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238 12神将 再会

今向かっているのはここから一番近い組織の支部だ。

そこには色々な施設があり、その1つが式神と契約する時に被害が出ない為の隔離部屋になっている。

また、術に関しては秘匿する事もあり、それが部外者に見られない様にする場所でもある。

ただし今から契約する12神将は安倍家しか使う事が出来ない特別な物になる。

それでも同じ血筋の中に信用できる者ばかりではないので注意は必要だ。

もし全ての12神将と契約が出来れば、そいつが人類の脅威となる可能性もある。

ただし、そうなった場合は俺が自分で始末を付ければ全て解決する。


それにしても車の自動運転とは凄く良い。

目的地に近付きながらアズサを抱っこできるし安全運転で事故の心配が無い。

何でもこの何十年の間で交通事故も殆ど起きていないらしい。

起きた理由も傷心自殺で車に向かってビルから飛び降りた奴が居るくらいらしいので車に責任はない。

しかし死ぬなら1人で周りに迷惑を掛けずに死んでもらいたい。

そう考えていると俺のスキルに反応があり空から人が降ってきたけど、速度からすると自由落下をしているようだ。

胸元に紋章の入った蒼い石は持っていないようなので、このままだとスプラッタな未来が待ち受ける事になる。

なので流石と言うか・・・アイコさんが乗る車は自動運転でも一味違う。


アイコさんを除いてみんな気付いているけど対応が出来るのは俺くらいだろう。

なので上昇気流を発生させて落下を押し返すと、次に道路の脇に向かい風で押し除けた。

落ちている時の表情から飛び降りた事を後悔していた様なので、これに懲りていればしばらく馬鹿な事は考えないはずだ。

一応は追加で声を飛ばし「死ぬ勇気があるなら死ぬ気で生きてみろ。」と送っておく。

もし次も同じように落ちて来れば死ぬよりも恐ろしい事がある事を教えてやろう。


そして目的の施設に到着するとハルアキさんは受付へと向かい声を掛けた。


「予約を入れた安倍です。」

「安倍様ですね。・・・はい、大丈夫です。どうぞ、この部屋をお使いください。」


・・・安倍?

