229 試練その5 ③
あれから数日が経過した。
あの時に訪れた500人の教会関係者はもうこの大陸の何処にも生きていない。
昨日の夜にアンドウさん率いる先住民の人達によって静かに片付けられているからだ。
後はここに向かっている船を待つだけでもうじき到着するだろう。
そして、その時が訪れ俺達の前に1隻の黒い船が到着した。
港へは村人たちが並び、以前の事もあって無言の緊張が広がっている。
そんな中で船から最初に降りて来たのは非武装の女性だった。
その姿を見て村人たちからは自然と安堵の息が零れる。
しかし次に現れた人物を見て全員が動きを止めたかと思うと息を呑み込んだ。
そこには現教皇が地面に降り立ち、朗らかな顔で手を振っているからだ。
何でも彼らは出発の際にはこの人から祝福の言葉を頂き、体にある傷を全て治してもらってからここに来たらしい。
だから1度は見ているだろうから覚えている人も多い事だろうけど、あまりの大物に全員が度肝を抜かてしまったみたいだ。
俺は既にこの事は聞いていて何かあっては困るので時々様子は見ていたんだけど無事に到着してよかった。
そして予定にはなかった事だけど歓迎会が開かれる事となり貧しいながらも食料を出し合って料理を振舞っている。
出発の時に怪我を治してもらった者が殆どなので誰も文句を言う者は居ない。
それを見て教皇は座っていた椅子から立ち上がると傍に居たカリーナへと手招きをして呼び寄せた。
「畑へ案内してもらえませんか。」
「は、はい。それでしたらこちらへどうぞ。」
いつもは緊張とは無縁なカリーナも今だけは舌が縺れている。
その様子に教皇は笑みを浮かべると歩きながらカリーナの頭を撫でて後を付いて行く。
その後ろを俺も続き、その横へと船から最初に降りて来た女性がやって来る。
そして俺は彼女に向かい周りに聞こえない様に声を掛けた。
「久しぶりだなアン。元気にしてたか?」
「はい。姉さんのナディーも子供と一緒に元気ですよ。今もツキヤを尻に敷いてます。」
「そうか。あれから元気にしている様で良かった。」
あの後に少しして孫のツキヤとナディーは結婚して夫婦になった。
一応は曾孫も生まれたらしいけど俺は森の奥で生活していたので顔を見た事は無い。
でも美形なツキヤと美人なナディーの間に生まれたなら可愛い事は確かだろう。
それにしても護衛として組織に居るアンが選ばれているので教会との関係も良好みたいだ。
「それで少し前に教会から変な奴らが来たぞ。」
「実は私の目的の1つはそれです。以前までは教会に所属していましたがおかしな考えに憑りつかれてしまい仲間と一緒に武器を強奪してこちらに逃げてきてしまいました。半数以上は途中でツキヤが沈めたのですがここまで辿り着くとは執念だけは認める所ですね。」
「そいつ等に関しては既に掃除が終わってるから気にするな。今は護衛にだけ集中しててくれ。」
「いつもお手数を掛けます。」
「気にするな。それで、お前は結婚できたのか?」
俺が死ぬ頃にはまだ結婚したという報告は無かった。
あの当時で二十歳前半なので既に行き遅れ気味だけどまさかまだ結婚してないって事は無いよな。
言っては何だけどアンはナディーよりもずっと美人だ。
目元が鋭くて近寄り難い所はあるかもしれないけど甘えん坊でとっても良い子なんだ。
「わ、私の事は良いんです。どうせ行き遅れですから。(それに私はお兄ちゃんと結婚したかったのに・・・。)」
「まだしてないのか。まあ、お前は今でも以前と変わらず美人だからすぐに相手が見つかるさ。」
「う~・・・お兄ちゃんが虐める~。」
するとアンが子供の時のような泣きまねをして俺の事をお兄ちゃんと言って来る。
大人になってからは名前で呼ぶようになっていたのでなんだか少し懐かしい気分になる。
