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209/372

209 突然の始まり

もう少しで年末の祭りが開始される日がやって来る。

多くの人がその準備に協力し、お金を出したり労働力を提供している。

俺もその一人で神輿を作る材料運びを手伝っているところだ。

何せ今回の祭りには各地から選ばれた者達が神輿に乗って町を周るらしい。

ただそれだけだとつまらないので神輿ごとに多くの餅をばら撒くそうだ。

それを狙って更に多くの人が集まるだろうからきっと当日は凄い人集りになるだろう。


「ふ~、もう少しで祭りの本番か。」

「そうだよハルヤ。私も当日は・・・がんばるね。」

「ああ。特別な食べ物屋も結構出るみたいだから頑張れよ。」

「うん。」


ミズメは屋台を食べ歩くのに全力を注ぐようだけど、そうなるとアケとユウは当日をどうするのだろうか。

何か言っていた様な気がするけど上手く思い出せない。

確かとても重要な事だった気がするけど本当に大事なことなら俺が忘れる筈はない。


「ねえ、ハルヤ大丈夫?」


すると横に居たハルカから声を掛けられた。

しかし大丈夫とはどういう意味だろうか。


「何か変か?」

「最近ボ~としてる事が多いわよ。もしかして疲れてるの?」

「いや、そんなはずは無いけどな。そう言えばエクレはどうしたんだ?」


いつものサボリだろうけどこの辺には居ないみたいだ。

もしかするとまた何処かで縫ぐるみを抱きしめて寝ているのかも知れない。


「エクレなら服の調整に行ったわよ。でも良いの?エクレに・・・やらせても。」

「大丈夫だろ。たまには息抜きさせてやっても。」

「本当に大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。」


俺はそう言ってミズメと一緒に別の場所へと向かって行った。

今日はハルカ以外が用事があると言うので護衛は俺が担当している。

こちらの仕事に突き合わせる様で悪いけど一緒に散歩する程度なので許してもらいたい。

それにしてもなんだか今日はハルカの視線が厳しい気がするけど何か変な事でもあったのだろうか。

それとも便秘でお通じがしばらく来てなくて機嫌が悪いのか?


俺は思考を脱線させながらも年末を前にして既に開いている屋台から食べ物を購入し、ミズメやハルカと一緒に町を歩いて行く。

そして屋敷に戻るとそこには珍しい客人が来ている事に気が付いた。

おそらく各地から選ばれた者が神輿に乗ると言っていたのでその1人に選ばれたのだろう。


「アケヒメじゃないか。お前も選ばれたのか。」

「もちろんです。しかも神輿はこの子が引いてくれるのですよ。」


そう言って伊達家の姫であるアケヒメは横に座っている熊に視線を向ける。

どうやら子熊の片割れも健在の様で前よりも体が大きくなっているようだ。

今回の神輿は牛や馬に引かせるらしいけど、そこに子熊を繋ぐのも有りだろう。


「ハルムネとクボヒメはどうしたんだ?」

「2人とも後奈良様に挨拶に行っています。もうじき出て来ると思いますよ。」


そして少し待っていると入り口の方から別の団体がやって来た。

そちらも顔見知りであちらから声をかけて来る。


「ハルではないか。」

「コバヤカワと子熊か。それにタケヨシ、カナエ、シラベもか。」

「俺の事は無視かよ!」


そして、ちゃんと2人の父親である村上水軍当主のタケヨシも来ている。

それにしてもコバヤカワはここでも熊に乗ってるな。

なんだかアケヒメが対抗心のある目で見ているから早く降りた方が良いぞ。


そう思っているとアケヒメの方が子熊に跨り胸を逸らした。

声には出してないけど「頭が高い!」か「小童め!」と言ったセリフが似合いそうだ。

それにあんなに仲の良かった子熊たちも飼い主?に合わせて睨み合っているので仲良くしてもらいたい。

するとそんな緊迫した状況をサラッと無視して後ろから更に別の知り合いが姿を現した。


「私も呼ばれて来ております。」

「俺もだハルヤ。」


そして声をかけて来たのはシアヌとウシュラの2人だ。

この2人は九州で店を経営しているヒルコとハナに任せていたはずなのにどうやってここまで来たのだろうか?


