。
しかし、油断は禁物なので注意しておこう。
それにしても魔法で水蒸気を吹き飛ばして再び姿を現したというのになかなか次の攻撃が来ないのでどうしたんだろうか。
観客席もやけに静まり返ってるのでどうしたのかと思って見てみるとそこには俺を見上げて驚く事しか出来なくなっている観客の顔が並んでいた。
どうやら、さっきの攻撃はインパクトがあり過ぎたみたいだ。
俺としてもちょっとヤバかったけど打ち上げ花火くらいだと思っていた。
このままだとイベントが進まないのでどうすれば良いだろうか?
仕方ないので俺は体全体を使ったジェスチャーで3人へと会話を試みる。
『どうするのこれ?』
するとアケミとユウナがハンドサインで答えてくれた。
流石2人は俺の事を良く分かってくれている。
何々・・・『お兄ちゃんが悪いと思う。』と『ここから盛り上げるのがプロのエキストラです。』か。
すなわち2人とも俺に丸投げって事だな。
何時もアンドウさんに丸投げしてるけど何だかあの人の気持ちが分かった気がする。
次からはもう少し優しく丸投げしてあげよう。
しかし、こうなっては最後の手段だ。
まずは皆に意識を取り戻してもらおう。
(エコーロケーション最小出力。)
「ボエ~~~。」
「うわ!うるせー!」
「凄い声!」
するとようやく呆けていた観客たちも意識を取り戻したのに俺の姿に恐怖を感じ始めている。
そこかしこから聞こえて来る言葉はネガティブなものばかりだ。
「伝説通りあれは化物だ・・・。」
「俺達はこのままアレに喰われちまう・・・。」
「恐れを抱いちゃダメ!勇気を出して立ち向かうの!」
するとここで再び聖女であるアズサが動いた。
杖を掲げ体から光を放つと会場の視線がそちらに引き付けられるように向かって行く。
そして自らの意思で髪を纏めているリボンを外すと静まり返った会場に良く通る声を響かせた。
これも聖女の効果の1つで『希望の光』という特殊なスキルで、これを受けた者は一時的に心から聖女を信頼する様になる。
しかもこれの効果はそれだけじゃない。
「さあ、皆でアレをやっつけましょう。私に続いて詠唱してください。」
すると全員が掌を俺に向け先程までとは違う強い意志を持った瞳を向けて来る。
それは子供から老人にいたるまで違いはなく、疑いすら抱いていない。
「業火よ!我が眼前に敵を焼き尽くせ!」
「「「業火よ!我が眼前に敵を焼き尽くせ!」」」
「ファイヤーボール!」
「「「ファイヤーボール!」」」
するとその瞬間に俺に向かい数万の火球が向かって来る。
威力自体は大した事が無いけど目に見える光景はすさまじく、会場の空を真っ赤な炎が燃え広がった。
これが聖女が使う事の出来る『希望の光』のもう1つの効果だ。
俺の付与は物にしか出来ないけどアズサのこれは持っているスキルの1つを一時的に他人が使えるように出来る。
だから今回は攻撃魔法のスキルを使えるようにしたのだろう。
更に視線を集めた所でリボンを取れば人だと目が離せなくなって効果が上がる。
状態としては是空と同じでカリスマ性が上がると言えば分かるだろうか。
さて、この弾幕に乗じて俺は退散させてもらおう。
俺は吹き上がる炎に沿って上昇すると体を縮めて一気に加速しその場から離れた。
そして素早く服を着て会場に戻るとそこは割れんばかりの大歓声に包まれている。
どうやら恐怖した対象を自分達の力で追い払えた事が心底嬉しいようだ。
そんな中でアズサ達は素早くその場を退散して既に姿を眩ませている。
恐らく、この状態で彼らに正常な思考が戻ると大変な事になっていただろう。
それに、このイベントには既にデータも取った後なので参加義務はなく、いつ帰ったとしても問題はない。
なので3人は会場を抜け出し、車乗り場で車に乗り込んで帰宅している。
今の所は尾行している者も居ないので、このまま家に帰るまで見守り何かあれば駆け付ければ良い。
そして俺は会場の熱気が冷めて観客が帰った後の掃除をして今日の仕事を終えた。