「悪い悪い。それよりもアンたちはいつまで滞在するんだ?」
「きっと1週間くらいだと思います。あの船なら嵐でも関係なく進めますから。」
「そうか。そう言えばあの船を作った奴が近くに居るんだ。後でちょっと見てもらっとくよ。」
「そうなると他の転生者がここにも居るのですか!?しかも話しに聞いていた邪神大戦の経験者が?」
アンには組織に入った少し後にちゃんとその辺の事は話してある。
だから俺がツキヤに譲ったアンドウさんの船の事も知っている。
簡単に壊れる様な物ではないけどアンドウさんならスキルで修復も可能だから後で来た時に頼んでおこう。
「ああ、アンドウって名前なんだ。・・・それに丁度そこに居るな。」
「え!?」
何気に普通に歩いているから俺も内心では滅茶苦茶驚いた。
気配でアンドウさんと分かったけど話題に出てなかったら明らかに素通りしていただろう。
それにしてもメイクだろうけどパッと見で全く分からない。
俺がここに生まれた初期の頃なら人も少なくて見慣れない顔に気付く奴が居ただろうけど、今は他の村からも人が来てから日も浅い。
恐らくは何処かの村の奴だろうと思って誰も気に留めないだろう。
「ちょっと呼んで来るからこのまま進んでいてくれ。」
「は、はい!」
そして俺は駆け出すとアンドウさんの後ろからゆっくりと忍び寄る。
しかし、その足がピタリと止まると振り向く事無く手から針が飛んできた。
どうやら暗器として隠し持っていた痺れ薬付きの針を飛ばして来たのだろう。
俺はそれを前歯でパクリと受け止め、目の前の忍びに冷たい視線を送る。
「何やってるんだ?」
「後ろに立たれたからつい。」
そう言えばこの人は称号にゴルゴジュウゾウとかいうおかしな称号を持ってたな。
きっとそのせいで背後の気配には敏感になってしまうのだろう。
「それよりも問題の相手と引き合わせるから着いて来てくれ。」
「ああ分かった。それで誰が来たんだ?」
「そういえば言ってなかったな。実は神の計らいで教皇が来てるんだ。」
「本当にお前と居ると人脈に困らないで済むな。ここは俺も本気を出すしかなさそうだ。」
そう言って無駄に闘気を発しているので周りの人たちが俺達を避けて歩いている。
この忙しい時に迷惑なので止める様に言うと僅かな闘気に収まってくれた。
でもいつもは完全に気配を消せるのでそれだけ楽しみなのかもしれない。
そして畑に到着すると教皇は作物に向かって両手を躱し、神に祈りを捧げていた。
「おお、神よ。我らにあなたの愛と恵みをお与えください。」
すると植えて間もない苗が成長を始め、少しすると畑は作物で満たされて行った。
教皇は回復と成長促進に特化しているようで、ここだけ見れば俺よりも遥かに強い力を持っている。
もし俺が今の畑全体にこれ程の実りを与えるなら教皇よりも3倍~5倍の時間が必要になる。
そのことから神はこの男にそれだけの信頼と期待をしている事が分かる。
そしてカリーナは目の前で起きた光景に驚きと喜びに震え、神に感謝の祈りを捧げている。
ただし、その後ろで俺を含めてアンドウさんとアンは平常運転なのは言うまでもない。
そして食材が実ると教皇は手を下ろしてこちらへと振り返った。
その顔には疲労の色も見えず、これくらいは朝飯前と言った感じだ。
「それでは戻りましょうか。悪魔王ハルヤ殿。」
「知ってたのか?」
「まあ、教会でも一部の者だけですが。それに役職から下りる時には記憶は消されますし情報を漏らすとその時点で命はありません。」
「そこにカリーナが居るけど大丈夫なのか?」
カリーナはどう見ても一般人なので知られては不味いんじゃないだろうか。
しかし、どちらにも何かが起きた様子はなく、そうなると・・・真実は!つ!