「私達もコバヤカワ様の船で連れて来て貰ったのです。初めて船に乗りましたがとても揺れるのですね。」

「俺は出来れば乗りたくないな。やっぱり地面が一番だよ。」


どうやらコバヤカワの船に便乗する形でここに来たみたいだ。

それにこの時期は海が稀に荒れるのでここに来るまでの船旅で強い風に吹かれたのかもしれない。

しかし瀬戸内海でそれなら外洋に面した海では船に乗れそうにない。


「それよりもお前らも神輿の人員に選ばれたのか。」

「はい。私達は北の地の代表だそうです。この時期は嵐が多くてあちらからは呼べそうにないとのことで。」


それで2人が選ばれたんだな。

しかし、ここまで知り合いが揃うとアイツ等も来てるかもしれない。

そう思って屋敷の方へと視線を向けるとハルムネやクボヒメと一緒にゼクウの一家と妹であるヤマネが姿を現した。


「お久しぶりですね。元気にしていましたか。あれからヤマネが君に会いたいとせがんで大変・・・イタ!」

「余計な事は言わなくても良いのよ!」

「ははは。いつもこんな感じなのですよ。」


すると横に居る幼女姿のヤマネがゼクウに蹴りを入れた。

なんだか蹴られた方は少し楽しそうなのでこんな姿は寺の弟子たちに見せられないだろう。


「お前等も来てたんだな。」

「こちらの寺からお願いされましてね。こちらのお寺は復興途中だから私達に出てもらいたいそうだ。それに花が無いと祭りは盛り上がりませんからね。」


さすが元武将だけあってその辺は僧侶としての考えとは違うけど、その意見にも一理ある。

俺だってこんな状況でなければ皆を参加させてやり・・・たい?


(何か変だな?)


頭の隅ではなく中心付近に引っ掛かりがある。

たしかここには俺の妹回路があるはずなんだけど・・・。


「まあ、そうだな。俺も出来れば皆を参加させてやりたいな。」

「ははは何を言ってるんだい。君の所だって・・・参加するだろ。」

「そうだな。楽しみ方はそれぞれだからな。」


さっきから何かが引っ掛かる。

でも考えようとしても何も浮かばず思考が脱線して行く感じだ。


「ねえ、ハルヤ。本当に大丈夫なの?」


すると今日は特にしつこいハルカが再び声をかけて来る。

ただコイツも出会った時の様なポンコツではなく、覚醒と修行によって一流となったスーパーくノ一だ。

その直感が何かを感じていると言うのなら俺の様子がおかしいという意見にも考慮する必要が出て来る。


「後で集まって話をしよう。お前の言う通り何かがおかしい。」

「分かったわ。ちょっと皆を呼んでくるわね。」


そう言ってハルカは駆け出すと皆を呼びに向かってくれた。

俺は今の疑問を忘れない様に考え続け思考が分散しない様にする。

そうしないと本当に鳥頭にでもなってしまったかと思えるくらいに少し歩くだけで忘れてしまいそうだ。


「すみません。ハルヤさんは何か変な物を持っていませんか?」

「変な物?」


すると途中から俺を凝視していたウシュラが声をかけて来た。

たしかウシュラには魂を肉眼で確認する特殊な目を持っている。

その目に何か映っているのかもしれない。


「何が見えるか教えてくれ。」

「はい。あなたの魂の横に強い光が見えます。それが何らかの影響を与えている様です。まだそんなに見ていないので確信は持てませんが、今回のお祭りの話題の時に光が増しています。」