もしかして歴史が変わって名字が変わったのか。

アイコさんも旧姓が九十九だとは知っていたけどハルアキさんの名字は倉田だったはずだ。

今まで気付かなかったけどこうして聞くと本当に安倍家の末裔だったんだな。


「すまないね。もしかして気付いてなかったのかな?」

「はい。表札とかあまり気にしなくて。」


実は以前と違ってアズサの家は最初から我が家の隣にある。

ちょっと歩くと到着するので表札も確認する事もしなかったのは失態だったかもしれない。


「まあ、僕もこっちに来てから驚いたからね。今でも長年使って来た倉田を書類に書きそうになるよ。」

「そうですか。それは気を付けないといけないですね。」


そして俺達は笑い合いながら地下にある施設へと向かって行った。

するとそこには強固な壁に囲まれた防音室があり、俺達はその中へと入って行った。

広さとしては15メートル四方と言ったところなので12神将を呼び出すには十分な面積がある。


「それならさっそく呼び出してみようか。」

「俺は会うのが400年ぶりくらいだから相手が覚えてるか心配だな。」

「きっと大丈夫だよ。」


そう言ってハルアキさんは札に自身の血を付けると呪文を唱えた。


「我が声に応え現れよ。12神将が1人、北の凶将『玄武ゲンブ』。」


すると以前と同じように水が噴き出しその中から1匹の亀が姿を現した。

どうやら最低限の条件である安倍家の血筋である事に間違いはなかったみたいだ。


「フォッフォッフォ。久々に呼び出したのは何処の誰じゃな・・・#”<+*!」

「どうした玄武。懐かしい顔と再会できてそんなに嬉しいか?」

「何故お前がここに居るんじゃ!?とうとう人間を捨てたのか!」

「何処に目を付けてるんだ?俺は半月前に生まれたばかりの0歳児だぞ。何処からどう見ても人間だろう。」


するとその視線が俺が抱いているアズサへと向けられている。

まるで0歳児とはどういった物なのかと視線が語っているみたいだ。


「お主に常識を当て嵌めるのも馬鹿々々しいと言うものじゃな。」


どうやら俺の言葉は何時もながらに12神将には届かないらしく、安部家の血を引いていないのが理由だろう。

召喚された式神は主以外には従わず、塩対応な所があるので仕方がない。

そして本題となる用件は3つしかないけど、まあ・・・大丈夫だろう。


「それで今日は契約かの?」

「そうだ。こっちのハルアキさん。それとこっちのアズサとも契約してもらいたい。」

「・・・うむ、それは構わんが力試しは・・・。」

「え?何か言ったか?『ベキベキ!ポキポキ!』」

「フッ!流石にそんな脅しには・・・。」

『ピン!ドゴ~ン!』


俺は指を弾いて気弾を飛ばすと玄武の背後にある壁に丸い穴を開けた。

その深さはここから見ても数メートルは続いている。

アズサの為とは言ってもちょっと力が入り過ぎたかもしれない。


「何か言ったか?」

「フッ!長い者には巻かれろと言うではないか。」

「分かれば良いんだ。それにどの道ハルアキさんと勝負しても勝てないぞ。」

「その様じゃな。しかし、そちらの赤子ならば・・・。」

「ん!死にたいのか。死にたいんだな。よし、その願いは七つの球を集めなくても即座に聞き届けてやろう。」

「ま、待て!冗談じゃ!『ガシ!』」

「もう遅い!」


俺は問答無用で体を大きくすると玄武の頭に手を置いた。

それに俺もこの半月の間で遊んでいた訳では無い。

しっかり食べて体を成長させサイズ調整の効果で弱体化しない様にしてある。

代わりに普段の力が増す結果になったけどそれは別の話だ。


「さあ、悔いて死ね!」

「ギャーーー!」

「ハルヤ君。ちょっと待ってあげてくれないかな?」


すると背後から穏やかな声が聞こえて来たので俺は握力を弱めてそちらへと視線を向けた。

それに対して玄武はまるで救世主でも見つけた様な輝く視線をハルアキさんへと向ける。

しかし玄武よ、お前はこの人の事を全く理解していないぞ。

そしてハルアキさんは容赦なく玄武へと死刑宣告を言い渡した。


「それは明らかに僕の役目だと思うんだよね。式神は死んでも少しすると復活するから、まずは10セットほど殺しておこうか。」

「・・・!ぎゃ~~~!ここにも鬼が居る~~~!」


すると既に玄武は半狂乱で涙を流して自分の言葉に後悔している。

しかし後悔先に立たずと言うけど、口は禍の元とも言う。

俺達の前で愚かな事を口走ったツケはしっかりと払ってもらおう。

しかし、そんな俺達を止め、玄武に優しく手を差し伸べる天使が現れた。


「ダ~ウ!メ~!」

「どうしたアズサ。玄武の鍋でも食べたいのか?」

「ダ~ウ!」


するとアズサは首を左右に振って否定してくるので、どうやら食べたい訳ではなさそうだ。

そうなると・・・殺せの一択か!


