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198 ハルアキラの嫁 ⑤

俺達が最初に向かったのはハルアキラからスミレを掠め取ろうとした男の屋敷だ。

こちらは既に調査が済んでいてそこの住人は避難済みらしい。

なんでもここの主人は大きな商人らしく、お偉いさんに対して多くのコネがあるそうだ。

それを利用して今朝のあの父親は復権を画策していたらしいけど、その主人も先日に不慮の事故で死んでいる。

何でも何処かの商店に言掛かりを付けた結果、呆気なく返り討ちにあったらしく、店も乗っ取られてしまったらしい。

何処かで聞いた様な話だけど、きっと気のせいだろう。

この時代は力こそ全てみたいな所があるのでよくある事なのかもしれない。


その為その死んだ男の息子であり、この屋敷の新しい主人となった男はスミレの持つ未来を見る力を欲したのだろう。

今後の事が分かるなら商売人としてはかなり有利な商いが出来る。

損失を最小限にして利益を最大に生かせるだろう。


「それじゃあ、ちょっと取って来る。」

「早くしてください。この瘴気は通常じゃあ考えられない濃度になっています。何かが起きようとしている兆候かもしれません。」

「すぐに終わるから待っててくれ。」


そして俺は壁を飛び越えると敷地内で濃霧の様に広がる瘴気へと浄化を放ち全てを消し去った。

しかし、すぐ近くに括りつけている土蜘蛛の頭から再び瘴気が溢れ出しているのできりがない。

俺は連続で浄化を放ちながら近づくと頭に向かって何度も浄化を放つ。

すると次第に噴き出す瘴気も収まって来たので周りが見えるようになってきた。


「このシミは何だろうな。ボロボロの布も転がってるし、もしかすると問題の男の成れの果てか。」


土の上には見様によっては人の形にも見えなくもない赤黒い染みが出来ている。

それにそこからは現代の第3ダンジョンで嗅いだ腐臭によく似た臭いが漂っていた。

油の様に鼻にこびり付くようなと言えば良いのか好んで嗅ぎたいとは思えない感じだ。

流石のミズメもこの近くでは何かを食べる気は起きないだろう。

一応は体液からでも蘇生が可能かを試すチャンスではあるけどコイツを生き返らせるのは色々と面倒そうだ。

それに安倍家の調査でこの男が碌で無しであると判明いている。

こんな奴の為に蘇生薬を使うくらいなら、その辺の路地裏で死んでいる誰とも分からない奴を生き返らせた方がまだマシだ。


人の命の重さに違いは無いと言う奴も居るけど俺にとってはそれは間違いで、命は生きている間に何をしたかで重さは変わる。

もちろん俺の様な男の命は下から数えた方が早いのは言うまでもない。

自分でもそれだけ人で無しと言えるような事をしてきた自覚がある。

きっとルリですら地獄にある三途の川に送られたので俺は八大地獄の中でも下層にある焦熱、大焦熱、阿鼻地獄のどれかに落ちるはずだ。

もしこれらの地獄があるとして堕ちてしまえば2度と皆には会えないだろう。


まあ地獄の前に裁判があるそうなのそこで少しでも罪が軽くなる事を祈るとしよう。


「さて、瘴気も出なくなったからそろそろ回収しても問題ないだろう。」


そう思って手を伸ばすと鼬の最後っ屁の様に大量の瘴気が噴き出し襲い掛かって来た。

しかし、それも最後まで俺には何の影響も与えずに浄化の一振りで消え去っていく。

そして瘴気が消えて頭を括っていた木を見ると頭が塵となって崩れている所だった。

どうやら浄化を掛け過ぎたのか瘴気を吐き出し続けたからか分からないけど何らかの限界を来してしまったみたいだ。

それに塵と言っても地面に落ちるまでに跡形もなく消え去っているので回収も不可能だ。

俺はこの場は諦めて屋敷から出ると今起きた事をオリヒメたちへと説明した。