ちなみに『希望の光』を使用された対象は一種のトランス状態になっている様でアズサの事を明確に覚えている者は居ないようだ。
ただ魔法を使った事は覚えていた様でスキルを獲得した者がたくさん現れた。
もしかすると今後はこの試験も更に人数が増えるかもしれない。
そうなればここもしばらくは賑やかになるだろう。
しかし俺は皆の試験が終了したのでしばらくはここのボランティアに参加するつもりは無い。
そして、その後はアンドウさんに呼び出され、アケミとユウナの分まで叱られてしまった。
ただし2人の為なら怒られたとしても文句はない。
アズサに関しては若干の仕事を振ろうと目論んでいる様だったのできっぱりとお断りしておいた。
アイツにはこれから試験も控えているので俺と違って仕事をさせる余裕はない。
しかし念のためという言葉もある。
俺は帰りながらハクレイへと連絡を入れて今日の映像の消去を依頼した。
もし後でそれが表に出ると色々と厄介になりそうだからだ。
今の通信網や端末はどうせアイツ等が牛耳っているのだろう。
「そう言う事だから頼んだぞ。」
「分かりましたがこの事は内密にしてくださいね。」
「分かってるよ。」
どうせこういった事は以前から状況に変化は無い。
情報を握っているのが国や電話会社から異世界人になっただけだ。
どちらかと言えば以前よりも監視が行き届いていて感謝する者も多いだろう。
漫画やテレビ番組の無断サイトが無くなり、情報は整理されているのでフェイクニュース等も無くなった。
未成年のポルノサイトアクセスが不可能になり子供の居る家庭では喜んでいるだろう。
そして俺は家に到着して中に入るとそこに座っている3人へと声を掛けた。
「今日は色々と凄かったな。」
「うん。でも会場は大丈夫だった?」
あの状況を引き押してしまった本人としてはどうしても気になるだろう。
それに顛末を確認せずにあの場所を去ったとなれば猶更だ。
「ああ、問題なかったよ。皆あの時の事はあまり覚えてないみたいだ。代わりに魔法のスキルを習得した人がそれなりに居てそっちで大騒ぎしてたよ。」
「良かった。それなら今の生活は大丈夫そうだね。」
そう言ってアズサは安心したように胸を撫で下ろしている。
ただ、この生活を壊そうとする奴が現れたらそいつ等に関しては容赦しない。
最悪この国を出て海外に行く事も視野に入れておこう。
以前と違いこの星は世界規模で住みやすくなっている。
身分証が一つあれば国境も簡単に超えられるし、どこの治安もそれほど悪くない。
それに今の段階では俺達を阻める者は神くらいなので地上は自由に歩き回れる。
「それにしてもアケミとユウナは容赦が無かったな。」
「ふ~んだ。お兄ちゃんが他の女の人に鼻の下を伸ばしてるからだよ~。」
「はいはい。だったら今日は一緒に寝るか?」
「え!本当に良いの!」
「それなら私もですね!」
すると2人は急に機嫌がよくなり大喜びだ。
それをアズサは微笑んで見ているけど、その手はしっかりと俺の手を握っている。
「アズサも一緒に寝るか?」
「・・・うん。」
「でもアズサ姉はさっきお兄ちゃんに抱き着いたから今日は私達が隣だからね。」
「ウフフ!これだから子供は止められません。」
なんだかユウナは変な笑みを浮かべているけど大丈夫だろうか?
リクさんやナギさんは何も言わないけど、こんな幼い内に一線を超えると絶対に怒られる。
というか俺自身が大人しく首を差し出す事になるので、最低でもあと11年は我慢してもらわないとダメだ。
「先に言っとくけど変な事は禁止な。やった場合は1ヶ月は一緒に寝ないぞ。」
「「は~い。」」
本当に分かっているのか不安だけどたったの11年だ。
それくらいなら3人とも待つ事が出来るだろう。
そして宣言通りに今日は同じベットで4人並んで眠りについた。
ただ、余談ながら何故かお風呂まで一緒に入る事になり皆の水着姿を見られた事は内心で嬉しかった。
今年の夏は終わってしまったけど来年は何処かに泳ぎに行くのも良いかもしれない。
そんな事を思う今日この頃だった。