「光り・・・光となるとライト、ランタン、火、月、星、雷・・・後は・・・。」

「どうしてそこで・・が出て来ないのかな。」

「何だって?」


俺が口に出して悩んでいるとゼクウが何かを口にした。

しかし、何故か不自然に聞き取れず、俺はそちらへと視線を向けて聞き返した。

でもその後に何度聞いても声が聞こえないので、仕方なくゼクウは空に浮かぶ太陽を指差した。


「そうか太陽か!」

「太陽を忘れるなんてそんな事じゃあ・・・様に怒られますよ。天皇陛下の祖になられるのですから。」


そこまで言われれば聞き取れなくても誰の事を言っているのかが分かる。

それにその手の事で何か持っているとすれば一つだけだ。

俺は最上位に昇格した時に後奈良天皇から受け取った木札を取り出し、その太陽が描かれている札を鑑定してみる。

しかし鑑定してもそこには意味不明な文字化けで効果が書かれているだけだ。

ただそれが何を意味しているかは分からなくても特殊な効果を秘めている事だけは分かる。

後奈良天皇からこれを受け取った時には特殊な効果があるとは言っていなかった。

なら問題があるのは俺の頭ではなくコイツと言うことになる。


俺は木札を空高くまで放り投げると腰に差したSソードを引き抜き精神力を刃に込めて全力で切り裂いた。

すると札は激しい光を放って消滅すると俺の思考を妨げていた何かが消滅して行く。

そして感じていた違和感が消え去り今まで認識できなかった色々な事が頭の中に浮かんでくるようになる。

しかし頭の中に浮かんで来た複数の事を理解しながらそのまま地面に落ちて行った。

そして、地面に膝と両手を突きながらそのまま盛大に頭を項垂れ涙を流す事しか出来ない。


「そ、そんな!」

「お、おい!大丈夫か?」

「いや、これは大丈夫じゃない!俺がこれを大丈夫なんて言ったらまだ何かの影響を受けているはずだ!」


先程まで俺の頭の中には皆と祭りの準備をした記憶が浮かんで来ていた。

ただその中でアケとユウの巫女服姿があり、とても可愛くて可愛くて抱きしめてやりたい。

なのに俺はとてもそっけなく褒めただけで気の利いた事は何もできていない。

これでは兄失格ではないか・・・。

俺は後悔と怒りに心を染めて太陽に向かい呪詛を吐き出した。


「ア~マ~テ~ラ~ス~!!!絶対にテメーはぶん殴る!」


しかし俺が血の涙を流しそうな顔で太陽を睨んでいると門の方から声が聞こえて来た。

どうやらハルカが皆を連れて戻って来たらしい。

俺は一旦、太陽を睨むのを止めると体を起こしてそちらへと視線を向けた。


「お兄ちゃん大丈夫!」

「やっぱり何かあったのですね!」

「うお~~~!!この太陽を上回る眩しさはアケとユウか!?」


俺は神輿に乗る時に着る衣装である巫女服姿の2人を見て眩しさに目を細める。

手で顔を覆わないのは眩しさで目が潰れようと悔いは無いからだ。

そして起き上がると同時に2人を抱き上げその綺麗な姿を目と脳裏に焼き付ける。


「おぉ~~~!天使はここに居た~~~!」

「やっぱりこれがお兄ちゃんだよね。」

「私達の魅力にメロメロです。」


今は何を言われてもしっかりと聞こえるぞ。

それにこれまでの反動なのか2人がとても輝いて見える。


「なんだかいつものハルヤに戻ってるわね。」

「これは悪化。戻ってない。酷くなってる。」

「私も衣装着てこようかな・・・。」


ハルカとエクレが何かを言ってるけど、こちらはあまり耳に入って来ない。

代わりにミズメの言葉はバッチリと聞こえて来る。

そう言えばミズメの時もそっけなかったな。


「ミズメのはまた着た時にな。お前の巫女姿も凄く可愛かったからちゃんと見るのが楽しみだ。」

「し、仕方ないから今度見せてあげるわね!」

「ああ、楽しみにしてるからな。」


しかし、まさかアマテラスからこんな妨害を受けているとは思わなかったけど、ここに来て明らかに形振り構わなくなってきている。

この様子だと決戦は年末の大晦日になりそうだけど、今はそれが分かっただけでも良しとしておこう。


(ただしアマテラスは絶対にぶん殴る!)