「もしかするとこちらは時間稼ぎかもしれませんね。」

「時間稼ぎ?死んだ妖がそんな事をするのか?」

「力のある妖は首を切られたくらいでは死なない事があります。もしかすると何かがきっかけで復活しようとしているのかもしれません。」


今の推測が真実ならあの頭は既に不要となったから消えて行ったという推測が出来る。

そうなると既に復活が始まっているのかもしれない。

切り離した頭をどうやって補ったかは知らないけど急いだ方が良さそうな気配がする。

それに土蜘蛛は美しい女性を好んで捕食していて、あの屋敷には奴が最初から狙っていたスミレが居る。

玄武が護っているとは言ってもアイツは弱いので不安の種は尽きない。


「そうなると花婿は急いで向かわないとな。」

「その通りだ!」


そう言ってハルアキラは残りの12神将を全て呼び出して身に纏うと朱雀の力を借りて空へと飛びあがった。

俺もそれを追って空に上がるとハルアキラの後を付いてもう1つの目的地へと向かって行く。

すると視線の先にはすでに夜の闇のような黒い雲が広がり、その下にある屋敷を大量の白い糸が覆い尽くしていた。

それはまるで土蜘蛛を倒した廃寺と似ており、あの時と同様にまるでサーカスのテントのように見える。

しかしスキルで中を覗いても見えるのは無人の屋敷だけだ。

スミレの閉じ込められている蔵に関しては今のところ無事な様だけど、居る筈の父親も姿が見えない。

それどころか庭に放置したはずの土蜘蛛の胴体も見当たらず、跡形もなく消え去っていた。

どうやら既に復活を果たし何処かへと移動してしまったみたいだ。


「土蜘蛛はあそこの屋敷には居ないぞ。」

「それなら心配ない。妖気の元は雲の中だ。」


俺は屋敷の様子に気を取られて気付かなかったけど言われて雲の中を覗くとそこには確かに土蜘蛛が潜んでいる。

飛ぶと言うよりも空歩に近い感じで雲を足場にして自由に動き回れるみたいだ。

切り落としたはずの頭はどうしたのかと気になっていたけど、その姿を見てある程度の予想は出来た。


「あの父親は土蜘蛛に取り込まれたみたいだな。」

「そうか・・・。出来れば救いたいと思っていたが仕方ないか。」

「妖に取り込まれたなら自業自得だろ。約束を守れば最初からこの結果も回避できたんだからな。」


土蜘蛛の頭の部分には鬼のような形相の父親の頭が嵌っていて屋敷に向かい何度も糸を吐いて何重にも覆い尽くそうとしている。

切り落とした手足には人間の様な手足が4本ずつ生え、8本の手足を使って器用に動き回っているようだ。

まるで蜘蛛と人間を合成した醜い化物みたなので、あの糸を見た時に後で使えるかなっと期待をしたけど流石にあれは要らない。

俺は我慢すれば使えない訳では無いけど贈り物などに使えば苦情と一緒に突き返されそうだ。

一応残れば後で回収をしておくとして、もしかするとイザナミあたりなら欲しがるかもしれない。

あれで黄泉の女王だからキモ面(気持ち悪い顔)にも耐性があるだろう。


「それじゃあ俺は糸を回収に行くから土蜘蛛本体は任せたからな。」

「任せろ。それよりも俺にも後で糸を分けてくれよ。土蜘蛛の糸で作った服は術を施すのに最適なんだ。」

「もしかしてお前が言っていた素材って言うのは・・・。」

「土蜘蛛の事だがどうかしたか?」


一瞬もしかしてと思ったけど、そのもしかしてが正解だったみたいだ。

さすがにあの鬼オヤジ顔の土蜘蛛が吐き出した糸をプレゼントの素材にはしたくない。

回収した糸はハルアキラが欲しいだけくれてやるとして、互いに別れると上と下へと移動して行った。


「さてと回収に入るか。」


とは言っても糸の端の片方は空へと伸びて雲の中へと続いている。

アイテムボックスに入れようと試してみたけど出来ないので上をどうにかしないと回収も出来ないみたいだ。