「お主のその危険思考は何処から湧いてくるのじゃ!それはどう見ても儂を許す様に言っておろうが!」

「何を妄言を吐いているんだ。・・・まあ、アズサは聖女で天使だからその可能性も有るか。」


するとアズサは首を縦に振り俺の言葉を肯定して見せる。

それに、どうやらアズサが天使である事が公認されたみたいだ。

こうなれば玄武を血祭りにあげて甲羅で祝いの盃でも作るか。


「さっきからお前の心の声が口から出ておるぞ!頼むからその赤子の言葉を聞いてやってくれ!」

「アズサは喋れないからそれは無理だ。しかし、お前がこれからアズサを守るなら少しは考えてやらん事もないぞ。」


これが俺にとっての最大の譲歩だ。

本当は俺自身の手で24時間護りたいけどそうはいかないのが現状だ。

了承するなら今回はちょっとだけのお仕置で勘弁してやっても良いだろう。


「わ、分かったわい。儂は喜んで契約するぞ。」

「今回もごねずに最初から素直に言っておけばいいのにな。400年経っても学ばないな。」

「それはお互い様じゃ!」


でもこれで護りの要である玄武は大丈夫そうだ。

最低でも後は白虎と朱雀と青龍とも契約しておきたい。


「ハルアキさん。問題は白虎だけだから後の四神は同時に呼び出しても良いですよ。」

「そうなのかい。ただ、任せてばかりだと悪いから僕の方で白虎を受け持つよ。」

「分かりました。」


そして俺は念のために玄武をひっくり返して準備を整えた。

すると逆さまになった玄武の呆れを含んだ視線が俺へと向けられる。


「これに何か意味があるのかの?」

「だって以前もこんな感じだったからな。トラウマが刺激されれば大人しくなるかもしれないだろ。」

「・・・お主は今も変わらずに悪辣じゃな。」

「今では悪魔王として世界の絵本になってるからな。」

「それは・・・世も末じゃな。」


そう言いながらも玄武はあの時をしっかりと再現して死んだフリをしてくれている。

何気にコイツも口は悪くても付き合いが良い奴だ。

ハルアキさんはこちらの準備が整ったのを確認すると残りの12神将を呼び出しに掛かった。


「我が声に応え現れよ。南の凶将『朱雀スザク』、北東の吉将『青龍セイリュウ』、南西の凶将『白虎ビャッコ』。」


そして3枚の札を投げるとそれぞれの札から3匹の神将が現れた?


「あれ?白虎だけ尻しか出てないぞ。」

「アハハ!久しぶりハルヤ。白虎はアナタの気配を感じて怖がってるのよ。」

「情けない限りです。それにしても懐かしいですね。3度も同じ主に仕えるのは初めてです。」


3度?・・・青龍は何を言っているんだろうか。

まあ、俺が従える訳では無いのでどうでも良いだろう。

それにしても朱雀は相変わらず九官鳥だな。

今も笑いながら玄武の尻を突いて遊んでいるので変わった様子は無さそうだ。


「おい白虎。」

『ビクッ!』

「今回は俺が相手じゃないから安心しろ。」

『・・・ソロリ・・・ソロリ。』


すると俺に声を掛けられて一度大きく震えた白虎だけど、俺が相手ではないと聞いてお尻からゆっくりとこちらに出て来る。

そっちの方が怖いと思うんだけど1度出始めたら向きが変えられないのかも知れない。


「ハハハハハ。ハルヤ君はよっぽど怖がられているんだね。」

「まあ、ライオンの時に居た妹のミミに比べたら可愛げは皆無ですからね。同じネコ科なのになんでこうも違うのか。」


そして姿を現した白虎は恐る恐ると言った感じでこちらに振り向いた。

しかし、その顔には今も警戒と疑いの色が見え、まるで野良猫の様に見える。

以前は野性味があって凛々しい顔立ちだったのに、その影は無残な程に消し飛んでいるようだ。


「先に言っとくけど今回の契約者はこのハルアキさんとアズサだからな。何か異論はあるか?」


するとハルアキさんに視線を向けて納得した様な顔になると、今度はアズサへと視線を向けて来る。


「本気で・・・。」

「言い忘れてたけど、同じような事を言おうとして玄武はあんな事になったからな。」


そう言って横を指差すと、そこには白目を剥いて涎を垂らす哀れな玄武の姿がある。

どうやら玄武も白虎を揶揄う気でいる様で迫真の演技をしてくれている。


「ハハハ!玄武ってまたやっちゃったの。どうして学べないんだろうね。ハルヤは100年経っても200年経っても変わらないよ。」

「フフフ。これはスマホに記録して後で皆に見せてあげましょう。」

「ハハハ!私はさっきから白虎をRECしてるよ。後でチューブの友達に見せてあげよっと。再生回数稼げるかな。」


なんだか俺よりもこの時代に馴染んでるな。

しかも朱雀はチュバーにまでなっているようだけど、どうやってスマホを手に入れたんだ?