「それじゃあ、状況の確認に入るか。皆も注意してくれ。祭りの間か後で絶対に何かが起きるからな。」

「おう、任せとけよ。」

「もう家族に手は出させん!」

「私もあれから修行をして力を使えるようになりましたからね。家族は私が護ってみせますよ。」

「「ゴアーーー!」」


どうやら皆もこの一月で力を付けて来たみたいだ。

そう言えば本部に居る筈の贄の女性についてはどうなったのだろうか。

このままだと作戦が失敗するかもしれない。


「お~い、連れて来たぞ!」


すると朝から出かけていた爺さんが戻って来た。

ただ、その横には本部に居ると言っていた贄の女性も歩いている。

名前は知らないけど生き返る時に顔は見ていたので間違いない。


「時間が掛かったな。」

「何やら本部の連中が祭りの当日がどうとか言いだしての。面倒なので無理やり奪って来てやったわい。」

「ああ、それでその子も少し困った顔になってるんだな。」


ただ、その姿は以前と違い健康そうだ。

前回は半ミイラ化していたので比較対象が悪いけどここで死んでいたらどうしようかと思った。

まあ次に贄にされる女性は既に分かっているのでハルアキラの所のスミレに声をかけるだけで終わるけど。


ちなみにハルアキラは新組織である黄龍のトップになる事が先日決まった。

組織は天皇家に取り込まれて直轄となり、それに伴って公家である安倍家の家格も上げられた。

家格としては一番下の半家から上から2番目の清華家になったんだったか。

位置的には2番目らしいけど、一番上になれる家が決まっているらしく実質的には一番上らしい。

政治の事はよくわからないけどこの事をスミレの父親が知っていれば諸手を挙げて嫁に出してくれただろう。

それも死んでしまった今となっては後の祭りなので本人の日頃の行いという奴だ。

それに嫁に出された娘たちやスミレも含めて父親との縁が切れてなんだかホッとしている。

きっとかなり無茶な事を色々と言っていたのだろう。


話は逸れたけど、せっかくこうして生きて来てくれたんだ。

まずはミズメに力を移して最低限の安全を確保してもらおう。


「ミズメ任せたぞ。」

「うん。これがやっと最後なんだね。」

「そうだな。後は邪神を封印するだけだ。」

「それではよろしくお願いします。」


そう言ってあちらも既に目的は知っている様で手を伸ばして来る。

そして手が触れ合うと力が一つに集約されミズメの気配が一気に膨れ上がった。

しかも気配の上昇は止まる事が無く周囲へと広がっていく。

これでも首に結んでいるリボンのおかげで抑えられているとなるとどれだけの範囲に広がる事になるのか想像もできない。

しかし悠長にしている訳にはいかない。

町の中の魔物や妖に関しては隅々まで駆除を終えているとは言っても町の外までは完全ではない。

そして、それを知らせる様に空を黒い雲が広がり始め、太陽の光が陰り始めた。

いや、どうやらあれは雲ではないようだ。


「あれは魔物の群れじゃ!戦える物は戦闘態勢に入れ!」


そして一早く雲の正体に気が付いた爺さんが大きな声を上げる。

それと同時になにやらバスケットボール程の球を取り出すと導火線に火を着け空へと放り投げた。

するとそれは赤い煙を吐きながら上がっていき、途中で大きく破裂して音と煙を周囲に見える様に広げる。


「爺さんあれは何だ!」

「まあ見ておれ!あれは陰陽寮の奴等への合図じゃ。」


すると町を囲むように点在する見張り台に火が灯り、周囲を巨大な光の幕が覆い始める。

そして半球状のドームを形成するとそれに触れた魔物を押し返し始めた


「これはもしもの時に備えてこの町に設置していた巨大な結界陣じゃ。以前からあったが所々が壊れておったから事前に直しておいて正解じゃった。これでしばらくは凌げるぞ。」