「それならまずは家や植木に付いている糸を切って纏めておくか。」


俺は外周から順番にカーテンの様に広がる糸を切り離して纏めて行く。

そして、終わる頃になるとどうやら上でも戦闘が始まったらしく、赤い光が雲の中で輝いている。

どうやら謄陀の剣を使って戦っているらしく、飛び散った火の粉が空に広がり、蜘蛛の糸へと赤い炎が燃え移って・・・。


「アイツは馬鹿か!もう少し状況を考慮して戦えよ!」


貴重な素材と言われていたので、いつもの癖で貧乏性が出てしまった。

俺は急いで燃えている糸の上端を切り離して糸を収納する。


「これで一旦は大丈夫だな。それにしても上はどうなってるんだ?」


俺は雲の近くまで行きそこから中の様子を確認すると、どうやら少し苦戦している様だ。

今のハルアキラは昔の俺と少し似ている所があり、能力で力押し気味になっている。

搦手に弱くて視界の悪い所や状態異常にも耐性が無い。

それに比べて土蜘蛛はこの雲の中でも苦にならない様で四方八方から自由自在に攻撃を仕掛けている。

きっと謄陀の剣を使ったのも余裕が無いからだろう。

今は防御の要である玄武をスミレの護りに回しているのも原因のなので、ここはちょっとだけ手を貸してやることにした。

まずは屋敷に広がっている瘴気を浄化すると蔵の前に降り立ち声を掛ける。


「ここは任せてお前はハルアキラの加勢に向かえ。」

「うむ、そうさせてもらおうかの。」


そう言って玄武は盾に姿を変えると打ち上がる花火の様に飛んで行った。

亀のくせに判断や動きの早い奴だ。


「さてと、こっちも解放しておくか。」


上の戦況は玄武が加わる事でハルアキラ側に傾いている。

シールドによる全周囲防御のおかげで土蜘蛛の攻撃が無効化され落ち着いてカウンターを狙えるようになった。

既に足の代わりになっている腕を2本斬り飛ばし、傍の木に落下して引っ掛かっている。

なので再び瘴気でも出すと面倒なので纏めて焼却し、まだ加減は出来ないけど焼き尽くすなら難しくない。


「業火よ焼き尽くせ。」

『ゴオーー!』

「・・・ちょっとやり過ぎたか?まあ良いか。」


ちょっと強めに炙り過ぎたのか土蜘蛛の腕は燃え尽きたけど、それと同時に植え木も同時に跡形もなく焼き尽くしてしまった。

地面は溶岩の様に溶けてしまい地獄の釜の様になっている。

そして熱気と上昇気流が空へと登ると、そこにある雲に巨大な穴を作り出した。

しかも運の悪い事にその場所には土蜘蛛が居たらしく足場を失った事で真っ逆さまに地上へと落ちて来る。

もちろん、その巨体が落ちて来ればその重量から相当の運動量だろう。

そんなモノが真上から落ちて来れば溶けた地面の奥深くまで突き刺さってしまい、その体は一瞬で炎に包まれた。


「キシャーーー!」

「あ・・・。」


これは明らかに不可抗力と言う奴だ。

この様子だと今更水を掛けても手遅れだし、わざわざ回復させる義理もない。

この際だから再び復活しない様に徹底的に燃やし尽くすのが正解だろう。


俺は土蜘蛛の周囲を石壁で囲うとそこに炎を投げ込んで行く。

どうやら同じ魔法で作った物なら炎の火力にも耐えてくれるみたいだ。

そして最初は断末魔の叫びを上げながら壁を叩いていたけど今は静かになっているのでそろそろ頃合いかもしれない。

なので石壁を消して中を確認すると骨も残らずに燃え尽きていた。


「これが俺流のイリュージョン。」

「何を言ってるんだ?」


ちょっとツバサさんに倣って香ばしいポーズを決めていると上から降りて来たハルアキラに声を掛けられた。

俺は軽く咳ばらいをして誤魔化すとそちらへと顔を向ける。

見た感じでは大きな怪我も無さそうなので治療は後でも良さそうだ。

少しぐらい傷があった方が戦いを生き抜いて助けに来た感じがするだろう。