「もしかしてカリーナも知ってたのか?」
「え~と。・・・うん。アナタってこれまでに色々としてたでしょ。獣舎の模様替えしたり新品に作り変えたり。それに最初の時に乳搾りのやり方を教えてくれた少し後にダレンさんが店で話してたんだ。悪魔王が出てあんな事になったんだって。それで私は気付いちゃってたの。」
そう言って申し訳なさそうに苦笑するけど周りの視線が何だか冷たい。
俺はベストを尽くしただけだと言うのに何がイケなかったんだ?
「う~む・・・これは言い逃れ出来ない程の鋭い観察眼に脱帽だな」
「そ、そうだね。でも次からは何かする時はフォローするから言ってね。なるべく協力するから。」
なんだか大人にもなってない少女に助けられるとなると微妙な感じだな。
だから皆もそんな冷たい目で見るのはそろそろ止めてもらいたい。
お爺ちゃん泣いちゃうよ(メ~~~)。
ただ俺の事をある程度は神から聞いているのならアンドウさんの説明が楽になった。
そして教皇の為に魔法で教会を作り(ちょっとヤリ過ぎ)。
アンドウさんが細部を完成させ(超ヤリ過ぎ)。
その結果、村の中央に高さ50メートルはある荘厳な神殿を思わせる建造物が完成した。
しかもアンドウさんが貴族が使う様なしっかりとした作りの天蓋付きベットを設置し(一体何に使うつもりだったんだ!?)。
俺がソファーや棚(ミズメ作)を設置してしまえば10階建て個室付きの内装も出来上がる。
しかも壁は大理石を思わせる様に輝き、床は鏡の様で気を付けないとスカートの中が見えてしまいそうだ。
まあ、この時代はスカートの中はパンツではなくドロワーズなので大丈夫だろう『チラ!』。
「何見てるのよ馬鹿!『バシン!』」
「いや、ちょっとした誤解だ。美味しそうな草が生えてると思っただけだ。」
「そんなの生えてる訳がないでしょ!『パシン!』」
うう、往復ビンタとは中々やるでごわすな。
ん?なんだかアンの機嫌が斜め急降下してるぞ。
それにどうしてズボンを握り締めてるんだ。
そんなに握ったら破れちゃうよ『スリスリ』。
なので力を抜いてもらうためにちょっと手の甲に頬擦りをしてみた。
すると何故か不機嫌な顔に笑顔の花が咲いて存分に撫で回されてしまったけど機嫌が直ったなら自由にさせとけば良いだろう。
「それにしてもやっぱり自重しないって良いな」
「そうだな。俺も文化レベルに合わせて殆ど何も作ってなかったから久々にスッキリしたぞ。」
そう言えば鉄器だって簡単に作れるのに先住民の持っていた物は全て石器だった。
コーヒーやらの件で心配してたけどちゃんとするべき所は自重してたようだ。
まあ、それもコーヒー関係以外とだけ言っておこう。
「後は使い心地か。部屋に行ってコーヒーでも飲むか。」
「何!コーヒーがあるのか!」
すると今まで穏やかに微笑んでいた教皇がアンドウさんのセリフに驚きの表情で食い付いた。
それを見てアンドウさんの顔に不敵な笑みが浮かび、密かに拳が握り締められている。
どうやら同好の士に会えた事がよほど嬉しい様だ。
「フッフッフ!俺のコーヒーを飲んで素面でいられるかな?」
「う~む。しかし言っておくが儂もコーヒーにはうるさいぞ。そのつもりで準備するのだな。」
そしていつの間にかコーヒータイムへと移行する事になってしまった。
あの人はこの瞬間をずっと狙っていたので教会作りに力を入れていたのだろう。
何でも日本に居た時に言っていたけどコーヒーを飲むには雰囲気も大事らしい。
この教会はその為の下準備の1つだったようで、予想通りあまり自重しそうにない雰囲気を醸し出している。
そう思いながら部屋に行ってみているとアンドウさんはテーブルの上で豆のブレンドから始めた。
どれだけ本気なんだと聞きたいところだけど、きっと全力で本気なのだろう。
目にはまるで射程限界ギリギリの敵を撃ち抜くような鋭さを宿し、体からは殺気にも似た闘気が滲み出ている。