しかし凌ぐのは解決ではなく結果の先延ばしに過ぎない。

このままミズメがここに居れば遠くない内に結界は破られ町の人間は蹂躙される。

それを解決するための方法はたった一つだけだ。


「ミズメ。」

「分かってる。私がここに居ちゃいけないんだよね。」

「・・・ああ。でも俺が絶対に護って見せる。」

「大丈夫だよ。ちゃんと分かってるから。」


そう言ってミズメは僅かに笑みを浮かべるとその場を俺と駆け出した。

但し、その場から動けるのはそんなに多くない。

何時も一緒にいるメンバーに加え爺さん位だ。

他のメンバーはそれぞれに戦う力の無い家族を連れ、守らないといけない存在が居る。

ミズメがピンチだからと言って必ず手を貸してくれるわけではない。

しかも町の周囲が魔物の群れに囲まれ逃げ場すらない状態だ。

大事な家族を守りたいと言う思いを振り切ってもらうには状況も悪すぎる。


「お前達は何をやっているか!」


すると屋敷の方から力強い声が飛んで来る。

その声で俺達は足を止めて視線を向けるとそこには後奈良天皇が鋭い目で俺達を見ていた。


「戦えぬ者はすぐに屋敷へと入るのだ!ここは複数の結界によって強固に護られておるから何処よりも安全じゃ。そして戦える者は武器を取れ!あの数の魔物に防戦では勝機は無いぞ!」


すると天皇の鼓舞を受けてここに居る覚醒者たちの表情が変わり覚悟を決める。

そして、それぞれの家族に声をかけると得物を確認してその場から走り出した。


「行くぞハルヤ!」

「ああ。ミズメもここが頑張りどころだ。・・・ミズメ?」


しかし返事が無いので先程までミズメが立っていた所に視線を向けてもそこに姿は無かった。

何処に行ったんだと周囲に視線を向けても見つける事が出来ず、焦りが胸の奥から湧き起って来るのを感じる。


「ミズメーーー!」

「ハルヤ落ち着くのじゃ!気配を探れ!あれほどの気配を発していればそう簡単には見失うまい!」


確かに言われてみればそうだ!

特に俺は贄にされている者の気配を誰よりも感じ取る事が出来る。

そして気配を探るとミズメは町の外に居るようで、しかも結界の外に居るので魔物に発見されている。

その証拠に集っている魔物の動きがミズメの居る方向に動き始めていた。


「ミズメ今行くぞ!」


俺はその場から飛び立つと一人でミズメの居る方向へと向かって行く。

1人で飛び出す事になるけど周りに合わせていると確実に間に合わない。

今は何を置いてもミズメの安全が最優先だ!


しかし飛び立って僅かな時間で状況は激変した。

空に稲妻が走ったかと思うと空間が大きく砕け、そこから巨大な存在が姿を現した。

その姿は下半身に数十の巨大な大蛇が生えて体を支え、上半身にはそれに見合うだけの巨大な鬼の姿だ。

全身は闇そのものの様に黒く、目だけが血の様に赤く輝いている。

そして奴は空から地面に降り立った場所はミズメのすぐ傍だ。

俺は僅かでも早く到着しようと体を弾丸の様に伸ばして一直線に向かって行った。

しかし、ここからでは確実に邪神の方が早い。

奴は既にミズメへと手を伸ばしその体を掴み取っている。

しかもミズメの身体能力は一般人と変わらない。

掴まれた圧力に耐えられずに口から血を吐き出して恐怖に顔を染めている。


このままではルリが見せた夢と同じになってしまう。

俺は1秒にも満たない引き延ばされた世界の中で・・・準備していた切り札を切る事にした。

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