「いや、何でもない。それよりも美味しい所は残しておいたぞ。」

「さっき美味しい所を持って行かれた気がするのは俺の気のせいか?」


確かに土蜘蛛が空から足を滑らせて落ちて来るというハプニングが無ければ止めを刺していたのはハルアキラだろう。

ただし思いがけず起きるからハプニングなのであってこれは仕方のない事だ。

それにここは蔵の傍なのでこんな所で瘴気を吐けれると中に居るスミレが死んでしまうかもしれない。

それもただ死ぬのではなく逃げる事も出来ずに苦しみもがいて苦痛の悲鳴を上げるはずだ。

そんな声を聞いて死んだスミレを見れば悲しみ後悔するのはハルアキラ自身になる。

ただ、その辺の事を全て言うと言い訳がましいので簡潔な言い訳をしておく。


「ゴホン!俺は蔵を守っただけだ。」

「・・・まあ、今回はそういう事にしておこう。」


歯切れは悪いけど今は土蜘蛛の事よりも花嫁が優先の様だ。

ハルアキラは言葉も言い終わらない内に蔵へと向かい扉に付いている南京錠を剣で切り裂いた。

そして扉に蹴りを入れて開くと中へと入りスミレの許へと向かって行く。


しかし彼女は立つ事も出来ない様な木枠の小さな檻に閉じ込められている。

あれが実の娘にする事かと思うけど逃げない様に閉じ込め、そのまま運び出すには便利なのも確かだ。

あの父親はスミレの能力を信じていなさそうだったけど腕力の無さそうな女性にここまですると言う事は内心で信じていたのかもしれない。

または人とは違う能力に対して恐怖、あるいは嫌悪していた可能性もある。

人はどんな時代でも自分とは違う異物を認めない傾向にあるということだろう。


そしてハルアキラはそんな檻を素手で難無く破壊するとその中に座るスミレに手を差し出した。


「助けに来ました。」

「・・・はい。」


スミレはそう言ってハルアキラの顔を見詰めるとその手を取って檻から出て来た。

しかし、どういう訳か少し腑に落ちない様子で立ち上がるとその視線がこちらへと向けられる。

そしてその口からは俺さえも首を傾げる言葉が発せられた。


「どうして私達は生きているのでしょうか?私もこの方もここで死ぬはずなのですが。」

「それはどういう意味だ?」

「私は言ったはずです。覚悟は出来ていると。」


そうなると初めてスミレを蔵で見た時に言っていた『双方の家に大きな厄災が降り掛かりますよ。』と言うのは自分も含まれていたと言うことだ。

それならどうしてハルアキラまでそれに巻き込まれているのだろうか。

あの程度の妖なら5体の12神将と契約しているハルアキラなら完勝できる。

受けているダメージも守りの要である玄武が居なかったからに他ならないので最初から全てが揃っていれば無傷で勝利しただろう。

ただしその場合はスミレは瘴気に晒されて死んでいただろうけど。


「それにあなたのその凛々しいお姿はいったいどういう事でしょうか?」

「もしかしてこの鎧の事か?」


そう言ってスミレは視線をハルアキラへと向け小さく頷きを返した。

ただ俺に向けた時の様な少し冷たい感じでは無く、こちらは熱い眼差しと言った感じだ。

言うまでも無いかもしれないけど頬も赤い事がここからでも良く見える。

ここがゴミゴミとした蔵の中でなく浜辺や噴水の前なら誰が見ても恋人同士に見えるだろう。

そして恋する乙女にハルアキラはとても嬉しそうに12神将の装備化を解除して紹介はじめた。

これから長い付き合いとなるので親睦を深める事も大切だろう。

しかし俺としても知りたい事が幾つかあるので、そろそろストロベリートークを止めて現実に戻ってきてもらう事にした。


「そろそろ俺の話を再開しても良いか?」

「「え?」」


互いに直接話すのも初めてのはずなのにバッチリ息が合ってるな。

楽しい時間を邪魔して悪いけど詳しく説明してもらいたい。