きっと俺以外の者からすると適当に豆を選んで混ぜている様に見えるはずだ。
しかし時間を引き延ばして見るとその間に多くの試行錯誤を繰り返しているのが分かる。
どうやら周りに雰囲気や状況にも合わせて香りや味を調整しているようだ。
そして豆を選び終えると今度はコーヒーミルが現れた。
それはCMなどでも見る事のある手動式ミルで一番上に手で回すハンドルが付いている。
アンドウさんはそれに豆を入れるとゆっくりと回し始め時間を掛けてゴリゴリ挽いて行く。
すると教皇の目が即座にミルへと釘付けとなった。
「な、なんだそれは!もしや個人で豆を挽く道具なのか!」
「ああ、ちょっと癖があって手入れが必要だが慣れれば今はこれ以上に良い物は無いだろうな。」
そう言っているアンドウさんは珍しく口元が笑っていて、まるでおもちゃを自慢する子供のようだ。
「まあ、欲しければ・・・そうだな。交渉次第だな。フッフッフッフッフ!」
「ぐぬぬ~~~!ま、まずは味が問題だ。それがダメでは如何なる価値も0でしかない。」
「吠え面をかくなよ。」
何でコーヒーでここまで火花を散らしているのだろうか?
そのせいかカリーナは俺の顎髭を掴んで放してくれないし、アンに至っては俺を抱っこしたまま解放してくれない。
そしてアンドウさんは豆を挽き終わると匂いを確認して次の道具を取り出した。
それはガラス製で瓢箪のような形をしている。
確かサイフォン式とかいう奴で真ん中には豆を濾す為のフィルターが付いているけど、今は再利用しやすい布製のようだ。
てっきりお湯を注いで作るだけかと思っていたけどそこまで拘るのか。
しかもスキルの錬金で高純度のアルコールを作れるアンドウさんなのでアルコールランプもバッチリだ。
確か以前にもサツマイモから錬成してアルコールを精製してた。
そして、もちろんアルコールランプやコーヒーメーカにも教皇は御執心だ。
アレがあれば自分で好きな時にコーヒーが入れられる。
コーヒーが好きな人が最後の方に考える事となると如何に自分で美味しいコーヒーを淹れるかだろう。
それに見栄えも良くて自慢も出来る。
俺が強化しておけば鈍器に出来るくらいの強度になるはずだ。
「ふっふっふ!これも交渉次第では作ってやっても良いぞ。今なら好きなデザインで仕上げてやろう。」
「何と!・・・ゴッホン!危ない危ない。趣味に流されて本題を見失う所であった。」
もうメッチャ流されてると思うのは俺の気のせいだろうか。
そして、しばらくするとコーヒーが完成して2人の前にカップが準備された。
それがまた王族が使う様な見事なカップで教皇はそれにも目を奪われている。
俺なら壊すのが嫌だから絶対に使いたくない類の物になるのは間違いない。
しかし今のこの宮殿のような部屋で白いだけのマグカップだと逆に合わないので、まさに状況に合わせたカップ選びと言える。
そして互いのカップにコーヒーを注ぐと残った少しを俺の方に差し出して来る。
「残りはお前等で飲んで良いぞ。」
「ああ、有難く頂くよ。」
残っているのは一人前くらいだろう。
完璧に子ども扱いされているけどまさに丁度良い量とも言える。
「あの・・・お兄ちゃん。私はコーヒーが苦手で。」
「私は貴族様が飲む様な物は飲んだ事がありません。」
どうやらアンは俺と一緒でコーヒーが苦手でカリーナは初体験のようだ。
それならみんな俺と同じでも構わないだろう。
「大丈夫だ。これは凄く苦いけど美味しく飲む方法はある。こうやってミルクに入れて混ぜ混ぜして・・・砂糖を追加して出来上がりだ。これなら2人とも飲めるだろう。」
そう言って2人にもコーヒー牛乳を渡してやる。
比率は分量的にコーヒー1に対して牛乳3と言ったところだ。
俺にはこれでも少し苦いけど初めてのカリーナが居るのでこれくらいで良いだろう。