「お前等どうやってそんな物を買ったんだ?」

「え?クオナが皆に配ってくれたよ。パケ放題の定額制だから気楽に使って良いんだって。あっちでも使えるようにしてくれてるから最近はとても楽しいの。スマゲーとか最高だよね。」


さすが外交官クオナは仕事が早くてとても助かる。

しかし、なんだか恵比寿の気配を背後に感じるのは気のせいだろうか。


それにスマホがあるならユカリ達から連絡があっても良い様な気がするけど何をやってるんだ?

まさか、お約束の機械音痴とかいう奴なのか?

まあ、少し心配だから近日中にでもツクヨミの社に行ってみれば分かるだろう。

厳島じゃあクレハにも会えなかったからあそこに居るのかもしれない。


そして内心で今後の予定を決めると白虎へと視線を戻した。


「それじゃあお前の意見を聞こうか?」

「そ、そうだな。出来れば平和的な話し合いでお願いします。」


そして平和的な話し合いが行われ玄武と白虎は素直に服従を誓い、朱雀と青龍はゲームなどの暇つぶしの相手を所望して来た。

まあ、後者に関しては現代に馴染んでるようで良かったけど、朱雀は話好きだでチャットがえらい早さだし、青龍はヤンデレが緩和されている。

何やら他の12神将も半分以上は似た様なものらしいのでハルアキさんの家に入り浸る奴が出るかもしれないな。

しかし考え方を変えれば良い防犯になって役に立つだろう。

これでハルアキさんもアイコさんの護りを固められるので一石二鳥と言ったところだ。


「しかし、なんだか思っていたよりも早く済んでしまったね。」

「12神将も単体だとこんなものですよ。」


昔ならこのまま慣れるための訓練に突入するのだけど、そこまでの施設は予約できていない。

以前ならダンジョンに行けばそれも可能だったけど今は無いのでそれも不可能だ。

それに俺達の訓練は『血沸き肉躍る』を素で飛び越えて『血飛び肉爆ぜる』なので下手な所で訓練していると通報されてしまうらしい。

私生活においては便利になったけど、この辺は逆に不便になっている。

まさか、ダンジョンが無くて困る日が来るとは思わなかった。


「それなら早めに帰って飯にしますか。」

「アウア~!」

「アズサはまだ食べれないだろ。」

「ブ~ブ~!」


そしてアズサはヘソを曲げて傍にあった白虎の尻尾を掴むと力を込める。

すると次の瞬間には悲鳴が鳴り響き皆の視線がそちらへと集まった。


「ギャ~~~潰れる!抜ける~~~!」


しかもそのまま引き寄せると風船で遊ぶように軽く振り回してしまった。

ちょっと可愛いけど、止めさせないと部屋が壊れそうだ。


「アズサそんなことしちゃダメだぞ。虎さんが壊れたら大変だからな~。」

「ブ~!」


一応は部屋の方が大事な事は伏せておこう。

それくらいは俺だって気を使えるからな。

ただ後でちょっと魔法を使ってアズサの成長を促進させておかないと何でも食べてしまいそうでちょっと怖い。


その後アズサも落ち着いたので12神将は帰され姿を消していった。

そして、その日は家に帰るとご飯を食べながらアズサにちょっとだけ魔法を使い離乳食が食べられるくらいまで成長させた。

どうやらハルアキさんも同じ懸念をしていたらしく、最低限の無理のない範囲で普通のご飯が食べられるようにして欲しいとの事だ。

アズサも覚醒者なので離乳食が食べられるくらいになればご飯も少しは食べられるだろう。

後は歯が生え揃ってくれればどんな物でも食べられるようになる。


そして、この日は俺の戦闘についての感想を聞きながらのんびりとした時間を過ごしていった。

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