ただ2人の会話を聞いていて少しは分かった事がある。


どうやら彼女が見た未来でハルアキラは12神将と契約は出来ていなかったみたいだ。

それにスミレ自身は土蜘蛛に喰われて死ぬ運命だったらしい。

その結果2人はここで命を落とし、その後にやって来た俺によって土蜘蛛が倒される事になっていたそうだ。


「それでお前の見た未来が外れる可能性はどれくらいあるんだ?」

「今まで外れた事はありません。」

「ならどうして今日の結果が変わったんだ?」

「・・・きっとあなたのせいです。」

「俺のせい?」


そう言われても俺は何もしてない・・・と思う。

ちょっとハルアキラを強くして12神将と契約させ、偶然落ちて来た土蜘蛛を焼き尽くしただけだ。

いったいそれの何処に問題があるんだろうか?


「本当に分からないのですか?」

「全く分からないな。だから2人揃ってジト目は止めてくれ。」


そんな所まで息ピッタリにならなくても良いのにな。

まあ、これから夫婦になるなら仲睦まじいのは良い事か。


「それよりもハルアキラ。そろそろ言う事があるだろう。」

「そうだな。スミレが言う通りならせっかく拾った命だ。悔いの無い様にしておかないとな。」


そう言ってハルアキラはスミレに向き直るとその手を取って顔を見詰めた。


「一目見た時からずっと好きだった。俺と夫婦になってくれないか。」


そして俺が促すとハルアキラはかなり直球な言葉で求婚を申し出た。

するとスミレは寂しそうに微笑みを浮かべると握られている手を自身の顔に寄せて頬に当てる。


「私は狡い女です。今まであなたの事を何度も見てその悲しみ、苦しみ、そして苦悩も分かっていながら今日死ぬからと何もしませんでした。それにどうせ運命は変えられないと諦めていたのです。しかし、それでも頑張って歩むあなたが好きです。ここまで来て私を愛してくれると言ってくれた貴方の事が大好きです。こんな私でも許してくれるならあなたとこれからの人生を歩ませてください。」


スミレの告白はまるで懺悔をしている様でその目には薄く涙が浮かんでいる。

しかし未来を見る事が出来る彼女の能力から考えればハルアキラもいつかは考えてしまう事かもしれない。

それにその悲しみや苦しみの中には妹であるルリの死も含まれているのだろう。


そして今まで未来を見て諦めの中で生きて来た彼女にとっては人生初となる確信の持てない告白だろう。

きっと俺が考えているよりもずっと心が引き裂かれそうな緊張を感じているはずだ。

人によってはこの瞬間に千年の恋すら冷めてしまうかもしれない。


するとハルアキラはその手を引くとスミレの頬から離れていく。

それを見てその顔に一瞬だけ不安が過るけど、それはすぐに驚きの表情へと取って代わられる事になる。


「それなら、これからは俺と一緒に変えていこう。今この時からスミレの傍には俺が居るから悲しみの未来を希望に変えて見せる。」


そう言ってハルアキラは強くスミレを抱きしめ穏やかに声を掛ける。

その途端にスミレは目に溜めていた涙を溢れさせ、抱きしめられた胸に顔を埋めるとハルアキラの服を強く握り締めた。


「はい・・・これからよろしくお願いします。」


その後、俺は2人を邪魔をしない様に屋敷の中を歩き回り危険が無い事を再確認しておく。

そしてハルアキラはスミレが落ち着くまでその場に留まり、到着したオリヒメ達と一緒に自分の屋敷へと戻って行った。

俺も家族円満になった安倍の一家を見送ると皆の待つ屋敷へと戻っていく。

ただ、明日はちゃんと天皇の屋敷に2人で来るようにと言っておくのを忘れない。


そして俺はミズメたちが寝ている部屋に戻ると今日も1人で静かに明日の準備を始めた。

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