「カリーナはアンドウさんと知り合ったんだから来た時に頼めばコーヒーの豆を譲ってくれるだろ。そに気になれば昼間の店でカフェが開けるぞ。」
すると俺のカフェという言葉にアンドウさんと教皇の耳がピクリと動いた。
しかし今はこっちの事よりも早く決着を着けてくれ。
そうしないと外でパーティーの準備が終わって人が呼びに来てしまう。
そして俺への反応はその時だけで2人は揃ってカップに顔を近づけて香りを確認する。
すると互いの顔に満足そうな笑みが浮かび、ようやく口を付けて音もなく飲み込んだ。
その瞬間、教皇は電気でも浴びたように体を跳ねさせ天井を見たまま動きが止まる。
「まさかアンドウさん変な薬を入れたんじゃないだろうな?」
「それならそこのカリーナがとっくに死んでるだろう。」
「それもそうだな。」
どうやら気付かない内にカリーナには毒見役をさせてしまったようだ。
本人は気付いてないみたいだけどアンドウさんには責任を取ってしばらくはコーヒー豆を無料で卸してもらおう。
あと道具一式も作ってもらって準備も手伝ってもらった方が良さそうだ。
人気が出るかは分からないけどコーヒーを飲むと元気が出るらしいから開拓村には打って付けかもしれない。
そして、ようやく教皇が動き出したかと思えば小さく体を震わせ目から涙を流している。
どうやらこの時点でどちらに軍配が上がったかは明らかなようだ。
教皇はカップに再び口を付けてコーヒーを飲むと良く聞こえる声で呟いた。
「旨い。これは人生最高の味だ。」
「そうだろう。お前は見る目がある。」
言葉を返したアンドウさんの顔にはハッキリと笑みが浮かんでいる。
もしかしたらツバサさん以外の事でここまで嬉しそうな姿を見たのは初めてかもしれない。
するとアンドウさんは最後に教皇への提案を口にした。
「それでは俺達との共存の件をしっかりと検討してくれ。こちらは先日の500人で上手く話しが纏まっている。奴隷ではなく、どちらかが上という訳でもない。等しく対等という条件ならこれからも良い付き合いが出来るだろう。」
「分かった。連れて行かれた者でこちらに帰りたいと言う者が居れば教会が責任を持って送り届けよう。しかし、そこの悪魔王がやってくれたおかげで既に普通の国民としての権利を得て暮らしている者も多い。どれだけ帰せるかは保証できんぞ。」
すると何故か2人からヤレヤレといった視線が向けられてしまった。
そんな顔されてもあの時は情報が無かったのだから仕方ないだろう。
「そう言えば治療した奴らの中に奴隷でここの先住民に似てる顔立ちの奴が居た気がするな。てっきり日焼けでもしてたのかと思ってたぞ。」
「は~~~。お前は本当に興味の無い事は素通りするのだな。まあ、今回は助けてくれたみたいだから感謝はしておこう。少しでも帰って来ればあちらの人間に対する印象も更に良くなるだろう。もし戻りたい者が居れば教えてくれ。その時はこちらからも迎えに行く。」
「この事は私から各国に伝達しておこう。」
「頑張るな~アンドウさんは。」
俺はアンに脇腹を撫でられ、カリーナには顎下を撫でられながら他人事のような感想を零す。
しかし、こうして撫でられるのは初めてだけど意外と気持ちが良いかもしれない。
いつもは撫でる側なのでたまにはこういうのも良い感じだ。
するとアンドウさんの顔がこちらへと向き、そこには以前にも何回か見た事がある嫌な笑顔が浮かんでいた。
(ああ、これは俺を扱き使う時の顔だな・・・。)
「何を言ってるんだ動力源。お前も手伝うんだよ。」
「・・・は~仕方ないな。せっかくの山羊生はのんびりと草でも食いながら過ごしたかったのに。」
そんな事をぼやいているとアレンがやって来て扉をノックているので教皇を迎える準備が整ったようだ。
そして俺達はそのまま教会を出ると広場へと向かって行った。




